13 / 718
第一章 出会い
第十二話 反逆者 前
しおりを挟む
ラルフはとぼとぼと森に入っていく。
ドラキュラ城に入る前に設置した野営地に戻るためだ。
先程の店主とのやり取りを考えていた。
あの後もいくらか交渉したが、契約満了後の一点張り。
(無理だ…)
今日の飯代すら換金できず、食べ物を仕入れられなかった。
ミーシャにはご飯の約束があった。これは諦めてもらう他ない。換金代の山分け、ミーシャは正直その辺、杜撰なので、ご飯さえどうにかなれば何も文句は言わないだろう。
任務について(…黙っとく、と裏切り行為か?)
冷静になって考えれば、人類と魔族は敵同士。ミーシャは不可抗力というやつで助けてしまったが、イルレアンの騎士どもに現在の情報を渡せば、今まで通り人類の味方で、金を得られる。
しかしそれはミーシャの第二の裏切り行為。ミーシャが退治されるその時まで延々命を狙われる。自分の知る”鏖”の逸話を考えれば考えるほどに、計り知れない強さだ。
死にかけていた事実を考えれば、事実とは少し異なるのかもしれない。だがそれでも、吸血鬼より強い。今回派遣される騎士が死んだら次の犠牲者は間違いなくラルフだ。
ではイルレアンの任務を反故にし、ミーシャ側につく。
逸話通りの強さなら、世界と喧嘩できる。吸血鬼の最後の生き残りも味方につく。最強を絵に描いた魔族が味方というのは子供心をくすぐる。
だがそれは文字通り世界が敵だ。人類も魔族も敵。今後、素通りしていた人類の国家、人族の領地で敵視され、攻撃にあうだろう。それは魔族もしかり。こっちは単純に生活基盤の崩壊を意味する。
ラルフは考えがまとまらないまま野営地の近くまで到着する。
ふと自分の設置していた鳴子が解除されていることに気が付いた。大木に結びつけた鳴子のひもを切り、地面に置いている。
(切り口は刃物か?)
この辺の魔獣の切り口ではない。ラルフは身をかがめ草むらに隠れる。
野営地に近寄ると荷物を荒らしまわっている騎士の姿が見えた。連中こんな森の奥に馬鹿正直に鎧を着こんで入ってきている。
全身を黒い鎧で覆う姿は威厳はあるが、湿気の多いこの辺で重装備はジメジメして気分が悪いだろうし、単純に暑いだろう。それに黒い鎧は暗闇に紛れることができるが、今は明るいし音は誤魔化せない。”消音魔法””隠ぺい魔法”を使用する奴でもいるのだろうか?にしては無防備に姿をさらし,
ガチャガチャうるさい。
探索系のスキルや隠ぺい系スキルを持ちえない騎士の連中は、こういう作業にはとことん向かない。
ラルフの虎の子の缶詰などをひっくり返されるのを見ると、段々むかっ腹もたってくる。
ラルフはこの騎士団を知っていた。イルレアンの任務も考慮すればおのずとこいつらに結び付く。
「見ろよこれ」
缶詰のラベルには魚の煮物を意味する絵がついている。
「安物だな…こんなもの食ってんのか?」
荷物をひっくり返すたびに笑いあっている。
(ほっとけ。黒曜騎士は、さぞうまい飯を食ってんだな…)
頭の中で皮肉る。黒曜騎士団と言えば、イルレアン国将軍のお抱え騎士団。かなり高給を貰っているのだろうが、聞く話では、馬車馬のごとく働かされている。
(給金を使う暇なんてあるのかよ?)
という意味でだ。
「見る限り人の食い物ばかりだ。その上アルパザの商店で売っていた果物の皮と種、張り巡らせた罠、野盗か冒険者のどちらかだろう」
鎧に独特な文様を入れ、赤いマントをする明らかに隊長格の青年は、自分なりの推理を披露している。ここにいた何者かは、小細工を弄し、人の町で売買が可能な生き物。少なくとも魔族ではないと断言している。
すべてラルフの持ち物から断定しているので当然だが。
「団長!これを見てください!」
血だらけの包帯が草むらにて発見される。
「! これはまさか…考えたくはないが…そうなのか?」
「おそらく…」
(なんだよ!)
煮え切らない思いが、ラルフに襲う。先程の青年の推理を抜粋するなら、野盗または冒険者パーティーがケガをした仲間を手当てした。
一人分の荷物のみを考慮するならば、ケガをした荷物所有者の包帯であることも考えられる。
気づいたラルフは内心ほっとする。状況証拠では魔族は出ない。つまりミーシャは必然外れる。
その様子を見ていた騎士の一人が声を上げる。
「まさか、人が魔族の手当てをしたと?」
(!)ドキッとする。
「嘆かわしいことだが…その可能性が高い。人から反逆者がでるとは…」
(んな馬鹿な!)
あまりに荒唐無稽。証拠が一切ない現状を見れば、反逆者とかはないだろう。一国のお抱え騎士様がこんな妄想全振り野郎で勤まるとは…
(いや大正解だけどな、高給貰ってるやつはやっぱ違うな…)
「お待ちください団長。いくら何でも突飛な解釈と思われます。まして現在は戦争中、これは単にパーティー内での治療が濃厚ではないかと」
声を上げた騎士が一旦冷静になろうと示唆。
団長の考察も視野に入れつつ、一般的見解を挟む。
脊髄反射で考えず、一旦整理し考えるやつがいるから無数の可能性と提案がでる。ラルフとしてもこの進言は嬉しかった。
敵を逃がさないようにする為の手練手管はこういったところで生まれる。
しかしそれは秘密にしているからこそ効果がある。逃げる側が逐一把握すれば、一度も遭遇することなく逃げ切れるのだ。
さてどうしたものかと騎士団とラルフが同じように考えたその時。
「そちは何をしとルんじゃ?」
首筋に冷気の吐息がかかる。
「おわっ!?」
氷で撫でられたような冷たさにビックリして振り返るとベルフィアが目線の位置を合わせるようにしゃがんでいた。
「?…!?…ベルフィア…お前なぁ…」
状況を把握すると同時に大声を出してしまった現状に後悔する。
騎士たちの構える音がする。剣の柄に手をかける音だ。この上無く警戒している。
「誰だ!!」
(ヤバいな…)
このまま隠れていてもどうにもできない。
ラルフはメモ帳を取り出し、走り書きでメモをしてベルフィアに渡す
「ミーシャに渡せ、ここは俺が何とかする」
ジェスチャーを交えつつ小声でベルフィアに伝え、ラルフは颯爽と騎士の前に姿を現す。
「誰だとは不躾だな。俺の野営地を滅茶苦茶にしやがって」
騎士たちを見まわし、威圧する態度をとる。
「…お前は誰だ?」
「人に名前を聞くときはまずは自分からと教わらなかったか?黒曜騎士団様?」
騎士たちはジリッと柄に手を添えた状態で、すり足で移動しつつ腰を落とす。
「まぁ待ちな、俺はハイネス。イルレアン国の仕事を持ってきたのはあんたら黒曜騎士団だったんだな。」
ラルフは偽名を使って当座の凌ぎとする事にした。バレても自分は裏社会の人間だから、信用できなかったとかで誤魔化すつもりだ。
ラルフはカバンから書類を出し、両手で広げる。騎士の連中はそれぞれ視線を合わせて無言で確認し合う。書類に見覚えのあった団長は部下に目配せで警戒を解かせる。
「なるほどハイネスだな。荒らしてすまない、我らも探索がてら、この森に入ったところだ」
騎士の一人が散らかした持ち物の片づけをし始める。
(味方と分かれば誠意も見せるか…)
ラルフ、もといハイネスは野営地の荒らしっぷりを初めて見るかのように見渡し。
「俺たちも調査中だ。あんたらは正直邪魔になるんで、町に戻っていただけると助かるんだが?」
まるで自分は一人ではないといった態度をとる。幾人かはやはりそうかといった態度だが、3人くらいはいぶかしさが残る。
ラルフ、もといハイネスを含め見える範囲で9人ここにいる。ハイネスの自己紹介が終わるころ、二人が後ろに回り込み、逃げ道を断つ。正面に団長、団長の後ろに3人、ハイネスの両隣に1人ずつ。
囲まれた。戦闘をする気はないが、いい位置取りをするのは、騎士の自然な行動なのだろう。が、如何せん圧力を感じる。さっきの挑発が気に入らなかった奴もいるのか、いやな視線を感じる。
「やめろ、お前ら仕事仲間だぞ?失礼したなハイネス確かに我々は戦いはできるが探索は不向きだ。君の言いたいことは理解できる。」
団長はラルフの近くに歩み寄りズイッと顔を寄せる。
「だが君も礼を欠いていることは理解してほしい」
戦いを生業とするだけあって気迫はすさまじい。
ラルフはお手上げといったように両手を挙げて、
「悪かった、降参だ。あんたらと喧嘩するつもりなんてないよ。なんせ雇い主だ。だからこそ死んでもらうのは困る。俺らの中にも最近1人死人が出たんでな、警戒は大切なんだよ…」
血まみれの包帯をチラリとみてハッタリをかます。
先程の騎士たちの会話から逃げ道を探っていた。
「…なるほど…引き上げだ!」
団長は部下に手ぶりで引き上げを命じる。
騎士たちは号令を聞くとテキパキと行動をする。
「ハイネス、明日アルパザの宿に来てくれ。ここで会ったことと、現状を聞きたい。場所は”綿雲の上”という宿だ」
アルパザ屈指の高級宿屋。
こういうとこで高給を使うのか。
「委細、了解しました。団長殿。ではまた明日」
ラルフは特に掘り下げられることなく回避に成功する。ベルフィアに邪魔されたと怒りはしたが、出て行った方がすぐ解決できた。
褒められたものではないが、心のなかで感謝した。
「おい、1人足りないぞ?どこ行った?」
騎士たちはその場でキョロキョロ周りを見渡している。確かにそうだ、8人いた騎士が7人になっている。
団長の後ろに控えていた3人のうち、死角になっていた騎士が消えている。
捜索が始まるかと思ったその時、
「おい!あれを見ろ!!」
皆の視線が集まったそこには騎士の兜を取り上げられた、鎧をキシキシ鳴らす男が寝そべっている。体は病気のようにガクガク痙攣していた。
その上に蝋燭のように白い肌の華奢な女が男を抱きかかえ見た感じ顔を首にうずめている。
「おい、なんだよ…おい!」
その声に顔を上げる女。
騎士の男をその場に投げ捨て、立ち上がり様に振り向く。口元は血でぬれ、異様に伸びた犬歯が光る。男の首元は血まみれで、致命傷。失血のせいで白目をむいて痙攣が収まらない。痙攣が収まった時は、男がこと切れた時だ。
女は口が裂けるほど笑い、その血の余韻を楽しんでいる。黒々とした目は瞳の部分が朱く輝いていた。
「…吸血鬼だと…?」
その場の騎士たちがあまりの唐突さに恐怖する中。
ラルフは頭を抱えていた。
ドラキュラ城に入る前に設置した野営地に戻るためだ。
先程の店主とのやり取りを考えていた。
あの後もいくらか交渉したが、契約満了後の一点張り。
(無理だ…)
今日の飯代すら換金できず、食べ物を仕入れられなかった。
ミーシャにはご飯の約束があった。これは諦めてもらう他ない。換金代の山分け、ミーシャは正直その辺、杜撰なので、ご飯さえどうにかなれば何も文句は言わないだろう。
任務について(…黙っとく、と裏切り行為か?)
冷静になって考えれば、人類と魔族は敵同士。ミーシャは不可抗力というやつで助けてしまったが、イルレアンの騎士どもに現在の情報を渡せば、今まで通り人類の味方で、金を得られる。
しかしそれはミーシャの第二の裏切り行為。ミーシャが退治されるその時まで延々命を狙われる。自分の知る”鏖”の逸話を考えれば考えるほどに、計り知れない強さだ。
死にかけていた事実を考えれば、事実とは少し異なるのかもしれない。だがそれでも、吸血鬼より強い。今回派遣される騎士が死んだら次の犠牲者は間違いなくラルフだ。
ではイルレアンの任務を反故にし、ミーシャ側につく。
逸話通りの強さなら、世界と喧嘩できる。吸血鬼の最後の生き残りも味方につく。最強を絵に描いた魔族が味方というのは子供心をくすぐる。
だがそれは文字通り世界が敵だ。人類も魔族も敵。今後、素通りしていた人類の国家、人族の領地で敵視され、攻撃にあうだろう。それは魔族もしかり。こっちは単純に生活基盤の崩壊を意味する。
ラルフは考えがまとまらないまま野営地の近くまで到着する。
ふと自分の設置していた鳴子が解除されていることに気が付いた。大木に結びつけた鳴子のひもを切り、地面に置いている。
(切り口は刃物か?)
この辺の魔獣の切り口ではない。ラルフは身をかがめ草むらに隠れる。
野営地に近寄ると荷物を荒らしまわっている騎士の姿が見えた。連中こんな森の奥に馬鹿正直に鎧を着こんで入ってきている。
全身を黒い鎧で覆う姿は威厳はあるが、湿気の多いこの辺で重装備はジメジメして気分が悪いだろうし、単純に暑いだろう。それに黒い鎧は暗闇に紛れることができるが、今は明るいし音は誤魔化せない。”消音魔法””隠ぺい魔法”を使用する奴でもいるのだろうか?にしては無防備に姿をさらし,
ガチャガチャうるさい。
探索系のスキルや隠ぺい系スキルを持ちえない騎士の連中は、こういう作業にはとことん向かない。
ラルフの虎の子の缶詰などをひっくり返されるのを見ると、段々むかっ腹もたってくる。
ラルフはこの騎士団を知っていた。イルレアンの任務も考慮すればおのずとこいつらに結び付く。
「見ろよこれ」
缶詰のラベルには魚の煮物を意味する絵がついている。
「安物だな…こんなもの食ってんのか?」
荷物をひっくり返すたびに笑いあっている。
(ほっとけ。黒曜騎士は、さぞうまい飯を食ってんだな…)
頭の中で皮肉る。黒曜騎士団と言えば、イルレアン国将軍のお抱え騎士団。かなり高給を貰っているのだろうが、聞く話では、馬車馬のごとく働かされている。
(給金を使う暇なんてあるのかよ?)
という意味でだ。
「見る限り人の食い物ばかりだ。その上アルパザの商店で売っていた果物の皮と種、張り巡らせた罠、野盗か冒険者のどちらかだろう」
鎧に独特な文様を入れ、赤いマントをする明らかに隊長格の青年は、自分なりの推理を披露している。ここにいた何者かは、小細工を弄し、人の町で売買が可能な生き物。少なくとも魔族ではないと断言している。
すべてラルフの持ち物から断定しているので当然だが。
「団長!これを見てください!」
血だらけの包帯が草むらにて発見される。
「! これはまさか…考えたくはないが…そうなのか?」
「おそらく…」
(なんだよ!)
煮え切らない思いが、ラルフに襲う。先程の青年の推理を抜粋するなら、野盗または冒険者パーティーがケガをした仲間を手当てした。
一人分の荷物のみを考慮するならば、ケガをした荷物所有者の包帯であることも考えられる。
気づいたラルフは内心ほっとする。状況証拠では魔族は出ない。つまりミーシャは必然外れる。
その様子を見ていた騎士の一人が声を上げる。
「まさか、人が魔族の手当てをしたと?」
(!)ドキッとする。
「嘆かわしいことだが…その可能性が高い。人から反逆者がでるとは…」
(んな馬鹿な!)
あまりに荒唐無稽。証拠が一切ない現状を見れば、反逆者とかはないだろう。一国のお抱え騎士様がこんな妄想全振り野郎で勤まるとは…
(いや大正解だけどな、高給貰ってるやつはやっぱ違うな…)
「お待ちください団長。いくら何でも突飛な解釈と思われます。まして現在は戦争中、これは単にパーティー内での治療が濃厚ではないかと」
声を上げた騎士が一旦冷静になろうと示唆。
団長の考察も視野に入れつつ、一般的見解を挟む。
脊髄反射で考えず、一旦整理し考えるやつがいるから無数の可能性と提案がでる。ラルフとしてもこの進言は嬉しかった。
敵を逃がさないようにする為の手練手管はこういったところで生まれる。
しかしそれは秘密にしているからこそ効果がある。逃げる側が逐一把握すれば、一度も遭遇することなく逃げ切れるのだ。
さてどうしたものかと騎士団とラルフが同じように考えたその時。
「そちは何をしとルんじゃ?」
首筋に冷気の吐息がかかる。
「おわっ!?」
氷で撫でられたような冷たさにビックリして振り返るとベルフィアが目線の位置を合わせるようにしゃがんでいた。
「?…!?…ベルフィア…お前なぁ…」
状況を把握すると同時に大声を出してしまった現状に後悔する。
騎士たちの構える音がする。剣の柄に手をかける音だ。この上無く警戒している。
「誰だ!!」
(ヤバいな…)
このまま隠れていてもどうにもできない。
ラルフはメモ帳を取り出し、走り書きでメモをしてベルフィアに渡す
「ミーシャに渡せ、ここは俺が何とかする」
ジェスチャーを交えつつ小声でベルフィアに伝え、ラルフは颯爽と騎士の前に姿を現す。
「誰だとは不躾だな。俺の野営地を滅茶苦茶にしやがって」
騎士たちを見まわし、威圧する態度をとる。
「…お前は誰だ?」
「人に名前を聞くときはまずは自分からと教わらなかったか?黒曜騎士団様?」
騎士たちはジリッと柄に手を添えた状態で、すり足で移動しつつ腰を落とす。
「まぁ待ちな、俺はハイネス。イルレアン国の仕事を持ってきたのはあんたら黒曜騎士団だったんだな。」
ラルフは偽名を使って当座の凌ぎとする事にした。バレても自分は裏社会の人間だから、信用できなかったとかで誤魔化すつもりだ。
ラルフはカバンから書類を出し、両手で広げる。騎士の連中はそれぞれ視線を合わせて無言で確認し合う。書類に見覚えのあった団長は部下に目配せで警戒を解かせる。
「なるほどハイネスだな。荒らしてすまない、我らも探索がてら、この森に入ったところだ」
騎士の一人が散らかした持ち物の片づけをし始める。
(味方と分かれば誠意も見せるか…)
ラルフ、もといハイネスは野営地の荒らしっぷりを初めて見るかのように見渡し。
「俺たちも調査中だ。あんたらは正直邪魔になるんで、町に戻っていただけると助かるんだが?」
まるで自分は一人ではないといった態度をとる。幾人かはやはりそうかといった態度だが、3人くらいはいぶかしさが残る。
ラルフ、もといハイネスを含め見える範囲で9人ここにいる。ハイネスの自己紹介が終わるころ、二人が後ろに回り込み、逃げ道を断つ。正面に団長、団長の後ろに3人、ハイネスの両隣に1人ずつ。
囲まれた。戦闘をする気はないが、いい位置取りをするのは、騎士の自然な行動なのだろう。が、如何せん圧力を感じる。さっきの挑発が気に入らなかった奴もいるのか、いやな視線を感じる。
「やめろ、お前ら仕事仲間だぞ?失礼したなハイネス確かに我々は戦いはできるが探索は不向きだ。君の言いたいことは理解できる。」
団長はラルフの近くに歩み寄りズイッと顔を寄せる。
「だが君も礼を欠いていることは理解してほしい」
戦いを生業とするだけあって気迫はすさまじい。
ラルフはお手上げといったように両手を挙げて、
「悪かった、降参だ。あんたらと喧嘩するつもりなんてないよ。なんせ雇い主だ。だからこそ死んでもらうのは困る。俺らの中にも最近1人死人が出たんでな、警戒は大切なんだよ…」
血まみれの包帯をチラリとみてハッタリをかます。
先程の騎士たちの会話から逃げ道を探っていた。
「…なるほど…引き上げだ!」
団長は部下に手ぶりで引き上げを命じる。
騎士たちは号令を聞くとテキパキと行動をする。
「ハイネス、明日アルパザの宿に来てくれ。ここで会ったことと、現状を聞きたい。場所は”綿雲の上”という宿だ」
アルパザ屈指の高級宿屋。
こういうとこで高給を使うのか。
「委細、了解しました。団長殿。ではまた明日」
ラルフは特に掘り下げられることなく回避に成功する。ベルフィアに邪魔されたと怒りはしたが、出て行った方がすぐ解決できた。
褒められたものではないが、心のなかで感謝した。
「おい、1人足りないぞ?どこ行った?」
騎士たちはその場でキョロキョロ周りを見渡している。確かにそうだ、8人いた騎士が7人になっている。
団長の後ろに控えていた3人のうち、死角になっていた騎士が消えている。
捜索が始まるかと思ったその時、
「おい!あれを見ろ!!」
皆の視線が集まったそこには騎士の兜を取り上げられた、鎧をキシキシ鳴らす男が寝そべっている。体は病気のようにガクガク痙攣していた。
その上に蝋燭のように白い肌の華奢な女が男を抱きかかえ見た感じ顔を首にうずめている。
「おい、なんだよ…おい!」
その声に顔を上げる女。
騎士の男をその場に投げ捨て、立ち上がり様に振り向く。口元は血でぬれ、異様に伸びた犬歯が光る。男の首元は血まみれで、致命傷。失血のせいで白目をむいて痙攣が収まらない。痙攣が収まった時は、男がこと切れた時だ。
女は口が裂けるほど笑い、その血の余韻を楽しんでいる。黒々とした目は瞳の部分が朱く輝いていた。
「…吸血鬼だと…?」
その場の騎士たちがあまりの唐突さに恐怖する中。
ラルフは頭を抱えていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる