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第一章 出会い
第二十八話 処刑
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守衛のリーダーは団長の一連の行動をみて恐怖したが、その能力は頼りになる事を考え内心安堵していた。
戦力があるというのはこれほど余裕が生まれるのかという感心と団長に対する憧憬でいっぱいだった。
「あー…ラルフ、終わったな…」
だからこそラルフとの戦力差を考え、目を覆いたくなった。これから始まるのはラルフの処刑である。
吸血鬼なんて見るも無残にバラバラだ。
頭なんてどこに行ったか分からないくらいに。
これから敢行される処刑はきっと目を背けたくなること請け合いだ。
ラルフはトレジャーハンターだと周囲に宣っている。それはいうなれば盗賊の亜種であり、剣の腕など無いに等しい。
戦士であったころの自分でもあのレベルの剣士と
立ち会うなんて願い下げだというのに、ラルフはそのレベルにすら立っていない。悲しいことだが自業自得と諦めて受け入れるしかない。
せめて見届けてやろうという戦士の情けを持って静観を決め込む。
周りは弛緩した空気が流れる。
最大の脅威を排除したことが張り詰めた気を緩める原因となっていた。
二人を除いて。
ラルフは団長に殺される。
ベルフィアの速度に反応することも出来ないラルフに団長を倒すことはおろか、傷一つ付けることすら適わないだろう。
(ナイフ…はもう無いな…)
目くらましも人狼に取られた。残るは投げ縄と潤滑油と火付け道具。懐に飛び込めれば勝機はありそうだが、ベルフィアを切った速度を考えれば、自殺に等しい。投げ縄なんて視認された途端に切られて終わりだ。
つまりどうにもできない。
(諦めて死ねと?冗談じゃない!)
ラルフは考える。生き残る術を。
この状況をミーシャに伝えられることができれば、
(いや現実的じゃない)
もしかしたらベッドが気持ち良すぎて熟睡しているかもしれない奴に頼るなんてどうかしている。
「どうした?ラルフ…かかってこないのか?私はお前の仲間を無残に殺した男だぞ?」
交渉の時に見せたあの見下した目だ。
気に食わない。こっちは必死で考えているのに…
しかしその通りかもしれない。
団長につっかかっていくのも手かと思えた。
ラルフは勝機の見えない中、動いてみることにした。
「そいつはそっくりそのままあんたにお返しするぜ。俺はこの場であんたの部下を一人殺しているからなぁー…というよりなんで待ってくれてるのかな?」
わざと煽ってみる。
遊んでやるといた手前、ふいに喉元を掻っ切られることはないだろうと愚考する。気が変わっても、わざわざ告げてから本気を出すだろうし。
ピキッという擬音が聞こえてきそうなほど眉間にしわを寄せている。
「なるほど一理あるな。ならば打ち込もう」
ザリッとすり足で前に詰める。
「打ち込み程度で死んでくれるなよ」
「へっ…言ってろ」
ラルフが額から頬にかけて一筋の汗の道を作った瞬間。団長が一気に間合いを詰めた。
その詰め方は異様で、剣を正眼に構えたそのままの姿勢でスライド移動してきたかのようだった。膝の屈伸を極限まで失くし、足首の力を使って一気に詰め寄る。
あたかもそのまま移動したかのように見せる技術によるトリック。
「おわぁ!」
突然の高度な技術にたじろぎ、無様に声を出してしまう。剣を振り上げ垂直に撃ち込まれる。
ガキィン
何とか防御に成功し、続く二撃、三撃もギリギリで防御に成功する。
団長の横を抜けて倒れこみそうになりながら間合いを開ける。へっぴり腰でも何とか逃げられたラルフは間合いを開けつつまたも態勢を立て直す。
その一連の無様さから森の中に笑いが響く。周りから見れば喜劇のようなコミカルな立ち回りだったのだろう。
ラルフには生きるか死ぬかだが、周りにはすでにある種、娯楽のような空気さえ感じていた。
しかしラルフには恥ずかしいと思う間などない。
常に必死で対応しているのだから。
団長が遊びと称したこの処刑に感謝すらしている。何故ならベルフィアを殺した勢いのまま寸断される恐れもあったからだ。
団長は辺りを見渡し
「いい笑い者だなラルフ。実に滑稽だ」
「へへっ…まぁな…」
ラルフは卑屈にとらえられる態度を示しながら、何故か余裕の表情を作る。正直苛立ちを覚える。
「…随分余裕そうだなラルフ…きっと逃げる足があるせいだな?」
そう言うと狙いを足に定めてくる。本当に狙うのか?信じるか迷うが、もし来るならこの手の輩は利き足を狙う。
ラルフは戦略を考える。利き足を狙うつもりなら相手が詰め寄った時に嫌がらせをする算段が出来上がった。
「おっと…怖いな…じわじわ追い詰めようなんて、あんた心が病んでるんじゃないか?」
くくっと笑ってまたも挑発する。
「ふっ…そうかもな…」
一瞬目が伏せられた。
その瞬間を狙って、ジャケットのポケットに手を伸ばす。
「お前に言われたくはない」
ラルフ自身も注意が散漫になった一瞬を狙われ、さっきより静かに間合いを詰められた。完全な隙を突かれ、片手を放してしまったために防御が間に合わず、剣を振り下ろされる。
(あ、死んだ)
さっきと同じ単なる垂直の振り下ろしだ。
つまり足を狙うだのなんだの言っていたが、ラルフの態度に嫌気がさし、隙を狙って真正面から斬り下ろすつもりだったらしい。
その時、ラルフの鼻先で切っ先が止まる。
青白い光が目に痛い。
何故止まったのか?その答えはラルフの胸の位置にあった。
「…馬鹿な…!」
それはあれほど調子に乗っていた団長を戦慄に追いやるのに苦労せぬほどの衝撃だった。
ラルフの胸の位置から手が生えている。厳密には白い腕が団長の剣を止めるつっかえ棒の要領でそこにあった。そして恐怖は続く。
「妾をヨくもバラしてくれタノぅ」
団長の肩越しに突如、頬をつける勢いで出てきた。いや厳密には頬同士がくっついて冷たかった。それはさっき切り刻みこれでもかと念入りに傷つけたベルフィアの頭。
さらに太ももから切り落とした足が団長の足に絡まり、思う様に動けない。
ベルフィアは注意がラルフに逸れた頃合いで”吸血身体強化”を発動させ”五感剥離”を使用した。
コストを3も分けた肉体の数分使うため、戦いでは使用しづらいしかし二人分の血液を摂取したベルフィアにその心配はない。
その上、丁度バラされたのだ。使わない手はないだろう。
本来切り離す瞬間に血を巡らせる必要があるので、切り離された後では発動はできないが、切り離された後でも、後出しで血を巡らせれば同じことで、牙で切り離された部位に一個ずつ注入していった。
その代わり頭を芋虫のように動かさなければならず、時間が異様にかかってしまった。
団長の気まぐれとラルフのちょっとした時間稼ぎが
功を奏した。幸運だっただけだが。
「この化け物がぁ…!!」
剣を振り上げ今一度スキルの発動を試みる。
しかしそんなことは二度もさせない。
ゴンッという音が鳴り響き団長の体は左側に吹き飛ぶ。右側から、胴体の部分が残った左手で殴ったのだ。その衝撃で太ももは外れ、頭も避難していた。それぞれのパーツが集まりだし合体パーツのように重なっていく。
そしてあの異様な再生をラルフは呆けた顔で見ていた。
その事態に先ほどまで嘲笑していた声が鳴りを潜める。あの吸血鬼が復活したのだ。あれほど念入りに殺したはずなのに生きていた。
バラバラに切り裂き、生き物なら死ぬ領域に追いやっても死ぬことはなく、尚且つパーツが個々に動き回る。これを絶滅に追いやった魔王はどうやって殺したのか?
団長は起き上がり、恐怖と怒りで興奮し唸っている。部下も見たことないような狂気に満ちた顔だ。
「ごふっ…いいだろう…お前が不死身なら、何度でも殺してやる!!」
口から血を流しながらも吠える団長。
ベルフィアは団長を見据え、言い放つ。
「やれルもノならやってみぃ。返り討ちじゃ!」
戦力があるというのはこれほど余裕が生まれるのかという感心と団長に対する憧憬でいっぱいだった。
「あー…ラルフ、終わったな…」
だからこそラルフとの戦力差を考え、目を覆いたくなった。これから始まるのはラルフの処刑である。
吸血鬼なんて見るも無残にバラバラだ。
頭なんてどこに行ったか分からないくらいに。
これから敢行される処刑はきっと目を背けたくなること請け合いだ。
ラルフはトレジャーハンターだと周囲に宣っている。それはいうなれば盗賊の亜種であり、剣の腕など無いに等しい。
戦士であったころの自分でもあのレベルの剣士と
立ち会うなんて願い下げだというのに、ラルフはそのレベルにすら立っていない。悲しいことだが自業自得と諦めて受け入れるしかない。
せめて見届けてやろうという戦士の情けを持って静観を決め込む。
周りは弛緩した空気が流れる。
最大の脅威を排除したことが張り詰めた気を緩める原因となっていた。
二人を除いて。
ラルフは団長に殺される。
ベルフィアの速度に反応することも出来ないラルフに団長を倒すことはおろか、傷一つ付けることすら適わないだろう。
(ナイフ…はもう無いな…)
目くらましも人狼に取られた。残るは投げ縄と潤滑油と火付け道具。懐に飛び込めれば勝機はありそうだが、ベルフィアを切った速度を考えれば、自殺に等しい。投げ縄なんて視認された途端に切られて終わりだ。
つまりどうにもできない。
(諦めて死ねと?冗談じゃない!)
ラルフは考える。生き残る術を。
この状況をミーシャに伝えられることができれば、
(いや現実的じゃない)
もしかしたらベッドが気持ち良すぎて熟睡しているかもしれない奴に頼るなんてどうかしている。
「どうした?ラルフ…かかってこないのか?私はお前の仲間を無残に殺した男だぞ?」
交渉の時に見せたあの見下した目だ。
気に食わない。こっちは必死で考えているのに…
しかしその通りかもしれない。
団長につっかかっていくのも手かと思えた。
ラルフは勝機の見えない中、動いてみることにした。
「そいつはそっくりそのままあんたにお返しするぜ。俺はこの場であんたの部下を一人殺しているからなぁー…というよりなんで待ってくれてるのかな?」
わざと煽ってみる。
遊んでやるといた手前、ふいに喉元を掻っ切られることはないだろうと愚考する。気が変わっても、わざわざ告げてから本気を出すだろうし。
ピキッという擬音が聞こえてきそうなほど眉間にしわを寄せている。
「なるほど一理あるな。ならば打ち込もう」
ザリッとすり足で前に詰める。
「打ち込み程度で死んでくれるなよ」
「へっ…言ってろ」
ラルフが額から頬にかけて一筋の汗の道を作った瞬間。団長が一気に間合いを詰めた。
その詰め方は異様で、剣を正眼に構えたそのままの姿勢でスライド移動してきたかのようだった。膝の屈伸を極限まで失くし、足首の力を使って一気に詰め寄る。
あたかもそのまま移動したかのように見せる技術によるトリック。
「おわぁ!」
突然の高度な技術にたじろぎ、無様に声を出してしまう。剣を振り上げ垂直に撃ち込まれる。
ガキィン
何とか防御に成功し、続く二撃、三撃もギリギリで防御に成功する。
団長の横を抜けて倒れこみそうになりながら間合いを開ける。へっぴり腰でも何とか逃げられたラルフは間合いを開けつつまたも態勢を立て直す。
その一連の無様さから森の中に笑いが響く。周りから見れば喜劇のようなコミカルな立ち回りだったのだろう。
ラルフには生きるか死ぬかだが、周りにはすでにある種、娯楽のような空気さえ感じていた。
しかしラルフには恥ずかしいと思う間などない。
常に必死で対応しているのだから。
団長が遊びと称したこの処刑に感謝すらしている。何故ならベルフィアを殺した勢いのまま寸断される恐れもあったからだ。
団長は辺りを見渡し
「いい笑い者だなラルフ。実に滑稽だ」
「へへっ…まぁな…」
ラルフは卑屈にとらえられる態度を示しながら、何故か余裕の表情を作る。正直苛立ちを覚える。
「…随分余裕そうだなラルフ…きっと逃げる足があるせいだな?」
そう言うと狙いを足に定めてくる。本当に狙うのか?信じるか迷うが、もし来るならこの手の輩は利き足を狙う。
ラルフは戦略を考える。利き足を狙うつもりなら相手が詰め寄った時に嫌がらせをする算段が出来上がった。
「おっと…怖いな…じわじわ追い詰めようなんて、あんた心が病んでるんじゃないか?」
くくっと笑ってまたも挑発する。
「ふっ…そうかもな…」
一瞬目が伏せられた。
その瞬間を狙って、ジャケットのポケットに手を伸ばす。
「お前に言われたくはない」
ラルフ自身も注意が散漫になった一瞬を狙われ、さっきより静かに間合いを詰められた。完全な隙を突かれ、片手を放してしまったために防御が間に合わず、剣を振り下ろされる。
(あ、死んだ)
さっきと同じ単なる垂直の振り下ろしだ。
つまり足を狙うだのなんだの言っていたが、ラルフの態度に嫌気がさし、隙を狙って真正面から斬り下ろすつもりだったらしい。
その時、ラルフの鼻先で切っ先が止まる。
青白い光が目に痛い。
何故止まったのか?その答えはラルフの胸の位置にあった。
「…馬鹿な…!」
それはあれほど調子に乗っていた団長を戦慄に追いやるのに苦労せぬほどの衝撃だった。
ラルフの胸の位置から手が生えている。厳密には白い腕が団長の剣を止めるつっかえ棒の要領でそこにあった。そして恐怖は続く。
「妾をヨくもバラしてくれタノぅ」
団長の肩越しに突如、頬をつける勢いで出てきた。いや厳密には頬同士がくっついて冷たかった。それはさっき切り刻みこれでもかと念入りに傷つけたベルフィアの頭。
さらに太ももから切り落とした足が団長の足に絡まり、思う様に動けない。
ベルフィアは注意がラルフに逸れた頃合いで”吸血身体強化”を発動させ”五感剥離”を使用した。
コストを3も分けた肉体の数分使うため、戦いでは使用しづらいしかし二人分の血液を摂取したベルフィアにその心配はない。
その上、丁度バラされたのだ。使わない手はないだろう。
本来切り離す瞬間に血を巡らせる必要があるので、切り離された後では発動はできないが、切り離された後でも、後出しで血を巡らせれば同じことで、牙で切り離された部位に一個ずつ注入していった。
その代わり頭を芋虫のように動かさなければならず、時間が異様にかかってしまった。
団長の気まぐれとラルフのちょっとした時間稼ぎが
功を奏した。幸運だっただけだが。
「この化け物がぁ…!!」
剣を振り上げ今一度スキルの発動を試みる。
しかしそんなことは二度もさせない。
ゴンッという音が鳴り響き団長の体は左側に吹き飛ぶ。右側から、胴体の部分が残った左手で殴ったのだ。その衝撃で太ももは外れ、頭も避難していた。それぞれのパーツが集まりだし合体パーツのように重なっていく。
そしてあの異様な再生をラルフは呆けた顔で見ていた。
その事態に先ほどまで嘲笑していた声が鳴りを潜める。あの吸血鬼が復活したのだ。あれほど念入りに殺したはずなのに生きていた。
バラバラに切り裂き、生き物なら死ぬ領域に追いやっても死ぬことはなく、尚且つパーツが個々に動き回る。これを絶滅に追いやった魔王はどうやって殺したのか?
団長は起き上がり、恐怖と怒りで興奮し唸っている。部下も見たことないような狂気に満ちた顔だ。
「ごふっ…いいだろう…お前が不死身なら、何度でも殺してやる!!」
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