一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第二章 旅立ち

第五話 調達

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『…んだと!?』

ガタンッと通信先で第七魔王”銀爪ぎんそう”は暴れた。

イミーナからの連絡で今回の事が知らされたのだ。具体的にはミーシャを取り逃がし、挙句”牙狼がろう”の壊滅の件も合わせて伝えた。

ここはグラジャラク大陸。

第二魔王”みなごろし”が統治する、世界で二番目にでかい大陸。魔族国家最強の称号を持ち不落要塞と呼ばれている。

今は肝心の第二魔王”みなごろし”が不在の為、イミーナが魔王代理として玉座に腰かけ、”銀爪”に魔晶ホログラムで急ぎ、報告を行っていた。

『テメー言ったよな?せっかちは嫌われるとか何とか…どうすんだよこの状況は…全部テメーのせいだぞ』

”銀爪”はこの上なく焦っている。
万が一にもミーシャが円卓に戻ってくれば、この件を議題にされることは明白。仲間割れによる制裁として最悪、円卓からの除名が考えられる。

「落ち着いてください。確かにこの件に関しては私の判断ミスが大きいと認めましょう。あなたの言う通りその場で殺しきるか、もしくは血眼になって探し出してでも止めを刺すべきでした。反省しております」

イミーナは魔晶ホログラム越しに頭を下げた。

『んなことはいんだよ!てめぇの反省なんざ知るか!それより責任の取り方は…』

「ええ、もちろん議題に上がるようでしたらすべて私の責任だと明言いたしますのでご安心を。この件に関しては完全に独断である事を書類にも記入し、最悪、処刑であれ甘んじて受け入れましょう」

その言葉を聞いた途端、”銀爪”に余裕が生まれる。

それもそのはず、せっかく名立たる王たちの一員になったのに、危うく第一魔王の称号を得る夢が絶たれてしまうところだった。
その上、今はまだ国の重鎮たちが従っているが、これを機に、王という称号のはく奪を強行するかもしれない。

王という権力の失効は、彼にとってまさに破滅である。必死になるのは、すべて自分の為だ。傍から見ても分かるくらい、ホッと胸をなでおろしていた。

その様子を見ていたイミーナはこの馬鹿の単細胞さに呆れを生じていた。だがそれも都合がいい。こいつに使い道があるのは何も兵士だけではない。本心に気づかない愚か者だからこそ、手を組んでいる。

『ならいい…分かってるよな?裏切るんじゃねーぞ』

「ええ。ご心配なく…」

先程までの焦りはどこへやらだ。
具体的な内容が提示され、安心しきっているが単なる口約束。儀式的な盟約も、書状すらないのに本来なら安心なんてできるはずがない。

この短絡的な思考の脳ナシはイミーナにとって格好のデコイであり、裏切りに対する糾弾の的である。たまに癇癪を起すが、その性格は扱いやすい。このチンピラの印象は操り人形のイメージだ。

『で?これからどうするつもりだ?』

「すぐに部下を派遣いたします。”牙狼”の件もありますし早急に手を打つべきです」

イミーナは長い耳を片方触り、考えるふりをする。

「しかし…私の部下は火力に特化していますが、索敵は不向きでして…」

『なら俺の部下を使え。”牙狼”の他、好きな奴を選別しろ』

「…よろしいのですか?」

『そうだ。但しタダじゃねぇぞ?そうだな…てめぇを一週間、好きにできるってのはどうだ?国の事を考えりゃ安いもんだろ?』

”銀爪”はイミーナの肢体を眺めて舌なめずりをする。下卑た笑いを浮かべ、気味が悪いくらいだ。先の玉座失墜の焦りから一転、性欲に変化していた。

「そうですね…彼女を殺した祝杯に好きにするのであれば一向に構いませんよ?お酒も持参して献上に上がりましょう。まずは何があっても彼女の死が最優先です」

イミーナは長いスカートの、足の付け根まで届くスリットを少しずらし、白い太ももを強調させる。足も組み替えて見せ、男の情欲をそそる。

『くひっ!いいだろう。忘れんなよ?お前はもう俺のものだぜ?さて、それじゃ選べ。部下の持ち出しを許す』

イミーナは「それでは…」と数々の部隊名を上げ連ねる。その中にはカサブリアが誇る「稲妻」と「竜巻」の名もあった。

”銀爪”は「そんなに?」と困惑するが、いい女の体の為なら奮発もする。イミーナとの熱い夜伽を思い、それを許可した。

指揮権の委譲も申し出た結果、これは難なく通った。イミーナは指揮も一任され、好きに扱う事ができる。

常識的に考えれば、よっぽどのことがない限り、他国へ指揮権を委譲するなどあり得ない。

”利害の一致”と言いたいが、その程度では理由が不足していると言わざる負えない。これは”銀爪”が指揮官でない為に起こった弊害である。

個で強い、現”銀爪”はある意味では親父を上回っている。自分さえ出ていければ事は済むのだ。軍はわちゃわちゃして、どうなっているのか分からなくなる。
指揮系統を部下に一任し、自分は遊撃として敵を各個撃破した方が理にかなっていると固く信じている。

親父である、前”銀爪”は将軍としての能があった為、特に友好国という程でないグラジャラクに指揮権を渡すなどという、愚かな考えすら浮かばないだろうが、息子には当てはまらない。

無知ゆえに最悪の選択をしてしまう。

失敗や裏切り行為などの不正や、他になにかあればカサブリア王国キングダムが真っ先に疑われる事が理解できていない。「稲妻」と「竜巻」を選出したのは、何も戦闘だけではないと言う事。

円卓の信頼や信用の前に性欲が先行する、もはや獣。

何も考えない低能の王”銀爪”。肉体関係すらない女に篭絡ろうらくされ、その身を亡ぼす。
その一歩手前まで追い詰められていた。

『ここまでやったんだ…殺せるだろ?』

「ええ、間違いなく。”銀爪”様のおかげであれを殺せます」

『はっ!いい結果を期待するぞ。あっそうだ。俺の趣味はミニスカのボンテージだ。サイズきつめの奴な。下は過激な奴…紐がいいな。網タイツも忘れんなよ』

既に成功した気でいる”銀爪”。
生き生きと注文を付けてくる。まるでテレクラだ。
これくらい楽観的に生きられたらどれだけ楽しいのだろう。イミーナはふと自分がかわいそうになる。

この馬鹿と話している自分がとてつもなくかわいそうだと。

「……いいご趣味で…。覚えておきます…」

『よろしく~…』ブツッという感じで通信が切られる。正直イラつくが、これで準備は整った。

最悪ミーシャは殺せなくてもいい。
今回の狙いは、回復ソースであるラルフの抹殺だ。

ミーシャの力を考えれば、どれだけ揃えても全滅は必死。だが、数が多いほどラルフをカバーできない。

常々厄介だと思っていたのは、人間が使う回復材。
それに勝るとも劣らない回復魔法だ。

魔族はそのほとんどが攻撃型であり、索敵や、回復にソースを割く様に進化した魔族が極端に少ない。
それもこれも生まれが関係しているがそれを誇りに思っているから厄介だ。進歩がない。衣類や食など、生活用品が充実していても肝心の戦力増強の技術が未発達である。

イミーナは人間の技術に特に関心を示し、それを取り込むため画策している最中である。

それを得ることができれば、永遠の存在もまた夢ではない。ミーシャを殺さぬ限り、見えてこない夢だが…

ともかくラルフを殺せば、事は大きく前進する。イミーナは気合を入れて、また魔晶ホログラムを起動する。その発信は”銀爪”に当てたものではない。

イミーナに肩入れするのは能無しばかりではないのだ。

利害の一致とは恐ろしいものだと思い、相手方が通信を取るのを待つ。

出たのは美しい女性だった。

「面倒な事になりました。出来ればお力をお借りしたく…」

『やはり、そうなりましたか。まぁ、想定の範囲内です』

目に優しい全身蒼い色のこの女性は、イミーナをその透き通る目で見据える。

『…良いでしょう。彼女の為です。力を貸しましょう』

「ありがとうございます。”蒼玉そうぎょく”様」
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