一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第三章 勇者

第十一話 小屋

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ラルフたちはブレイドとアルルに先導してもらい、ひたすら山を登っていた。

その内、体力の限界が近づいてきたラルフは息切れを起こしながらペースダウンする。

「ハァ、ハァ…本当に…こんな山奥に、ハァ…住んでるのかよ…」

「あぁ、そうだ」

「ラルフさん。もう少しだから頑張って」

見るからに体力が無さそうなアルルより先にヘタばっている事を鑑みれば、自分は歳なのかもしれないと落ち込んだりもする。

「なんじゃラルフ。貧弱じゃノぅ。こノ程度ノ傾斜でヘタばるとは、ガッカリじゃな」

「っるさいなぁ…不死身(仮)の分際で偉そうな…その体じゃなけりゃ…ハァ、お前だってとっくに無様を晒しているところだぜ…」

と、そこに後ろから押し上げるような、ラルフの背中に添える手を感じる。

「おっ!”ウィー”、手伝ってくれんのか?」

「ウィー!」

小ゴブリン。愛称「ウィー」。
鳴き声がそう聞こえるからと、安直なネーミングを披露したミーシャのアイデアだった。

ウィーはゴブリンたちから蔑まれている可愛そうな小ゴブリンだ。他のゴブリンたちはウィーの頑張りを無下にして、自分達の主義主張だけを振りかざし、除け者にしている。

彼はゴブリン族の中でも体が小さく、身体能力も低い。

その為、下位の存在に定められているので、主張が通った試しが一度たりともない。しかし、どれだけ蔑まれても、バカにされても仲間の事を思って動けるおとこだ。

ラルフたちは知らないが、ウィーは助けてもらった恩義を感じ、少しでも役に立ちたいと同行した。同胞は今余裕がなく、感謝したいがその暇が無いのだろうと感じて、自分が率先して奉仕を申し出たのだった。

自然と共に生きて、山や森で生活しているので、ウィーは疲れない移動方法を知っていた。その為、ラルフにも気が使えるほど余裕がある。

「見てラルフ!あれがそうじゃない?」

ミーシャはラルフの隣で声を上げる。
見ると木々が開けた空間を見つける。
ただ、下から覗いているので曖昧な感じだが、木々の間から手作りの柵がチラホラ見える。

「やっとか!」

そこからは皆ペースアップして一気に登る。
柵を乗り越えた所で一息つく。

「ハァ…こんなとこに良く住めるなぁ…」

ラルフが整地された小屋周りで、腰が抜けたように座り込む。ミーシャも隣に立ち「お疲れ様」と労う。

ただ、ベルフィアとウィーは入ってこない。
柵の前でじっと立ち尽くしている。

「何やってんだよ二人とも…」

「ここは魔族に類する者たちを拒絶する、ある種の結界を張っているんだ」

「へー」と生返事が出る。
つまり、ベルフィアもウィーも魔族とされ、結界内に入れないようだ。

「ありゃ?ミーシャは?」

「そうね。私も魔族なんだけど…」

アルルはミーシャに近寄り、まじまじと見る。
ミーシャは不思議そうな顔でその行動を見ていたがクンクン匂いを嗅いできた時、途端に嫌そうに顔を真っ赤にして拒絶した。

「!?やめて!嗅がないで!!」

最近、水浴びもろくにできてなかったので汚れを落とせていない。「臭ったら嫌だ」という乙女心だ。それを見たラルフがアルルとミーシャの間に入る。

「?何?」

突然、遮ったことにびっくりして目を丸くする。

「ラ…ラルフ?」

危なかった。ミーシャは魔王。
その力は魔力云々の話どころではない。
はたくだけでもアルルが死ぬかもしれない。

「い…いや…ミーシャが恥ずかしがっているし…」

頬を掻いて誤魔化す。

「ふーん…」

ニヤニヤしながらミーシャとラルフを交互に見る。
ベルフィアは当然の事と腕を組んで頷く。
ミーシャは壁となったラルフの背中にときめく。

「すいません。こいつが迷惑を…」

アルルの無礼に謝るブレイド。

「確かに魔族に違いないわ。それも飛びっきり高位の魔族…なんで人と行動を共にしてるの?」

「説明したいが、まずはベルフィアたちを中に入れたい。結界を一時的に解いてくれないか?」

アルルはチラリとベルフィアを見る。
そして視線を戻すと、

「それは無理。正確にはあなたたちの素性を知らなきゃ開けない」

二人でここで安全に暮らせたのは、警戒あってこそならば、この警戒も納得のものだ。

「すまーんベルフィアー。すぐには入れないから、ウィーとそこで待っていてくれー」

「な…なんでわらわがこんなところで…」

すぐに入れると思っていたベルフィアはラルフの言葉に文句で返す。

「ウィーは弱いから守ってあげてね」

「はっ!お任せください!」

だが、ミーシャの命令は即答で了承する。
ミーシャとラルフ、ラルフとベルフィアは仲間やチーム、恋仲関係にも見えなくないが、ミーシャとベルフィアの関係性が上司と部下だ。

その温度差に不審を抱かずにはいられない。

「…どんなチームだ?」

ブレイドは困惑しながらも小屋の中に招き入れた。

中に入ると二脚の椅子と机。客用なのかもう二脚椅子が壁際に重ねて置いてある。傍に厨房があり、食器棚兼、調理道具入れがある。左側に視線を移すと、特に敷居もなく、寝具が置かれている。箪笥が二つ置いてあって、多分ブレイドとアルル、それぞれ専用の箪笥だろう。

ここで長年、二人で暮らしてきましたと言いたげな生活感溢れる小屋だ。外にはこことは別に小屋がもう一軒近くに建ててある。きっと倉庫だろう。

壁際の椅子を持ち出して机に並べると、着席を促された。拒否することも無いので言われたまま座る。

アルルも流れるままに座って、ブレイドが飲み水をコップに注ぎ、手際よく出していく。慣れた手つきだ。きっと普段から家事全般をブレイドがこなしているのだろう。

「本題の前に一つ聞かせてくれ、君たちは夫婦か若しくは、きょうだいとかか?」

アルルは水をすすりながら、とろんとした垂れ目でラルフを見据えつつ言い放つ。

「前者」

なんとも若い夫婦だ。なるほど、こんな僻地に結界をはって夫婦水入らずで暮らしているわけだ。

「んなわけないだろ…まだそんな歳じゃないしな。俺たちは訳あって隠れて生活しているんだ」

その訳を聞きたいところだが、ラルフには既に見当がついていた。

「なるほど…。悪い悪い。じゃあ、本題に移るか」
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