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第三章 勇者
第十三話 暗雲
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今、ザガリガはゴブリンの中で一番危険だと言えるだろう。
それというのも、ゴブリンの丘を制圧され、あまつさえ男手を皆殺しにされたのだ。
宮殿にやって来たのは女ばかり。
兵士にするより子袋として使う以外に方法がない。
そして、何より厄介なのはゴブリンの丘だけで製作されていたゴブリン印の剣。あれが失われたのはもっとも痛い。
ゴブリンの収入源を奪った罪は計り知れない。
ザガリガはここに来て、自分の命を気にし始める。
門を潜る前から気づくべき事だが、一人だけでは誰も自分を守るものがいない。キングの機嫌だけを優先しラルフたちをそっくり帰してしまったのは間違いだった。
全てはあのヒューマン達が悪い。
それは確かだが、送ってくれたのなら最後まで面倒を見てくれるのもまた当然なのでは?と思い始めた。
自分には何一つとして落ち度はない、その筈だが、キングにそれを証明する術など無い。ラルフらがいればどうにかなったのでは?考えれば考えるほど心拍数が上がる。
(ソウダ、オレニ、オチドハ、ナイ!)
全部ヒューマンのせいだ。
延いてはラルフやブレイドたちにも非がある。
自分を置いて逃げたのだ。
女どもは価値がある。まだ若い連中だ。
子を成せるその能力と、男たちを魅了できる。
キングとて女子供は将来を考えれば殺さない。
ならば監督官の自分はどうか?今のままでは殺される。今月の剣すら持ち帰れなかった自分には最低限の成果すらない。誰が襲ったのかおおよその種族しか分からない。こうなれば、キングの目を誤魔化す手段は一つ。
襲ってきた対象を今すぐ叩くことだ。
そして幸いなことに、辻褄を会わせなければならないという必要がない。
つまるところ同じヒューマンであるラルフ、またはブレイドに擦り付けてしまえばいいのだ。
自分は有用だということをキングに知らしめれば、叱責は大きいだろうが、殺されることなど無い。そして、さらに幸運なことに、ブレイドの拠点を知っている。兵を引き連れて攻めてしまえば、幾らか兵士に犠牲が出て、本当の敵なんて埋もれてしまう。
ブレイドには誤解があったことを知らせれば、なぁなぁにしてくれるだろう。その争いを止めたとなれば、昇格すら夢ではない。
王の間に向かっていく足取りが軽くなる。
既にザガリガの中ではブレイドに助けられた事などスッポリ抜け落ちている。
自分さえ助かるなら、それでいい。
自分は前の監督官より頭が良いのだ。
王の間に着き、大臣や王の前で、事細かに情報を伝える。今回の襲撃の全容、首謀者の存在。
そして、その居場所まで…
―――――――――――――――――――――――
ブレイドの小屋は何時にも増して客が多く、夕飯は豪華なものとなっていた。
ベルフィアとブレイドが狩りに出され、沢山の魔獣たちを狩ることに成功した。
「え?ま…まさか…これ豚じゃないか?」
「?そうだ。珍しいか?」
珍しいなんてもんじゃない。通常食えない食材だ。
魔牛と同じく滅多に獲れない魔獣で、王族や貴族に類する連中が大金を出して買い取るくらい立派な豚であり、人生で食えないかもとまで思った高級食材だ。
「生きててよかった…」
「大袈裟だな…そんな上手いもんでも無いけど…」
ブレイドはこんな田舎に住みながら、高級食材を食べて、その価値を田舎者だからこそ知らない。だが、ラルフにとってはどうでも良かった。これは売り物だからとかいって食わせてもらえない方が致命的だし、なにより感動から言葉がでない。
「そんなに喜ぶんじゃっタら、獲ってきタかいがあルってもんじゃ。妾タちノ働きを称賛し、土下座して喜びを現せい!」
ベルフィアは魔豚の隣に立ち、張りのある肉をペチペチ叩きながらふんぞり返る。
「ははーっ!ベルフィア様ぁ!」
滑り込みながら目の前で土下座する。
それを端から見ていたブレイドは「なにやってんだか…」と困惑するが、良いチームだと苦笑する。
「アルルは中か?」
ブレイドは外に出てこないアルルの身を探す。
「ウィー!」
そこに、小屋から小さな影が飛び出す。
小ゴブリンのウィーが焦って庭に転がり出た。
「あっはは!待ってウィー!」
服を持って追いかけ回すアルル。
ウィーは下半身を隠す腰巻きだけをしているだけの裸同然の見た目である。せめて、上の服だけでもとアルルが着せようとしたのだ。
最初こそされるがままだったウィーも終わりなき着せ替えに嫌気がさし、逃げ出した。
「まだやってたのか?最初ので良いだろ?」
「だって楽しいんだもん!」
体の良い着せ替え人形である。
いつもはすぐ飽きたとかいって投げ出すくせに、遊びに関しては全力である。邪魔されないだけましだと調理に向かう。
「ほどほどにしとけよー。ウィーも嫌がってるからなぁ」
ウィーは逃げ出すまでは良かったが、身体能力は誰より下であるためすぐに捕まる。「わかってるー」とかいって嫌がるウィーを小脇に抱えて小屋に入っていく。どうしようもない事を悟ったウィーはぐったりしてアルルに連れていかれた。
「ラルフーなにしてんのー?」
ミーシャも小屋から顔を出す。
「見ろ!ミーシャ!!豚だ!今日は上手い飯が食えるぞぉ!!」
「おおっ!ベルフィア良くやった!!」
「はっ!ミーシャ様に喜んでいタだけて、こノ上ない幸せにございます!!」
ベルフィアは逆にミーシャに滑り込むように跪く。
「よーし!俺も今日は腕を振るってだな…!」
「ラルフは料理ができるのか?」
「そうよ。結構、美味しいんだから」
などといった感じで小屋はこの上ない賑わいとなった。
それというのも、ゴブリンの丘を制圧され、あまつさえ男手を皆殺しにされたのだ。
宮殿にやって来たのは女ばかり。
兵士にするより子袋として使う以外に方法がない。
そして、何より厄介なのはゴブリンの丘だけで製作されていたゴブリン印の剣。あれが失われたのはもっとも痛い。
ゴブリンの収入源を奪った罪は計り知れない。
ザガリガはここに来て、自分の命を気にし始める。
門を潜る前から気づくべき事だが、一人だけでは誰も自分を守るものがいない。キングの機嫌だけを優先しラルフたちをそっくり帰してしまったのは間違いだった。
全てはあのヒューマン達が悪い。
それは確かだが、送ってくれたのなら最後まで面倒を見てくれるのもまた当然なのでは?と思い始めた。
自分には何一つとして落ち度はない、その筈だが、キングにそれを証明する術など無い。ラルフらがいればどうにかなったのでは?考えれば考えるほど心拍数が上がる。
(ソウダ、オレニ、オチドハ、ナイ!)
全部ヒューマンのせいだ。
延いてはラルフやブレイドたちにも非がある。
自分を置いて逃げたのだ。
女どもは価値がある。まだ若い連中だ。
子を成せるその能力と、男たちを魅了できる。
キングとて女子供は将来を考えれば殺さない。
ならば監督官の自分はどうか?今のままでは殺される。今月の剣すら持ち帰れなかった自分には最低限の成果すらない。誰が襲ったのかおおよその種族しか分からない。こうなれば、キングの目を誤魔化す手段は一つ。
襲ってきた対象を今すぐ叩くことだ。
そして幸いなことに、辻褄を会わせなければならないという必要がない。
つまるところ同じヒューマンであるラルフ、またはブレイドに擦り付けてしまえばいいのだ。
自分は有用だということをキングに知らしめれば、叱責は大きいだろうが、殺されることなど無い。そして、さらに幸運なことに、ブレイドの拠点を知っている。兵を引き連れて攻めてしまえば、幾らか兵士に犠牲が出て、本当の敵なんて埋もれてしまう。
ブレイドには誤解があったことを知らせれば、なぁなぁにしてくれるだろう。その争いを止めたとなれば、昇格すら夢ではない。
王の間に向かっていく足取りが軽くなる。
既にザガリガの中ではブレイドに助けられた事などスッポリ抜け落ちている。
自分さえ助かるなら、それでいい。
自分は前の監督官より頭が良いのだ。
王の間に着き、大臣や王の前で、事細かに情報を伝える。今回の襲撃の全容、首謀者の存在。
そして、その居場所まで…
―――――――――――――――――――――――
ブレイドの小屋は何時にも増して客が多く、夕飯は豪華なものとなっていた。
ベルフィアとブレイドが狩りに出され、沢山の魔獣たちを狩ることに成功した。
「え?ま…まさか…これ豚じゃないか?」
「?そうだ。珍しいか?」
珍しいなんてもんじゃない。通常食えない食材だ。
魔牛と同じく滅多に獲れない魔獣で、王族や貴族に類する連中が大金を出して買い取るくらい立派な豚であり、人生で食えないかもとまで思った高級食材だ。
「生きててよかった…」
「大袈裟だな…そんな上手いもんでも無いけど…」
ブレイドはこんな田舎に住みながら、高級食材を食べて、その価値を田舎者だからこそ知らない。だが、ラルフにとってはどうでも良かった。これは売り物だからとかいって食わせてもらえない方が致命的だし、なにより感動から言葉がでない。
「そんなに喜ぶんじゃっタら、獲ってきタかいがあルってもんじゃ。妾タちノ働きを称賛し、土下座して喜びを現せい!」
ベルフィアは魔豚の隣に立ち、張りのある肉をペチペチ叩きながらふんぞり返る。
「ははーっ!ベルフィア様ぁ!」
滑り込みながら目の前で土下座する。
それを端から見ていたブレイドは「なにやってんだか…」と困惑するが、良いチームだと苦笑する。
「アルルは中か?」
ブレイドは外に出てこないアルルの身を探す。
「ウィー!」
そこに、小屋から小さな影が飛び出す。
小ゴブリンのウィーが焦って庭に転がり出た。
「あっはは!待ってウィー!」
服を持って追いかけ回すアルル。
ウィーは下半身を隠す腰巻きだけをしているだけの裸同然の見た目である。せめて、上の服だけでもとアルルが着せようとしたのだ。
最初こそされるがままだったウィーも終わりなき着せ替えに嫌気がさし、逃げ出した。
「まだやってたのか?最初ので良いだろ?」
「だって楽しいんだもん!」
体の良い着せ替え人形である。
いつもはすぐ飽きたとかいって投げ出すくせに、遊びに関しては全力である。邪魔されないだけましだと調理に向かう。
「ほどほどにしとけよー。ウィーも嫌がってるからなぁ」
ウィーは逃げ出すまでは良かったが、身体能力は誰より下であるためすぐに捕まる。「わかってるー」とかいって嫌がるウィーを小脇に抱えて小屋に入っていく。どうしようもない事を悟ったウィーはぐったりしてアルルに連れていかれた。
「ラルフーなにしてんのー?」
ミーシャも小屋から顔を出す。
「見ろ!ミーシャ!!豚だ!今日は上手い飯が食えるぞぉ!!」
「おおっ!ベルフィア良くやった!!」
「はっ!ミーシャ様に喜んでいタだけて、こノ上ない幸せにございます!!」
ベルフィアは逆にミーシャに滑り込むように跪く。
「よーし!俺も今日は腕を振るってだな…!」
「ラルフは料理ができるのか?」
「そうよ。結構、美味しいんだから」
などといった感じで小屋はこの上ない賑わいとなった。
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