一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第三章 勇者

第二十五話 刺客

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森をしばらく進み、正午を回ろうかというところでウィーの足が止まった。

ラルフは三歩歩いてウィーを引きずったところでそれに気づいた。「ん?」と思って足を止める。これにはウィーも迷惑そうな顔だ。

「へへ、悪い悪い。どうした?」

笑って誤魔化す。

「なんで止まるの?早くいきましょう」

ミーシャのその言葉にチームの皆、足を止める。
と、ウィーは空を見上げて上に指をさす。

ラルフが逆らわずに見上げると、空に一瞬、影が差した。その影が何なのかを知ると唖然とした。ウィーとラルフ以外の皆も空を見上げる。

「あー…あれはもしやドラゴンじゃねぇか?」

ブレイドが反論する。

「この辺にドラゴンはいません。いるとしたらヒラルドニューマウントの古竜くらいなもので、ここまで飛んできた前例はありません」

「じゃああれは?」

アルルが質問を返す。ブレイドは頭を振る。

「奴じゃない。もう飛べない程、痛めつけた。回復したにしては早すぎる…」

ミーシャは唯一この中で彼の竜を間近で見ているし、さらに叩きのめした。自分も無傷とはいかなかったが、彼の竜の傷は自分でも殺してやった方が良かったと思える程だった。

その言葉にポカンとするブレイド。
さも当然のように言うが勝てるはずがないのだ。

「流石はミーシャ様。しかし、そうなルと…?」

ベルフィアは首を捻る。あの竜は渡り鳥の様に自分の巣から飛び立ち、唐突にこの辺に住もうとしているのだろうか?上空の遥か彼方で、旋回を繰り返している。

「と、とにかく。俺らとは関係ないです。とっとと行きましょう…」

ブレイドは見つかっても厄介だからと急かす。

「いや待て」

ラルフは手を出して制する。
ウィーと手をつないでいた右手に振動が来る。
同時にウィーが握っていた手にしがみついた。
怯えている。それを察したラルフがある一つの結論にたどり着く。

「もう俺たちを見つけている…。というより狙いは俺たちのようだぜ…」

ラルフ以外もウィーを確認し確信する。

「馬鹿な。何故、わらわ達を?」

「ドラゴンと面識があるのは私くらいだ。差し詰め、私を殺すべく送り込んだ刺客だろう」

ミーシャの髪が風もないのにふわりと浮き始める。魔力を全身に行き渡らせているのか、その雰囲気は見る間に戦闘の空気に代わる。そこでラルフは考える。

(本当にそうだろうか?)

彼の竜がミーシャにやられて復讐を願ったなら何故今更なのか?自分を倒すほどの存在に対し、自分以下の力しかない竜を復讐に当てるか?ミーシャが疲弊していた直後、一週間以内ならこの竜が、彼の竜の差し向けた刺客で通るが、かなり時間が経過した今となってはまるで辻褄が合わない。

(いや、竜が今になって、ようやく連絡手段を身に着けたのであればその限りじゃないか…)

「ふんっ!ふざけた奴だ。屈服したと思わせてきっちり復讐をしようなどと…仕置きが必要か?」

ミーシャがコキリと手の骨を鳴らす。

「待ってくださいミーシャさん。奴は木が邪魔で今ここらに降りる事は出来ません。無駄な戦闘は避けて、先を急ぎましょう」

ブレイドはドラゴンとの戦いに消極的だ。
それもそのはず、自然界で頂点に位置する最強の生物であり、倒すのは困難である。硬い鱗に、肉体能力が非常に高く、魔力量も多い。飛行が出来て、魔力消費なしで火を吐いたり、雷を出したりできる。
何と言っても体がでかい。ちょっと動くだけでも一溜りもないのが現状だ。

廃坑までゆっくりじっくり、隠れていけば接敵する事はないと思われるので、逃げ切れるだろう。

「何?消滅させれば隠れる必要はないわよ?」

「消滅って…」

ドラゴンを前にここまで啖呵を切れるのはその実力を知らない愚か者か、みなごろしくらいだろう。

「ミーシャ様。地図にヨればこノ先に広場があります。そこでとっちめては?」

地図を広げ、ベルフィアが提案する。
それを覗き込んだミーシャがどこにいるかを確認しそこから指で広場までの距離をなぞる。

「うむ。わざわざ空中戦をしてやることはない。ここに行こう。なぁに時間はかからん」

「えー…ドラゴンなんて放っとこうぜ…どうせ牽制しかしてこないって…」

ラルフは面倒臭いと肩を落とす。

「ウィー!!」

ウィーが慌ててラルフの手を引っ張る。
突然の行動に動揺し、何だとウィーを見ると泣きそうな顔で空を見ている。

「あっ!攻撃しようとしている!!」

アルルもその光景に気付く。
太陽に隠れて広範囲攻撃を仕掛けようと、口にエネルギーをためている。眩しくて見えにくいがわずかに光が収束する様が見える。

「みんな私の傍に来て!」

アルルはいつもの緩い顔立ちを一転キリッと変え、魔槍アスロンを片手に魔力を展開する。

「我が名はアルル…大魔導士アスロンの名を借りて四大精霊の加護を戴き、顕現せしは、大空への拒絶我が魔力を使い、この声に答えよ…」

詠唱。
人類が四大精霊と共に生み出した、魔族に対抗する大いなる世界との繋がり。同じ魔力量を使用したなら、詠唱を施した魔法の方が遥かに強い。

「いでよ!”円盾ラウンドシールド”」

その魔力はドーム状に薄い皮膜を張り、仲間たちを包み込んだ。その輝きは淡い水色という頼りない色合いだったが、見た目以上に絶大な魔法だ。

それが分かったのはドラゴンが光の柱を生み出した正にその時だ。周りが火の海になる中、魔法に包まれたラルフたちは全くの無傷だった。

ドラゴンの広範囲攻撃は木々を焼き、地面を焼き、辺り一面を灰に変えた。ドラゴンが降り立つのに充分なスペースを確保し、その巨体は優雅に地上に舞い降りた。

「おいおい…常識のないドラゴンだな…」

ラルフはその横暴さを見て吐き気を催す。自然をパフォーマンスの為に焼き、それをさも当然の様に享受する。強ければ何をしても良いのかという苛立ちを覚えた。

「何を言っとル?強いとは何をしても許されル事。強さとはそれだけで正義と言う事じゃ。…ともあれこれはわらわも死んでしまうかもしれんが…」

アルルが展開したシールド内にいたからこそダメージを負わなかったが、万が一外にいたら消滅の危機だったに違いない。

ドラゴンバスターやドラゴンスレイヤーの称号を欲しがる戦士や武道家がいるが、それはこの力を知っての事か、はたまた知ってるからこそ倒すという伝説的な行いに夢を膨らませているのか。どっちでもいいが無謀な夢だと断じられる。

黒い鱗を全身に纏い、猛禽類の様な後趾うしろあしゆびは鋭い爪を備え、盛り上がった筋肉は力強さを感じさせる。真っ直ぐ伸びた角と歪曲した角が左右シンメトリーに付き、目が赤く、光が反射していなくても煌々と燃えるように光る。

先細りした鼻先は口を開ければ牙がビッシリと生え犬歯にあたる部分が長く、口を閉じても牙が覗く。尾の先に針のように尖った骨が突き出て、武器として使えそうだ。

手と翼を混同した黒い翼は広げれば、頭から尻尾を含めた全長より長く、風を取り込み、滞空を長く維持できる事から、本来、山脈や鉱山に住み、滑空を主とする翼竜であると考えられる。

山脈なら大分遠くだが、この先にある。もしかして、そこからやって来た可能性があるのではないか?

「こんなところに、わざわざやってくるなんて…相当恨まれてますね…」

ブレイドも同じところに行き着いた。
ミーシャが古代竜エンシェントドラゴンをボコボコにしたことがここに波及している。ボコられた当人が飛んでこないところから、本当に飛べないくらいダメージを負っていると考えるのが妥当である。

「お前たちでは相手にならん。私が片付けよう」

ブレイドはガンブレイドを引き抜いた。
例えミーシャに恨みがあり、ミーシャにしか興味がなかったとして彼女は味方だ。チームメンバーである以上、戦わないわけにはいかない。

「いや、そういうわけにはいきませんよ。俺たちもできる範囲でカバーします」

その目に強固な意思を感じたミーシャは、ふんっと鼻を鳴らし、前方を見据える。

「よし、じゃ戦闘はミーシャが遊撃でベルフィアがタンク、ブレイドが遠距離でアルルが支援な。俺は今回役に立たないから下がる。回復剤はあるから、怪我したら来てくれ」

ラルフはそれだけを伝えるとさっと後方へウィーを連れて下がっていく。ブレイドとアルル、ベルフィアもその潔さに呆れる。ミーシャは気にしていない。どころか、これで心置きなく戦えるといった感じで、拳と掌をぶつける。パンッと小気味良い音が鳴ったところでニヤリと笑った。

「存分にやり合おう。どちらかが死ぬまで…ね」
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