一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第四章 崩壊

第六話 炭鉱の住人

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「…やっぱりそうだ、ブレイブ!ははっ久しぶりだな!!」

そこに立っていた痩せっぽっちの小男は嬉しそうにブレイドに近寄ってきた。自分の父親の名前を連呼されて困惑からきょとんとしていたブレイドの肩を両手で挟み込んで存在を確かめるようにポンポン叩いている。

「あぁーブレイブだ!間違いない!いつ振りだ?外は何年経った?ははっ!」

ブレイドたちの後方で虫がガサガサ言っている中、何ともない感じでただただ喜びに浸っている。

「何じゃ?こやつは誰じゃ?」

ベルフィアは呆れ顔でアルルとブレイドを交互に見る。アルルもブレイドも知らない顔にどう応えればいいか分からなかった。

「待ってくれ。俺はブレイブじゃない」

とりあえず否定から入る事にした。

「あぁ?いやいやブレイブだろ?自慢じゃないが俺ぁ顔を覚えるのが得意なんだ」

「ブレイブは俺の親父だ。もう一度言う、俺はブレイブじゃない」

それを聞いて一瞬目を丸くして止まるが、すぐに満面の笑顔になり、頭から足先まで見て、また顔を見る。

「本当か!あっはぁ~…ブレイブの息子か!よく似てるなぁ…」

「おい。お前は誰じゃ?名を名乗れ」

ベルフィアはしびれを切らして横から口を出す。

「申し遅れた。俺ぁ藤堂 源之助|(とうどう げんのすけ)…あ!えっと、この国じゃ性と名が逆だったか?とすると、げんのすけ とうどう だ。まぁ好きなように呼んでくれ」

藤堂は一歩後ろに下がるとお辞儀をする。

「トウドウさんか、俺はブレイド。こっちがアルル。こいつがウィーでこちらが…」

「ベルフィアじゃ」

自己紹介を済ませるとその瞬間に虫のガサガサ音がすっと消える。アルルが後ろを振り向くとそこには虫がいた形跡もベルフィアが踏み荒らした跡も何もなくなっていた。また転移が始まったらしい。四人が別れなかったのは幸運だったがもし分かれていたらとゾッとする。

「はははっ安心しろアルルさん。ここは俺の庭だ。誰も別れさせないぞ!」

それを聞いて安心すると共にベルフィアは身を乗り出して藤堂に詰め寄る。

「それは本当か?実は仲間とはぐれタんじゃ。何とか探せんかノぅ」

「ほぉ、まだ何人か入ってきているのか?よし!一緒に探そう」

藤堂は言うが早いか、すすっと動き出す。

「話が早くて助かル」

四人は藤堂の後ろをはぐれない様についていく。

「そういえばブレイブは息災か?あ、はぐれたのって、もしやブレイブか?」

藤堂は先程からブレイブブレイブとしつこいくらいだ。さっきの言動から察するに長い間閉じ込められていたのかもしれない。

「あの…大変申し訳ないんだけど、親父は俺が幼い頃に亡くなっていて、もう…この世には…」

その言葉は藤堂にとって衝撃の一言だった。さっきまでの満面の笑顔が徐々に張り付いた笑顔になり、口角が下がるとがっくりとうなだれた。

「そうかそうか…そいつは残念だ。すまなかったな何度も…」

声にも覇気がなくなり、とぼとぼと歩き始めた。

「おい、落ち込むノは構ワんがちゃんと探してくれヨ?はヨうせんと取り返しノつかんことになル」

「…慌てることは無いだろう?この洞窟にいるのは虫ばかり。たまに魔獣が入ってきても大抵は食料がなくて死ぬ。まさか虫にやられる程度の奴なのか?」

「一人はな。二人居って両方とも別々にはぐれタから探すノはしんどいと思うぞ?」

楽観視している藤堂にベルフィアは淡々と現状についてを語る。

「なるほど、その一人が心配なわけだ。生きているといいが…」

ベルフィアが腕を組む。

「勘違いすルな。別に奴が死ノうがどうと言うことはない。問題はもう一人ノ方じゃ。万が一にも癇癪を起こせば我らも無事に済まん」

「…叱責って事かい?つまり上司だと?」

「それ以上じゃ」

いまいちピンとこない藤堂だったが、ふんふん頷いて先を急ぐ。

「それにしても不思議な所よね。トウドウさんはこの炭鉱で働いているの?」

アルルは会話が終わった頃を見越して質問を投げかける。

「いんや、働いてないよ。ここは俺のみそぎの場だからね。俺ぁここを無間地獄むけんじごくって考えている」

「? 無間地獄?」

聞きなれない言葉に一同首をかしげる。その空気を肌で感じ取った藤堂は振り向くことなく答える。

「俺の国には仏教って教えがある。仏に教えると書くんだが…まぁそれはいいか。この教えでは罪を犯し死んだ者は、その罪の重さに合わせて堕とされる地獄があるんだ。最も重い大罪を犯した者が堕ちるのが無間地獄。絶え間ない苦しみを永遠の様に味わう最悪の場所だ」

「どノ国でも死後ノ世界を考えルノは一緒というワけじゃな。わらわにはヨく分からんが、死後ノ世界くらい救いを求めルもノではないノか?」

ベルフィアをチラリと見て視線を戻す。「そうだな…」と頭を掻いて説明を考え、ふと閃いたことを口に出す。

「死んだ後の世界に思いを馳せるようなことがあってはいけないんだ。死後、すべてが極楽で死んだら楽になれるなんぞ生への冒涜だ。そんな教えがはびこったらみんな自害しちまう。だから昔の人は極楽と地獄で死後の世界を分けたのさ」

「極楽と地獄か…そノ理由は?」

「生きてるうちに善行を積めば死んだ後は極楽だ。悪いことすりゃ地獄。大半の人間は極楽に行きてぇから少しでも良い事しようって寸法だ」

「…なルほどノぅ…」

当然ともとれる死生観だが、山で人里離れて住んでいたブレイドとアルルは感心し、化け物のベルフィアには納得の一言だった。ウィーにはさっぱり分からなかったから大人しくしている。

「え?でもトウドウさんはここをその地獄だって…」

「…俺ぁ悪者だからなぁ。永遠の苦しみを科されちまったのさ…」

寂しそうにつぶやいて奥へ奥へと歩く。少しの間、静寂が流れる。肩を落とし、とぼとぼ歩く藤堂にアルルは言い知れぬ不安を抱いた。

「あの…トウドウさん…私たちはここから出られるんでしょうか?」

恐る恐るといった感じの声に藤堂はハッとして振り返る。

「はははっ悪い悪い!しみったれた空気のせいで不安にさせちまったな!安心しろ!俺もここは長い!出入り口なら知っているから、とっとと仲間見つけてお日様を浴びような!」

安心させようとしたカラ元気だったが、笑い飛ばせば先程までの寂しい空気はコロッと明るくなる。

「しかし生きとルうちに地獄を味わうなんぞ…何をしタらそうなルんじゃ?」

「ちょ…ベルフィアさん。失礼ですよ」

あまりにずけずけ質問するベルフィアを流石に野放しにできず、ブレイドも口をはさむ。

「…いや、気になるのも当然だ。気を遣わせたなブレイドさん…どういったらいいか…まぁ、簡単に言えば世界を壊したんだよ」

あまりに簡単に言ったがそのセリフは聞き捨てならないものだった。

「世界を…壊す?」

「…何ですかそれ?」

どういった意味なのか疑問に思うと、ウィーが騒ぎ出した。

「ウィー!!」

ブレイドの腕の中でじたばた暴れ出す。また虫の足音が正面から聴こえだしたからだ。

「また?仕方ないな…」

アルルはシールドを張る準備をする。

「トウドウさんこっちに来てください。アルルがシールドを…トウドウさん?」

藤堂はブレイドの言葉を無視して座り込む。

「何をしとルんじゃトウドウ?」

「ああ、俺の事はほっといてくれ。こいつらの飯がまだだったから腹を空かせているんだ。餌をやれば大丈夫だから…」

何か持っているのか餌をやれば治まると藤堂は動こうとしない。アルルはシールドを下半身を覆う程度に張る。万が一、藤堂が逃げてきても飛び越して隠れられるようにだ。虫が大量に通路を塞ぐ形でわんさとやって来た。

簡易的なシールドをも破るすべのない虫たちにアルル達への強襲は不可能だが、何の壁もない藤堂はそのまま食べられるしかない。

「何か策があるのか?」

この炭鉱に身を置き、虫たちを静める方法を知っている藤堂。その方法を固唾を飲んで見守るブレイド。しかし、期待とは裏腹に虫の大群に飲まれ、すっぽりと体を覆われてしまった。

「!? トウドウさん!!」

驚きからシールドを飛び越えそうになるが、虫のガサガサ音の中からハッキリと声が聞こえた。

「慌てんな慌てんな。俺ぁ逃げも隠れもしねぇよ。たんと喰いな」

意識がはっきりしている。虫たちにたかられて体中を齧られているように見えるが、違うのだろうか?それなりに時間が経つと、虫たちはようやく藤堂から離れて行った。

「あ…あの…トウドウさん?」

「おー、すまねぇ。時間かかっちまったな」

「虫たちに何をあげてたんですか?」

藤堂はすくっと立ち上がって膝に就いた砂を払い落とす。

「俺自身さ」

それを聞いて驚きのあまり固まる。何を言っているか分からなかったからだ。ようやく頭に浸透した時は無意識に藤堂の体を頭から足先まで穴が開くほど見ていた。

「え?で…でも、特に傷なんかは…」

「再生能力かい?わらわも同じ体質じゃが…しかし、見タ所タだノ小柄なヒューマンにしか見えぬな…」

吸血鬼はこんなみすぼらしい姿をしていないとベルフィアは内心見下している。

「あんたは魔族だろ?なんかこう、異彩を放ってるって言うか…やっぱ外見がなぁ…」

そのセリフに少しカチンとくる。

「…文句でもあルノか?」

「いやいや、この国は美しい女子おなごばかりだが、あんたは…そう、妖艶で危険なほどに美しい。その顔で一体何人の男が犠牲になったのかと気になってなぁ…」

それを聞いた途端、一瞬表情は和らぐが、すぐにキッと吊り上がった眉に戻る。

「ふん、下手なおべっかは好かん。それヨりそちノ再生能力についてじゃが…」

藤堂はベルフィアのコロコロ変わる表情と感情に振り回されタジタジになり、困りながら頬を掻く。一拍を置いて自分に巻き付いた鎖を手に取るとジャラジャラとアピールする。

「こいつが俺の体の再生をしているんだ。何でも呪物だそうで、永遠に死ねない体になっちまったのさ」

「再生させる鎖?聞いたことないですね」

アルルは不思議そうにそれを見ている。

「ならわらわノ攻撃を受けても死なんノか?」

ギュッと拳を固めてうずうずしている。

「やめてくださいベルフィアさん。正気ですか?」

ブレイドはジト目でベルフィアを非難する。

「なんじゃそノ目は?わらわをそんな目で見ルな。けしからん、ラルフに毒されおって…」

「トウドウさんはそんなことをして痛くはないんですか?」

ベルフィアとのやり取りを無視してブレイドは藤堂に質問する。ほっとかれたベルフィアは腕を組んでプイッといじけたように顔を逸らした。

「痛いなぁ…でもこれは仕方がないからな…」

「…”禊”ですか?」

藤堂は頷く。何があったのかまでは聞きはしない。ブレイドは炭鉱の奥を見る。

「…先に進みますか?」

「あぁ、その必要はない。ここで待とう。もうすぐだから」

何がすぐなのかハッキリと言わないが、ここで始まる事は何度も経験している。

「転移?」

アルルの口からその言葉が出た時、景色が変わった。
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