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第四章 崩壊
第七話 一方そのころ…西の大陸で 前
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”白の騎士団”。
人類の要、救世の御旗、究極の武器。
魔族に反旗を翻した人類の中心種族の中から最強を選抜し、世に名を轟かせた切り札。
中でも最強と噂される魔断のゼアルは、現在自国であるイルレアン国を離れ、西の大陸に足を運んでいた。
人類の居住区域”ジュード”。海と山に面したこの国は、景観が美しく、芸術家がこの港町に多い事から美の国と呼ばれている。
景観こそ美しいが、居住区域の外、つまり結界の外にはオークの国があり、危険の多い場所でもある。その為、陸路での移動は現在不可能とされ、ゼアルすら船での移動を余儀なくされた。
ここに呼ばれたのは第八魔王”群青”が協議を申し出たためだ。
魔族といがみ合っている人類的には突っぱねたい所だが、協議の内容次第では居住区域の拡大も考えられるし、万が一戦争となれば居住民の避難を考えねばならない。正直、オークと戦争するなら地の利と綿密な戦略がなければ勝つことは不可能。結界を張ってはいるものの、破壊されれば成す術はない。蹂躙されるのみだ。
だからこそ、この協議は気味が悪かった。絶対的に弱い人類と何を協議するのか?
オークは大昔、獣同様、人類も食料として狩っていた。最近では結界の外に陸路で出る事はなくなったので、食われる被害こそ無いが、そういう脅威があった事実が消えるわけではない。
今回、白の騎士団が駆り出される事になったのは協議の内容次第では殿を務める事も考えられるからだ。あくまで町民が逃げるための時間稼ぎであり、決して勝利を目指しての行為ではない。
港に着いたゼアルは部下を連れて活気ある商店街を横切った。商店街の人々は珍しいものを見たと足を止め、端に避ける。今回の件は民衆には伝えていない。パニックを避けるという名目であえて口外していないのだが、ここまで堂々と騎士が列をなして歩いている様は近く戦争がある事を連想させる。
無人の野を行く黒曜騎士団。商店街の出入り口に差し掛かった頃、大柄な男が進行方向を遮るように仁王立ちで前に出た。
2mはある身長に背丈ほどありそうな大剣を背負う。その大剣は剣の幅が異様に広い片刃の剣で、柄が何故か二つあり、みね側が長く刃の方が短く、持ちやすいようにそれぞれ布で覆われている。筋骨隆々の男は伸ばし放題のザンバラな銀髪に切れ長の三白眼、細面で鼻が高いヒューマンだ。防御力の低い皮の軽装鎧を着こんではいるが、体躯といい武器といい、重戦士であることは明白。武器の類は大剣以外見当たらず、その剛腕と大剣で戦うのだろう。傭兵という言葉がしっくりくる。
部下が前に出てゼアルの壁になろうとするが、ゼアルはそれを手で制して、大柄な男に近付く。大男の5m以内に踏み込んだ時、大男が先に口を開いた。
「久しぶりだなゼアル……待ってたぜ」
ニコリとも笑わないブスッとした顔で吐き捨てるように声を出す。口から覗いた歯はヒューマンとは思えないギザギザの歯で鮫のようだ。
「元気そうだなガノン。貴様も呼ばれていたか」
ゼアルはスッと握手を求める。ガノンはその手を見て「チッ」と舌打ちした後、バチッと手を弾いた。その行動に部下たちがいきり立つ。剣を抜きそうな程の殺気。団長ゼアルは控える部下たちを一瞥し、腕を真横に出すと「……鎮まれ」と一言。部下たちはすぐさま気を静め、姿勢を正す。団長の慕われ具合と規律正しい騎士団の教育が目に見える。
「手前ぇ……魔王に負けたそうだな。俺に負ける前に土を付けるとはガッカリさせてくれる……」
腕を組んで見下す様にゼアルを睨みつける。身長差があるので彼の前では大抵見下ろす形になるが、その三白眼の瞳に侮蔑の念が込められている。
「……ガノン、ここではよせ。中央署で話をしよう」
召集場所の目的地、中央署。
この街には城の様なランドマークはない。大きな館を改造し、役場に変えた中央署が中心街に紛れ込むようにある。すぐ傍がオークの領地なので、目立つ建物を途轍もない労力をかけて作るのは人類側が優勢でもない限り無駄であると断じた為だ。
というのもオークが一匹結界に近付く事件があり、その力を目の当たりにしたこの街の領主がビビって逃げ出したのがきっかけである。大きな館は元々、領主の仮住まいだ。主人を失った館は寂れていく一方なので有効活用したのが現在の中央署に当たる。
情けない領主の代わりを務めたのは中央政府。みんなの期待を背負った立候補者たちが投票で選ばれ、議員として仕切る事になった。
多くの知恵者が肩を並べて話し合ってできる政治は民衆の為になる。実際ここで生まれた条例や法律が他の国でも取り入れられたりしているから、権力者たちはその功績と知恵者の引き抜きの為にこの儚い国と取引をしている。白の騎士団が動いたのも利権が関わっていたりするのだがそれは別の話。
「……それもそうだな……おい、アリーチェ!いつまで喰ってんだコラ!行くぞ!」
ガノンは道を遮る前にいた店に対し大声で名を叫ぶ。その店から顔をのぞかせたのは年若い女の子。
栗色のボーイッシュな髪に太めの眉毛、真ん丸な大きな目と赤茶けた瞳。ぽちゃっとした可愛らしいほっぺたはあどけない少女を思わせる。薄いベージュの襟付きのシャツに太ももまで届く濃い緑のカーディガンを羽織り、ホットパンツを履いた出で立ちだ。草臥れた革靴だけが異様に映った。右手には饅頭が握られ、左手に身長くらい長い杖を持っている。見た感じは魔法使いだ。
「まっふぇ!まふぁはへへるはら!!」
口いっぱいに頬張った饅頭のせいで何を言っているかいまいちわからないが、状況と何となく「まだ食べている」という感じの声の出し方から、ほんのり伝わった。
ガノンはズンズン店に行くと大声で「袋に詰めろ!!」「勘定はいくらだ!!」と吠えている。先程まであった野獣の様に突然襲い掛かりそうな恐怖の対象は鳴りを潜め、コミカルな感じでわちゃわちゃしている。
「……行くぞ」
いつもキッとした表情のゼアルには珍しい呆れ顔でその様子を眺めていたが、待つ理由もないことを悟ると、そんなガノンを放置して黒曜騎士団は歩を進めた。
――――――――――――――――――――――――
「よくお越しいただきました。白の騎士団のお二方」
中央署で待っていたのはこの街の長達。数名の議員と議長、商人の長と警備隊の長、芸術家の代表など有力者たちが頭を下げてゼアルとガノンを迎え入れる。
「彼らがあの……」「見るからにというか、オーラというか……」「流石は人類の希望……」などコソコソと小声で話し合っている。
「お待たせした。私が黒曜騎士団団長ゼアルだ」
ゼアルは他の面々に分かりやすいように自己紹介をかかさない。「ほぉーっ」と関心の声がそこらかしこかに聞こえる。長達の目はそのままガノンの方に向けられるが、ガノンは腕を組んで不機嫌そうに口を開く。
「おい……何で俺たちだけなんだ?他には呼んでいないのか?」
ギザギザの歯を剥き出しにして吐き捨てるように話す。
「……こいつはガノンという」
ゼアルは周りの人に分かりやすいように名前を出す。議長が皆を代表して返答する。
「失礼しますガノン様。他の方々にもお願いはしていて、一応翼人族の国から良い返事をいただいたのですが……未だ到着はなく……」
「翼人族だと?どいつだ?」
ガノンは見た目の粗暴さ、そのままのイメージで不躾に尋ね続ける。
「いや……そこまでは……どなたが来られるかまではちょっと……」
議長も助力を要請しただけで今回来た二人に関しても、自己紹介されるまで本当に白の騎士団の一員かどうか分からないくらいだった。どう質問に答えるか困っている議長を助ける様に、小太りだが小綺麗な商人の長が一歩前に出て、二人に対して質問する。
「そういえば白の騎士団にはそれぞれ二つ名をお持ちだとお聞きしておりますが、ゼアル様とガノン様はどんな二つ名をお持ち何ですか?」
好奇心旺盛な商人の長は目を輝かせている。その質問は他の長達も便乗したいようで、少年の様に無邪気な目をしている。そんな感じで聞かれる事が多々ある二人は「またか」と言う顔で嫌そうにしている。有名人の辛い所である。
「……私は”魔断”と呼ばれている」
ゼアルは素直に応える。聞いた事ある名前は「おぉ!」という感動の声を漏れさせる。となればガノンは一体どんな二つ名なのか?
「……んなのどうだっていいだろ?とっとと仕事の話をしろ……」
あえて空気を読まず、全てに逆らうガノン。「おぉ……」という寂しい声が響く。
「こいつは”狂戦士”だ。覚える事は無い。ガノンは二つ名を嫌っているからな」
ゼアルは淡々と話す。聞いたことがよく分からず「ん?」と疑問符を浮かべる長達。
「……おいコラ、なに余計な事言ってんだ。手前ぇぶっ飛ばすぞ……」
「貴様こそ仕事の邪魔をするな。ある程度話し合いが出来なければ信頼が出来ない。となれば必要な時に連携が取れない。今回請け負うのは殿であって、勝利をもぎ取る戦争ではない。私たちが信用に足らなければ背中を任せるのは不安というものだ。こういう話も重要であると理解しろ」
さらに感情もなく淡々と説明する。その心は「言われる前に理解しろ」と言う事だ。ガノンは強い事だけは確かだが、その強さ故、あまり人と関わったりしない。結果、壁を作り孤立するのがしょっちゅうだ。
「な、なるほど……不要な質問を失礼いたしました…それでは、もう一人来られると思いますので、待合室の方でしばらくお待ちください。一刻の後、例の話をいたします」
議長他、長達は恭しく礼をして、すぐ傍に控えていた使用人に目配せするとドアを開けて二人を待合室に案内する。二人が出て行って間もなく長達は議長の元に集まりコソコソ話始める。
「議長……ゼアル様は流石の気品といえますが、ガノン様は大丈夫なのでしょうか?」
「……我らの力になっていただけるのか不安です」
「信じるしかないとはいえあれでは……」
など、ゼアルがその場で指摘した通り、不安は拭えない。
「それでも信じるしかない。粗暴だが、実力は確かなのだろう……それに……」
議長はさらに声を落とし、「実力が低ければ死ぬだけだ……」と一言。聞かれたら背中に背負った大剣で真っ二つにされそうだからこそ声を落とすが、聞いた長達も周りを見渡すほど恐怖の一言だった。
「……ともあれ、あと一人。翼人族の騎士が来るまでは時間もある。今の内にできるだけ我々で話し合おう。悪いが休憩は無しだ」
人類の要、救世の御旗、究極の武器。
魔族に反旗を翻した人類の中心種族の中から最強を選抜し、世に名を轟かせた切り札。
中でも最強と噂される魔断のゼアルは、現在自国であるイルレアン国を離れ、西の大陸に足を運んでいた。
人類の居住区域”ジュード”。海と山に面したこの国は、景観が美しく、芸術家がこの港町に多い事から美の国と呼ばれている。
景観こそ美しいが、居住区域の外、つまり結界の外にはオークの国があり、危険の多い場所でもある。その為、陸路での移動は現在不可能とされ、ゼアルすら船での移動を余儀なくされた。
ここに呼ばれたのは第八魔王”群青”が協議を申し出たためだ。
魔族といがみ合っている人類的には突っぱねたい所だが、協議の内容次第では居住区域の拡大も考えられるし、万が一戦争となれば居住民の避難を考えねばならない。正直、オークと戦争するなら地の利と綿密な戦略がなければ勝つことは不可能。結界を張ってはいるものの、破壊されれば成す術はない。蹂躙されるのみだ。
だからこそ、この協議は気味が悪かった。絶対的に弱い人類と何を協議するのか?
オークは大昔、獣同様、人類も食料として狩っていた。最近では結界の外に陸路で出る事はなくなったので、食われる被害こそ無いが、そういう脅威があった事実が消えるわけではない。
今回、白の騎士団が駆り出される事になったのは協議の内容次第では殿を務める事も考えられるからだ。あくまで町民が逃げるための時間稼ぎであり、決して勝利を目指しての行為ではない。
港に着いたゼアルは部下を連れて活気ある商店街を横切った。商店街の人々は珍しいものを見たと足を止め、端に避ける。今回の件は民衆には伝えていない。パニックを避けるという名目であえて口外していないのだが、ここまで堂々と騎士が列をなして歩いている様は近く戦争がある事を連想させる。
無人の野を行く黒曜騎士団。商店街の出入り口に差し掛かった頃、大柄な男が進行方向を遮るように仁王立ちで前に出た。
2mはある身長に背丈ほどありそうな大剣を背負う。その大剣は剣の幅が異様に広い片刃の剣で、柄が何故か二つあり、みね側が長く刃の方が短く、持ちやすいようにそれぞれ布で覆われている。筋骨隆々の男は伸ばし放題のザンバラな銀髪に切れ長の三白眼、細面で鼻が高いヒューマンだ。防御力の低い皮の軽装鎧を着こんではいるが、体躯といい武器といい、重戦士であることは明白。武器の類は大剣以外見当たらず、その剛腕と大剣で戦うのだろう。傭兵という言葉がしっくりくる。
部下が前に出てゼアルの壁になろうとするが、ゼアルはそれを手で制して、大柄な男に近付く。大男の5m以内に踏み込んだ時、大男が先に口を開いた。
「久しぶりだなゼアル……待ってたぜ」
ニコリとも笑わないブスッとした顔で吐き捨てるように声を出す。口から覗いた歯はヒューマンとは思えないギザギザの歯で鮫のようだ。
「元気そうだなガノン。貴様も呼ばれていたか」
ゼアルはスッと握手を求める。ガノンはその手を見て「チッ」と舌打ちした後、バチッと手を弾いた。その行動に部下たちがいきり立つ。剣を抜きそうな程の殺気。団長ゼアルは控える部下たちを一瞥し、腕を真横に出すと「……鎮まれ」と一言。部下たちはすぐさま気を静め、姿勢を正す。団長の慕われ具合と規律正しい騎士団の教育が目に見える。
「手前ぇ……魔王に負けたそうだな。俺に負ける前に土を付けるとはガッカリさせてくれる……」
腕を組んで見下す様にゼアルを睨みつける。身長差があるので彼の前では大抵見下ろす形になるが、その三白眼の瞳に侮蔑の念が込められている。
「……ガノン、ここではよせ。中央署で話をしよう」
召集場所の目的地、中央署。
この街には城の様なランドマークはない。大きな館を改造し、役場に変えた中央署が中心街に紛れ込むようにある。すぐ傍がオークの領地なので、目立つ建物を途轍もない労力をかけて作るのは人類側が優勢でもない限り無駄であると断じた為だ。
というのもオークが一匹結界に近付く事件があり、その力を目の当たりにしたこの街の領主がビビって逃げ出したのがきっかけである。大きな館は元々、領主の仮住まいだ。主人を失った館は寂れていく一方なので有効活用したのが現在の中央署に当たる。
情けない領主の代わりを務めたのは中央政府。みんなの期待を背負った立候補者たちが投票で選ばれ、議員として仕切る事になった。
多くの知恵者が肩を並べて話し合ってできる政治は民衆の為になる。実際ここで生まれた条例や法律が他の国でも取り入れられたりしているから、権力者たちはその功績と知恵者の引き抜きの為にこの儚い国と取引をしている。白の騎士団が動いたのも利権が関わっていたりするのだがそれは別の話。
「……それもそうだな……おい、アリーチェ!いつまで喰ってんだコラ!行くぞ!」
ガノンは道を遮る前にいた店に対し大声で名を叫ぶ。その店から顔をのぞかせたのは年若い女の子。
栗色のボーイッシュな髪に太めの眉毛、真ん丸な大きな目と赤茶けた瞳。ぽちゃっとした可愛らしいほっぺたはあどけない少女を思わせる。薄いベージュの襟付きのシャツに太ももまで届く濃い緑のカーディガンを羽織り、ホットパンツを履いた出で立ちだ。草臥れた革靴だけが異様に映った。右手には饅頭が握られ、左手に身長くらい長い杖を持っている。見た感じは魔法使いだ。
「まっふぇ!まふぁはへへるはら!!」
口いっぱいに頬張った饅頭のせいで何を言っているかいまいちわからないが、状況と何となく「まだ食べている」という感じの声の出し方から、ほんのり伝わった。
ガノンはズンズン店に行くと大声で「袋に詰めろ!!」「勘定はいくらだ!!」と吠えている。先程まであった野獣の様に突然襲い掛かりそうな恐怖の対象は鳴りを潜め、コミカルな感じでわちゃわちゃしている。
「……行くぞ」
いつもキッとした表情のゼアルには珍しい呆れ顔でその様子を眺めていたが、待つ理由もないことを悟ると、そんなガノンを放置して黒曜騎士団は歩を進めた。
――――――――――――――――――――――――
「よくお越しいただきました。白の騎士団のお二方」
中央署で待っていたのはこの街の長達。数名の議員と議長、商人の長と警備隊の長、芸術家の代表など有力者たちが頭を下げてゼアルとガノンを迎え入れる。
「彼らがあの……」「見るからにというか、オーラというか……」「流石は人類の希望……」などコソコソと小声で話し合っている。
「お待たせした。私が黒曜騎士団団長ゼアルだ」
ゼアルは他の面々に分かりやすいように自己紹介をかかさない。「ほぉーっ」と関心の声がそこらかしこかに聞こえる。長達の目はそのままガノンの方に向けられるが、ガノンは腕を組んで不機嫌そうに口を開く。
「おい……何で俺たちだけなんだ?他には呼んでいないのか?」
ギザギザの歯を剥き出しにして吐き捨てるように話す。
「……こいつはガノンという」
ゼアルは周りの人に分かりやすいように名前を出す。議長が皆を代表して返答する。
「失礼しますガノン様。他の方々にもお願いはしていて、一応翼人族の国から良い返事をいただいたのですが……未だ到着はなく……」
「翼人族だと?どいつだ?」
ガノンは見た目の粗暴さ、そのままのイメージで不躾に尋ね続ける。
「いや……そこまでは……どなたが来られるかまではちょっと……」
議長も助力を要請しただけで今回来た二人に関しても、自己紹介されるまで本当に白の騎士団の一員かどうか分からないくらいだった。どう質問に答えるか困っている議長を助ける様に、小太りだが小綺麗な商人の長が一歩前に出て、二人に対して質問する。
「そういえば白の騎士団にはそれぞれ二つ名をお持ちだとお聞きしておりますが、ゼアル様とガノン様はどんな二つ名をお持ち何ですか?」
好奇心旺盛な商人の長は目を輝かせている。その質問は他の長達も便乗したいようで、少年の様に無邪気な目をしている。そんな感じで聞かれる事が多々ある二人は「またか」と言う顔で嫌そうにしている。有名人の辛い所である。
「……私は”魔断”と呼ばれている」
ゼアルは素直に応える。聞いた事ある名前は「おぉ!」という感動の声を漏れさせる。となればガノンは一体どんな二つ名なのか?
「……んなのどうだっていいだろ?とっとと仕事の話をしろ……」
あえて空気を読まず、全てに逆らうガノン。「おぉ……」という寂しい声が響く。
「こいつは”狂戦士”だ。覚える事は無い。ガノンは二つ名を嫌っているからな」
ゼアルは淡々と話す。聞いたことがよく分からず「ん?」と疑問符を浮かべる長達。
「……おいコラ、なに余計な事言ってんだ。手前ぇぶっ飛ばすぞ……」
「貴様こそ仕事の邪魔をするな。ある程度話し合いが出来なければ信頼が出来ない。となれば必要な時に連携が取れない。今回請け負うのは殿であって、勝利をもぎ取る戦争ではない。私たちが信用に足らなければ背中を任せるのは不安というものだ。こういう話も重要であると理解しろ」
さらに感情もなく淡々と説明する。その心は「言われる前に理解しろ」と言う事だ。ガノンは強い事だけは確かだが、その強さ故、あまり人と関わったりしない。結果、壁を作り孤立するのがしょっちゅうだ。
「な、なるほど……不要な質問を失礼いたしました…それでは、もう一人来られると思いますので、待合室の方でしばらくお待ちください。一刻の後、例の話をいたします」
議長他、長達は恭しく礼をして、すぐ傍に控えていた使用人に目配せするとドアを開けて二人を待合室に案内する。二人が出て行って間もなく長達は議長の元に集まりコソコソ話始める。
「議長……ゼアル様は流石の気品といえますが、ガノン様は大丈夫なのでしょうか?」
「……我らの力になっていただけるのか不安です」
「信じるしかないとはいえあれでは……」
など、ゼアルがその場で指摘した通り、不安は拭えない。
「それでも信じるしかない。粗暴だが、実力は確かなのだろう……それに……」
議長はさらに声を落とし、「実力が低ければ死ぬだけだ……」と一言。聞かれたら背中に背負った大剣で真っ二つにされそうだからこそ声を落とすが、聞いた長達も周りを見渡すほど恐怖の一言だった。
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