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第六章 戦争Ⅱ
第八話 混戦
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敵を攻めるアニマン。
国を守る魔獣人。
両軍は全速力で駆け寄り、当たり前のように殺し合う。
先陣を切った正孝を差し置いて、いの一番に飛び出したのはアニマン最強の女戦士”激烈”のルールー。
「シャアアアァァッ!!」
相手は武器や武闘に長けた大猿部隊「岩拳」。温存しておいた部隊がここで牙を剥く。しかし最高高度の双剣を携えたルールーの斬撃を防げる者など魔獣人とてこの場にはいない。大猿が突いた槍の穂先、それに完璧に合わせた双剣は弾く事を知らず、まるでチーズの様に先端から石突きまでを綺麗に真っ二つに切り裂く。当然それを持っていた大猿の手も無事では済まない。彼女は大砲の様に真っ直ぐに突き進む。
それしか出来ない様に、それしか知らない様に。
「流石にやるのぅ!よっしゃ儂も!!」
ルールーの速度には劣るがその重装備には何も通さない。大猿が大剣を振りかぶり叩きつける様に全体重を乗せて振り下ろす。金属同士がぶつかる凄まじい音と火花が散り、その衝撃が地面に伝わり足がめり込む。それだけだ。兜の奥底から睨みつける目は鋼の輝きを見せていた。
いつの間にか振り上げた斧を大猿に振り下ろすと兜も鎧も全て関係なくあっという間に寸断され、左右の体が惜しむ事なくそれぞれ崩れ落ちる。斧を振り回しながら魔獣人に突っ込んでいく小さな山に対応する事ができず四方八方に吹き飛ぶ。どれもバラバラに寸断されて周りを血の海に染めていく。
その名に恥じぬ戦いっぷり、ドワーフの重戦車”嵐斧”のアウルヴァング。
「……俺の獲物を取るんじゃねぇっ!!」
叫びながら大剣を振り回すその戦い方はまるで獣。剣術も型も無く、やたらめったらに振り回しているというのに男の間合いに入る事が出来ない。それもそのはず、全身の筋肉を総動員しないと振れない様な2m近い大剣を片手で重量に流される事なく振り続ける。「怪力」という言葉がまるで霞む様なあり得ない光景に魔獣人の戦士達もたじろぎ、その隙を狙ってぶった斬られる。ヒューマンの膂力では決してあり得ない、魔族をも凌駕する腕力。
その戦いぶりから授けられた全く気に入っていない二つ名は”狂戦士”。底知れぬ怪物、ガノン。
「邪魔だぁ!!」
その手に業火を纏い、正孝も負けじと参戦する。触れたものはその業火に包まれ悲鳴とともに炭と化す。この四人は一人一人が一騎当千の力を持って魔獣人の数を着実に減らしていく。魔族と人類の実力の差とは一体何だったのかと問いたくなるほど不思議な光景だった。それに続く形でアニマンの部隊が前の四人が取り零した魔獣人を倒して行く。その勢いに取り残され、佇む男が一人。
「……何でガチ合う必要があるんすか……炎で全部燃やせばそれでいいじゃないっすか。馬鹿なんすか?ほんと……」
ブツブツ文句を言いながら動けずにいると背後から肩をポンと叩かれた。ビクッとして振り向くとそこに立っていたのは美咲。追従する形でゼアルや歩やハンター他、救援等の後方支援部隊が追いつく。
「どうしたの?アンタまーくんについてったんじゃなかった?」
「……あ、いや……な、何か知らん内にガンガン進んでっちゃって。えっと、置いてかれちゃってぇ……へへへ」
下っ端根性丸出しの卑屈な感じで誤魔化す。美咲は冷ややかな目で茂を見た後、鼻で笑って興味無さげに通り過ぎる。
ゼアル達も前だけを見つめて声をかける事なく通り過ぎた。その歯牙にも掛けない雰囲気に茂は目の端をヒクつかせながらその後ろ姿を追う。
「し、茂くん。置いてかれちゃうよ?」
そんな中、ただ一人だけ声をかけたのは歩。(こんな役立たずに同情された!?)と思い込んだ茂は歩を睨みつけた後、肩を思いっきり殴った。
「痛っ!!……えっ!?えぇ……?」
茂は舌打ちをしてとっとと歩いて行った。殴られた歩は理不尽だと思いながらも俯いてついて行く。そんな後方を尻目に最前線ではさらに魔獣人の部隊が投入されアニマンの方にも犠牲者が出始めた。
「……良いねぇ……強ぇのが出て来やがった……本番はここからだな……」
豹や熊の部隊が顔を出した。
見るからに肉食系の恐ろしい魔獣達だ。大猿達もまだ残っているし、混戦は必至。ガノンは笑う。その顔は亀裂の入った仮面の様に異様な表情だった。
大剣を思いっきり地面に突き立てると、彼の体は湯気の様な闘気を纏い出す。空気は完全に異様なものに変質し、誰もが振り向かざるを得ない気配を放出する。その瞬間かなり広範囲の興奮した魔獣人の大多数がガノンに押し寄せた。アニマンの前にいる魔獣人や、絶対に無視する事が出来ないはずの白の騎士団と戦っている魔獣人でさえ、戦闘を放棄してガノンに向かって走る。
「何だ……?」
突然起こった事にアニマン達はついていけない。それも当然。これはガノンが得意とする戦士特有のスキル「ヘイトコントロール」。敵対心を極限まで上げるこのスキルは後方支援にヘイトが向かない様に敵を惹きつける能力だが、彼の場合はこうして他人の獲物まで横取り出来る。
「フハハハッ!!良いぞ!来い!!俺が相手だぁ!!」
「ガノン!!おぬし卑怯だぞ!!」
突然ガノンに向かって行く敵の背後を斬りつけながらアウルヴァングが吠える。
「逃ゲルナ!!ワダシニ殺サレロ!!」
ルールーも背中を斬りつけながら魔獣人の多くを殺して行くが、ガノンに向かう魔獣人はその比ではない。ガノンは笑いながら大剣を振り回す。その様はアウルヴァングの「嵐」の名を奪いかねない凄まじい攻撃だった。
しかしその名がガノンに渡らない理由が一つ。それはこの戦いっぷりと光景を見れば一目瞭然。自分が傷付こうとどうなろうと関係ない、笑いながらただひたすらに楽しそうに剣を振るう戦闘狂である事実。”狂戦士”の名は伊達では無い。
「賭けの理由はこれかぁ。まぁ勝つ能力を備えてなきゃ賭け事なんてしないよな……」
ガノンが大半の敵を引きつけたお陰で少し余裕の出来た正孝は「ヘイトコントロール」の枠から外れた魔獣人を相手にしながらポツリと呟く。アニマンにも余裕が出来てガノンに集まる魔獣人の背中を斬りつけながら着実に敵を減らして行く。
それに気付いた致命傷を免れた魔獣人が、ガノンのスキルを痛みやら死への恐怖やらで何とか抜けて、ようやく攻めに転じ出した。真正面から戦えば有利な魔獣人も重症だからか、戦闘員程度のアニマン軍でも互角の戦いとなっていた。
「凄まじいですね……」
ハンターは後方からその様子を見て感心している。
「当たり前じゃん?ガノンは大雑把だけど、まぁ強いから」
ガノンの相棒のアリーチェは自分の事の様に胸を張った。ゼアルも剣を引き抜きながら何気無く答える。
「ああ、前回もあいつが多くの兵士を引きつけたお陰で魔王をおびき出した。今回も同じだ。もうすぐやって来るだろうな……」
「……それはどうでしょう。僕らにここまで攻め込まれているんですよ?もうとっくに避難していると見るのが妥当では?」
魔王とはいえ生き物である以上命が惜しいはず。ここがホームグラウンドで有利だとしても現在魔獣人は紛争真っ只中。さらに人類に脅かされる正に「泣きっ面に蜂」状態。
だがこれこそ好機。人類が攻撃してきたなら反旗を翻した魔獣人も放っては置けないはずだ。ヘイトが人類に向かっている今こそ逃げるにはもってこいだろう。以上の事からハンターの意見は「当たらずも遠からず」と言えた。
「それは無い」
ゼアルは一切の疑いなくそれを否定する。
「魔王はどれも傲岸不遜で自分が負けるとは露ほども思っていない。そこが危険であり脅威であり、我々が唯一付け入る隙だ。……何、時期に姿を現す」
剣を城にかざして隠れ潜む魔王にアピールする。ハンター達はその姿にまるで絵画の様な気品さを感じた。
「もうこの国に新たな魔王は出ない。私が永遠に葬ろう」
国を守る魔獣人。
両軍は全速力で駆け寄り、当たり前のように殺し合う。
先陣を切った正孝を差し置いて、いの一番に飛び出したのはアニマン最強の女戦士”激烈”のルールー。
「シャアアアァァッ!!」
相手は武器や武闘に長けた大猿部隊「岩拳」。温存しておいた部隊がここで牙を剥く。しかし最高高度の双剣を携えたルールーの斬撃を防げる者など魔獣人とてこの場にはいない。大猿が突いた槍の穂先、それに完璧に合わせた双剣は弾く事を知らず、まるでチーズの様に先端から石突きまでを綺麗に真っ二つに切り裂く。当然それを持っていた大猿の手も無事では済まない。彼女は大砲の様に真っ直ぐに突き進む。
それしか出来ない様に、それしか知らない様に。
「流石にやるのぅ!よっしゃ儂も!!」
ルールーの速度には劣るがその重装備には何も通さない。大猿が大剣を振りかぶり叩きつける様に全体重を乗せて振り下ろす。金属同士がぶつかる凄まじい音と火花が散り、その衝撃が地面に伝わり足がめり込む。それだけだ。兜の奥底から睨みつける目は鋼の輝きを見せていた。
いつの間にか振り上げた斧を大猿に振り下ろすと兜も鎧も全て関係なくあっという間に寸断され、左右の体が惜しむ事なくそれぞれ崩れ落ちる。斧を振り回しながら魔獣人に突っ込んでいく小さな山に対応する事ができず四方八方に吹き飛ぶ。どれもバラバラに寸断されて周りを血の海に染めていく。
その名に恥じぬ戦いっぷり、ドワーフの重戦車”嵐斧”のアウルヴァング。
「……俺の獲物を取るんじゃねぇっ!!」
叫びながら大剣を振り回すその戦い方はまるで獣。剣術も型も無く、やたらめったらに振り回しているというのに男の間合いに入る事が出来ない。それもそのはず、全身の筋肉を総動員しないと振れない様な2m近い大剣を片手で重量に流される事なく振り続ける。「怪力」という言葉がまるで霞む様なあり得ない光景に魔獣人の戦士達もたじろぎ、その隙を狙ってぶった斬られる。ヒューマンの膂力では決してあり得ない、魔族をも凌駕する腕力。
その戦いぶりから授けられた全く気に入っていない二つ名は”狂戦士”。底知れぬ怪物、ガノン。
「邪魔だぁ!!」
その手に業火を纏い、正孝も負けじと参戦する。触れたものはその業火に包まれ悲鳴とともに炭と化す。この四人は一人一人が一騎当千の力を持って魔獣人の数を着実に減らしていく。魔族と人類の実力の差とは一体何だったのかと問いたくなるほど不思議な光景だった。それに続く形でアニマンの部隊が前の四人が取り零した魔獣人を倒して行く。その勢いに取り残され、佇む男が一人。
「……何でガチ合う必要があるんすか……炎で全部燃やせばそれでいいじゃないっすか。馬鹿なんすか?ほんと……」
ブツブツ文句を言いながら動けずにいると背後から肩をポンと叩かれた。ビクッとして振り向くとそこに立っていたのは美咲。追従する形でゼアルや歩やハンター他、救援等の後方支援部隊が追いつく。
「どうしたの?アンタまーくんについてったんじゃなかった?」
「……あ、いや……な、何か知らん内にガンガン進んでっちゃって。えっと、置いてかれちゃってぇ……へへへ」
下っ端根性丸出しの卑屈な感じで誤魔化す。美咲は冷ややかな目で茂を見た後、鼻で笑って興味無さげに通り過ぎる。
ゼアル達も前だけを見つめて声をかける事なく通り過ぎた。その歯牙にも掛けない雰囲気に茂は目の端をヒクつかせながらその後ろ姿を追う。
「し、茂くん。置いてかれちゃうよ?」
そんな中、ただ一人だけ声をかけたのは歩。(こんな役立たずに同情された!?)と思い込んだ茂は歩を睨みつけた後、肩を思いっきり殴った。
「痛っ!!……えっ!?えぇ……?」
茂は舌打ちをしてとっとと歩いて行った。殴られた歩は理不尽だと思いながらも俯いてついて行く。そんな後方を尻目に最前線ではさらに魔獣人の部隊が投入されアニマンの方にも犠牲者が出始めた。
「……良いねぇ……強ぇのが出て来やがった……本番はここからだな……」
豹や熊の部隊が顔を出した。
見るからに肉食系の恐ろしい魔獣達だ。大猿達もまだ残っているし、混戦は必至。ガノンは笑う。その顔は亀裂の入った仮面の様に異様な表情だった。
大剣を思いっきり地面に突き立てると、彼の体は湯気の様な闘気を纏い出す。空気は完全に異様なものに変質し、誰もが振り向かざるを得ない気配を放出する。その瞬間かなり広範囲の興奮した魔獣人の大多数がガノンに押し寄せた。アニマンの前にいる魔獣人や、絶対に無視する事が出来ないはずの白の騎士団と戦っている魔獣人でさえ、戦闘を放棄してガノンに向かって走る。
「何だ……?」
突然起こった事にアニマン達はついていけない。それも当然。これはガノンが得意とする戦士特有のスキル「ヘイトコントロール」。敵対心を極限まで上げるこのスキルは後方支援にヘイトが向かない様に敵を惹きつける能力だが、彼の場合はこうして他人の獲物まで横取り出来る。
「フハハハッ!!良いぞ!来い!!俺が相手だぁ!!」
「ガノン!!おぬし卑怯だぞ!!」
突然ガノンに向かって行く敵の背後を斬りつけながらアウルヴァングが吠える。
「逃ゲルナ!!ワダシニ殺サレロ!!」
ルールーも背中を斬りつけながら魔獣人の多くを殺して行くが、ガノンに向かう魔獣人はその比ではない。ガノンは笑いながら大剣を振り回す。その様はアウルヴァングの「嵐」の名を奪いかねない凄まじい攻撃だった。
しかしその名がガノンに渡らない理由が一つ。それはこの戦いっぷりと光景を見れば一目瞭然。自分が傷付こうとどうなろうと関係ない、笑いながらただひたすらに楽しそうに剣を振るう戦闘狂である事実。”狂戦士”の名は伊達では無い。
「賭けの理由はこれかぁ。まぁ勝つ能力を備えてなきゃ賭け事なんてしないよな……」
ガノンが大半の敵を引きつけたお陰で少し余裕の出来た正孝は「ヘイトコントロール」の枠から外れた魔獣人を相手にしながらポツリと呟く。アニマンにも余裕が出来てガノンに集まる魔獣人の背中を斬りつけながら着実に敵を減らして行く。
それに気付いた致命傷を免れた魔獣人が、ガノンのスキルを痛みやら死への恐怖やらで何とか抜けて、ようやく攻めに転じ出した。真正面から戦えば有利な魔獣人も重症だからか、戦闘員程度のアニマン軍でも互角の戦いとなっていた。
「凄まじいですね……」
ハンターは後方からその様子を見て感心している。
「当たり前じゃん?ガノンは大雑把だけど、まぁ強いから」
ガノンの相棒のアリーチェは自分の事の様に胸を張った。ゼアルも剣を引き抜きながら何気無く答える。
「ああ、前回もあいつが多くの兵士を引きつけたお陰で魔王をおびき出した。今回も同じだ。もうすぐやって来るだろうな……」
「……それはどうでしょう。僕らにここまで攻め込まれているんですよ?もうとっくに避難していると見るのが妥当では?」
魔王とはいえ生き物である以上命が惜しいはず。ここがホームグラウンドで有利だとしても現在魔獣人は紛争真っ只中。さらに人類に脅かされる正に「泣きっ面に蜂」状態。
だがこれこそ好機。人類が攻撃してきたなら反旗を翻した魔獣人も放っては置けないはずだ。ヘイトが人類に向かっている今こそ逃げるにはもってこいだろう。以上の事からハンターの意見は「当たらずも遠からず」と言えた。
「それは無い」
ゼアルは一切の疑いなくそれを否定する。
「魔王はどれも傲岸不遜で自分が負けるとは露ほども思っていない。そこが危険であり脅威であり、我々が唯一付け入る隙だ。……何、時期に姿を現す」
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