一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
204 / 718
第六章 戦争Ⅱ

第十三話 吹っ切れた脅威

しおりを挟む
「激化してるじゃ無いか……」

 ラルフは魔法で映写された戦争の様子を見ながら頭を抱える。
 予定通り三日で到着したところ、目に見えるほど大きく火柱が上がって驚いていた。望遠魔法でくっきりと映し出された戦いの爪痕は凄惨という言葉に尽きる。この積み上がった数ある死体の中にジュリアがいても何ら不思議はない。
 カサブリアに向かう前のベルフィアの「行くだけ無駄では?」という意見が頭をよぎる。ふと前にも同じような事があったのを思い出した。それはゴブリンの丘でのベルフィアの一言だ。あの時から一つも成長していないことの表れではないだろうか?ベルフィアも「それ見たことか」といった顔で鼻を鳴らしている。

「まだ生きてると良いけどね」

 ミーシャは凄惨な光景を見ながらまるで他人事のような口ぶりで何気なく呟く。ミーシャの周りは今にも戦いそうなほどガチガチに鎧を着込んで剣も帯刀しているというのに呑気なものだ。
 昨日からどうも闘争の空気を感じていたアスロンはベルフィアに報告し、デュラハン達に騎士衣装で望むことを促した。その為ここに集まった九体全員が鎧を着込んでいる。その中の三体、長女のメラと八女のティララ、そして十一女のイーファが同行する。この三体は一応デュラハンの剣の腕前トップ3。長女が一番強く、その下にティララ、イーファという順だ。他の六体と非戦闘員のウィーはお留守番である。
 ブレイドとアルルもカサブリアに降り立つ為の準備をしていた。ラルフもお留守番……と言いたいところだが子供二人が戦火に飛び込むのに自分が行かないのは気が引けるし、何より言い出しっぺの自分が知らぬ存ぜぬを決め込むのは流石にどうかとも思った為だ。最近ウィーに新調してもらったダガーナイフに触れながら色々考えていた。

「浮かない顔しとルノぅラルフ」

 ベルフィアが横から話しかける。それに気付いたラルフがダガーナイフを腰の鞘に差しながら頭を振る。

「いや、何でもない……事もないな。ジュリアの事が心配ってのもあるけど、戦争なんて真っ平だって思ったんだよ。単純に死にたくないだろ?せっかく境界線引いて領地を確保してんのに、それをわざわざ侵してまで戦うなんざ馬鹿げてる。大体魔族と俺達人類が話合わないのがそもそもの間違いじゃないのかよ」

 側で聞いていたミーシャがふとラルフに反応する。でも質問の答えが見つかる事なくそのまま沈黙した。それを見てベルフィアが苦笑まじりに答えた。

「……それを考えタノがそちだけだと思うノか?そちが知らんだけで数多くノ著名人が考えタとは思ワんか?そして実行に移しても何も変ワらんかっタから永遠ノ戦争となっておルんじゃろうが。何を今更……ふっ、そちノ事じゃ、既にそノ過程を想像し、結論に行き着きながらも言ワずにおれんかっタんじゃろうが……」

 行く前からお通夜の様な妙な雰囲気になる。ブレイドには特にその言葉は刺さった。自分の種族はここに居る者達と比べればかなり特殊だ。
 半人半魔ハーフという異形。人族であり魔族であるこの体は、永遠の戦争に矛盾している。それを察してアスロンが口を開こうとした時にイーファが被せた。

「やる前から答えの出ないこと言って煙に巻くのは、やりたくない事に対して駄々を捏ねる行為と同じですわ。ラルフの意見を真面目に聞かない方がよろしいかと」

 その発言はここにいる全員を納得させるだけの力があった。と言うよりラルフはちょくちょくこの手の煙に巻く手法を日常的に使ってなぁなぁにしている癖がある。三日という短い間ではあったが、イーファはラルフの付き人の様なことをしていてよく理解していた。

「……ラルフ」

 ミーシャが訝しい顔でラルフを見る。戦争に関する疑問を素直に心から思っていた事だとしてもこれを擁護する味方はいない。

「……あの、はい……そろそろ、行こうか」

 自分を擁護したところで負けは濃厚なので諦めたのだが、ラルフのこの反応も良くない。今の戦争社会に一石を投じたつもりが、単に駄々を捏ねて行きたくないわがままな奴に変わった瞬間だった。イーファは当然の事を言った顔で澄ましているが、姉妹的に見れば妹が男を経験してすっかり変わってしまった様に見えた。

「イーファ……貴女……」

 メラはそれ以上言うまいと口を閉ざす。イーファの達観した雰囲気に妹を守れなかった不甲斐なさを感じたから。ティララの方は潔癖症な一面があるので妹のその振る舞いに嫌悪を抱き、ラルフに対する目は排泄物でも見る様な目に変わっていた。

「ん~……それでどうやって降りるんです?いつもの様に浮遊魔法で徐々に降りるとかですか?」

 アルルは槍を振ってアピールする。

「ま、それしか無いでしょ。侵入も外からしたし、飛んでいくしか無いよね?」

 ミーシャならひとっ飛びで行けることは間違いないが他は違う。第一デュラハンたちはどうやって地上に降りていたのか気になるところ。

「それには及びませんミーシャ様。そうじゃな?アスロン」

 ベルフィアが声をかけると「うむ」と頷いた。

「この要塞には外出の為の転移装置が付いとる。地上まで難なく降り立つ事が可能じゃ。帰還に関してはここの元主人が使用していた杖が鍵になっておる。帰る時はベルフィアさんが連れて帰るから安心せい」

「なるほど、ベルフィアが連れ去られたのは転移によるものだったのか……」

 ラルフは当時のことを思い出して一人納得していた。

「それじゃあ、どこに降ろそうかのぅ?どこも安全とは……言い難いが」



「?」

 歩は自分の感知に引っかかる何かに注視する。それはなんと言うか場違いなまでに強大で、圧倒的な存在感だった。

「……なんすか?……どうかしたんすか?」

 その表情に不安を感じた茂が声をかける。「いや、あの……」とどもる歩に被せる様にゼアルが声を上げる。

「アロンツォが攻撃を仕掛けた!私たちも続くぞ!」

 シザーを倒したゼアルは剣を掲げて前方を見る。皆その指揮に従って城を目指して侵攻を開始した。
 城を飛び出したアロンツォは空中で銀爪に攻撃を仕掛けるも、自分の領域だと言うのに全て回避される。体を捻ったり回転したり、相手の動きを見ながら反撃を見送り、観察に専念する銀爪。着地してからは両者共にさらに速度を上げて攻防を繰り広げる。
 城門に避難していた魔獣人たちもその姿を見て驚き戸惑った。城に篭ってばかりだったのにいざ動くと凄まじいまでのキレを見せる。戦闘だけなら父親より、誰より上だ。

「ハハッ!中々やるじゃねぇか!アニマンの間抜けに比べたらテメーの方がり甲斐あるぜ!」

「反撃がないな。ただ避けるだけか?」

 息一つ乱さず動き続ける。銀爪は軽やかな動きで壁際に移動する。壁際に追い詰めたと考えるアロンツォは技を使用した。

「槍技”風の牙ザンナ デル ベント”」

 アロンツォが踏み込んだその瞬間に無数の刺突する槍の穂先を幻視する。その一つ一つに魔力が含まれ、長年培われた技術と合わさり、たった一人に使うには惜しいと思えるほどの凄まじい衝撃波が襲う。
 嫌な空気を感じ取った銀爪はその衝撃が届く直前、直感的に危険を察知して本気で真上に飛ぶ。なんとか回避に成功したが、放たれた壁は言うまでもなく大穴が開く。

 ズガァッ

 アロンツォの握る細い槍が物理的に不可能な穴を開ける様子は見るものを恐怖させる。もしあの壁が自分だったら、ここに遺骸が残っていたかも怪しい。

「ハハハッ!良いねぇ!!面白くなってきた!!」

 銀爪は両手を広げて魔力を高める。アロンツォは城壁に登った銀爪を見る為に背後を確認しながら後退する。銀爪もアロンツォを確認するとさらに魔力を高めた。

「おや?良いのか?ここで放てばそなたの国民も巻き込むことになるが?」

 まさにその通りだ。興奮から気付かなかったが、アロンツォの背後、城の前にはアニマンと白の騎士団から逃げ延びた魔獣人たちの姿がある。攻撃すればオルドに言われた「国民を攻撃するな」という事に反する。

「……だからどうした?」

 銀爪の顔はニヤリと醜く歪む。

「俺の国民は俺に反旗を翻したりしない。従ってこいつら全員俺の敵だ」

「ほう?孤独の王か。……それは王なのか?」

 アロンツォは困惑気味に自分で言ったことにツッコミを入れる。

「……死ね」

 両手を交差させると不可視の衝撃がアロンツォに迫る。本当に攻撃してきた事に多少の驚きこそあったがアロンツォは冷静に対処する。自分で作った壁の穴目掛けて一瞬で前進し、壁を潜って門外に飛び出す。背後には悲鳴と城の崩れる音が聞こえ、地獄の様相を呈す。

「気ん持ちぃぃぃ……!」

 我慢に我慢を重ねた国民に対する不満はここで一気に解消した。国民も国民で誰を相手に戦っていたのかを思い知る。恐怖のあまり固まっていた数十の魔獣人はバラバラになり、城の瓦礫に埋もれて無残な最期を遂げていた。それも自分達の王の手によって。
 逃げ場の失った魔獣人たちは絶望と恐怖で動けなくなっていた。泣いて謝っている魔獣人もいるくらいだ。その様子を建物の陰で見ていたジュリアは目をギラつかせていた。

「ヤリヤガッタワ……兄サンノ予想通リダッタワネ」

 国民が蔑ろにされ、銀爪についている部下もこっちに寝返る。そこまでは良いが、この力の差は想定外ではないだろうか?こうなればカサブリアを捨てるくらいじゃないと魔獣人の行き場所がない。

(今アッチハドウナッテルノ?シザーサンカラノ指令ハマダ何モ……トリアエズ兄サント合流ヲ……)

 スンッ

 その時感じた臭いは先日嗅いだばかりなのに遠い昔のように懐かしい臭いだった。距離はずいぶん遠いが、何故かふと香ってきた。

「嘘……コノ臭イハ……ラルフ?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...