一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
205 / 718
第六章 戦争Ⅱ

第十四話 崩落の足音

しおりを挟む
 ラルフたちが降り立ったのは街並みの整った比較的綺麗な場所だった。と言っても外壁が崩れたり、窓が割れていたり、偉い人と思われる胸像が壊されていたりと争いがあったことを思わせる光景だった。
 ミーシャは無残に倒れてしまった胸像を難なく持ち上げる。その顔は見慣れたドッグタグを付けた筋肉過多の偉丈夫。ゼアルの剣に倒れた亡き第七魔王”銀爪”の像。

「こんなものが作られるくらい人気だったんだ……」

 ミーシャは銀爪の顔をまじまじと見る。

「見てよ銀爪、これが今のお前が作った国だよ。息子に継がせるなんて馬鹿なことしたよね……」

 しみじみと言っているが、死人に鞭打つ行為にラルフも困り顔だ。

「おい、やめろって……せめて「この戦争は私が止めるー」とか「後は任せてー」とかそういうポジティブなのにしろよ……」

「?……別に私たち戦争を止めに来たわけじゃないよ?」

「いやまぁそうだけど……なんかこう。死人に追い打ちを掛けるようなのはさ、違うと思うのよ俺は」

 ミーシャの天然な感じに頬を掻きつつ指摘する。「ふーん」とミーシャは胸像をポイッと投げ捨てた。「あっ、もー……それそれぇ」とラルフはミーシャの言動に文句を垂れる。

「さて、ミーシャ様。何処に参りましョうか?あノ人狼ワーウルフに接触すルなら有象無象が集まっていル城に行くノがヨろしいかと思いますが?」

「戦争の最前線に?……危険ではないでしょうか……?」

 ベルフィアの言葉にブレイドがそっと物申す。チラリと見た視線の先にはラルフの姿があった。ようやく装備を充実させたからと言ってラルフがこの中で一番弱い事に変わりない。

「何、心配ない。そうヨなデュラハン共」

 メラもティララも舌打ちしそうな程顔を歪めて「ええ」と肯定する。デュラハンの役目はラルフの護衛だ。それ以上でもそれ以下でもない。ラルフの行く先について行き、必要に応じて戦う。元々敵だったことを思えば護衛を任せるのは不安が残るが、彼女たちは”血の契約”によってベルフィアには絶対服従だ。

「だ、そうだ。何ノ問題もない」

 ブレイドは複雑な表情を作りながらも頷く。アルルはブレイドの肩をポンと叩いた。

「大丈夫よ。それこそ私たちよりずっと経験が上なんだし、逆に私たちが万が一の事がないようにしなきゃ」

 ラルフばかりではない、自分達の方が危険の可能性もある。デュラハンの盾もない。常人の三倍以上強くても命の危険があるのが戦争なのだ。そんな話を薄っすら聞いていたラルフは達観した二人に敬意を評した。

「全く……出来た子達だよな……よしっ!グダグダやってても始まらないし、城に行こうぜ」

「おーっ!」

 ミーシャ達八人は戦争に行こうというのに、場違いなまでに呑気に歩き出した。そんな八人の到着を知らないカサブリア城敷地内は騒然としていた。当然だ。銀爪はオルドが伝えていた禁忌を破り、ついに国民を攻撃し始めたのだ。国の修復はこれにより絶望的となったのだが、銀爪は戦闘が解禁された今の状況に心の底から喜んでいた。

「……はぁ、何ビビってたんだ俺は……ちっと捻りゃあこのザマだ。はははっ見ろ翼人族バード!テメーにこんなことが出来るか!!?」

 銀爪は高笑いしながらアロンツォに振り向く。城壁の外に逃げたアロンツォは穴から敷地内の惨状を見る。

「ふーむ、余には不可能であるな。敵ならまだしも守るべき民を虐殺するなど、正気の沙汰では無い」

 冷ややかな目で銀爪に視線を移す。その鋭き猛禽類の様な目をしたアロンツォに、銀爪が癇癪で殺してしまったビルデ伯爵が重なる。自分を非難して王の座から引きずり下ろそうとした不届き者。

「気に食わねぇなぁ……」

 アロンツォは確かに強い。しかしその強さは戦ってみて分かったが自分には遠く及ばない。銀爪はその手にまたしても強力で強大な魔力を溜める。

「その目ん玉ぶっ潰してやるよ」

 ズアッ

 迫る魔力の衝撃。アロンツォは今度はじっと観察していた。そしてススッと軽やかな足運びでほんの少し動くとそこにとどまった。ズンッと凄まじい力が地面とすぐ側の壁を抉る。しかしアロンツォは全くの無傷。放たれた魔力の隙間を見つけて最小の動きで避ける事に成功した。

「テメー……」

 国民に使用した攻撃の痕を見て隙間がある事を見抜いたアロンツォは挑発も兼ねてこの様な行動に出た。

 ズガンッ

 銀爪は城壁を蹴ってアロンツォに突撃を仕掛ける。まともにぶつかるのは瞬時に危険と判断したアロンツォは一気に空に飛ぶ。銀爪は一度地面に下りるとアロンツォを追う様に垂直に飛び上がる。

(速いな……)

 アロンツォから攻めていたので今改めて気づいたが、銀爪の身体能力は人知を超えている。それでも完璧に銀爪の攻撃を全て去なす。野獣の様に真っ直ぐなだけの攻撃は、いくら速くてもアロンツォレベルの戦士には効くはずがない。攻撃の軌道が丸見えだ。
 だがそんなアロンツォでもカウンターを放つのは至難の技だった。一瞬でも気を抜けば死ぬだろう。ここだと思えるところが見つかった時は容赦無く攻撃すると考えたその時。

 バシュッ

 銀爪の爪がわずかに額をかすめる。皮膚が切れた上、頭を殴打された様な一撃にアロンツォの視界がブレる。

(しまった……!)

 こうならない様に集中していたのに、カウンターを入れる事を考えたわずかな隙がこの一撃を許した。致命傷では無いが、次の攻撃は避けられないだろう。アロンツォは左手で自分の羽根の一枚を取ると銀爪の顔に指で弾く様に投げる。

「はっはぁっ!もらったぁ!!」

 調子に乗って攻撃を仕掛けようとした時に右頬に羽根が刺さった。

「!?」

 チクっとしたのに驚いた銀爪は咄嗟に顔を守ろうとしてアロンツォへの攻撃を外した。狙っていたことが上手くいき、お互い危険を感じて間合いを開ける。額の傷から血が吹き出して目に入るが、拭う暇もなく銀爪を見る。銀爪は自分の顔に当たったのがアロンツォの羽根だった事に気づいて舌打ちする。

「千切れた羽根が偶然当たったか?運の良い野郎だ……」

 あと一撃というところを運で回避されたと思った銀爪は自由落下に身を任せながら攻撃の仕方を考える。

「……めんどくせぇ!吹き飛べ!!」

 手に魔力を溜めて解き放つ。指を振った形に飛んでくる衝撃波は交差していて、さっきの最小の動きで回避とはいかない。羽ばたいてさらに上昇し、上へ上へと逃げる。

「馬鹿が!そんなもんで逃げられるほど俺の魔力はやわじゃねぇぜ!!」

 雲の上まで上昇したアロンツォは雲の陰に隠れつつ急加速で横に逸れる。銀爪の魔力は雲を突き抜けてさらに上昇を続けた。脳震盪の痛みから完全に復活していないアロンツォは隠れながら回復に専念する。敵の陰を完全に見失った銀爪はそこで興味を失い、次の獲物を求めて歩き出した。



 グシャッ

 その音は城の廊下に響き渡る。
 陶器の様な白い器と、それに詰まった肉の塊はひき潰されて辺り一面を血の海に変える。オルドの怪力が虎の魔獣人の頭を握り潰したのだ。一進一退の攻防が繰り返されていたのか、辺りは瓦礫と血と肉で染められていた。
 結果はオルド一人に対し、王の護衛ロイヤルガードが全滅。廊下の突き当たりにはジャックスが壁にめり込んで死にかけていた。もちろんオルドも無事に済まない。身体中切り傷だらけで自慢の角も一本折れたし、左手もあらぬ方向に曲がって腕の骨が飛び出している。外からは見えないが内臓もかなり損傷していた。まさに満身創痍。

 めり込んだ壁からジャックスが抜け出して床に手をつく形で着地する。

「……フンッ、気絶シテレバ良イモノヲ……」

 オルドは動かなくなった肉の塊から手を離してジャックスを睨みつける。ジャックスはゴホゴホ咳払いをしながら口から血を流す。呼吸器系を傷つけたのだ。二人とも長くは保たないだろう。

「ハァ、ハァ……アンタガ死ネバ……俺達ノ……ガハァッ……ハァ、勝チダ……!!」

 ほとんど動かない手足を無理やり上げながら構える。オルドはそれに対して仁王立ちで迎える。

「言ッタダロ……俺ガ死ンデモ ジュニア ガ生キテイレバ旗頭ニナル。俺ノ死ハ決シテ無駄ニハナラン」

「コッチモ……言ッタハズダ……ハァ……アレニ、旗頭ノ価値ハ……無イ……ハァ、ハァ……」

 ジャックスは今にも倒れそうに息継ぎをする。もう一度膝をつけばそのまま死ぬほどに消耗している。

「モウ休メ。オ前ニハ止ドメヲ刺スマデモ無イ……無イガ、立チ塞ガルナラ容赦ハセンゾ?」

 のっしのっしと無防備に歩くオルド。その言葉通り立っているのもやっとなジャックスには意識を保つのすら難しい。

「……オルド戦士長……貴方トハ……タ、戦イタク……無カッタ……」

「アア、ダロウナ……」

 力の差があり過ぎて嫌になるというものだ。一対一ならとっくに死んでいた。しかし戦いたく無いのはそんなチャチなことでは無い。オルド戦士長を信頼していた。英雄視し、尊敬していた。この人に成りたいと努力し、その内に達人と呼ばれる領域に到達した。

「本当ニ……戦イタク無カッタ……」

「……問答ハ終ワリダ」

 オルドが右手を前に出しながらジャックスに近づく。ジャックスは細く長く息を吐きつつ最後の息を整えた。

「フゥゥゥゥッ……コノ技ヲ、貴方ニ捧ゲマス……」

 御構い無しにオルドが間合いに踏み込んだその瞬間、ジャックスの目が鋼の輝きを取り戻す。

「……”疾風怒濤しっぷうどとう”オォッ!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...