一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
271 / 718
第八章 地獄

第一話 服屋のマヤ

しおりを挟む
 最近厳重に強化された人類の安息の地「アルパザ」。
 アルパザ消滅の危機からこっち、イルレアン国から派遣されてきた黒曜騎士団の騎士達が駐屯して更に安全となっていた。
 この町の路地裏に位置する暗くジメジメした場所を女性が一人、竹で編んだバスケットを持って歩いていた。バスケットの中には体の採寸を図るメジャーや契約書、バインダーと服のカタログ画等、服飾に関する道具が入っていた。
 町一番の服飾専門店「ローパ」から派遣された彼女は、この町一番のお得意様である「アルパザの底」の店主に会いにえた臭いのする道を黙々と歩く。派遣される人はまちまちで、彼女は今回が二回目。特に方向音痴ではないので何の心配もなく辿り着けるのだが、用心に越したことはないと地図を見ながら進む。何度目かの角を曲がった突き当りにお目当ての場所を見つけた。

「あったあった」

 彼女は店に入る前に服のシワや汚れを今一度確認する。臭い路地裏のニオイが付いた気がして服のニオイを嗅ぎ、特に臭わなかったので追いコロンは必要ないと自信を持って一つ頷いた。扉を捻ってゆっくり開けると、ヒョコッと顔を出すように店内を覗き込んだ。

「ごめんくださーい」

 商品が所狭しと並ぶ店内に肝心の店主の姿が見えない。「……あれ?」と首を傾げながら店内に入る。もう一度声をかけるが特に反応がない。バスケットに入れている伝書鳥からの急用の郵便を広げる。そこには今日この時間に出張での採寸を依頼する旨が記載されている。自分が間違っているわけでもないし、この店もしっかり開店しているところから、店主は間違いなくここにいたと思われる。もしかしたら自分が来る前に時間があったから買い物に出ているのかもしれない。気楽に商品でも見て待つことにした。

「おやおや、これは美味そうなノが来タノぅ」

 ドキッとして振り向く。そこにはいつからそこに居たのか、生き物とは思えない真っ白な肌に不釣り合いなほど赤い舌が覗く。髪も白く、頭から白い塗料をかぶったような奇妙な存在に瞠目せざるを得ない。声や起伏の富んだシルエットが女性であると教えてくれた。

(店員?)

 真っ先に思ったのがそれだ。ここには奇妙奇抜な商品ばかりが並んでいる。(もしかしたらここで働く人も店内の雰囲気に負けない人材を求めているのかもしれない)などと詮無いことを考えながら頭を下げた。

「あ、初めまして「ローパ」から来たマヤと申します。本日は私共のローパをご利用いただきありがとうございます。早速仕事に取り掛かりたいと考えているのですが、店主は何処にいらっしゃいますか?」

「ほぅ、そちがそうか。ふーむ、中々ノ真面目さんじゃが一人では時間がかかりそうじゃな……まぁ良いじゃろ。あやつなら買い出しに出とル。来たら先に行けとノ事じゃから、そちノ言う通りさっさとしてもらうかノぅ。何せ人数が多いもんでな」

 白い女は肩を竦めながらマヤに近寄る。何を行っているのかいまいち分からないマヤは、とりあえず人数が多いと言うことに焦点を絞って答える。

「あの、本日は私を含めて三人しか出勤予定にないので……私一人だけで大変申し訳ないのですが、精一杯やらせていただきます」

 手を目の前でグッと握り、気概を見せる。女はニヤニヤしながらマヤの肩に触る。

「そノ意気や良し。妾達ノ為に働くが良い」

「はい。それで他の方は……?」

 奥に居るのかとレジ奥を見る。それに対して首を振る。女は何処から取り出したのか、杖を握りしめて頭上に振りかぶった。

「上に居ル」

 その言葉と共に「アルパザの底」から消失する。マヤの目には一瞬光に包まれた後に、店内から全く未知の広い空間に景色が変わった様に見えた。いきなりの事に驚きすぎて後ずさりしながら状況を把握しようと周りを見渡す。五感から入ってくる情報と理解出来ない脳の処理のせいで、足がもつれて躓いた。

「あっ!」

 尻餅をつきそうになる直前に優しく抱きとめられた。

「っと、危ない。大丈夫ですか?」

 目を開けるとそこには少年と青年の間と言える若くハンサムな顔が心配そうに覗き込んでいた。トクンッと胸が高鳴る。足が躓いて盛大にコケる刹那にお姫様抱っこで助けられる。恋愛物語の一ページにありそうなシーンに心の底からときめいた。

「あ、あの……ありがとう……ございます」

 自分よりも絶対若い男の子に敬語になってしまう。それもそうだろう。大人の女性の全体重を軽々と支える逞しい二の腕に、何より自分を心配してくれる優しい表情を見てしまえば、喜びより申し訳なさが先行して恐縮してしまうというもの。「それは良かった」と微笑んで、そっとガラスや陶器でも扱う様にそっと床に立たせてくれる。王子様の様な行動にさらに胸が高鳴る。

(だ……駄目よマヤ!私には夫がいるのよ!!新婚で浮気だなんて、あり……あり得ないから!!)

 そうは考えても目の前の男の子から目が離せなくなる。

「?……顔が赤いですけど、もしかして体調が優れないとか?」

 男の子は眉をハの字にしながら声をかける。ハッとして両手でサッと顔を挟み込む。

「い、いえ!大丈夫です!なんともないですから!!」

 焦って声が大きくなる。心を落ち着ける為に男の子から視線を外して深呼吸する。冷たい空気を肺に取り込むと幾分マシになってきた。さっきまで全く気づかなかったが周りにも人がいた。周りは女性ばかりでメイド服を着込んでおり、この場所が何処かの建物の広場兼食堂であると推察出来るた。中には不機嫌そうにこちらを見るメイドではない女性なども居るが、だんだん状況が飲み込めてきた。

(……何処かのお城?でもさっきまでお店にいたのに、どうやってここまで……?)

 移動方法こそ分からなかったが、ここに控えるメイド達以外の採寸だろうと考える。何人かまでは分からないが、この男の子と女の子の二人は確実だ。他の部屋に居たりすれば、正確になど分かるわけもない。

「妾はミーシャ様とラルフを連れて帰ル。マヤとやら、先にここに居ル者達全員ノ相手を頼むぞ。ブレイド、丁重にもてなせ」

「分かりました。アルル、そんなブスッとせずに一緒にやろう」

 不機嫌そうにしていたのはアルル、男の名前はブレイドというらしい。それにミーシャとラルフという聞き慣れた名前が聞こえてきた。

「ミーシャさんとラルフさん……ってもしかして、あの魔族襲撃の前にお店に来た……?」

 過去自分が対応した人全員を覚えているわけではないが、特徴的な二人だったことは覚えている。ミーシャはダークエルフの女性、ラルフは小汚い格好で草臥れたハットを被っていた男性。魔鳥人襲撃の件と重なって脳裏に刻まれていた様だ。
 その他にも白い女の発した「全員」というところに引っ掛かった。ここにいる全員ということはメイドも含めてだろうか?聞こうと振り返ったが既に姿は無く、音もなくかき消えていた。不思議に思って見渡していると、アルルが声を上げた。

「ジュリアさーん。最初にお願いします」

 ジュリア。また新しい人物の名前が挙がった。先の「全員」を鵜呑みにするなら、もしやここに居るメイドの一人だろうか?どれがジュリアか眺めていると、そのメイドをかき分ける様に人狼ワーウルフが姿を現した。

「ハァ……何デ最初ガ アタシ ナノヨ……」

「だって人狼の採寸した人なんて居ないだろうから時間掛かるかもって話し合ったじゃないですか。文句は後にして下さい」

 その姿を間抜けにポカンと見ていたマヤは意識が遠のいていくのを感じる。(これはきっと夢だ)と体が気絶を選んだのだ。ブレイドはまた即座に抱きかかえる。

「やっぱり体調悪かったのか……仕方ない、ちょっと寝かせよう。空いてるベッドってありますか?」

 マヤはラルフたちが戻ってくるまで眠りこけ、ラルフの説明と説得を受けてから最初の仕事に取り掛かるまでに今から二時間を要することになる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...