一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第十章 虚空

第七話 読み合い

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 ──ジャッ

 真っ先に突っ掛けたのはナタリア。切っ先を突き出してベリアの胸部を狙う。
 当たれば即死は免れない急所。ベリアは左足を引き、紙一重で躱した。

 ビュンッ

 空気を切り裂く音が響く。
 突っ掛けた速度からバランスを崩すことが予想されたが、避けられることを想定していたのかナタリアは槍に体重を預けておらず、即座に槍を引き、連続で攻撃を繰り出した。
 この追撃には流石のベリアも躱しきれない。三度目の突きを掠りながら躱し、4撃目が迫るその瞬間、タイミングを合わせて穂先の峰を叩き、攻撃の軌道を反らした。

「噴ッ!!」

 ズンッ

 ベリアは思いっ切り地面を踏みしめ、ナタリアの足場を揺らす。

「!?」

 ナタリアの接地していた足がほんの1mm浮いた。その隙を突き、丸太のような太い腕を振り抜く。

 ガンッ

 放った掌底は槍の柄で防御された。それでもその威力は凄まじく、成人女性の体が垂直に飛ぶ。ナタリアはすぐに羽を広げ、空気抵抗により威力を殺した。

「ホウ……中々ノ判断力ダ。ソレニ動体視力ト反射速度ハ 流石ハ一流と言ッタ所ダナ」

 ニヤリと獰猛な笑みを見せたが、それは威嚇ではなく、心の底から楽しいと感じる嬉々とした表情だった。

「……一線を退いたとは思えない動きね……それも単なる勘や生来の能力頼りではなく、経験に裏打ちされた確かな動き。見た目だけの老人と侮っていたわ……」

 広げた羽をバサバサと羽ばたかせて、ゆっくりと地に降り立つ。それと同時に左足を前に出して穂先を下に、地面でも掘り返そうとするような姿勢でピタッと止まる。

「堂ニ入ッテル。俺ノ心臓ガ欲シイッテカ?ヨーク狙イナ。ココダゼ、ココ」

 胸の中心をトントン叩いてアピールする。ナタリアはジリジリと摺り足で飛び込む先を定める。動けないように足を攻撃すべきか、攻撃の手数を減らす為に腕の腱を狙うか、それともベリアの言うように最初と同じく急所狙いか。
 先の攻防から無策では危険と判断したナタリアは判断に迷う。どうするか決め兼ねている時、今度はベリアが突っ掛けた。

 ドンッ

 地面がめくれ上がるほどの衝撃。筋肉の砲弾は寸分違わずナタリアを襲った。当たれば即死とまで謳われた握り拳は、ナタリアに回避されて地面を抉った。それに合わせたナタリアの槍の突きはいとも簡単に弾かれたが、ベリアの打撃も当たりはしない。
 一進一退の攻防。現役の白の騎士団とロートルの格闘士。アニマンの兵士諸君、空王他アロンツォが固唾を飲んで見守る。アニマン側の精鋭部隊の元に勲章をジャラジャラ鳴らして犬の獣人が歩いてきた。

「貴様ラァ!何ヲシトルカ!アノ建造物ヲ前ニシテ ココデ油ヲ売ットル場合カ!!」

「ショ……将軍!」

 やって来た犬の獣人は偉そげな態度で、ピッと背を伸ばし、腰の位置に後ろ手に手を組んだ。

「遊ンデイル場合デハ無イ!敵ノ素性、規模、行軍速度ナド確認事項ハ沢山アル筈ダ!!誰ゾ偵察ニ向カッタ者ハ居ルカ?!最新ノ情報ガ知リタイ!」

 以外に高い声でキャンキャン吠える将軍に、猫の獣人、キッドが声をかけた。

「現在ベリア様ガ敵ト交戦中。相手ハ ヒューマン ト バード ノ二種」

「ベリア ガ交戦中!?数ハ?!」

「九人。内一人ノ女槍術士ト互角ノ戦イヲ強イラレテイルヨウデシテ……」

「馬鹿ナ!誰カ望遠鏡ヲ持ッテ来イ!」

 すぐ側で望遠鏡を覗いていた獣人が将軍に差し出す。それをふんだくるように取り上げると、早速確認し、すぐにたじろいだ。

「コンナ……馬鹿ナ……」

 わなわなと肩を震わせながら続けて望遠鏡を覗く。敵の戦力を推し量る為にも戦いだけではなく、周りに立っている他の連中に目を向けた。

「アレハ風神ノ アロンツォ。トイウ事ハ、今戦ッテイルノガ……天宝ノ可能性ガ高イ……ン!?アレハマサカ……ク、空王様!?」

 何が起こっているのか皆目見当がつかない。頭を整理するのに時間がかかった将軍は、突然弾かれたように動き出した。が、すぐに立ち止まって振り向く。

「何ヲシテイル!!今スグ空王様ヲ迎エニ行クゾ!!私ニ続ケ!!」

 張り切る将軍とは裏腹に、みんな暗い顔をしている。

「ベリア様カラ今回ハ見物ヲスル様ニ命令サレマシタ。下手ニ動ケバ、何ヲサレルカ恐怖ニエマセン」

「良イカ!コレハ将軍命令デアル!今スグ付イテ来イ!!」

 将軍の大声でようやく精鋭部隊も重い腰を上げた。



「ふあぁ……」

 要塞内部ではミーシャの欠伸あくびが炸裂していた。

「あーあ。結局戦うんなら、私たちが行ったって問題なかったでしょうに」

 頬杖を突きながら映像にかじりつく。両者の攻防を見て一言。

「……弱っ」

 ベルフィアとエレノアがそれに共感し、頷いた。
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