一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
483 / 718
第十二章 協議

第四十二話 勝ち目のない戦い

しおりを挟む
 ロングマンにかつてない試練が降りかかってきた。
 神に愛された世界最強の騎士ゼアル。目にも止まらぬ早業で、且つ防ぐのもやっとな威力を叩き込んでくる。
 ここまで追い詰められたことはかつて無い。この男だけでも難しい戦いを強いられているというのに、藤堂まで相手にしなくてはならない。
 藤堂はロングマンたちと同じ異世界人。異世界人には特異能力の付与と身体強化の二つを約束されている。技でこちらが優っていても、身体能力は五分ごぶ。特異能力でひっくり返される可能性もある上に、鎖の呪いで不死身ときている。まともにやれば勝てる可能性は皆無。

(……いや、搦め手が通用したとて勝率は1%にも満たない。この戦い確実に負ける)

 刀を構えて牽制しつつジリジリとゆっくり動く。一発逆転が狙えそうなのはゼアルだろう。不死身の藤堂は幾ら斬っても意味がないので放置するとして、ゼアルに何とか致命の一撃を加えられれば良い。それが可能かどうかはこの際置いておく。

 シュバッ

 ロングマンが刀を振ると、斬撃が飛ぶ。これは秘剣”火光かぎろい”のように威力はない。威力がない代わりに特化したのが距離である。白の騎士団が一人、嵐斧のアウルヴァングが使用していた飛ぶ斬撃をロングマンなりに落とし込み、さらに改良まで加えた新技”火喰い鳥”。

 ギィンッ

 ゼアルはそれを難なく弾いた。

「む?これはアウルヴァングの……なるほど、これならば飛び道具があるというのも納得出来る」

「この程度で驚いてもらっては困る。さっきのは単なる小手調べ」

 ザッと刀を上段に構え、大きく息を吸った。

「火閻一刀流”火喰い鳥・群”」

 嘘みたいに高速の連続斬り払い。体がブレて刀を振った音が幾重にも重なって聞こえる。その振りから放たれる幾つもの飛ぶ斬撃はまるで空を覆い尽くすムクドリの群れのようだった。

(何のつもりだ?)

 ゼアルは斬撃一つ一つを注視する。常人なら一瞬で微塵切りの攻撃。しかしゼアルには通用しない。
 先程の飛んできた斬撃を軽く防いだように、威力に乏しい攻撃など幾ら放たれても同じこと。だからこそ感じる予感。これはブラフ。先のラルフを襲った斬撃を放とうとする下準備の可能性もなくはない。ミーシャが防がれなければ確実にラルフは真っ二つだったことだろう。

(……面倒だな)

 乱れ撃たれた攻撃を防ぐのも、あの斬撃が放たれるのも、それを察知して警戒している自分も面倒だ。これは全てゼアルを近付かせないようにしているのだろう。肉迫すれば万が一があることをロングマンは既に見抜いている。

 ギギィンッ

 ゼアルは自分に当たりそうな斬撃だけを選んで弾く。弾くと同時に前に出た。どれほどの弾幕も綻びは必ずある。ゼアルはそれを見抜いて一つ弾いては安全地帯に逃げ込み、また一つ弾いては次の安全地帯に逃げ込んだ。まるで踊るような優雅な移動は、同じ騎士団の仲間とて見ることは出来ないだろう。
 全く無駄な動きのないゼアルの移動に戦慄を覚える。ロングマンの経験をあっさりと超えてくる、まさに人類最強の男。

(これでは火光は使えないな。あれは隙が大きい。となれば……)

 あっという間に群れを抜けたゼアルを睨みつけ、ロングマンは次なる技を発動する。

「……陽炎」

 ゆらりと鈍く動いてゼアルに隙を見せる。その動きにまたも警戒心が芽生える。ロングマンの動きに被って見えたのはラルフの姿。

 バッ

 途端に胡散臭くなったロングマンから少しだけ距離を取る。その動きに戸惑いを覚えたのはロングマンも同じだ。

(!……まだ何もしていないというのに見破られたとでもいうのか?)

 陽炎は相手の虚を衝く攻撃。ゆっくりした動作から一気に加速することで、目の錯覚を利用した最大級の攻撃を仕掛ける。上手くいけば敵がこちらを見失う可能性すら秘めた一発逆転の技でもあった。
 とはいえ、ロングマンの動きを肌で実感しているゼアルにとって陽炎はそこまで脅威ではない。幾らゆっくりした動作を見せつけられても、今までの素早い動作から油断を誘っていることが分かるからだ。それでも敢えて飛び退いたのには理由があった。
 それはゼアルの故郷、イルレアン国でラルフと相見あいまみえた公爵の別荘での戦い。絶対に勝てると踏んだ庭先での決闘は、ラルフの当時の身体能力を見誤ったゼアルの敗北。
 あの時、唯一の武器であるダガーナイフを捨て去った時のラルフのドヤ顔が、似ても似つかないロングマンの顔に薄っすら幻視した。

(これが虫の知らせというものか……ちっ、あの男で学習したなど口が裂けても言えん。このことは墓まで持って行くとしよう)

 虚を衝くはずが逆に虚を衝かれたロングマン。肩透かしを食らったせいか、一瞬硬直してしまう。
 好機。
 ゼアルはこの瞬間、”速度超過クイックアップ”を発動する。全ての時間が止まったように見える。この空間はゼアルだけのものだ。

(やはりこれほどの男でもこの空間には手も足も出ないか。みなごろしだけは別格であると認めざるを得ないな)

 ゼアルは剣を構える。前回ジニオンに放った一発目の攻撃は腕だった。あのせいでドゴールが死んだことを思えば、ガノンの叱咤が心に沁みる。
 ならばここで狙うのはロングマンの首だ。一閃振るって首を落とす。油断はしない。確実に殺す。
 ロングマンは八大地獄の要。ここで討ち取れれば戦線が瓦解するのは火を見るよりも明らか。

 シュピッ

 ゼアルの鋭い一閃でロングマンの首が切れる。そこでクイックアップの効果が切れて元の風景が戻ってきた。

 ザザッザッ

 ロングマンは凄まじい勢いで後ろに下がっていった。その動きにゼアルは違和感を覚える。

「……ん?」

 それはほんの少しの小さな違和感。じっと見ていると、ロングマンは急いで首を掴んでいた。手の間からは溢れ出た血液が凄まじい勢いで流れ落ちる。

(いや、気のせいだ。私は奴の首を確実に切り落とした)

 違和感の正体はクイックアップ使用時のロングマンの立ち位置と、効果時間が切れた時の立ち位置が若干違っていたことだ。入った瞬間は棒立ちだったというのに、能力が終わってみたら後方に飛んでいた。凄まじい身体能力を保有するロングマンのことだから、終わったと同時に背後に飛んでもおかしくはないだろう。
 結局は単なる思い過ごし。そんな詮無いことを考えたところで最早意味などない。急いで首を掴んでも、その首は既に体から離れている。あの行動は無意味以外の何でも無いのだ。

 ゴボッ

 ロングマンの口からも血が溢れてきた時にゼアルは剣を鞘に仕舞った。藤堂は一部始終を火喰い鳥の群れに切り刻まれながら見ていた。

「ヒュー。まさかこんなにも簡単にロングマンをやっちまうたぁ恐れ入ったぜ」

 二対一で戦うことを考えていた藤堂に取っても意外な展開だったようで、頭をボリボリ掻きながら感心していた。拍手までしそうな空気を感じるが、死を前にした元友人に対してそこまで冷酷にはなれない。せめて苦しまずに成仏してくれと願うばかりだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...