一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
494 / 718
第十三章 再生

プロローグ-2

しおりを挟む
「……歴史上類を見ない」

 始まるやいなや口を開いたのはやはり森王だった。

 王の集い。
 人族の未来を守るための同盟。生存圏を脅かす敵を人類が一丸となって倒すことを目的とした平和維持協会。助け合い、支え合う、繁栄のための組織。
 最強の軍事力である白の騎士団を"人類の剣"とするなら、王の集いは"平和の架け橋"と呼ぶのが相応しい。

 現在のエルフの長、森王レオ=アルティネスの名の下に集った全八種の長たちからなるこの組織は、少なくとも二百年の歴史を持っている。それもこれもエルフが主席を務めているお陰だろう。長寿の種族が飽きもせず魔族殲滅を夢見るからこそ成り立っている。
 もし森王が何度も代替わりしていたり、人類の存続に対する固い意志と情熱を持っていなければ、とっくに滅んでいたであろうことは想像に難くない。それはここに座る王たちの総意だ。

「これほどまで魔族を脅かすことが今までにあっただろうか?」

 ギロリと周りを見渡す。誰も口を開かないが、誰もが森王の言いたいことが分かり、それに賛同している。それが雰囲気で伝わった森王はふっと微笑んだ。

「……我らはようやく勝利を迎える。それがどんな形であれ、あと一息という所まで来ているのだ」

 魔族の数は恐ろしいほど目減りしている。十二柱もいた魔王たちも、気がつけば第二、第三、第四、第五、第十、第十二の六柱。情報の提供は全てマクマインによるものだったが、その全てを信用することが出来たのは関わったとされる魔族の名前だった。
 第二魔王”みなごろし”、その名はミーシャ。

「かの魔王が暴れまわった結果、そして白の騎士団の功績。数々の行いや幸運が重なって出来た奇跡。ようやく……世界が変わる……」

『時期尚早ではないか?』

 森王の噛み締めるような物言いに待ったを掛けたのは精霊の頂点、四大王ロア=エルメロイ。森王レオ=アルティネスとは旧知の仲で”王の集い”を立ち上げるきっかけとなった存在でもある。

『そなたの言う魔族を脅かすという現状は全て、かの魔王が起こした同士討ち。カサブリア王国キングダムでの一件は結果的に”魔断”の活躍によるものではあったが、その他のものに関して自力で解決したものなど無いではないか?』

 四大王の指摘に獣王は喉をグルルと喉を鳴らした。

『……オイ、四大王……何ガ言イタイ?』

『何、だと?もう分かっているはずだ。我らでは踏破不可能な絶壁の前に立たされている事実を……』

 四大王の比喩表現に首を傾げる。

『絶壁ダ何ダノト……モット分カリヤスク言エネェノカ?』

『イヤ、獣王。モウ良イ』

 獣王の喧嘩腰を窘めたのは同じ獣人族アニマンの牙王だった。獣王が獅子に対し、牙王は象を模した風貌をしていた。太く野太い声はのんびりしているようで、その実ハッキリと拒絶の意思を感じさせた。

『コノ状況ヲ生ミ出シタみなごろしヲ、ドウ処分スルベキカ。魔族ニ抗ウオイ達ノ行ク末ハ、全テソコニ集約サレテイル。絶壁……正ニソノ呼称コソ相応シイ』

 太く短い指を絡めてため息をついた。如何しようも無い力の存在に途方に暮れている。そんな中にあってクスクスと嚙み殺すような笑いが聞こえた。牙王はゆっくりとその笑い声の主を見た。ヒューマンの王、”国王”フリード=Vヴィルヘルム=ハイドクルーガー。

『国王。何ガ可笑シイ?』

『いやいや、これは失礼。さっきから聞いていて色々、ね。というのも、かの魔王は既に我らの手中にあると言って過言ではない。あの男、名前は何だったか……そう!ラルフ!あの男の元にいる以上、我らのものと断言しても良いのではないか?』

 いやらしいニヤケ面で気味悪く笑う。これには牙王も苦笑する。ここに集う王たちのほとんどが同じ反応だ。よく思われていないし、あざけりが入っているのも気づいている。しかしそれでも国王は続ける。

『まぁ、君たちの言いたいことは分かる。ラルフはこの議場を乗っ取り、我らに恥をかかせた。第三の敵であるとの認識で相違ないだろう……が、こんな言葉を聞いたことはないかな?敵の敵は味方、という言葉を……』

 先程までの嘲笑は消え、沈黙が場を包む。辿り着きたくなかった答えだ。いや、この場の全員が既に行き着いた答えだった。頭の引き出しに無理矢理仕舞った言葉を、国王に敢えて引っ張り出されたと言った方が正しい。

『ちょっと楽観的すぎやしない?』

 空王はケチをつける。

『あいつは運良く化け物の隣に居て殺されないけど、どれほどの権限を有しているのか不明な以上、味方として数えるのは間違っているんじゃなくて?……森王。あなたにも言えるけど、この件は静観を決め込むのが賢い選択よ。古い手だけど、全てあの女に壊してもらってから総取りするってのは?』

『悪くない手ですなぁ、流石は空王。世の渡り方というものをご存知のようだ』

 国王は軽く手を叩いて称賛する。

『……バカにしてんの?』

『いえいえ、本心ですとも』

『つまんないおべっか!』

 いつもの雰囲気に戻りつつある議場。そんな中にいつもとは違って獣王は力無くため息をついた。

『カー!呑気ナモンジャネーカ……白ノ騎士団ガ、コテンパンニヤラレタッテノニ……激烈モ死ンダ。誰ニヤラレタ?モチロン俺達ノ敵ニダ。……オイ!コラ!ズット黙ッテルガ、コノ失態ノ責任ハドウスルツモリダ?マクマイン!』

 獣王に声をかけられたマクマインは、成り行きに任せようとしていたかのようにおし黙り、目を瞑って腕まで組んでいた。声を掛けておいて何だが、獣王は後悔していた。今のマクマインには覇気がない。こんな奴に何か聞いても良い返事など期待出来ようはずもなく……。
 そんな情けない男が目を見開いた時、その印象は一変する。活力に満ち溢れ、負のオーラなど存在しないかのような清々しい笑顔をたたえる。

『失態?ふふっ馬鹿な。これは必要な犠牲だったのですよ』

 場内がピリつく。

『……待テ待テ。くちノ聞キ方ニ気ヲ付ケロヨ?白ノ騎士団ノ損失ハ凄マジイノダゾ?ヒューマンハ生キ残ッテイルカラ余裕ナノダロウガ、コッチハソウイウ訳ニハ……』

『ラルフは死んだ』

 この言葉に今度はざわつき始めた。特に国王は先の発言でミーシャは味方であると豪語したばかりである。それもこれもラルフが健在ならという前提の話だ。正にこの機を見計らった発言は、国王を馬鹿にする目的としか思えなかった。
 怒りや興奮、そして困惑が動揺を誘い、全員がマクマインを注視する。

『ついては今後の方針を語る前に紹介せねばならない者たちがいます。心して聞いていただきたい』

 そう言うと、画面外で何やら操作し始める。現在空席となっている海王の席の魔晶ホログラムが起動した。そこに映し出されたのは目が覚めるような蒼い女性だった。

『皆様ご機嫌よう。私の名は蒼玉。ペルタルク丘陵を統治する魔王でございます。以後お見知りおきを……』

 魔王”蒼玉”。その名に聞き覚えのあった王たちは戦慄する。いつぞやラルフがこの議場を乗っ取ったあの話。「裏切り者」。適当なことを言って煙に巻いたのだと思っていたが、マクマインのことだったと改めて痛感した。

『これが王の集い?何よ、ただの老人の集まりじゃない』

 そして心底震え上がる。蒼玉の隣に立つ女性の姿に……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...