一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
496 / 718
第十三章 再生

第二話 昔々のお話

しおりを挟む
「……何で妾がこんなことを……?」

 ベルフィアは不満げにポツリと漏らした。



 それは十分前に遡る。
 ラルフに対して白絶の出した条件は三つ。
 一つ、参戦させるからには最良の手を以って敵に挑むこと。
 二つ、ミーシャの記憶が戻らないと判断した際は躊躇う事なくその命を奪うこと。
 三つ、テテュースとベルフィアを対談させること。

「……は?」

 ベルフィアは何を言われたのか理解出来なかった。それはラルフたちも同じだ。

「え?対談?二つは理解出来るが、何で対談?」

「……知る必要のないことよ……」

 白絶は答える気がないと言いたげに突っぱねる。ラルフたちは白絶から目を離してテテュースを見た。テテュースは身じろぎ一つなくじっとしている。

「くだらん冗談を言っとル場合か?今は何ヨりミーシャ様ノ安全を考えルべき時。お遊びに付き合う気など毛頭無いワ」

 ベルフィアは眉を顰めて怒りを見せる。白絶もその反応に目を細める。急激に不機嫌になっているのを感じ取ってラルフは口を挟む。

「わぁーっ!嘘嘘っ!こんなん嘘だから真に受けちゃダメだぜ?はっはっはっ!」

 ベルフィアの肩を掴んで白絶から視線を逸らす。声を落として言い聞かせるように口を開いた。

「……白絶を怒らせても何の得もないことは分かんだろ?ただの会話だって。そんなんで参戦してくれるなら儲けもんだろうが」

「ふんっ……!ただおちょくルだけじゃったらどうすル?暇つぶしにもてあそんでおいて、やっぱり行かんじゃ話にならん。条件などとていノ良い断り文句だと思ワんか?」

「バカ!そんなことをいちいち考えてると思うか?てか、こんな言い合いこそ意味が無いだろ。歩み寄るのが大切なんだよ」

 何故か意固地になるベルフィアの説得に勤しむラルフ。痺れを切らして白絶が声をかける。

「……この程度の条件に何をいちいち……早くしてくれない……?」

「すまない!もう済ますから!」

 ラルフはため息をつき、肩を竦めてハットを被り直す。

「……気に入らないのは分かる」

「違う。こんな無駄なことに時間を使うことがおかしいんじゃ……奴が気に食ワんし」

「良し、分かった。そんなお前を動かす魔法の言葉を唱えよう」

 ラルフは勿体振った言い方で一拍置いた。

「ミーシャのためだ」



 応接間に通されたベルフィアは、テテュースの対面に座らされる。
 喪服姿の淑女はまるでマネキンのように身じろぎ一つしない。共にアンデッド同士、しかし不死の定義が違う二人はただ見つめ合う。

(ミーシャ様を救い出すタめとはいえ、こんな奴らノ手を借りねばならんとは……)

 そう思うのも無理はない。敬愛するミーシャを真っ先に手駒にしようとしたのは他ならぬ白絶である。未遂に終わったのは運が良かっただけだ。記憶を取り戻す名目で蒼玉から取り上げるだけの可能性もある。
 常に目を光らせているのがミーシャに対する忠誠というものだ。ラルフが間抜けなので自分がしっかりせねばならない。

「……いつまで黙っとルつもりじゃ?日が暮れルぞ?」

 さっさとこの茶番に終止符を討つべくベルフィアから声を掛けた。

「噛み締めているのでございます」

「噛み……なに?」

「夫との再会にでございます。ようやくこの機会に恵まれました。白絶様、並びにあなた方にも感謝申し上げます」

「夫……ふむ、なルほど……妾ノ中ノ灰燼に用があルと、そう言いタいんじゃな?」

 コクリと頷く。
 テテュースは白絶の側近であり下僕。自身のわがままは許されず、白絶の行うことこそ常に優先されなければならないと考えている。そんな主人に賜った機会に感無量の様子。

「私は夫を消滅に追いやったあなた方を憎く思っておりました。しかし、あなたの中に微かに残る夫の気配に喜びを感じたのも事実。今一度会話をしたく……」

「残念じゃノぅ、灰燼は妾ノ記憶になっとル。妾ノ人格は妾だけノ物じゃ。そちノ思う対話にはならんぞ?」

「むしろそちらの方が好都合でしょう。夫とは噛み合わない節が多々ありました。私のことなど路傍の石よりも興味がないものであったと自負しております。久々に思い出話に花を咲かせられれば幸いでございます」

 ベルフィアはきょとんとした顔でテテュースを見つめる。

「……変わっとルな。そちがそれで良いと言うノであれば付き合おう」

「はい。それとこれは私のわがままなのですが、よければテテュースとお呼びいただければ……」

「ふむ……それではテテュース。何ノ話を望む?」

「はい。夫……オケアノスは何故私を捨てたのかをお聞かせください」

「……重っ」

 最初の質問が重すぎてたじろいだが、すぐに目を瞑り、こめかみに指を添えて思い出そうとする。

「かなり深いノぅ……記憶ノ断片などというところにはおらん。深層心理……いや、数々ノ記憶が混在して埋もれタか。灰燼本人もすっかり忘れてしまっタ場所に答えがあル」

 ベルフィアはゆっくりと目を開けた。

「……そちじゃ」

「え?」

「そちノことがきっかけノヨうじゃぞ?」

 テテュースは不思議な顔をして困惑を隠せない。ベルフィアがテテュースの気を良くしようと考え、突然そんなことを口走ったと思ったが、こう言っては何だが彼女にそんな知恵があるとは思えない。良くも悪くも感情に左右される存在だ。そしてそれは的を射ている。ベルフィアは彼女の印象通り、全力で馬鹿にする時くらいしか相手の感情を逆撫でしようと画策しない。
 覚えている限り五百年はなかった胸の高鳴りを感じて唇を震わせる。既に死者と化しているテテュースの心臓は止まっているというのに、高揚を止めることは出来ない。
 ベルフィアは少し前のめりになったテテュースの期待に応えるように続きを話した。

「……二人ノ間に子供が産まれんかっタヨうじゃな。何が原因なノかを研究しタ結果、灰燼には種がなかっタことが発覚。次代にそちとノ遺伝子をつなぐことが出来ない事実に深く衝撃を受けタと見えル」

「……」

 テテュースは押し黙って下唇を噛んだ。

「それでも何とか二人ノ愛ノ結晶を残しタかっタヨうじゃ……遺伝子組み換え、融合、分裂と細胞ノ培養。生き物を捕らえては研究ノ糧とし、時間を忘れて没頭しタノじゃな」

「わ……」

 テテュースは震える唇を抑え切れずに、そっと漏れ出したような声を出す。

「……私にも非はあります……」

「いや、子供が産めなかっタノはそちに非は無い。それはあノ時に二人ですり合わせを行なっていルではないか」

 あの時。それは研究に明け暮れる灰燼……いや、オケアノスに対してテテュースが止めるように交渉しに言ったあの時だ。オケアノスは妻であるテテュースの体も既に調べていたのだ。彼は資料も用意して反論の余地をなくしていた。
 もう止められない。そう感じた時、自分に非があったならどれほど良かったかと泣き腫らした日々を覚えている。

「灰燼は研究に研究を重ね、やがて異世界人ノ情報を入手しおっタ。そノ頃ノ灰燼は弱く、一人捕まえルノにかなり難儀しタヨうじゃが、記憶を探ル内に異世界に興味を持っタヨうじゃぞ?そノ事がきっかけで自分ノ遺伝子を後世に残すことを諦め、アンデッドになって永劫ノ時を生きルことにしタヨうじゃ」

 淡々と話すベルフィアは一拍置いて、テテュースの様子を見つつ口を開く。

「テテュース、そちノことは一応気にかけとっタヨうじゃが、自分なんぞ忘れて新タな一歩を踏み出して欲しいと思い、二度と会わないことを決意しタヨうじゃぞ?……男とは勝手なもノじゃノぅ」

 テテュースはオケアノスと一生添い遂げる覚悟だった。夫がアンデッド化したのを感じた彼女は自身も禁忌に触れてアンデッドとなった。行動の全てが彼女の覚悟を物語っている。

「……よく分かりました。夫がもし消滅していなくても、私の前には姿を現さなかったでしょう。いやそれ以前に、深層心理に隠れた記憶となっていたのなら、私のことなどすっかり忘れていたでしょうね……こうして分かったのは奇跡です……」

 痛々しいテテュースの哀愁漂う姿に流石のベルフィアも軽口を叩けなかった。舌先で唇を湿らせながらも黙って目を伏せた。

「申し訳ございませんベルフィア様。この様な暗いお話を……」

「様なんぞつけんで良い、せっかくノ対談じゃ。暗い話題だと思うなら明ルい話題に変えれば良かろう?さぁ、次は何を題材にすルかノぅ?」

 少し前までは全く乗り気ではなかったベルフィアだったが、テテュースとオケアノスのいじらしい関係に感化されて気持ちを入れ替えた。テテュースもこの変化に顔が綻び、喜びを湛えていた。
 二人の対話は思った以上に長く続くことになる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...