一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第十四章 驚天動地

第二十七話 座して待て

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『違う、そうじゃない』

 ネレイドはキッチンでブレイドの料理にダメ出しをしていた。

『料理は芸術なんだ。美味であることは当然だが、見た目にもそれが現れていないと食欲に繋がらない。盛り付けは美しくあるのが何よりも重要なのだ』

 少年の見た目で身長が低いので、木箱で足場を作り、まるで指揮者の如く台所を覗き込む。指揮者に見えたのは、指揮棒タクトを振るように人差し指を振るっていたからだ。ブレイドは少々困った様子だったが、次第に子供をあやすように態度を変えてネレイドの意見に従う。

「ははっ、そうか。確かにこうすれば綺麗に見える。特に香草を飾るのは良い発想だな。ソースをお皿の淵に垂らすのはよく分からないけど……」

『これだから子供は困る。一度、高級料理店に足を踏み入れてみなさい。料理の何たるかがよく分かる』

「機会があればそうするよ」

 ブレイドは苦笑いを見せる。人間社会に今後踏み入れることが出来るのかどうか怪しいと感じたためだ。半人半魔ハーフである身の上や、ラルフと供に歩んでいく道には敵が多い。人族もその中に含まれている。少し前にアルパザでご飯を食べられたことが、奇跡にすら感じられるほどに人族との繋がりは薄い。

『……ネレイド、細かい』

 ミネルバはネレイドに苦言を呈す。ブレイドの苦い顔を見て空気を読んだのか、その顔には非難の意思が感じられる。
 ミネルバがブレイドの味方をするのは胃袋を掴まれたからだ。数千年ぶりの肉体にブレイドの料理は刺激が強かった。ラルフ一行の下に置いておくには惜しいと考えるほど。

の者にさらなる向上を目指して欲しいと思うが故に口を出しているのだ。かなりのレベルに達しているからこそ、次のレベルを目指して欲しいと思うのは当然ではないか?』

 ネレイドも胃袋を掴まれていた。

「うーん、別に見た目に拘らなくても良くないですか?」

 アルルがネレイドとブレイドの合作料理に首を傾げた。

『馬鹿な。美味しいければ見た目がグロくても良いというのか?』

「いや、極端を言いたいわけじゃないですよ?美味しい料理を普通に盛りつければ良くないですかってことを言いたいだけで……」

『ならば更に美しく盛り付けるのは良いことではないかな?ブレイド、続け給え』

 厄介な料理オタクと化したネレイドにブレイドもアルルも、ミネルバさえもタジタジとなってしまう。

「なんか、面白い奴だよな」

 ラルフは他人事のように台所入り口で見ている。サトリは側でコクリと頷いた。

『彼は気に入ったものにはとことん関わりたがる変な性格をしています。一応私も目を光らせていますが、ブレイドに関してはネレイドから仕掛けるようなことはないでしょう。それどころか、危険から守ってくれるかもしれませんよ?』

 サトリの文句にラルフは違和感を感じる。それはサトリも同じだと考えたからだ。いや、それ以上だ。
 神に気に入られたのは古くは八大地獄、昨今で言えばマクマインやソフィーに代表される特別天才な連中。ブレイドも特別天才に分類される凄い奴なのだ。
 それに比べればラルフなど足下にも及ばない凡人。あまりの力の無さに、哀れみから力を授けられるほどだ。「気に入ったものにとことん関わりたがる変な性格」とはサトリの自己紹介だろう。

「……神に気に入られるってのは凄ぇことだよなぁ……」

『何だか他人事ですね、パパ』

「それは辞めろ」

 ラルフとサトリの漫才を目の当たりにして、ぷぅっと頬を膨らますミーシャ。それに気づいたベルフィアは喉を慣らすように一つ咳払いをする。

「……それにしても、奴らが用意しタというノはどんな敵なんじゃろうなぁ?」

 急に振られたアンノウンは目をパチクリしながら首を傾げる。

「うーん。用意したのは「戦士」でしょ?って言い方からしたら人型っぽいけど、もしかして一から作った化け物かも?」

 アンノウンは助けを求めるようにジュリアを見る。ジュリアも唸りながら言葉を紡ぐ。

「アタシ的ニ、ヤリ辛イノハ単純ニ軟体動物ヤ多足、若シクハ触手系統ッテトコ。ミーシャ様ナラ、ドンナ生物ダロウト関係無イト思ウケド……」

 ミーシャが強いのは常識だが、その「戦士」とやらに勝てば手を引くという条件を出すほど信頼厚い強者。いろんな発想が出るのも無理はない。

「会ってみないと分からない敵を妄想するのは不毛じゃなぁい?」

 エレノアは不思議そうな顔で質問する。ベルフィアはエレノアに「空気を読め」と睨む。ミーシャの不快感を逸らすために始めた会話なのだから、ある程度不毛である方が良い。負の感情を散漫にさせるのは、いつでも終わらせられるが、多少気になる会話である必要がある。
 そう、直近のことで一番だと思えるのは不明な敵を考えることであり、敵の姿形や能力の妄想は娯楽性がある。それをバッサリ切るのは如何なものか。

「その通りだ。エレノアの言う通りそんな話は不毛だし、ジュリアの言う通り私に敵はいない。古代種エンシェンツですら私の脅威にはならなかった。ケルベロスはこの通り良い子だし?」

 ミーシャの指差したところには、中型のしば犬三匹が舌を覗かせたアホ面でキョロキョロと周りを見ている。

「で、でも気になることがありますよ?」

 ミーシャの言葉で終わったはずの会話を歩が繋げた。

「用意した戦士というのがどんな奴なのかは確かに気になるところですが、何人かも言ってないんですよ。万が一、ミーシャさんクラスの敵をいっぱい用意されたらと思うと……」

 ぶるっと体を震わせる。確かにそんなことがあればヤバ過ぎるが、それは恐怖を煽りすぎだ。それに自他共に認める最強のミーシャを引き合いに出して無茶を言うのは不機嫌にさせかねない。ベルフィアは焦り気味に割り込もうとするが、それより早くミーシャが口を開いた。

「面白い。私レベルの敵が存在するなら、戦いは劇的なものになるだろうな……」

 ミーシャは不敵に笑う。まんまと負の感情を散らせたことにホッと胸をなでおろした。

「皆様、ご覧ください」

 最近メイドが板についてきたメラは、壁際からモニターを指差す。モニターに映し出された外の景色に、小さくて薄ぼんやりとした陸地が見えてきたのが分かる。モニターを投影しているアスロンがうんうんと頷きながら口を開く。

「これは望遠レンズを用いて見とる景色じゃ。今のペースじゃと後一日掛かる。今日はゆっくり休むが良い」

「あ、今日中には着かないの?なーんだ……」

 ミーシャは面白くなさそうに唇を尖らせる。

「好都合だぜ」

 ラルフはミーシャの言葉に被せた。みんなの視線がラルフに集まる。

「アスロンさん言う通り、今日はゆっくり休んで明日に備えよう。相手が誰であろうが俺たちが力を合わせりゃ敵じゃねぇ。やっつけようぜ、あいつらが本当に引き下がるかどうかは置いといてな……」

 ラルフはミーシャの肩に手を置く。先程まで不機嫌だったミーシャは何処へやら、ラルフの顔を覗き込んでニコリと笑った。
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