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第十四章 驚天動地
第三十三話 乗るなゼアル
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障壁の外で話を聞いていたマクマインは、ラルフの言葉に強烈な違和感を感じて口を開いた。
「駄目だ……ゼアル!!ラルフの口車に乗るな!!」
「……閣下……?」
ゼアルは視線をラルフから外さずにマクマインの声に耳を傾ける。その僅かな変化に気づいたマクマインはそのまま続ける。
「奴は口だけの男だ!譲歩すれば付け上がる!今すぐに我らを取り込め!!」
確かにラルフの口から”正々堂々”や”一対一”と言われたら、疑わない方がおかしい。しかしゼアルは一度イルレアンにて真っ向から勝負をしている。その時はまさか神によって力を与えられているとは露ほども思わず、油断があったことは言うまでもない。この一件から、ラルフは勝負事に関しては一応誠実であると捉えられる。
でもマクマインの言うように、譲歩すれば付け上がるという点に関しては否定出来ない。どれだけ多くの者を挑発し、付け上がってきたのか。その例を挙げれば切りがない。
(……この特異能力を見られた以上、ここで息の根を止めなければチャンスは無い。それに……)
「ちょっと待てって、好き勝手言ってくれるなよ?譲歩してんのはこっちだぜ!」
ラルフはマクマインに苦言を呈す。それはゼアルも考えていたことだ。ラルフが自ら戦うと踏みとどまっている。この気まぐれを利用しない手はないし、イルレアンでの一件のような油断はもうしない。
そして、ラルフと戦うことにはメリットが三つ存在する。
一つ、技で勝る者が勝つゼアルの推測を立証出来ること。ラルフの職業は”盗賊”。剣士でもなければ戦士でもない。つまり自分とは全く違う職種、戦闘方法で戦ってくるのだ。身体能力を同一化しているこの空間において、培ってきたゼアルの経験、技量が試される。これに勝利出来れば、格闘士と呼べるミーシャにも勝てる可能性はある。
二つ、ラルフを仕留められれば、ジャッジメントに自由に出入り出来る存在を消せること。自分より遥かに強い存在を人間の領域まで引きずり降ろせるこの空間は、魔族を駆逐するのにうってつけの能力だ。現在、邪魔出来るのがラルフだけである点を考えた時、戦うことに意義がある。
三つ、一対一なら絶対に勝てることだ。これはラルフに限ったことではなく、ミーシャが相手でも関係ない。どれだけ強かろうが、イビルスレイヤーの前には紙くず同然。もしラルフがこの能力に気づいているのであれば戦いを挑むこともなかっただろう。
「……その通りだラルフ。来い」
ゼアルは一歩前に出て、ザッと地面を踏みしめる。全身全霊で感情を剥き出しに殺気を振りまく。ラルフはマクマインに向けて肩を竦めた。
「……ゼアル……馬鹿者が……」
聞く耳こそあった。だが賛同は得られなかった。ここで逃したところで次があるというのに、ゼアルはそれを拒んだ。ゼアル自身はここ以外の機会は無いと踏んだのだろう。
それもこれもラルフという存在の中途半端さにある。弱いくせにイキリ散らして、いつでも殺せるような空気感を醸し出している。押してくれと言わんばかりに背中を差し出す、崖っぷちに立つ犯罪者。お望みにと背中を押しに行くと、襟首をひっつかんで道ずれにしようとしてくるのだ。
全てを巻き込み、死を振りまく死神のような存在。いや、疫病神だ。
『本当に何にゃあの能力?チートだにゃ。ラルフなんかが持つにゃんて許されないにゃ!』
『まぁでもゼアルの能力もかなり面白い能力だよね。あれ守護獣に使ってたらどうなってたかな?』
『……効かないんじゃないかにゃ?』
『え~?多分効くでしょ。効かないかな?』
「おい、黙っていろ。好き勝手なことを……いや、待てよ……」
アルテミスとアシュタロトの雑談にマクマインは苛立ったが、ふと気づく。
「そうか……イビルスレイヤーか……なるほど。となればゼアルの自信も頷ける」
『ええ?なになに?自分だけ答えに辿り着いちゃう感じ?僕たちにも教えてくれて良いよ?』
「その必要はない。答えはすぐに分かる」
マクマインの考えが当たっているならラルフに勝ち目はない。ここでミーシャと共に死ぬ。
マクマインの夢が叶う。
ラルフが提示したのだ。死への書類に自ら印鑑を押した。殺してみろと煽って崖っぷちに立った男は、足を滑らせて転落した。
(イミーナの失敗から数ヶ月……。全てはこの瞬間のためだったのか……)
その事実に気づいた時、マクマインの顔に血管が浮き出る。歯を食いしばり、我慢している。それは怒りでも憎しみでもない。負の感情など一切ない喜悦。そう、マクマインは笑顔になることを必死に抑え込んでいる。最高の瞬間に立ち会えるのだからこの反応は当然だと言えた。
「ラルフめ、格好つけヨって……」
ベルフィアは苦虫を噛み潰したような顔で睨む。ミーシャを前にして調子付いているようだが、勝てるかどうかは未知数。というより負ける可能性の方が高い。
「良いんじゃないですか?勝てると踏んで一対一を申し込んだのでしょう?私にとってはどうなろうと喜ばしいところですが……」
ミーシャが死ねば主従関係が切れて自由の身。どちらかといえば死んでくれた方が助かるとも言える。望みはラルフが負けることだが、負けないのでないかと感じている。ゼアルの能力を疑うつもりはないが、やけに自信たっぷりのラルフの言動が気になっている。
外野の考えが錯綜する中、ラルフはゼアルと5m程度の距離で向き合っていた。
「……これで最後だラルフ」
「……はは、かもな」
「駄目だ……ゼアル!!ラルフの口車に乗るな!!」
「……閣下……?」
ゼアルは視線をラルフから外さずにマクマインの声に耳を傾ける。その僅かな変化に気づいたマクマインはそのまま続ける。
「奴は口だけの男だ!譲歩すれば付け上がる!今すぐに我らを取り込め!!」
確かにラルフの口から”正々堂々”や”一対一”と言われたら、疑わない方がおかしい。しかしゼアルは一度イルレアンにて真っ向から勝負をしている。その時はまさか神によって力を与えられているとは露ほども思わず、油断があったことは言うまでもない。この一件から、ラルフは勝負事に関しては一応誠実であると捉えられる。
でもマクマインの言うように、譲歩すれば付け上がるという点に関しては否定出来ない。どれだけ多くの者を挑発し、付け上がってきたのか。その例を挙げれば切りがない。
(……この特異能力を見られた以上、ここで息の根を止めなければチャンスは無い。それに……)
「ちょっと待てって、好き勝手言ってくれるなよ?譲歩してんのはこっちだぜ!」
ラルフはマクマインに苦言を呈す。それはゼアルも考えていたことだ。ラルフが自ら戦うと踏みとどまっている。この気まぐれを利用しない手はないし、イルレアンでの一件のような油断はもうしない。
そして、ラルフと戦うことにはメリットが三つ存在する。
一つ、技で勝る者が勝つゼアルの推測を立証出来ること。ラルフの職業は”盗賊”。剣士でもなければ戦士でもない。つまり自分とは全く違う職種、戦闘方法で戦ってくるのだ。身体能力を同一化しているこの空間において、培ってきたゼアルの経験、技量が試される。これに勝利出来れば、格闘士と呼べるミーシャにも勝てる可能性はある。
二つ、ラルフを仕留められれば、ジャッジメントに自由に出入り出来る存在を消せること。自分より遥かに強い存在を人間の領域まで引きずり降ろせるこの空間は、魔族を駆逐するのにうってつけの能力だ。現在、邪魔出来るのがラルフだけである点を考えた時、戦うことに意義がある。
三つ、一対一なら絶対に勝てることだ。これはラルフに限ったことではなく、ミーシャが相手でも関係ない。どれだけ強かろうが、イビルスレイヤーの前には紙くず同然。もしラルフがこの能力に気づいているのであれば戦いを挑むこともなかっただろう。
「……その通りだラルフ。来い」
ゼアルは一歩前に出て、ザッと地面を踏みしめる。全身全霊で感情を剥き出しに殺気を振りまく。ラルフはマクマインに向けて肩を竦めた。
「……ゼアル……馬鹿者が……」
聞く耳こそあった。だが賛同は得られなかった。ここで逃したところで次があるというのに、ゼアルはそれを拒んだ。ゼアル自身はここ以外の機会は無いと踏んだのだろう。
それもこれもラルフという存在の中途半端さにある。弱いくせにイキリ散らして、いつでも殺せるような空気感を醸し出している。押してくれと言わんばかりに背中を差し出す、崖っぷちに立つ犯罪者。お望みにと背中を押しに行くと、襟首をひっつかんで道ずれにしようとしてくるのだ。
全てを巻き込み、死を振りまく死神のような存在。いや、疫病神だ。
『本当に何にゃあの能力?チートだにゃ。ラルフなんかが持つにゃんて許されないにゃ!』
『まぁでもゼアルの能力もかなり面白い能力だよね。あれ守護獣に使ってたらどうなってたかな?』
『……効かないんじゃないかにゃ?』
『え~?多分効くでしょ。効かないかな?』
「おい、黙っていろ。好き勝手なことを……いや、待てよ……」
アルテミスとアシュタロトの雑談にマクマインは苛立ったが、ふと気づく。
「そうか……イビルスレイヤーか……なるほど。となればゼアルの自信も頷ける」
『ええ?なになに?自分だけ答えに辿り着いちゃう感じ?僕たちにも教えてくれて良いよ?』
「その必要はない。答えはすぐに分かる」
マクマインの考えが当たっているならラルフに勝ち目はない。ここでミーシャと共に死ぬ。
マクマインの夢が叶う。
ラルフが提示したのだ。死への書類に自ら印鑑を押した。殺してみろと煽って崖っぷちに立った男は、足を滑らせて転落した。
(イミーナの失敗から数ヶ月……。全てはこの瞬間のためだったのか……)
その事実に気づいた時、マクマインの顔に血管が浮き出る。歯を食いしばり、我慢している。それは怒りでも憎しみでもない。負の感情など一切ない喜悦。そう、マクマインは笑顔になることを必死に抑え込んでいる。最高の瞬間に立ち会えるのだからこの反応は当然だと言えた。
「ラルフめ、格好つけヨって……」
ベルフィアは苦虫を噛み潰したような顔で睨む。ミーシャを前にして調子付いているようだが、勝てるかどうかは未知数。というより負ける可能性の方が高い。
「良いんじゃないですか?勝てると踏んで一対一を申し込んだのでしょう?私にとってはどうなろうと喜ばしいところですが……」
ミーシャが死ねば主従関係が切れて自由の身。どちらかといえば死んでくれた方が助かるとも言える。望みはラルフが負けることだが、負けないのでないかと感じている。ゼアルの能力を疑うつもりはないが、やけに自信たっぷりのラルフの言動が気になっている。
外野の考えが錯綜する中、ラルフはゼアルと5m程度の距離で向き合っていた。
「……これで最後だラルフ」
「……はは、かもな」
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