一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第十五章 終焉

第六話 神ノ木

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 アトムの強襲に真っ向から挑むラルフとミーシャ。神の力に操られたるは大事な仲間たち。

『……ハッタリとでも思っているのか?これだけの戦力があれば世界を取れるのだぞ?そして貴様らは仲間を傷つけられまい!何も出来ずに仲間の手で死ぬが良い!!』

「肉の盾ってことか?とことん卑怯な奴だな」

『狡猾と言え!……いや、そうして腐すことしか貴様には出来ないのだ。何の取り柄もないただの人間如きが、神の寵愛を授かったばかりにとんだ災難となったなぁ?』

 ニヤニヤとイヤらしく笑うアトム。厳格な森王が絶対にしない表情に驚きはあったが、死への恐怖も緊張感すらラルフにはなかった。

「そいつは違ってるぜアトム。サトリの寵愛がなかったら俺はとっくに死んでる。それから、俺はもっと前からただの人間じゃない。ミーシャを助けたあの日から俺の人生は大きく変わった。ミーシャが居たから俺は特別になったんだ」

 ミーシャのハッと嬉しそうな顔が目の端に映ったアトムはスッと真顔になり、目を細めてラルフを睨んだ。ラルフはそんなアトムの変化に追い打ちをかけるかの如く続けて言葉を紡ぐ。

「ああ、でも仲間を傷つけられないってのは正解だ。ただここに座ってただけの罪なきエルフも同様にな」

『ふんっ……ならばどうする?減らず口を叩いて悦に入っている暇などないだろう?今から一斉に襲い掛かり貴様らを押し潰す。少しは命乞いでもして私を楽しませたらどうだ?』

 ラルフはミーシャと目を合わせて一つ頷いた。

「こう言うのはどうだ?全員傷つけることなく無力化するってのは?」

 ラルフの質問にアトムの頭から疑問符が浮かんだ。理解が及ぶかどうかの瞬間、ラルフとミーシャを囲んでいた全員が地面へと吸い込まれていくのを確認。アトムの前に立っていたハンターとグレースも抵抗することなく落ちていく。

『異次元の穴……!』

 アトムはラルフの特異能力を知っていたが、ここまで器用に扱えるようになっていたのには驚きを隠せなかった。式場内に居た、森王を除く全ての国民や仲間たちが異空間に封じ込められた。戦力を一気に削がれたアトムは優雅に座っていた玉座から跳ねるように立ち上がる。

『き、貴様……!!』

「良く言うだろ?魔獣はどんな弱い獲物にも全力を出すって。それは生きるのに必死だからさ。今食うもんにも必死になんなきゃ明日に繋がらねぇ。……何が言いたいかって?俺如きに最初から全力を出さなきゃダメだってことさ。じゃねぇと繋がらねぇんだよ。命にはな!」

 圧倒的有利から緩む地盤。もっとも忌むべき敵を直接どうにか出来たなら、ここまで追い詰められてはいない。

『偉そうにするな!あんなものはただの余興だ!!私の本気を見せてくれるわ!!』

 ゴゴゴ……と地面が唸る。危険を察したミーシャは何かをしようとしているアトムを止めようと一歩前に出る。しかしラルフはミーシャの前に腕をかざして制止した。

「今突っ込んでいったら何かに巻き込まれる可能性がある。森王を殺すわけにもいかねぇし、ここを出るぜ」

 二人は急いで外に出る。もぬけの殻となったエルフェニアでベキベキと音を立てながら、築いてきた建物も美しい自然も倒れ、崩壊し、瓦礫と木片が辺り一面に広がっていく。

「おいおい、何をしようってんだよ……?」

 ワケが分からな過ぎて困惑しているラルフを余所に、世界一大きな樹である天樹に瓦礫の山が押し寄せる。そして天樹は形を変える。
 そこらかしこに生えた枝が二つの大きな枝に収束していき、まるで腕のように大きく太く形成されていく。神聖な泉がある天樹のうろの部分は醜く歪み、まるで口のようにパクパクとその存在感を主張する。ところどころに出来た裂け目から瞳を模した目のようなものがギョロギョロと蠢いている。
 アトム即席の超巨大殺戮兵器「神ノ木」。その巨大さたるや、ラルフやミーシャが蟻ほどの大きさに見えてしまうほどだ。

『全て押し潰してくれるわ!!』

 意気込むアトムだったが、ラルフとミーシャの反応は薄いものだった。

「……ワンパターンだな」

「うん、カサブリアの時のレギオンみたいなことしてるね」

 既に見たことあるものには驚きはない。若干飽きられたアトムの存在は、二人の中でかませ犬としての地位を確立していた。
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