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第十五章 終焉
第十九話 ステルス
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ザッザッザ……
砂浜を踏みしめ肩を並べる五人。神の討伐を胸に、ユピテルの出現を待つ。
動きはすぐにあった。急速に育った暗雲があっという間に晴れ、何事もなかったかのように静かな吹き抜ける空を晒け出す。同時に上空に光が収束し、人の形を形成する。
「……回復したか」
姿を現したユピテルの姿は先の斬撃など無かったかのように五体揃っていた。
『ふふっ驚くことはない!私は神だ!こうして再構成すれば完璧に元通りになる!元よりそなたらに勝ち目はない!!』
戦いに意味がないと思わされる。神を相手にすることが如何に間違っているのかを思い知らされた。ベルフィアは首を傾げて尋ねる。
「だから何じゃ?再生くらいなら妾にも出来ル」
ベルフィアはおもむろに自分の腕を掴むと、肉を少量毟り取った。その奇行に誰もが驚くところだが、彼女の素性を知っている者たちにとってはどうでも良いこと。瞬時に何事もなかったかのように元通りになってしまうのだから。
『吸血鬼如きがこの私と張り合おうというのか?ふんっ、身の程を弁えるのだな』
ユピテルも彼女の生態を知っているので驚きは無い。だが神を相手に不敬な態度を取るのは頂けない。ベルフィアにそこまでの脅威はないが、売られた喧嘩は買うのがユピテルの流儀。
「俺にも出来るぜ?」
藤堂は自分を指差す。呪いの鎖によって死ねない体となっているので、どこを欠損してもすぐに元通り。この鎖については神々が藤堂に対する嫌がらせを込めて無理やり装着させているので、ユピテルが知らないわけがない。呼んでもないのに便乗してきた藤堂に対して無視を決め込んだ。
『五人わざわざズラリと、バカみたいに並んで……順番に殺されたいのか?……ノーン、パルス。そなたらは何をしている?我らの刺客であろう?何故寝返っているのだ?』
「だって元より旨味もない奴隷だったし~、残当ってとこじゃない?ねぇパルス」
パルスはコクリと頷く。
『八大地獄の浅はかで愚かな連中よ。少しは気骨あるところを見せてみようとは思わんのか?呆れてものも言え……ぬぉっ!!』
ブンッ
ユピテルが喋っている最中にパルスの大剣”阿鼻”が迫っていた。鼻先を掠めそうな一撃にユピテルも思わず仰け反る。
”阿鼻”。地獄の名を冠する武器の中で最強の一角に数えられる。所有者の思いのままに動き回り、離れた位置からでも攻撃可能。この世の鉱物とは比較にならないほど硬いため破壊は不可能。その上、特異能力まで完備している。
「なかなか良い奇襲じゃ。妾も見習ワねばなルまい」
ベルフィアもパルスに追従するように魔力の斬撃を飛ばす。
『間抜けがっ!!』
ユピテルはピカッと光に包まれ、一瞬でその場から消える。光と同一の存在である彼に通常攻撃など無いも同じ。油断さえしていなければ、阿鼻に驚くこともなかった。
そう、彼にとってはベルフィア、パルス、ノーン、藤堂など物の数ではない。ブレイドとエレノアが戦闘不能となった今、怖いのはゼアルのみ。
『そろそろ奴を処理する方向に纏めるべきか……』
自分に言い聞かせるようにポツリと呟く。いつまでも脅威を放っておくほど間抜けではない。すぐさま背後を取ってゼアルを亡きものにすべきだ。同じ速度で動かれては優位性は保たれない。
「やれるものならな」
『!?』
ゼアルはユピテルの行動パターンを読んでいた。囲まれた時に衝撃波で敵との距離を取り、追い詰められたらヤケクソの全体無差別攻撃。情熱的な言動とは裏腹に、臆病な部分を併せ持つ堅実な神。
肝心な時に無難な方向に舵を切る典型的な安全志向。そのくせ理解力と判断力の遅さから二進も三進もいかない状態になりやすく、パニックになりやすい。
背後を取ろうとして逆に背後を取られたユピテル。ゼアルの剣が確実に首を狙って振るわれる。
『くっ……!!このぉっ!!』
体を捻りつつ前方に飛ぶ。背中を少し切られたが、何ということはない。すぐさま体勢を整えてゼアルに向き直る。
『素直すぎる剣だなっ!それでは私は切れんぞっ!!』
バッと両手をかざし、雷を撃つ準備に入った。だが撃つことは叶わない。
ジャラ……
鎖が羽根のようにユピテルの体にふわりと巻きつく。一瞬何が起こったのか分からず硬直していると、ギュッと一気に絞られ、鎖が肉に食い込んだ。
「よぉ、もうちょい離れるべきだったなぁ」
ニヤニヤしながら藤堂が顔を横から覗かせる。
『藤堂……源之助……!?』
すぐ背後に立たれていたのに気付かなかった。それもそのはず、藤堂の特異能力は”気配遮断”。神すら欺く異質な力。遠い昔、この能力のせいで色々面倒な目に遭った。
「おっ!ナイスおじさん。見窄らしいくせにやれば出来んだよね」
「ノーンお前さぁ……ったく、まぁ余計なもんが入ってっけど褒め言葉として受け取っとくぜ」
鎖に縛られたユピテルは体を揺すってみたり、光になろうとしてみたりしているが、どうにも出来ないのかすぐに諦めたように元の状態に戻る。
「これは……呪いの効果か?」
「そうよ。この鎖は逃さないことを目的に作られてんのさ。俺の親友のオロチが言ってたから間違いねぇ」
『チッ……!あのクソ蛇余計なことを……っ!!』
「おいおい、今俺が親友って言ったじゃねーか。良くないなぁそういうのは……」
藤堂の鎖に雁字搦めとなったユピテル。ゼアルは碌に動く事も出来ないサンドバッグ状態のユピテルに止めを刺す。
──ザンッ
ユピテルの首を軽く一刀のもとに泣き別れにした。背後で捕まえていた藤堂がニヤリと笑う。
「……踏み込みすぎだぜ?背後の俺まで切れてるから」
藤堂の首が半分くらい切れていた。しかしさすが不死身。余裕たっぷりに肩を竦めた。
「ふぅー、勘弁してくれよ?俺ぁ痛いのは嫌い……」
──チュドッ
まだ話途中だというのに、今度は大剣が落ちてきた。あまりの勢いに砂塵を挙げ、ようやく砂塵が晴れた頃には大剣が砂浜に埋まり、真っ二つになったユピテルの体と無傷の藤堂が立っていた。
「今のわざとだろ?パルス……」
「……トドメだ」
パルスは藤堂に見向きもしないままポツリと言って退ける。色々言いたいことはあった藤堂だったが、ため息をついて諦めた様相を呈す。ゼアルも納刀し、戦いが収束したことを伝える。ベルフィアもこの決着に一言。
「ん~呆気ないノぅ」
一つの油断が全てを別つ。
ユピテル敗北。
砂浜を踏みしめ肩を並べる五人。神の討伐を胸に、ユピテルの出現を待つ。
動きはすぐにあった。急速に育った暗雲があっという間に晴れ、何事もなかったかのように静かな吹き抜ける空を晒け出す。同時に上空に光が収束し、人の形を形成する。
「……回復したか」
姿を現したユピテルの姿は先の斬撃など無かったかのように五体揃っていた。
『ふふっ驚くことはない!私は神だ!こうして再構成すれば完璧に元通りになる!元よりそなたらに勝ち目はない!!』
戦いに意味がないと思わされる。神を相手にすることが如何に間違っているのかを思い知らされた。ベルフィアは首を傾げて尋ねる。
「だから何じゃ?再生くらいなら妾にも出来ル」
ベルフィアはおもむろに自分の腕を掴むと、肉を少量毟り取った。その奇行に誰もが驚くところだが、彼女の素性を知っている者たちにとってはどうでも良いこと。瞬時に何事もなかったかのように元通りになってしまうのだから。
『吸血鬼如きがこの私と張り合おうというのか?ふんっ、身の程を弁えるのだな』
ユピテルも彼女の生態を知っているので驚きは無い。だが神を相手に不敬な態度を取るのは頂けない。ベルフィアにそこまでの脅威はないが、売られた喧嘩は買うのがユピテルの流儀。
「俺にも出来るぜ?」
藤堂は自分を指差す。呪いの鎖によって死ねない体となっているので、どこを欠損してもすぐに元通り。この鎖については神々が藤堂に対する嫌がらせを込めて無理やり装着させているので、ユピテルが知らないわけがない。呼んでもないのに便乗してきた藤堂に対して無視を決め込んだ。
『五人わざわざズラリと、バカみたいに並んで……順番に殺されたいのか?……ノーン、パルス。そなたらは何をしている?我らの刺客であろう?何故寝返っているのだ?』
「だって元より旨味もない奴隷だったし~、残当ってとこじゃない?ねぇパルス」
パルスはコクリと頷く。
『八大地獄の浅はかで愚かな連中よ。少しは気骨あるところを見せてみようとは思わんのか?呆れてものも言え……ぬぉっ!!』
ブンッ
ユピテルが喋っている最中にパルスの大剣”阿鼻”が迫っていた。鼻先を掠めそうな一撃にユピテルも思わず仰け反る。
”阿鼻”。地獄の名を冠する武器の中で最強の一角に数えられる。所有者の思いのままに動き回り、離れた位置からでも攻撃可能。この世の鉱物とは比較にならないほど硬いため破壊は不可能。その上、特異能力まで完備している。
「なかなか良い奇襲じゃ。妾も見習ワねばなルまい」
ベルフィアもパルスに追従するように魔力の斬撃を飛ばす。
『間抜けがっ!!』
ユピテルはピカッと光に包まれ、一瞬でその場から消える。光と同一の存在である彼に通常攻撃など無いも同じ。油断さえしていなければ、阿鼻に驚くこともなかった。
そう、彼にとってはベルフィア、パルス、ノーン、藤堂など物の数ではない。ブレイドとエレノアが戦闘不能となった今、怖いのはゼアルのみ。
『そろそろ奴を処理する方向に纏めるべきか……』
自分に言い聞かせるようにポツリと呟く。いつまでも脅威を放っておくほど間抜けではない。すぐさま背後を取ってゼアルを亡きものにすべきだ。同じ速度で動かれては優位性は保たれない。
「やれるものならな」
『!?』
ゼアルはユピテルの行動パターンを読んでいた。囲まれた時に衝撃波で敵との距離を取り、追い詰められたらヤケクソの全体無差別攻撃。情熱的な言動とは裏腹に、臆病な部分を併せ持つ堅実な神。
肝心な時に無難な方向に舵を切る典型的な安全志向。そのくせ理解力と判断力の遅さから二進も三進もいかない状態になりやすく、パニックになりやすい。
背後を取ろうとして逆に背後を取られたユピテル。ゼアルの剣が確実に首を狙って振るわれる。
『くっ……!!このぉっ!!』
体を捻りつつ前方に飛ぶ。背中を少し切られたが、何ということはない。すぐさま体勢を整えてゼアルに向き直る。
『素直すぎる剣だなっ!それでは私は切れんぞっ!!』
バッと両手をかざし、雷を撃つ準備に入った。だが撃つことは叶わない。
ジャラ……
鎖が羽根のようにユピテルの体にふわりと巻きつく。一瞬何が起こったのか分からず硬直していると、ギュッと一気に絞られ、鎖が肉に食い込んだ。
「よぉ、もうちょい離れるべきだったなぁ」
ニヤニヤしながら藤堂が顔を横から覗かせる。
『藤堂……源之助……!?』
すぐ背後に立たれていたのに気付かなかった。それもそのはず、藤堂の特異能力は”気配遮断”。神すら欺く異質な力。遠い昔、この能力のせいで色々面倒な目に遭った。
「おっ!ナイスおじさん。見窄らしいくせにやれば出来んだよね」
「ノーンお前さぁ……ったく、まぁ余計なもんが入ってっけど褒め言葉として受け取っとくぜ」
鎖に縛られたユピテルは体を揺すってみたり、光になろうとしてみたりしているが、どうにも出来ないのかすぐに諦めたように元の状態に戻る。
「これは……呪いの効果か?」
「そうよ。この鎖は逃さないことを目的に作られてんのさ。俺の親友のオロチが言ってたから間違いねぇ」
『チッ……!あのクソ蛇余計なことを……っ!!』
「おいおい、今俺が親友って言ったじゃねーか。良くないなぁそういうのは……」
藤堂の鎖に雁字搦めとなったユピテル。ゼアルは碌に動く事も出来ないサンドバッグ状態のユピテルに止めを刺す。
──ザンッ
ユピテルの首を軽く一刀のもとに泣き別れにした。背後で捕まえていた藤堂がニヤリと笑う。
「……踏み込みすぎだぜ?背後の俺まで切れてるから」
藤堂の首が半分くらい切れていた。しかしさすが不死身。余裕たっぷりに肩を竦めた。
「ふぅー、勘弁してくれよ?俺ぁ痛いのは嫌い……」
──チュドッ
まだ話途中だというのに、今度は大剣が落ちてきた。あまりの勢いに砂塵を挙げ、ようやく砂塵が晴れた頃には大剣が砂浜に埋まり、真っ二つになったユピテルの体と無傷の藤堂が立っていた。
「今のわざとだろ?パルス……」
「……トドメだ」
パルスは藤堂に見向きもしないままポツリと言って退ける。色々言いたいことはあった藤堂だったが、ため息をついて諦めた様相を呈す。ゼアルも納刀し、戦いが収束したことを伝える。ベルフィアもこの決着に一言。
「ん~呆気ないノぅ」
一つの油断が全てを別つ。
ユピテル敗北。
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