一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
667 / 718
最終章

第二話 どつぼ

しおりを挟む
『ウンザリだ!今すぐこの男の息の根を止めろサトリ!!』

 アトムは声を荒らげた。
 ラルフのああ言えばこう言う話術は見事に神々の逆鱗に触れる。ただ返事するだけで敵意ヘイトが稼げるのだからチョロいものだ。
 ユピテルが釣れずにアトムが激高したのを見てラルフはキョドキョドと落ち着きがなくなる。狙った相手が怒らなかったからか、ここまでの怒りを想定していなかったのか、はたまた焦っているのも演技か。
 ラルフの背後からひょこっとサトリが顔を出す。

『嫌です』

 キッパリと断る。五対一という不利に全く臆することなく言い放ってくれるのは単純に嬉しい。
 味方がサトリだけという心細さはあるものの、神を味方に付けているのはそれだけでかなりの強みだ。
 しかしラルフはそんなことよりも気になっていたことに言及する。

「……あのさ、そういえば俺って死んでるのか?」



「……生きてます!間に合いました!」

 アルルは一仕事を終え、ホッと一息をついて周りを見渡す。見守っていたミーシャたちの険しい表情が一気に緩んだ。

「良かったぁ……!」

 ミーシャはボロボロと止めどなく涙を流す。ベルフィアは焦りながらヘタれるミーシャを心配する。
 みんなも安堵から顔を見合わせる中、イーファが前に出た。

「とりあえずベッドに運びましょう。ここに寝かせていては風邪を引いてしまいますので……」

 そう言うとラルフを担ごうと屈む。デュラハンの腕力なら大の大人一人くらい綿のぬいぐるみを抱える様なもの。しかしその行動をミーシャが止める。

「私が運ぶ」

「はっ」

 イーファはミーシャの反応を予測していたかのような速度で返答し、嫌な顔一つせず即座に下がる。
 涙でぐしゃぐしゃになった顔でラルフを抱き上げ、鼻を啜りながら小屋に向かう。ベルフィアはすぐ背後にピッタリと着いて、ドアの開け閉めなどの補助を行なっている。

「で、でもどう言うわけでやせ我慢なんて……すぐに回復してもらえば良かったんじゃ……」

 歩は不安げな顔でアンノウンを見る。すっかり安心しきったアンノウンは肩を竦ませながら見解を語る。

「私たちと同じだからだと思うよ?……つまりさ、神様から突然力をもらったせいで自分の元々の限界と底上げされた許容量の差が実感できずに混乱したんじゃないかな?痛いけど耐えられるの最上級。致命傷だと気付かなかったってパターン……とかさ」

「え?あっ……え?な、なるほど?」

 いまいち分かっていない歩だったが、取り敢えず何度も頷きながら理解したフリをする。

「明日は我が身、ですか……」

 アンノウンの言葉を側で聞いていたブレイドは呟くように口を挟んだ。同じ立場のように口を開いたのは、ブレイドも降って湧いたように生まれ持った力を覚醒させているからだった。油断すればそのつもりがなくともやせ我慢してしまいかねない。

「大丈夫デショ。普段カラ最前線デ戦ッテイル貴方ナラ自分ノ限界は既ニ見エテイルハズ」

「どうかな~。そう言うのが油断に繋がるんだよぉ?」

 ジュリアの慢心発言をエレノアがチクリ。ジュリアはムッとしつつもエレノアに頭を下げる。

「しかし何と言いましょうか……ラルフが居なくなったことで急に不便になりましたね。あのポケット何とかとかいう能力は便利だったのですが……」

 イミーナはため息をつきつつ腕を組む。それについてはブレイドもハッとした顔を見せた。

「しまった。ウィーを迎えに行けないじゃないか。マズイな……」

「え~?一日預けるくらい大丈夫でしょ?」

「それはそうだけど、迎えに行けないことを伝えないと。ラルフさんの通信機を借りてくる」

 ブレイドは走って小屋に向かった。ウィー以外に懸念がなくなったからか思い思いに行動し始める。
 アンノウンは船の製造に。歩はアンノウンの手伝いに。デュラハン姉妹は駄弁りながら剣の稽古。姉妹の稽古にジュリアが混ざり、お互いを高め合う。ブレイドとアルル、そしてエレノアは固まって行動していて、黒影も同行している。イミーナは小屋へ移動した。
 そんな風景を何気なく見ていた八大地獄の面々は呆れた顔を見せた。

「呑気なもんじゃのぅ。神の襲撃が続いたというに……」

「別に良いんじゃない?こんなんでも普通じゃ手が付けられないぐらい強いんだしね」

「だからこそ苛立つということもある。マヌケどもめが……。さて、そろそろ我らも解放の時ではないか?」

 ロングマンはグルっとメンバーを見渡す。

「神は此奴らの対処に追われ、我々を見ていない。この機会にこのような厄介なマヌケどもなんぞ放っておいて、この地よりどこか遠くの安寧の地を目指すのは……」

「はっ!それも悪かねぇが、このまま解散するってのはどうだ?どうせもう神からの勅命も俺たちが掲げた目的もご破算。チームで行動する意味もあんまねぇだろ?それよりかはバラバラになって好き勝手生きるってのが良いんじゃね?」

 ジニオンの意見にノーンが目を輝かせた。

「それ良いじゃない!せっかく生き返ったんだし、思いっきり羽を伸ばしたいと思ってたところよ。縛られた生活なんてウンザリだもん」

「……お前たちの言い分は悲しいほどよく分かる。だがそれを推し進めれば神の手がこちらに伸びた時が厄介となるぞ?この世界に我らを危機的状況に追い込むことができるのはほんの少数。それらを完璧に避けても天より覗き込む目から逃れる術はない。もしもの時に対処可能な戦力は大事ではないか?」

「そんなの……悪いこと言い出したらいくらでも考えられちゃうじゃん!ある程度の妥協は必要でしょう?」

 ロングマンとノーン。まるで親子のような雰囲気を醸し出す。こういったやり取りはいつものことなのか、「おい、せよ」とジニオンは呆れ返った。

「仲間割れかぁ?もう俺たちしかいないんだからよぉ。仲良くしなよなぁ」

 そんな二人の会話に藤堂が口を挟む。その瞬間にロングマンたちは一斉にその場を離れた。

「……つれないねぇ」

 藤堂は寂しそうに肩を竦めた。

 神々の猛攻を防いだとは思えないほどに自由気ままに過ごす。
 どこに向かうのかも見えぬままに……。



「俺は死んでねぇのか……良かった……」

 ラルフは大きく安堵した。

『何も良くないわ。こちらとしては今すぐ死んで欲しいのに……』

 エレクトラの文句にラルフは肩を竦めた。

「まぁ慌てるなよ。どっちかというと生きている方が現状を打破出来るかもだぜ?」

『……というと?』

 ラルフはニヤリと笑う。勿体ぶるラルフの心を読んだサトリは困った顔で首を振った。

『あっあー……それはやめたほうが良いと思いますが……』

『……何なんだ?』

 ラルフとサトリの間だけで交わされる会話に苛立ちを覚える。
 焦らした分だけ期待値が高まる中、満を持してラルフは口を開いた。

「俺が世界から出て行けば良いんだろ?なら簡単だ。望み通り出て行ってやるよ。小さな異次元ポケットディメンションでな!」

 神々が危惧していた次元渡り宣言。ラルフは気付かぬ内に自らどつぼに嵌っていった。

『ほらにゃーっ!!』

 アルテミスの嬉しそうな声が聖域にこだました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...