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最終章
第十話 戦艦、完成間近
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アンノウンが昼夜問わず働いてくれたお陰で、夢の船が完成した。
歩が覚えていた戦艦の造型をそれなりに再現し、内部は完全オリジナルの構造で、アンノウンの考える住心地の良さを提供してくれている。部屋数も多く、各部屋にトイレと浴室が完備されている。浮遊要塞の時の合宿場のような雰囲気からホテルへと進化した形だ。これで移動したいのは山々だが、一つだけ足りない要素があった。
「カモフラージュ機能が使えない?それじゃ飛ばせないじゃないか」
ラルフは草臥れたハットを被り直しながら戦艦を仰ぎ見る。完成したかと思われていた船はたった一つの要素で不完全となった。
「うん。というのも魔鉱石の配置が悪いらしいんだ。魔力の流れが乱れて上手く発動しなくて……こうなったら外付けで魔鉱石を配置する以外に道は無いかなって」
「妾ノ記憶が正しければ、あと一歩といっタところヨ。ドワーフに材料を手配すルんじゃラルフ」
「簡単に言ってくれるなよ?材料だって無料じゃ無いんだ。これ以上ウィーに迷惑は掛けられない」
今までの材料はウィーがドワーフに技術提供をすることでいただいたものだ。本来であれば市場に出回らない鉱物まで融通を利かせてもらったというのに、これ以上求めるとあればこちらが追加で何か出さなければならないだろう。等価交換という奴だ。
「でも鉱石がないとカモフラージュ機能はつかないし……無理やり完成ってことで飛ばす?」
「いや、カモフラージュ機能は必要だ。俺が何とかする。何にせよ試運転は必要だから、この近くをぐるっと回るくらいなら飛ばしても構わない。ベルフィアもこっちを手伝ってくれよ?」
「あ?何で妾が……?」
「そりゃ動力源が灰燼の作ったものだからだよ。灰燼の記憶を手に持ってるし、万が一の対処はお前が一番出来るだろ?」
「……」
ベルフィアは言葉を詰まらせ、ふんっと鼻息荒く顔を背けた。
「俺はイルレアンに行ってくるから、後は頼むぜ」
「イルレアン?何故じゃ?」
「行くならグレートロックでしょ?」
二人は顔を見合わせ首を傾げた。
「ドワーフに頼みに行ったら足元見られそうだろ?だからイルレアンの魔法省に行ってみようかと思ってよ。アイナ局長に会うついでにアルルを連れて行こうかなってさ。今生の別れになるかもしれないし……」
「不吉なことを……じゃが確かにそうじゃな。人間は脆く命も短い。会っておいて損はなかろう」
ベルフィアは納得の表情だが、アンノウンは眉を曲げて困ったように顎に手をやる。
「でもアルルが世界の外に出るって言われて黙ってるかな?事後報告の方が良いんじゃない?」
「出来るだけ会える時に会っとくのが良いんだよ。いつ突然訃報を聞くことになるか分からねぇからな。ぽっくり逝かれちまったらそれっきりだぜ?」
ラルフは遠い目で虚空を見つめる。ラルフの父親は野盗集団に殺されたのだ。何の前触れもなく一方的に、理不尽に。アルルにそんな思いをさせたく無い。
その思いが通じたのか、アンノウンもベルフィアもそれ以上の追求はしなかった。
「なになに?何の話?」
そこにミーシャがやって来た。ラルフはことの経緯をまとめて説明する。
「ふーん。じゃあ次の目的地はイルレアンってこと?」
「そういうことだ。つっても前回同様、ぞろぞろと全員で出向くわけにはいかないからな。公衆の目もある。だからこっそりと、な?」
イルレアンへの密入国が決まった。
歩が覚えていた戦艦の造型をそれなりに再現し、内部は完全オリジナルの構造で、アンノウンの考える住心地の良さを提供してくれている。部屋数も多く、各部屋にトイレと浴室が完備されている。浮遊要塞の時の合宿場のような雰囲気からホテルへと進化した形だ。これで移動したいのは山々だが、一つだけ足りない要素があった。
「カモフラージュ機能が使えない?それじゃ飛ばせないじゃないか」
ラルフは草臥れたハットを被り直しながら戦艦を仰ぎ見る。完成したかと思われていた船はたった一つの要素で不完全となった。
「うん。というのも魔鉱石の配置が悪いらしいんだ。魔力の流れが乱れて上手く発動しなくて……こうなったら外付けで魔鉱石を配置する以外に道は無いかなって」
「妾ノ記憶が正しければ、あと一歩といっタところヨ。ドワーフに材料を手配すルんじゃラルフ」
「簡単に言ってくれるなよ?材料だって無料じゃ無いんだ。これ以上ウィーに迷惑は掛けられない」
今までの材料はウィーがドワーフに技術提供をすることでいただいたものだ。本来であれば市場に出回らない鉱物まで融通を利かせてもらったというのに、これ以上求めるとあればこちらが追加で何か出さなければならないだろう。等価交換という奴だ。
「でも鉱石がないとカモフラージュ機能はつかないし……無理やり完成ってことで飛ばす?」
「いや、カモフラージュ機能は必要だ。俺が何とかする。何にせよ試運転は必要だから、この近くをぐるっと回るくらいなら飛ばしても構わない。ベルフィアもこっちを手伝ってくれよ?」
「あ?何で妾が……?」
「そりゃ動力源が灰燼の作ったものだからだよ。灰燼の記憶を手に持ってるし、万が一の対処はお前が一番出来るだろ?」
「……」
ベルフィアは言葉を詰まらせ、ふんっと鼻息荒く顔を背けた。
「俺はイルレアンに行ってくるから、後は頼むぜ」
「イルレアン?何故じゃ?」
「行くならグレートロックでしょ?」
二人は顔を見合わせ首を傾げた。
「ドワーフに頼みに行ったら足元見られそうだろ?だからイルレアンの魔法省に行ってみようかと思ってよ。アイナ局長に会うついでにアルルを連れて行こうかなってさ。今生の別れになるかもしれないし……」
「不吉なことを……じゃが確かにそうじゃな。人間は脆く命も短い。会っておいて損はなかろう」
ベルフィアは納得の表情だが、アンノウンは眉を曲げて困ったように顎に手をやる。
「でもアルルが世界の外に出るって言われて黙ってるかな?事後報告の方が良いんじゃない?」
「出来るだけ会える時に会っとくのが良いんだよ。いつ突然訃報を聞くことになるか分からねぇからな。ぽっくり逝かれちまったらそれっきりだぜ?」
ラルフは遠い目で虚空を見つめる。ラルフの父親は野盗集団に殺されたのだ。何の前触れもなく一方的に、理不尽に。アルルにそんな思いをさせたく無い。
その思いが通じたのか、アンノウンもベルフィアもそれ以上の追求はしなかった。
「なになに?何の話?」
そこにミーシャがやって来た。ラルフはことの経緯をまとめて説明する。
「ふーん。じゃあ次の目的地はイルレアンってこと?」
「そういうことだ。つっても前回同様、ぞろぞろと全員で出向くわけにはいかないからな。公衆の目もある。だからこっそりと、な?」
イルレアンへの密入国が決まった。
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