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最終章
第十四話 愛おしい家族
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ラルフとミーシャがアトムと一戦交えようとする一方、ブレイドとアルルはアイナに連れられて屋敷に到着した。
アイナは出迎えた使用人に指示を出し、ブレイドとアルルを連れ立って応接間に案内した。
「さぁ入って。好きなところに座って」
ラルフの時とは違って砕けた言葉遣いを使っている。表情も心なしか優しい。きっとアイナが心を許した時に出る言動なのだろうと察し、二人はソファに腰を下ろした。
「うふふ。二人並んで仲が良いわね」
「ええ、ずっと一緒でしたから……」
ブレイドがアルルを見ながら笑った。アルルも嬉しそうに見返す。アイナはこの二人の側に居てやれなかった思いから胸が苦しくなり、一瞬悲しそうな表情を隠せなかったが、すぐに切り替えて微笑んだ。
「お茶でもどうかしら?私のお気に入りの茶葉なの。良かったら……」
コンコンッ
もう少しゆっくりしてからとも考えていたが、思ったよりも早かった。アイナは手を前に組み、胸を張って背筋を伸ばし、扉の向こう側に返事をする。
「お入りなさい」
扉を開けて入ってきたのは三人の子供たち。姿勢、体型、顔、全てが整ったまさに理想の男の子たち。まだまだ幼さはあるが、雰囲気は大人顔負けの凛々しさを醸し出している。流石は公爵とアイナの間に生まれた子だと感心した。
「失礼します」
背の高さ順がそのまま生まれた順となっている。
「自己紹介を」
「はい母様。ファウスト=アルヴィン=マクマインと申します」
「僕はツヴァイ=ボルト=マクマインです。よろしくお願いします」
「トロワ……」
長男、次男はフルネームで答えたというのに、三男だけは面倒臭そうにしている。アイナが「トロワ」と一声掛けると、むず痒そうに体を揺すった後に背筋を伸ばした。
「トロワ=チャーリー=マクマイン」
呆れた顔をしたアイナだったが、すぐに微笑んでアルルたちを見た。率先してブレイドが立ち上がる。
「ご丁寧にありがとうございます。俺はブレイド。ただのブレイドです。そして……」
ブレイドが振り返ってアルルを見る。アルルは目をパチクリさせて三兄弟をじっくりと見ていた。
「これが私の弟たち?」
スッと立ち上がったアルルを見て三兄弟は今気付いたかのように目を丸くする。当然だ。見た目がアイナにそっくりなのだ。あどけなさを残した可愛らしい顔立ちだが、少し離れてみたら天然パーマのくるくるとした髪型といい、体系といい、瓜二つと言って過言ではない。
「私はアルル。唐突だけど私はあなたたちのお姉ちゃんよ」
「……え?お姉様?」
「兄上。この人たち……」
ツヴァイがコソッと耳打ちする。その瞬間にアイナの集めていた資料を思い出す。ブレイドとアルルの名が何度も出てきていたのは、アルルが姉でブレイドがそのお付きとかそういうものだったのだと確信した。
「聡明そうな子たちですね。何というか、見ただけで将来有望な雰囲気を感じます」
「うふふ、あなたにそう言ってもらえると嬉しいわ」
アイナはブレイドと顔を見合わせる。この瞬間に三兄弟の中で、ブレイドの地位が一気に上がった。お付きなどではなく、家族ぐるみの何かを感じさせたからだ。
「ん~?」
ブレイドを観察していた三人はアルルの接近に気付くのに一瞬遅れた。急に顔を近づけてくる距離感のなさにファウストはビクッと体を跳ねさせた。
「やっぱり初めましてだから、どうしてもこう……違和感みたいなのがあるよね。君たちもそう思うでしょ?」
「はわわ……ち、近いです!もう少し離れてください!」
「え?そう?全然そんなことないよ。ほらおいで。ギュってしてあげる」
アルルはファウストの存在を確かめるように抱きしめた。
(ち、違う……母様や父様と違う)
ファウストの体からフッと緊張が解ける。
「な、なな、何を破廉恥な……!」
ツヴァイは顔を赤らめながら後ずさりするが、既にアルルはツヴァイの手を握っていた。
「何を言ってるの?姉弟でしょ?ほら、トロワもおいで」
手を引っ張られ、「あっ!ちょっ……!」などと口走ってる間にアルルの胸の中に居た。トロワも遅れてやってくる。
アルルにギュっとされた三人は心の底から安心したような顔で胸に埋もれる。両親から感じる愛情とは一線を画す毛布に包まれるが如き愛。暖かくて柔らかい。
その様子を見ていたアイナは感無量と言いたげに瞳を潤ませた。ブレイドも心の底から祝福を送る。
「……本当はね?遠くで見るだけにしようって思ってたの。みんなが安心して暮らせていれば私は満足だったし、いきなりお姉ちゃんだって言う女の人が出てきたら嫌な気持ちになるかもって思ったからね」
「「「そんなことない……!」」」
三人は同じタイミングで口を開き、同じ言葉を発した。三人とも顔を見合わせ恥ずかしそうに俯く。
「ありがとう。それを聞けて安心した。私はどこにいてもあなたたちのお姉ちゃんだからね」
アルルは普段とは違う大人びた雰囲気で弟たちに接する。五、六才ほどしか年齢が違わないと言うのに、まるで我が子に向けるような慈愛の目を向けた。
「アルル。ここで暮らさない?ブレイドもここに居たら良いのよ?」
アイナはそうして欲しいと懇願する眼差しを向けてきた。
「お母さん……」
アルルの胸元にいる三人もそうして欲しいと頷いている。先ほどまで堅苦しかった兄弟をここまで懐柔する抱擁力には感心する。
ブレイドはそんなアルルを見て、もしかしたらここに居た方が幸せなのかもしれないと思う。これから困難な旅に出る。もしかしたらもうこの世界には戻ってこられないかもしれない。迷子だの何だのと言う話ではなく、問題は生き死ににある。
アルルには家族がみんな居る。生きている。そして半人半魔などではない生粋のヒューマン。イルレアンに住んでいても違和感はないし、優秀な上に将来を約束されたも同然の家系と役職。意識体だけの存在となってしまったが孫のためならアスロンも手助けしてくれる。至れり尽くせりの環境。本来断る理由など存在しない。
「無理」
アルルはスパッと言い放った。
「私はブレイドと旅に出るの。すごく過酷な旅になるかもしれない。けど私は外に行く。それが私が選んだ道だから」
「そんな!せっかく会えたのに!?」
トロワが声を上げた。普段ほとんど感情の起伏を見せない彼の発言は周囲を驚かせるのに一役買った。
「ごめんねトロワ、ツヴァイもファウストも。私のわがままを許してね」
アイナは目を瞑る。もしかしたら一緒に住めるのではないかという希望を軽々と打ち砕いて進む娘。二十歳も来ていない子供と呼べる年齢だというのに立派に自立した考えを持っている。子供たちは食い下がろうとしているがアイナは既に諦めていた。
──ズズゥンッ
その時、遠くで地響きが鳴った。即座に反応したのはブレイドだ。音のなった方角を察知し、じっと壁を見つめている。
「……アイナさん。公爵は?」
「え?ま、まだ帰国なさってないわ。一体何が起こって……?」
「行くぞアルル」
「うん」
アルルは立ち上がる。「待って姉様!」と縋る三人にアルルはニコッと微笑んだ。
「忘れないで。私はどこに行ってもあなたたちのお姉ちゃんだから」
アルルの服を掴んでいた手から力が抜ける。引き止められないことを悟ったのだ。屋敷から出て行く二人の姿を母と子の四人で見送った。アルルが選んだ旅の無事を祈って……。
アイナは出迎えた使用人に指示を出し、ブレイドとアルルを連れ立って応接間に案内した。
「さぁ入って。好きなところに座って」
ラルフの時とは違って砕けた言葉遣いを使っている。表情も心なしか優しい。きっとアイナが心を許した時に出る言動なのだろうと察し、二人はソファに腰を下ろした。
「うふふ。二人並んで仲が良いわね」
「ええ、ずっと一緒でしたから……」
ブレイドがアルルを見ながら笑った。アルルも嬉しそうに見返す。アイナはこの二人の側に居てやれなかった思いから胸が苦しくなり、一瞬悲しそうな表情を隠せなかったが、すぐに切り替えて微笑んだ。
「お茶でもどうかしら?私のお気に入りの茶葉なの。良かったら……」
コンコンッ
もう少しゆっくりしてからとも考えていたが、思ったよりも早かった。アイナは手を前に組み、胸を張って背筋を伸ばし、扉の向こう側に返事をする。
「お入りなさい」
扉を開けて入ってきたのは三人の子供たち。姿勢、体型、顔、全てが整ったまさに理想の男の子たち。まだまだ幼さはあるが、雰囲気は大人顔負けの凛々しさを醸し出している。流石は公爵とアイナの間に生まれた子だと感心した。
「失礼します」
背の高さ順がそのまま生まれた順となっている。
「自己紹介を」
「はい母様。ファウスト=アルヴィン=マクマインと申します」
「僕はツヴァイ=ボルト=マクマインです。よろしくお願いします」
「トロワ……」
長男、次男はフルネームで答えたというのに、三男だけは面倒臭そうにしている。アイナが「トロワ」と一声掛けると、むず痒そうに体を揺すった後に背筋を伸ばした。
「トロワ=チャーリー=マクマイン」
呆れた顔をしたアイナだったが、すぐに微笑んでアルルたちを見た。率先してブレイドが立ち上がる。
「ご丁寧にありがとうございます。俺はブレイド。ただのブレイドです。そして……」
ブレイドが振り返ってアルルを見る。アルルは目をパチクリさせて三兄弟をじっくりと見ていた。
「これが私の弟たち?」
スッと立ち上がったアルルを見て三兄弟は今気付いたかのように目を丸くする。当然だ。見た目がアイナにそっくりなのだ。あどけなさを残した可愛らしい顔立ちだが、少し離れてみたら天然パーマのくるくるとした髪型といい、体系といい、瓜二つと言って過言ではない。
「私はアルル。唐突だけど私はあなたたちのお姉ちゃんよ」
「……え?お姉様?」
「兄上。この人たち……」
ツヴァイがコソッと耳打ちする。その瞬間にアイナの集めていた資料を思い出す。ブレイドとアルルの名が何度も出てきていたのは、アルルが姉でブレイドがそのお付きとかそういうものだったのだと確信した。
「聡明そうな子たちですね。何というか、見ただけで将来有望な雰囲気を感じます」
「うふふ、あなたにそう言ってもらえると嬉しいわ」
アイナはブレイドと顔を見合わせる。この瞬間に三兄弟の中で、ブレイドの地位が一気に上がった。お付きなどではなく、家族ぐるみの何かを感じさせたからだ。
「ん~?」
ブレイドを観察していた三人はアルルの接近に気付くのに一瞬遅れた。急に顔を近づけてくる距離感のなさにファウストはビクッと体を跳ねさせた。
「やっぱり初めましてだから、どうしてもこう……違和感みたいなのがあるよね。君たちもそう思うでしょ?」
「はわわ……ち、近いです!もう少し離れてください!」
「え?そう?全然そんなことないよ。ほらおいで。ギュってしてあげる」
アルルはファウストの存在を確かめるように抱きしめた。
(ち、違う……母様や父様と違う)
ファウストの体からフッと緊張が解ける。
「な、なな、何を破廉恥な……!」
ツヴァイは顔を赤らめながら後ずさりするが、既にアルルはツヴァイの手を握っていた。
「何を言ってるの?姉弟でしょ?ほら、トロワもおいで」
手を引っ張られ、「あっ!ちょっ……!」などと口走ってる間にアルルの胸の中に居た。トロワも遅れてやってくる。
アルルにギュっとされた三人は心の底から安心したような顔で胸に埋もれる。両親から感じる愛情とは一線を画す毛布に包まれるが如き愛。暖かくて柔らかい。
その様子を見ていたアイナは感無量と言いたげに瞳を潤ませた。ブレイドも心の底から祝福を送る。
「……本当はね?遠くで見るだけにしようって思ってたの。みんなが安心して暮らせていれば私は満足だったし、いきなりお姉ちゃんだって言う女の人が出てきたら嫌な気持ちになるかもって思ったからね」
「「「そんなことない……!」」」
三人は同じタイミングで口を開き、同じ言葉を発した。三人とも顔を見合わせ恥ずかしそうに俯く。
「ありがとう。それを聞けて安心した。私はどこにいてもあなたたちのお姉ちゃんだからね」
アルルは普段とは違う大人びた雰囲気で弟たちに接する。五、六才ほどしか年齢が違わないと言うのに、まるで我が子に向けるような慈愛の目を向けた。
「アルル。ここで暮らさない?ブレイドもここに居たら良いのよ?」
アイナはそうして欲しいと懇願する眼差しを向けてきた。
「お母さん……」
アルルの胸元にいる三人もそうして欲しいと頷いている。先ほどまで堅苦しかった兄弟をここまで懐柔する抱擁力には感心する。
ブレイドはそんなアルルを見て、もしかしたらここに居た方が幸せなのかもしれないと思う。これから困難な旅に出る。もしかしたらもうこの世界には戻ってこられないかもしれない。迷子だの何だのと言う話ではなく、問題は生き死ににある。
アルルには家族がみんな居る。生きている。そして半人半魔などではない生粋のヒューマン。イルレアンに住んでいても違和感はないし、優秀な上に将来を約束されたも同然の家系と役職。意識体だけの存在となってしまったが孫のためならアスロンも手助けしてくれる。至れり尽くせりの環境。本来断る理由など存在しない。
「無理」
アルルはスパッと言い放った。
「私はブレイドと旅に出るの。すごく過酷な旅になるかもしれない。けど私は外に行く。それが私が選んだ道だから」
「そんな!せっかく会えたのに!?」
トロワが声を上げた。普段ほとんど感情の起伏を見せない彼の発言は周囲を驚かせるのに一役買った。
「ごめんねトロワ、ツヴァイもファウストも。私のわがままを許してね」
アイナは目を瞑る。もしかしたら一緒に住めるのではないかという希望を軽々と打ち砕いて進む娘。二十歳も来ていない子供と呼べる年齢だというのに立派に自立した考えを持っている。子供たちは食い下がろうとしているがアイナは既に諦めていた。
──ズズゥンッ
その時、遠くで地響きが鳴った。即座に反応したのはブレイドだ。音のなった方角を察知し、じっと壁を見つめている。
「……アイナさん。公爵は?」
「え?ま、まだ帰国なさってないわ。一体何が起こって……?」
「行くぞアルル」
「うん」
アルルは立ち上がる。「待って姉様!」と縋る三人にアルルはニコッと微笑んだ。
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