一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
681 / 718
最終章

第十六話 訪れた機会(チャンス)

しおりを挟む
「……んー……おかしいな」

 ラルフは草臥れたハットを飛ばさないよう手で押さえながらアトムの動向を観察する。一緒に地面に向けてゆっくり下降するミーシャはラルフの呟きに首を傾げる。

「何が?」

「アンデッドを操ったり巨大化させてみたりは奴の専売特許だけど、あまりに短絡過ぎやしないかってこと。なんつーかこう……何も考えてないだろアレ」

 ミーシャも喉を鳴らして唸るが、すぐに結論を出す。

「何も考えていないのは最初からでしょ?」

 安心と信頼のノリと勢い。アトムは感情的過ぎて行き当たりばったりで攻撃を仕掛けている。初めてあった時から今に至るまで、そうとしか思えないほど短絡的な言動が目立つ。

「それはそうなんだけどな?なーんか引っかかるんだよなぁ……」

『ふんっ……ただの人間が神の深層心理に触れることなど出来はしない』

 アトムは翼を羽ばたかせながら同じ速度で一緒に下降していた。

「……あのさ、聞きたいんだけど。普段の声は男っぽいのにお前はなんで女にばかり取り憑くんだ?趣味か?」

『まさか。居心地だ。それにこの体は私が直々に生成したものであって取り憑いたものではない』

「おいおい、聞いたか?居心地だとよ。案外素直に答えるじゃんか。まさかお前とちゃんと会話が出来るとは思わなかったぜアトム。いつもなら俺が口を開く度に『黙れ!黙れ!』って即発狂してるってのに……」

『誤解を解こうとしたまでだ。それ以上でもそれ以下でもない』

 先程まで大声を張り上げていたというのに、今は素直に冷静に返事してくる。ラルフは喉の奥に小骨が引っかかったような気になりながらもレギオンを見た。巨大で黒っぽい禍々しいオーラをあたり一面に撒き散らし、今か今かと殺し合いの時を待っている。

「あ~、違和感の正体が分かったぞ。お前に足りないのは俺を殺そうとする情熱だ。いつ如何なる時も狙ってきたあの情熱が全く感じられない。アンデッド?集合させて巨大化したところで一体しかいないんだけど?あんなものミーシャに瞬殺されて終わりだぜ。お前の要因でエルフェニアを消滅させたように、イルレアンの人間を操りゃ良かったはずだ。でもやらないことを選択した。それは何故だ?」

「え?でもカサブリアの時はアンデッドだけだったよ?今回も操りやすい死体を採用したってことは?」

「いや、あの時はここまでの力を出せなかった時期だぜ?制御されてたから仕方なく死体を操ったって考えられるだろ?でも今回のはあえて・・・だ」

『……何が言いたい?』

「出来るのにやらねぇってのは何かを企んでる時の行動なんだよ。もし時間稼ぎしたいなら、本気で違和感なく騙す必要がある。分かるか?手抜きはダメだぜアトム」



 取り囲まれたブレイドとアルルはいかにこの状況を潜り抜けるかを考えていた。
 多勢に無勢。特にソフィーは個人的恨みが強く、簡単には逃がしてくれないだろう。かといって全力で抵抗すればアルルが危険だ。戦いにばかり性を出せば、手薄になったアルルを狙いかねない。魔障壁を発動させるだろうが、ガンブレイド部隊の攻撃力はさっき見たとおりだ。

(こうなったら全力でアルルを抱えて撤退すれば……)

 ブレイドがギュっと手を握ると、皮膚が浅黒く変色していく。

「厶?!魔族ダト?ヨクモココマデ人間ヲ演ジラレタモノダナ」

 グランツもブレイドの変化に合わせて構えた。

「当然です。それは忌むべき存在、半人半魔ハーフです。神の意向に反した獣。間引きに失敗した個体です」

「ハーフ?」

 グランツは目をパチクリさせてブレイドを観察する。人間から魔族へ、魔族から人間へ。切り替えることでどちらにも潜入可能。
 自分が出会う初めての人種に対し色々考えさせられ、困惑を隠しきれない。

「……イヤ、何ヲ考エル必要ガアル?反乱分子ハ潰ス。ソレダケダ」

 単純こそグランツの唯一の武器。「敵は殺す」のみ。

「待て待てーい!!」

 その時、ブレイドとアルルを包囲している陣形の外から声が聞こえた。今のこの戦いを止めようとしている。
 黒曜騎士団新団長バクスが声を投げ掛けたのだ。

「ここでの戦闘はイルレアンを害する!即刻やめろ!喧嘩なら余所でやれ!!」

 団長にふさわしい堂々とした表情。背負う覚悟は出来ているようだ。

「白の騎士団である我々に楯突こうとは良い度胸ですね。今ならまだ間に合います。そこでただ見ていることを選択してください。でなければ死ぬことになりましょう」

 ズラッと揃った黒曜騎士団にニコニコと微笑みながらソフィーは言い放つ。煌杖イザベル=クーンはその言葉に呼応してソフィーの一歩前に出た。杖をかざしていつでも交戦する構えだ。

(しめた!あれを利用しよう!)

 ブレイドはアルルを庇いつつ黒曜騎士団の下へとジリジリ動き始める。バクスたちを盾に逃げるつもりだ。不利な状況に見えた光明。仕切り直すためにも使わない手はない。
 そして、その考えは実のところバクスにとって願ったり叶ったりだった。

「……やっと俺に機会が回って来たってことだな。あの時果たせなかった約束をここで……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...