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最終章
第二十一話 やるか、やられるか
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『この体を破壊したところで意味はないぞ……我ら神は肉体のない力の集合体……何度でもこの世界に降りて貴様らを狙う……命が続くのも残り僅かと知れ』
せっかく作成したイーリス=ベリタージュの体が半分となり、抵抗するための手も消滅した。首を吊るすように掴むミーシャは敗色濃厚なくせに何故か凄むアトムを冷ややかに見据える。
「何度来ても同じことだ。私には勝てない。それでも諦めず戦い続けるというなら……何度でも相手になってやる。容赦はしない。……お前に永遠の敗北を味合わせてやる」
金色の瞳に燃える真紅の闘志。純粋とさえ言えるその眼差しにアトムは恐怖を感じた。
今この場で攻撃を仕掛けることだって出来る。ちょっと手を生やすだけで良いのだ。でもそれが出来ない。
ほんのちょっとした抵抗すらする気の起きない心からの敗北。アトムはミーシャの目を見たまま固まっていた。
『ふふふっ……ふははっ!はぁーっはっはっは!!』
もう笑うしかなかった。発狂したアトムを見てミーシャは魔力砲を撃った。首根っこから放たれた魔力砲は一瞬にしてアトムの作った体を粉微塵に吹き飛ばす。
「あ、終わった?」
ラルフはミーシャがアトムとやりあっている間、レギオンと戦っていた。いや、正確には戦ってはいない。レギオンを次元の穴に入れては上空一万メートルから落としていた。重さで複数体ひき潰し、無事だったアンデッドも同じように上空から落としていた。最後の一体もラルフの目の前で落ちて弾けた。
ミーシャは先のアトムの言動を思い出しため息をついた。
「全くしつこい奴だ。もし次があるとしたら今度は何で来ると思う?」
「さぁな。どうせ巨大な何かだろうけど、出来ればもう会いたくねぇな……よしっ!じゃブレイドたちのところに行くか!」
ラルフは重い空気にさせないようにニカッと笑顔を作った。ミーシャはそんなラルフを見て肩を竦めると「うん」と一つ頷いた。
*
次元の穴を跨いだラルフはイザベルとアルルの間に挟まれるように出て来た。
この世界の創造主を相手にしていたはずの男がまるで何事も無かったかのようにそこにいるのは何かの冗談のようにさえ思えた。
「ちょっ……おいおい、取り込み中だったか?頼むから攻撃はしないでくれよ?」
軽口を叩いたラルフを見てソフィーが怒り狂った。
「ラルフ!!」
血管が浮き出るほどの力が入った全身から発せられる爆発力は地面を抉り、消えるように移動を開始した。心の底から愛していた昔の仲間、イーリスの持っていた槍を覚えている範囲で復元した特注の槍。この自慢の槍を突進の勢いと共に突き出してラルフに迫る。
何がそこまで腹に据えかねたのか。正直、当事者であるはずのソフィーですら正確に把握していない。どうしてゼアルやマクマイン公爵、鋼王やアロンツォ等の実力者や有力者たち、神ですらがこの草臥れたハットの男に注目するのか全くの謎だった。今の状況はまさにそれ。
だが理解した。頭ではなく心で理解した。
こいつは全てを台無しにする生きていてはいけない男だ。この世に居るはずのない存在だ。居てはいけない矛盾に満ちた異端者だ。
この瞬間、彼女はアンデッドキラーでも復讐者でもなくなった。神の名の下にラルフという世界の歪を消すためだけに力を使う正義と化した。
──ィィィィンッ
しかし思いも信念も神の御技も、唯一王の前には紙くず同然。ミーシャに握り止められた槍は元からそうであったかのようにピタリと固定される。ソフィーが残像すら残さず飛び込んだ勢いも、まるで時が止まったかのようだ。背後から押し寄せる風圧だけが彼女が動いていたことを証明していた。
「私を出し抜いてラルフを殺せるとでも思った?」
「鏖……!?」
その言葉にミーシャの眉間にシワが入る。
「私はその名が嫌いだ」
パァンッ
ミーシャはソフィーの胸を叩いた。張り手の如く突き出された攻撃に、ソフィーは槍を保持してられずに吹き飛ばされた。ここで一度も倒れなかったソフィーの体は地面に転がり、新品同然の服が砂まみれになった。恨みがましい目でミーシャを見上げる。その顔にかつて完膚無きまでに叩き潰した女の顔が被った。
「ん?お前よく見たら戦ったことがあるな。手足がなくなって虫の息だった奴とそっくりだ」
「ふふ……まさにそれが私ですよ。覚えていませんか?あなた方が殺しを必要と感じるか、私があなた方を殺すのか、二つに一つ……この文言を」
「あ、なんか聞いたような……聞いてないような……」
ミーシャは腕を組んで唸った。
「覚えていなくて結構。どの道ここで答えが出ます」
ソフィーはゆっくりと立ち上がる。よっぽど痛かったのか、突っ張られた胸を押さえて少し苦しそうだ。
「……ただ残念なことに私の力ではこれ以上のパフォーマンスを見せることは適いません。あなたの命に少しでも近づこうと思うならば、覚悟を決めなければ……」
「?……何の覚悟?」
ミーシャの疑問にソフィーは口角を上げて不敵に笑う。
「……この身を捧げる覚悟ですよ。アトム様!!」
バッと両手を横に開いて上空を見上げる。何もない虚空に構わず語りかける。
「私の体を使い!この者に裁きをお与えください!!あなたのためならばこの身を永遠に捧げます!!」
自分を犠牲に世界を救おうと考えているようだ。自己犠牲の精神を振りかざしているが本心は違う。彼女は自殺願望があるので実際はヤケになっているだけだ。
ソフィーの懇願するかのような祈りは空中に溶け、場はしんっと静まり返る。彼女は首を傾げながら空を見続ける。アトムは彼女の覚悟に答えなかった。
ソフィーの頭によぎったのはエレクトラだ。最初に力を与えてくれた神様。ミーシャに勝てなかったソフィーに愛想を尽かし、与えた力を回収していった。
今回も同じか。今はまだ力を回収された気配はないが、肝心のアトムも見当たらない。また裏切られたのだ。結局自分が戦うしかないのか。
『良い心がけだね。さすがは信心深い一角人』
傷心のソフィーに話しかけたのはアシュタロトだった。
「おいおい、待てよアシュタロト。まさかお前……」
『だったら……どうする?ラルフ』
せっかく作成したイーリス=ベリタージュの体が半分となり、抵抗するための手も消滅した。首を吊るすように掴むミーシャは敗色濃厚なくせに何故か凄むアトムを冷ややかに見据える。
「何度来ても同じことだ。私には勝てない。それでも諦めず戦い続けるというなら……何度でも相手になってやる。容赦はしない。……お前に永遠の敗北を味合わせてやる」
金色の瞳に燃える真紅の闘志。純粋とさえ言えるその眼差しにアトムは恐怖を感じた。
今この場で攻撃を仕掛けることだって出来る。ちょっと手を生やすだけで良いのだ。でもそれが出来ない。
ほんのちょっとした抵抗すらする気の起きない心からの敗北。アトムはミーシャの目を見たまま固まっていた。
『ふふふっ……ふははっ!はぁーっはっはっは!!』
もう笑うしかなかった。発狂したアトムを見てミーシャは魔力砲を撃った。首根っこから放たれた魔力砲は一瞬にしてアトムの作った体を粉微塵に吹き飛ばす。
「あ、終わった?」
ラルフはミーシャがアトムとやりあっている間、レギオンと戦っていた。いや、正確には戦ってはいない。レギオンを次元の穴に入れては上空一万メートルから落としていた。重さで複数体ひき潰し、無事だったアンデッドも同じように上空から落としていた。最後の一体もラルフの目の前で落ちて弾けた。
ミーシャは先のアトムの言動を思い出しため息をついた。
「全くしつこい奴だ。もし次があるとしたら今度は何で来ると思う?」
「さぁな。どうせ巨大な何かだろうけど、出来ればもう会いたくねぇな……よしっ!じゃブレイドたちのところに行くか!」
ラルフは重い空気にさせないようにニカッと笑顔を作った。ミーシャはそんなラルフを見て肩を竦めると「うん」と一つ頷いた。
*
次元の穴を跨いだラルフはイザベルとアルルの間に挟まれるように出て来た。
この世界の創造主を相手にしていたはずの男がまるで何事も無かったかのようにそこにいるのは何かの冗談のようにさえ思えた。
「ちょっ……おいおい、取り込み中だったか?頼むから攻撃はしないでくれよ?」
軽口を叩いたラルフを見てソフィーが怒り狂った。
「ラルフ!!」
血管が浮き出るほどの力が入った全身から発せられる爆発力は地面を抉り、消えるように移動を開始した。心の底から愛していた昔の仲間、イーリスの持っていた槍を覚えている範囲で復元した特注の槍。この自慢の槍を突進の勢いと共に突き出してラルフに迫る。
何がそこまで腹に据えかねたのか。正直、当事者であるはずのソフィーですら正確に把握していない。どうしてゼアルやマクマイン公爵、鋼王やアロンツォ等の実力者や有力者たち、神ですらがこの草臥れたハットの男に注目するのか全くの謎だった。今の状況はまさにそれ。
だが理解した。頭ではなく心で理解した。
こいつは全てを台無しにする生きていてはいけない男だ。この世に居るはずのない存在だ。居てはいけない矛盾に満ちた異端者だ。
この瞬間、彼女はアンデッドキラーでも復讐者でもなくなった。神の名の下にラルフという世界の歪を消すためだけに力を使う正義と化した。
──ィィィィンッ
しかし思いも信念も神の御技も、唯一王の前には紙くず同然。ミーシャに握り止められた槍は元からそうであったかのようにピタリと固定される。ソフィーが残像すら残さず飛び込んだ勢いも、まるで時が止まったかのようだ。背後から押し寄せる風圧だけが彼女が動いていたことを証明していた。
「私を出し抜いてラルフを殺せるとでも思った?」
「鏖……!?」
その言葉にミーシャの眉間にシワが入る。
「私はその名が嫌いだ」
パァンッ
ミーシャはソフィーの胸を叩いた。張り手の如く突き出された攻撃に、ソフィーは槍を保持してられずに吹き飛ばされた。ここで一度も倒れなかったソフィーの体は地面に転がり、新品同然の服が砂まみれになった。恨みがましい目でミーシャを見上げる。その顔にかつて完膚無きまでに叩き潰した女の顔が被った。
「ん?お前よく見たら戦ったことがあるな。手足がなくなって虫の息だった奴とそっくりだ」
「ふふ……まさにそれが私ですよ。覚えていませんか?あなた方が殺しを必要と感じるか、私があなた方を殺すのか、二つに一つ……この文言を」
「あ、なんか聞いたような……聞いてないような……」
ミーシャは腕を組んで唸った。
「覚えていなくて結構。どの道ここで答えが出ます」
ソフィーはゆっくりと立ち上がる。よっぽど痛かったのか、突っ張られた胸を押さえて少し苦しそうだ。
「……ただ残念なことに私の力ではこれ以上のパフォーマンスを見せることは適いません。あなたの命に少しでも近づこうと思うならば、覚悟を決めなければ……」
「?……何の覚悟?」
ミーシャの疑問にソフィーは口角を上げて不敵に笑う。
「……この身を捧げる覚悟ですよ。アトム様!!」
バッと両手を横に開いて上空を見上げる。何もない虚空に構わず語りかける。
「私の体を使い!この者に裁きをお与えください!!あなたのためならばこの身を永遠に捧げます!!」
自分を犠牲に世界を救おうと考えているようだ。自己犠牲の精神を振りかざしているが本心は違う。彼女は自殺願望があるので実際はヤケになっているだけだ。
ソフィーの懇願するかのような祈りは空中に溶け、場はしんっと静まり返る。彼女は首を傾げながら空を見続ける。アトムは彼女の覚悟に答えなかった。
ソフィーの頭によぎったのはエレクトラだ。最初に力を与えてくれた神様。ミーシャに勝てなかったソフィーに愛想を尽かし、与えた力を回収していった。
今回も同じか。今はまだ力を回収された気配はないが、肝心のアトムも見当たらない。また裏切られたのだ。結局自分が戦うしかないのか。
『良い心がけだね。さすがは信心深い一角人』
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『だったら……どうする?ラルフ』
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