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最終章
第二十二話 アシュタロト
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「あなた様も……神様……なのでしょうか?」
ソフィーはアシュタロトに恐る恐る質問する。
『そそっ。僕が神様さ。あ、名前?豊穣の神アシュタロトって言うんだ。よろしくね』
アシュタロトの軽々しい挨拶。だがその体から発せられるただならぬ気配にソフィーは彼女が神であることを確信した。すぐさま膝をついて両手を組んだ。
「ああ……神よ……」
その姿にミーシャは呆れた。
「何よ。結局誰でも良いんじゃない」
「ちょっ……おいおい、何てことを言うんだよ……」
「だってそうでしょ?さっきまではアトムを呼んでたのに、今はアシュタロトに傅いているのよ?何かこう……自尊心とか誇りとかないの?」
ミーシャの残酷とも取れる物言いにヒヤヒヤするラルフ。しかし当のソフィーはアシュタロトを崇めたままピクリとも動かない。
「やめろって。さっきアトムを消滅させたのはミーシャだろ?今ここに居ないんだから助けようがないじゃないか。それに、アシュタロトは神なんだから聖職者の一角人たちの性質上に照らせば間違ってないと思うけどな」
「詭弁じゃないの。やっぱり違うよ」
ミーシャは頑として譲らない。アシュタロトは二人の会話に割って入る。
『ちょっとちょっと。別に良くない?それそこまで話広げるとこ?僕を歓迎してくれるのは嬉しいけど、もっとこう……隠れてやらなきゃ照れちゃうじゃん』
「そんなことよりアシュタロト。お前本気でやるつもりか?マクマインはどうした?」
『ああ、彼?彼は独り立ちしちゃった。ゼアルもついて行くってなってから僕を呼ぶ回数が激減しちゃって……実は今僕結構暇なんだよねぇ』
「おいおい、暇つぶしか?勘弁してくれよ。親父の墓を守ってくれたのにはお礼を言うけど、暇つぶしで殺しあえって言うのはあんまりじゃないか?」
あまりの言い分にラルフはアシュタロトの説得に入った。しかしラルフの言葉などどこ吹く風だ。
『感謝してるならその対価をもらわなきゃ。君はソフィー=ウィルムだったね?』
「はい」
『僕が君の中に入って攻撃ってのは僕の主義じゃない。だから君を目一杯パワーアップさせるから、それでミーシャと戦いなよ』
「ありがたき幸せっ!!」
願っても無い。自分で戦えるならそれが最善である。
そんなやりとりを見ていたブレイドはおもむろに銃を構えた。
(ここにきて更に強くなるなんてそんなのダメだ。そんなことになる前に今ここで……)
神の力を授ける行為は放っておけば際限がない。ソフィーの元にはエレクトラとアトム、そしてアシュタロトの三柱がそれぞれ力を貸すことになる。白の騎士団最強の男、ゼアルが圧倒的に神の恩恵を受けているが、それに次ぐ二番目に神から力をもらった人間として数えられるだろう。
今回のパワーアップで、万が一にもミーシャが押されてしまったら一大事だ。
何も始まる前に潰す。小屋で二人暮らしで頼れるものの無かったあの頃。魔獣たちと生存競争を繰り広げたあの日。
自然と一体となり、魔獣には初動すら許さなかった狩り。静かに素早く正確に。
──ドンッ
空間を震わせる爆発音。ブレイドのガンブレイドから放たれたもので間違いない。
バジィッ
だがその攻撃は狙った獲物に当たる前に弾かれてしまった。これを防いだのはイザベルだ。ソフィーの邪魔はさせまいと魔障壁を展開し、危険な攻撃にその身を晒した。
「ソフィー様、アシュタロト様。お早く」
イザベルの言葉でようやくアシュタロトが動く。
『ホーンっていうのはさ、その頭から生えた角を指しているわけじゃん?水晶のような角は美しく、そして魔鉱石のようにそれそのものが魔力を放っている。そのお陰で全人類種の中で最も魔力総量の多い存在だ』
跪いているソフィーに手をかざす。
『ならばその角を増やしたらどうなるのか。例えば王冠のように頭を取り囲んだら?』
──メキメキッ……ギギギッ……
アシュタロトの言った通り王冠の如く頭を取り囲むように上に角が生えてくる。生まれつき持っている角を含めて9本の角が生え揃った。その姿はまるで王冠を被った女王のようにも見え、元々の美しさも相まって跪きたくなるようなカリスマを放っていた。
ソフィーは今まで感じたこともない魔力の量に溺れそうになる。クワッと目を見開くと、ルビーのように赤い瞳がまるで電飾のように輝いている。
「ああ、凄まじい魔力の量……そうか。私に足りなかったのは魔力だったのですね?」
『ううん。全部だよ。でもアトムが身体能力を強化してくれてたから、じゃあ残るは魔力かなって。無理な魔力アップだったけど、アトムの身体強化がその力を維持してくれてるようだよ?』
「なるほど。正直に教えてくださりありがとうございます。私は大いに自信が付きました」
全身から溢れる魔力に身を委ねて立ち上がる。迸る魔力をそのままに、ミーシャに向き直った。
「お待たせいたしました。ようやくあなたに追い付けた気がします」
「たかが角を何本か生やしたくらいで何を言っている?この世界で私に勝てるものは居ない。力を増すだけ無駄と知れ」
「ならばそれを証明してください。私は全力であなたを殺します」
ソフィーは体全身に魔力を行き渡らせる。隅々まで、自身の体を味わい尽くすかのように。そうして得たのは最硬の防御力と最強の攻撃力。いつもなら節約を考え、頭の中で属性変化や戦いに見合った魔法を一から十まで構築するが、今日はその心配をしなくて済みそうだ。何故なら溢れ出る魔力は100発魔力砲を撃ったところでなくならないと確信出来るからだ。
ミーシャも魔力の総量が多いから無駄遣いが出来る。そういう意味では同じ土俵に立てたと言えた。
一触即発の空気。そこにラルフが声を掛けた。
「はいはーい。ミーシャと互角に戦えちゃうってんなら国のお外でやろうぜ。無関係の人間を巻き込まねぇようにしないとな。だよな?ブレイド」
ブレイドは力強く頷く。
「つーわけで、はいっ」
ラルフは次元の穴を開けた。戦いの場は更地と化した元エルフェニア。無関係の生き物を極力排した、戦闘に打って付けの場所だ。
「さぁ、怖くねぇなら飛び込んで見せな」
ソフィーはアシュタロトに恐る恐る質問する。
『そそっ。僕が神様さ。あ、名前?豊穣の神アシュタロトって言うんだ。よろしくね』
アシュタロトの軽々しい挨拶。だがその体から発せられるただならぬ気配にソフィーは彼女が神であることを確信した。すぐさま膝をついて両手を組んだ。
「ああ……神よ……」
その姿にミーシャは呆れた。
「何よ。結局誰でも良いんじゃない」
「ちょっ……おいおい、何てことを言うんだよ……」
「だってそうでしょ?さっきまではアトムを呼んでたのに、今はアシュタロトに傅いているのよ?何かこう……自尊心とか誇りとかないの?」
ミーシャの残酷とも取れる物言いにヒヤヒヤするラルフ。しかし当のソフィーはアシュタロトを崇めたままピクリとも動かない。
「やめろって。さっきアトムを消滅させたのはミーシャだろ?今ここに居ないんだから助けようがないじゃないか。それに、アシュタロトは神なんだから聖職者の一角人たちの性質上に照らせば間違ってないと思うけどな」
「詭弁じゃないの。やっぱり違うよ」
ミーシャは頑として譲らない。アシュタロトは二人の会話に割って入る。
『ちょっとちょっと。別に良くない?それそこまで話広げるとこ?僕を歓迎してくれるのは嬉しいけど、もっとこう……隠れてやらなきゃ照れちゃうじゃん』
「そんなことよりアシュタロト。お前本気でやるつもりか?マクマインはどうした?」
『ああ、彼?彼は独り立ちしちゃった。ゼアルもついて行くってなってから僕を呼ぶ回数が激減しちゃって……実は今僕結構暇なんだよねぇ』
「おいおい、暇つぶしか?勘弁してくれよ。親父の墓を守ってくれたのにはお礼を言うけど、暇つぶしで殺しあえって言うのはあんまりじゃないか?」
あまりの言い分にラルフはアシュタロトの説得に入った。しかしラルフの言葉などどこ吹く風だ。
『感謝してるならその対価をもらわなきゃ。君はソフィー=ウィルムだったね?』
「はい」
『僕が君の中に入って攻撃ってのは僕の主義じゃない。だから君を目一杯パワーアップさせるから、それでミーシャと戦いなよ』
「ありがたき幸せっ!!」
願っても無い。自分で戦えるならそれが最善である。
そんなやりとりを見ていたブレイドはおもむろに銃を構えた。
(ここにきて更に強くなるなんてそんなのダメだ。そんなことになる前に今ここで……)
神の力を授ける行為は放っておけば際限がない。ソフィーの元にはエレクトラとアトム、そしてアシュタロトの三柱がそれぞれ力を貸すことになる。白の騎士団最強の男、ゼアルが圧倒的に神の恩恵を受けているが、それに次ぐ二番目に神から力をもらった人間として数えられるだろう。
今回のパワーアップで、万が一にもミーシャが押されてしまったら一大事だ。
何も始まる前に潰す。小屋で二人暮らしで頼れるものの無かったあの頃。魔獣たちと生存競争を繰り広げたあの日。
自然と一体となり、魔獣には初動すら許さなかった狩り。静かに素早く正確に。
──ドンッ
空間を震わせる爆発音。ブレイドのガンブレイドから放たれたもので間違いない。
バジィッ
だがその攻撃は狙った獲物に当たる前に弾かれてしまった。これを防いだのはイザベルだ。ソフィーの邪魔はさせまいと魔障壁を展開し、危険な攻撃にその身を晒した。
「ソフィー様、アシュタロト様。お早く」
イザベルの言葉でようやくアシュタロトが動く。
『ホーンっていうのはさ、その頭から生えた角を指しているわけじゃん?水晶のような角は美しく、そして魔鉱石のようにそれそのものが魔力を放っている。そのお陰で全人類種の中で最も魔力総量の多い存在だ』
跪いているソフィーに手をかざす。
『ならばその角を増やしたらどうなるのか。例えば王冠のように頭を取り囲んだら?』
──メキメキッ……ギギギッ……
アシュタロトの言った通り王冠の如く頭を取り囲むように上に角が生えてくる。生まれつき持っている角を含めて9本の角が生え揃った。その姿はまるで王冠を被った女王のようにも見え、元々の美しさも相まって跪きたくなるようなカリスマを放っていた。
ソフィーは今まで感じたこともない魔力の量に溺れそうになる。クワッと目を見開くと、ルビーのように赤い瞳がまるで電飾のように輝いている。
「ああ、凄まじい魔力の量……そうか。私に足りなかったのは魔力だったのですね?」
『ううん。全部だよ。でもアトムが身体能力を強化してくれてたから、じゃあ残るは魔力かなって。無理な魔力アップだったけど、アトムの身体強化がその力を維持してくれてるようだよ?』
「なるほど。正直に教えてくださりありがとうございます。私は大いに自信が付きました」
全身から溢れる魔力に身を委ねて立ち上がる。迸る魔力をそのままに、ミーシャに向き直った。
「お待たせいたしました。ようやくあなたに追い付けた気がします」
「たかが角を何本か生やしたくらいで何を言っている?この世界で私に勝てるものは居ない。力を増すだけ無駄と知れ」
「ならばそれを証明してください。私は全力であなたを殺します」
ソフィーは体全身に魔力を行き渡らせる。隅々まで、自身の体を味わい尽くすかのように。そうして得たのは最硬の防御力と最強の攻撃力。いつもなら節約を考え、頭の中で属性変化や戦いに見合った魔法を一から十まで構築するが、今日はその心配をしなくて済みそうだ。何故なら溢れ出る魔力は100発魔力砲を撃ったところでなくならないと確信出来るからだ。
ミーシャも魔力の総量が多いから無駄遣いが出来る。そういう意味では同じ土俵に立てたと言えた。
一触即発の空気。そこにラルフが声を掛けた。
「はいはーい。ミーシャと互角に戦えちゃうってんなら国のお外でやろうぜ。無関係の人間を巻き込まねぇようにしないとな。だよな?ブレイド」
ブレイドは力強く頷く。
「つーわけで、はいっ」
ラルフは次元の穴を開けた。戦いの場は更地と化した元エルフェニア。無関係の生き物を極力排した、戦闘に打って付けの場所だ。
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