一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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最終章

第三十七話 無心

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 ルカとの話し合いで良い情報を入手したラルフたちは早速塗料の作成に動く。
 西の大陸にあるヒューマンの居住区”ジュード”は船の往来が盛んな街であるために船大工は常駐している。塗料系統に疎い一行はとりあえず船大工を当たることにした。

「船舶用の塗料だって?そらぁ水が侵入しねぇように塗りゃぁするが、鮮やかなもんでもねぇよ?見てくかい?」

 船着場で仕事をしていたベテランになけなしの硬貨を渡し、船底用の塗料を見せてもらった。

「こりゃ凄いな。真っ黒だ」

「こいつは乾留液かんりゅうえきっつってな、そら面倒臭い工程を踏んで作られる特別な液体よ。このネバネバが海流に漂う変な生き物から船底を守ってくれるのさ。この辺の木が材料になってんだが、こいつがまた海の魔獣どもには効くらしいんだ。俺らに整備させりゃぁこの海を制覇したも同然よ」

 よく日焼けした二の腕に力こぶを作りながら黒い肌と対照的な白い歯をキラリと見せた。「なるほどなぁ」と感心するラルフの横でミーシャは首を傾げた。

「ふーん。魔鉱石で塗料を作ろうとは思わなかったの?魔法が使える船ならもっと魔獣を寄せ付けないと思うけど?」

「あんたエルフだろ?エルフなら木の性質くらい分かっててもいいんじゃねぇかい?いいかい嬢ちゃん。今でこそ魔障壁が普通になっているが、そいつは国単位での話だよ。俺らみてぇな一般人は何とか知恵を絞って魔獣との共存を果たさねぇといけねぇ。ま、あとは単純に手に入りやすいかどうかよ」

 ベテラン船大工は腕を組んで自分に言い聞かせるように何度か頷いている。それを聞いたミーシャは呆れたように鼻で笑った。

「つまりは魔鉱石が簡単には手に入らないから無い知恵を絞って乾留液とかいうのに頼ってるわけね。納得」

「てめ……っ!!」

 船大工は図星を突かれて一瞬沸騰したが、ラルフが間に入って宥める。

「まぁまぁ。ミーシャ、俺たちは今教えてもらっている側だぞ?少しは我慢しないと」

「だって言ってることが単なる言い訳なんだもん。それを物知らずって言われたらイラッとくるでしょ?」

 それを言われた船大工はぐっと言葉に詰まる。失言がどちらにもあったことにここで気付けたようだ。双方悪かったと謝罪の方向に持っていける状態になったのはラルフとしては願ったり叶ったりだ。
 ここでミーシャが問答無用で攻撃を仕掛ければ、この船大工は血煙になったことだろう。言い返すだけで踏みとどまってくれたことに感謝せねばならない。

「……俺も言い過ぎたみてぇだがよ。先人の努力を笑うような行為だきゃぁ謹んでくれよ?後世まで残る技術ってのは貴重な遺産だからよ……」

「だよな。歴史ってのは大事なもんだ。俺だっていろんな遺産に触れてきたからよく分かるぜ。けどミーシャの言うことも一理ある。技術は進歩させるべきだ。つーことで俺たちが次世代の塗料を開発したいからこいつを譲ってくれないか?出来れば樽三つくらい欲しいんだけど」

「……じゃ買えよ!」

 船大工は歴史ある塗料をタダで得ようとしたラルフに怒りをぶつけた。
 乾留液を買うお金がなかったためにどさくさ紛れにもらおうと思っていたが失敗。船大工では埒が明かないと判断したラルフは絵の具を参考にすることにし、船着場を後にした。
 目についたのは美術品を取り揃えている施設。多分ここだと足を踏み入れる。

「……絵の具の材料は顔料と植物油ですよ」

 施設の管理をしてそうな老人を捕まえて話を聞いたのは正解だった。

「つまり草木が関係しているんですね?」

「ええ、そうですね。あなたの仰っている建造物に塗ろうと思うのなら樹脂をお使いなさい。樹脂は固まれば水を弾き、長い間外壁を守ってくれることでしょう。この辺りに生えている木々は粘土の高い樹脂を採取出来ますので、議会に申請してみては如何でしょう。限度こそありますが、相応に採取の許可が下りると思いますよ」

「本当ですか?ありがとうございます。ついでに精製方法を教えていただけますか?」

「私の分かる範囲で……簡単でよければですが……」

 館長は物腰が柔らかく分かることをつらつらと語ってくれた。船大工に金を握らせたことを後悔しながら謝礼を渡すと、館長は最初こそ断りを入れたが寄付として受け入れてくれた。

「みんなあんな感じだったら良いのにな……」

 ミーシャは館長の言動に心を許し、唇を尖らせながら文句を口にした。

「みんな違ってみんな良い。だろ?全員がお人好しだったらこの世はとっくに滅んじまってるよ。ああいうのがたまに居るから世の中捨てたものじゃ無いって思えるのさ。船大工のおっちゃんは……当たり前のことでキレてたから文句の言いようがないけどな」

 ラルフもミーシャと同じ考えではあるが、それではとっくの昔に魔族に蹂躙されていた。疑い、警戒し、何とかして生き延びて時代に繋ぐ。生き物の本懐を考えさせられる一幕であった。

「ところで申請するの?」

「いいや。だってそんなに時間かけてられないしな。全部取っちゃこの国の生活に関わるから、樹脂を世界中から集める。あの戦艦の外壁全部を塗り切れるだけの樹脂があれば良いんだから楽勝だろ?」

「一つの木からどれだけ取れるかが勝負ね」

 ラルフとミーシャは拠点に戻って樹脂を取るためのチームを作成する。
 歩とジュリア、そしてウィーを連れ立って粘土の高い樹脂を生み出す木の発見に急ぐ。戦闘要員と採取の両方を受け持つデュラハン姉妹がお供に付き、暇を持て余した八大地獄のジニオンやノーンも参加することになった。ラルフは移動と回収要員として付いていく。

「これならすぐに回収出来そうだぜ!」

 ラルフは大船に乗ったつもりで出掛けた。
 連れて行ったメンバーに問題があるとは、この時のラルフは知りようもない。

 結論、八大地獄の面子は連れて行ってはいけない。特にジニオンはこういった仕事に向く訳が無いのだ。
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