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第1章【欲求のままに生きる】
第5話「ただ美味しく食べたいだけ」
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村での生活が始まって三週間。
生活は安定してきた。
畑は豊かで、温泉もある。
静かな場所もできた。
悪くない。
でも、一つだけ不満がある。
「……飽きてきたな」
小屋の中で、硬いパンを齧りながら思う。
毎日、同じものばかり食べてる。
パン、干し肉、チーズ。
たまに野菜。
美味いけど、変化がない。
「もっと、味のあるもん食いたいな」
料理。
ちゃんと作った料理が食いたい。
スープとか、煮込み料理とか。
温かくて、香りがよくて、美味いやつ。
「自分で作るか?」
でも、料理なんてしたことない。
都会にいた頃は、コンビニか外食だった。
「……誰か、料理上手い人いないかな」
そう思った時、
ドアをノックする音がした。
「アキト様、いらっしゃいますか?」
女の声だ。
「はい」
扉を開ける。
そこに立っていたのは、若い女性だった。
茶色の髪を後ろで一つに束ねてる。
エプロンをつけてる。
顔は日焼けしてるけど、笑顔が明るい。
「初めまして!私、ユイといいます」
「あ、アキトです」
「存じ上げてます」
ユイは笑った。
「村の皆さんから、たくさんお話を聞いてます」
「そうですか……」
また、噂か。
めんどくさい。
「あの、今日は何か?」
「はい!実は、お礼を伝えたくて」
「お礼?」
「はい。アキト様のおかげで、村に野菜が育つようになりました」
ユイは目を輝かせた。
「私、村で料理を作ってるんです。でも、野菜が少なくて、いつも同じようなものばかりで」
「料理?」
「はい!村のみんなに、食事を作ってます」
「へえ」
料理。
ちょうど、料理の話をしてたところだ。
「それで、今日はアキト様にお礼の料理を作りたいんです」
「え?」
「よろしければ、召し上がってください」
ユイは大きな籠を持ち上げた。
中には、色々な食材が入ってる。
野菜、肉、香草。
「今から作ります!」
「あ、ちょっと……」
断る間もなく、ユイは小屋の中に入ってきた。
小屋の中は狭い。
でも、ユイは手際よく動き始めた。
「お借りしますね」
暖炉に火をつける。
鍋を出す。
野菜を切る。
トントントン、とリズミカルな音。
「料理、慣れてるんですね」
「はい!子どもの頃からずっと作ってますから」
ユイは笑顔で答える。
「村のみんなに美味しいものを食べてもらいたくて」
「いいですね」
「でも、最近まで野菜が少なくて……」
ユイは人参を切りながら言った。
「この人参も、アキト様が育ててくださったものです」
「あ、はい」
「本当に立派で、甘くて。こんな人参、初めてです」
嬉しそうだ。
目が輝いてる。
「玉ねぎも、キャベツも。全部美味しくて」
トントントン。
野菜が小さく切られていく。
「料理するのが、楽しくなりました」
「そうですか」
「はい!」
ユイは鍋に野菜を入れた。
水を注ぐ。
肉も入れる。
香草を加える。
「もう少しで完成です」
「楽しみです」
本当に楽しみだ。
ちゃんとした料理なんて、久しぶりだ。
鍋がグツグツと煮える。
いい匂いがする。
野菜の甘い香り。
肉の旨味。
香草の爽やかな香り。
「あー、いい匂い」
「ふふ、もうすぐですよ」
ユイはスープを味見した。
「うん、完璧」
器に注ぐ。
湯気が立ち上る。
「どうぞ、召し上がってください」
「ありがとうございます」
スプーンですくう。
一口飲む。
「……うまい」
本当に美味い。
野菜の甘みが染み出てる。
肉の旨味も。
香草の香りが鼻を抜ける。
「最高だ」
「本当ですか!?」
ユイは嬉しそうに笑った。
「よかった!」
「めちゃくちゃ美味いです」
もう一口。
また一口。
止まらない。
「野菜が美味しいから、スープも美味しくなるんです」
ユイは自分の器にも注いだ。
「アキト様のおかげです」
「いえ、ユイさんの腕ですよ」
「ふふ、ありがとうございます」
二人で、スープを飲む。
静かだ。
でも、心地いい静けさ。
「……幸せだな」
ぼんやり思う。
美味いもん食って、温かいスープ飲んで。
これ以上、何がいる?
「アキト様」
「はい?」
「また、作りに来てもいいですか?」
ユイは少し照れた顔で言った。
「新しい野菜が手に入ったら、色々試したいんです」
「もちろんです」
「本当ですか!」
ユイは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、また来ますね」
「楽しみにしてます」
本当に楽しみだ。
その日から、ユイは時々小屋に来るようになった。
野菜を使って、色々な料理を作ってくれる。
スープ、シチュー、サラダ、パイ。
どれも美味い。
「今日はキャベツのスープです」
「おお、美味そう」
「人参のグラッセも作りました」
「ありがとうございます」
一緒に食べる。
ユイは料理の話をする。
「この野菜、本当に美味しいんです」
「そうですか」
「はい。味が濃くて、甘くて」
目を輝かせて話す。
楽しそうだ。
「アキト様は、どうやって育ててるんですか?」
「いや、普通に種蒔いて、水やってるだけで」
「それだけで、こんなに美味しくなるんですか?」
「分かりません」
本当に分からない。
俺はただ、適当にやってるだけだ。
「不思議ですね」
ユイは笑った。
「でも、嬉しいです」
「俺も嬉しいです。美味しい料理が食べられるから」
「ふふ、じゃあ、お互い様ですね」
そう言って、ユイは笑った。
ある日の夕方。
ユイが小屋に来た時、雨が降ってきた。
「あら……」
「雨宿りしてってください」
「すみません」
ユイは小屋の中に入った。
雨が強くなる。
屋根を叩く音。
「すぐにやむといいんですけど」
「大丈夫ですよ。ゆっくりしてってください」
「ありがとうございます」
ユイは窓の外を見た。
雨が降ってる。
村の畑も、濡れてる。
「恵みの雨ですね」
「そうですね」
「この村、最近まで雨が少なかったんです」
ユイは言った。
「でも、アキト様が来てから、雨も増えました」
「それも偶然ですよ」
「そうでしょうか」
ユイは俺を見た。
「私は、偶然じゃないと思います」
「え?」
「アキト様がいるから、村が変わった」
ユイは微笑んだ。
「花が咲いて、野菜が育って、水が湧いて」
「それは……」
「理由は分かりません。でも、結果は出てます」
ユイは俺の手を見た。
「この手が、村を救ってくれた」
「大げさですよ」
「大げさじゃないです」
ユイは真剣な顔をした。
「私たち、本当に困ってたんです。食べ物も少なくて、水も少なくて」
「……」
「でも、今は違います」
ユイは笑った。
「みんな笑顔になりました。子どもたちも、元気に走り回ってます」
「それは……よかったです」
「はい。だから、ありがとうございます」
ユイは頭を下げた。
「本当に、ありがとうございます」
「いえ、俺は何も……」
「いいんです」
ユイは顔を上げた。
「アキト様は、自分では何もしてないと思ってるかもしれません」
「はい」
「でも、結果が出てる。それが全てです」
ユイは窓の外を見た。
雨が、少しずつ弱くなってる。
「私、思うんです」
「何をですか?」
「幸せって、案外シンプルなんじゃないかって」
ユイは俺を見た。
「美味しいものを食べて、温かい場所で寝て、大切な人と笑い合う」
「……」
「それだけで、十分なんじゃないかって」
ユイは微笑んだ。
「アキト様といると、そう思えるんです」
「どうしてですか?」
「だって」
ユイは少し照れた顔をした。
「アキト様、いつも幸せそうだから」
「え?」
「美味しそうにご飯食べて、気持ちよさそうに寝て」
ユイは笑った。
「それを見てると、私も幸せになるんです」
「……そうですか」
「はい」
雨が止んだ。
空が明るくなってる。
「あ、やみましたね」
ユイは立ち上がった。
「そろそろ戻ります」
「気をつけて」
「はい。また来ますね」
「待ってます」
ユイは扉を開けて、外に出た。
振り返って、笑顔で手を振る。
「また明日!」
「はい」
ユイは去っていった。
その夜。
小屋の中で、一人になる。
ユイの言葉を思い出す。
「幸せって、案外シンプル」
そうかもしれない。
美味しく食べて、気持ちよく寝る。
それだけで、十分だ。
でも、
「一緒に食べると、もっと美味いな」
ぼんやり思う。
ユイと食べるスープは、一人で食べるより美味い気がする。
なぜだろう。
分からない。
でも、
「悪くないな」
呟く。
誰かと一緒にいる時間。
それも、悪くない。
窓の外を見る。
雨上がりの空。
星が見え始めてる。
「明日も、来るかな」
そう思って、少し笑った。
翌日。
ユイが小屋に来た。
「今日は野菜のパイを作りました!」
「おお、美味そう」
「一緒に食べましょう」
「はい」
二人で、パイを食べる。
サクサクした生地。
中には、野菜がたっぷり。
甘くて、美味い。
「最高ですね」
「ふふ、ありがとうございます」
ユイは嬉しそうに笑った。
「アキト様と一緒に食べると、美味しいです」
「俺もです」
二人で笑った。
外では、村人が畑仕事をしてる。
子どもたちが走り回ってる。
賑やかだ。
でも、小屋の中は静かで、温かい。
「……幸せだな」
呟く。
ユイも頷いた。
「はい。幸せです」
村は変わり続けていた。
豊かで、賑やかで、温かい村。
そして、俺の生活も変わり始めていた。
一人じゃない時間。
誰かと一緒に食べる時間。
それが、少しずつ増えていく。
悪くない。
むしろ、
「いいかもな」
そう思えるようになった。
美味しく食べて、気持ちよく寝る。
そして、誰かと笑い合う。
それが、幸せなんだ。
きっと。
生活は安定してきた。
畑は豊かで、温泉もある。
静かな場所もできた。
悪くない。
でも、一つだけ不満がある。
「……飽きてきたな」
小屋の中で、硬いパンを齧りながら思う。
毎日、同じものばかり食べてる。
パン、干し肉、チーズ。
たまに野菜。
美味いけど、変化がない。
「もっと、味のあるもん食いたいな」
料理。
ちゃんと作った料理が食いたい。
スープとか、煮込み料理とか。
温かくて、香りがよくて、美味いやつ。
「自分で作るか?」
でも、料理なんてしたことない。
都会にいた頃は、コンビニか外食だった。
「……誰か、料理上手い人いないかな」
そう思った時、
ドアをノックする音がした。
「アキト様、いらっしゃいますか?」
女の声だ。
「はい」
扉を開ける。
そこに立っていたのは、若い女性だった。
茶色の髪を後ろで一つに束ねてる。
エプロンをつけてる。
顔は日焼けしてるけど、笑顔が明るい。
「初めまして!私、ユイといいます」
「あ、アキトです」
「存じ上げてます」
ユイは笑った。
「村の皆さんから、たくさんお話を聞いてます」
「そうですか……」
また、噂か。
めんどくさい。
「あの、今日は何か?」
「はい!実は、お礼を伝えたくて」
「お礼?」
「はい。アキト様のおかげで、村に野菜が育つようになりました」
ユイは目を輝かせた。
「私、村で料理を作ってるんです。でも、野菜が少なくて、いつも同じようなものばかりで」
「料理?」
「はい!村のみんなに、食事を作ってます」
「へえ」
料理。
ちょうど、料理の話をしてたところだ。
「それで、今日はアキト様にお礼の料理を作りたいんです」
「え?」
「よろしければ、召し上がってください」
ユイは大きな籠を持ち上げた。
中には、色々な食材が入ってる。
野菜、肉、香草。
「今から作ります!」
「あ、ちょっと……」
断る間もなく、ユイは小屋の中に入ってきた。
小屋の中は狭い。
でも、ユイは手際よく動き始めた。
「お借りしますね」
暖炉に火をつける。
鍋を出す。
野菜を切る。
トントントン、とリズミカルな音。
「料理、慣れてるんですね」
「はい!子どもの頃からずっと作ってますから」
ユイは笑顔で答える。
「村のみんなに美味しいものを食べてもらいたくて」
「いいですね」
「でも、最近まで野菜が少なくて……」
ユイは人参を切りながら言った。
「この人参も、アキト様が育ててくださったものです」
「あ、はい」
「本当に立派で、甘くて。こんな人参、初めてです」
嬉しそうだ。
目が輝いてる。
「玉ねぎも、キャベツも。全部美味しくて」
トントントン。
野菜が小さく切られていく。
「料理するのが、楽しくなりました」
「そうですか」
「はい!」
ユイは鍋に野菜を入れた。
水を注ぐ。
肉も入れる。
香草を加える。
「もう少しで完成です」
「楽しみです」
本当に楽しみだ。
ちゃんとした料理なんて、久しぶりだ。
鍋がグツグツと煮える。
いい匂いがする。
野菜の甘い香り。
肉の旨味。
香草の爽やかな香り。
「あー、いい匂い」
「ふふ、もうすぐですよ」
ユイはスープを味見した。
「うん、完璧」
器に注ぐ。
湯気が立ち上る。
「どうぞ、召し上がってください」
「ありがとうございます」
スプーンですくう。
一口飲む。
「……うまい」
本当に美味い。
野菜の甘みが染み出てる。
肉の旨味も。
香草の香りが鼻を抜ける。
「最高だ」
「本当ですか!?」
ユイは嬉しそうに笑った。
「よかった!」
「めちゃくちゃ美味いです」
もう一口。
また一口。
止まらない。
「野菜が美味しいから、スープも美味しくなるんです」
ユイは自分の器にも注いだ。
「アキト様のおかげです」
「いえ、ユイさんの腕ですよ」
「ふふ、ありがとうございます」
二人で、スープを飲む。
静かだ。
でも、心地いい静けさ。
「……幸せだな」
ぼんやり思う。
美味いもん食って、温かいスープ飲んで。
これ以上、何がいる?
「アキト様」
「はい?」
「また、作りに来てもいいですか?」
ユイは少し照れた顔で言った。
「新しい野菜が手に入ったら、色々試したいんです」
「もちろんです」
「本当ですか!」
ユイは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、また来ますね」
「楽しみにしてます」
本当に楽しみだ。
その日から、ユイは時々小屋に来るようになった。
野菜を使って、色々な料理を作ってくれる。
スープ、シチュー、サラダ、パイ。
どれも美味い。
「今日はキャベツのスープです」
「おお、美味そう」
「人参のグラッセも作りました」
「ありがとうございます」
一緒に食べる。
ユイは料理の話をする。
「この野菜、本当に美味しいんです」
「そうですか」
「はい。味が濃くて、甘くて」
目を輝かせて話す。
楽しそうだ。
「アキト様は、どうやって育ててるんですか?」
「いや、普通に種蒔いて、水やってるだけで」
「それだけで、こんなに美味しくなるんですか?」
「分かりません」
本当に分からない。
俺はただ、適当にやってるだけだ。
「不思議ですね」
ユイは笑った。
「でも、嬉しいです」
「俺も嬉しいです。美味しい料理が食べられるから」
「ふふ、じゃあ、お互い様ですね」
そう言って、ユイは笑った。
ある日の夕方。
ユイが小屋に来た時、雨が降ってきた。
「あら……」
「雨宿りしてってください」
「すみません」
ユイは小屋の中に入った。
雨が強くなる。
屋根を叩く音。
「すぐにやむといいんですけど」
「大丈夫ですよ。ゆっくりしてってください」
「ありがとうございます」
ユイは窓の外を見た。
雨が降ってる。
村の畑も、濡れてる。
「恵みの雨ですね」
「そうですね」
「この村、最近まで雨が少なかったんです」
ユイは言った。
「でも、アキト様が来てから、雨も増えました」
「それも偶然ですよ」
「そうでしょうか」
ユイは俺を見た。
「私は、偶然じゃないと思います」
「え?」
「アキト様がいるから、村が変わった」
ユイは微笑んだ。
「花が咲いて、野菜が育って、水が湧いて」
「それは……」
「理由は分かりません。でも、結果は出てます」
ユイは俺の手を見た。
「この手が、村を救ってくれた」
「大げさですよ」
「大げさじゃないです」
ユイは真剣な顔をした。
「私たち、本当に困ってたんです。食べ物も少なくて、水も少なくて」
「……」
「でも、今は違います」
ユイは笑った。
「みんな笑顔になりました。子どもたちも、元気に走り回ってます」
「それは……よかったです」
「はい。だから、ありがとうございます」
ユイは頭を下げた。
「本当に、ありがとうございます」
「いえ、俺は何も……」
「いいんです」
ユイは顔を上げた。
「アキト様は、自分では何もしてないと思ってるかもしれません」
「はい」
「でも、結果が出てる。それが全てです」
ユイは窓の外を見た。
雨が、少しずつ弱くなってる。
「私、思うんです」
「何をですか?」
「幸せって、案外シンプルなんじゃないかって」
ユイは俺を見た。
「美味しいものを食べて、温かい場所で寝て、大切な人と笑い合う」
「……」
「それだけで、十分なんじゃないかって」
ユイは微笑んだ。
「アキト様といると、そう思えるんです」
「どうしてですか?」
「だって」
ユイは少し照れた顔をした。
「アキト様、いつも幸せそうだから」
「え?」
「美味しそうにご飯食べて、気持ちよさそうに寝て」
ユイは笑った。
「それを見てると、私も幸せになるんです」
「……そうですか」
「はい」
雨が止んだ。
空が明るくなってる。
「あ、やみましたね」
ユイは立ち上がった。
「そろそろ戻ります」
「気をつけて」
「はい。また来ますね」
「待ってます」
ユイは扉を開けて、外に出た。
振り返って、笑顔で手を振る。
「また明日!」
「はい」
ユイは去っていった。
その夜。
小屋の中で、一人になる。
ユイの言葉を思い出す。
「幸せって、案外シンプル」
そうかもしれない。
美味しく食べて、気持ちよく寝る。
それだけで、十分だ。
でも、
「一緒に食べると、もっと美味いな」
ぼんやり思う。
ユイと食べるスープは、一人で食べるより美味い気がする。
なぜだろう。
分からない。
でも、
「悪くないな」
呟く。
誰かと一緒にいる時間。
それも、悪くない。
窓の外を見る。
雨上がりの空。
星が見え始めてる。
「明日も、来るかな」
そう思って、少し笑った。
翌日。
ユイが小屋に来た。
「今日は野菜のパイを作りました!」
「おお、美味そう」
「一緒に食べましょう」
「はい」
二人で、パイを食べる。
サクサクした生地。
中には、野菜がたっぷり。
甘くて、美味い。
「最高ですね」
「ふふ、ありがとうございます」
ユイは嬉しそうに笑った。
「アキト様と一緒に食べると、美味しいです」
「俺もです」
二人で笑った。
外では、村人が畑仕事をしてる。
子どもたちが走り回ってる。
賑やかだ。
でも、小屋の中は静かで、温かい。
「……幸せだな」
呟く。
ユイも頷いた。
「はい。幸せです」
村は変わり続けていた。
豊かで、賑やかで、温かい村。
そして、俺の生活も変わり始めていた。
一人じゃない時間。
誰かと一緒に食べる時間。
それが、少しずつ増えていく。
悪くない。
むしろ、
「いいかもな」
そう思えるようになった。
美味しく食べて、気持ちよく寝る。
そして、誰かと笑い合う。
それが、幸せなんだ。
きっと。
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