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第2章 - 銀髪の賢者と小さな獣人
第8話:遺跡のボス戦と新たな絆
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遺跡の奥へと続く廊下は、先ほどまでの場所よりも一層暗く、空気も重かった。壁に刻まれた古代文字が、微かに青白い光を放っている。まるで、これから先に何か重大なものが待ち受けていることを警告しているかのようだ。
「魔力の濃度が増している」
リリエルが、周囲の空気を確かめるように手をかざしながら呟いた。
「これは...かなり強力な魔物が近くにいる証拠だ」
「どのくらい強いんですか?」
俺が尋ねると、リリエルは少し考えてから答えた。
「恐らく、レベル80以上。もしかすると、90を超えている可能性もある」
「そんなに...」
クレアが、緊張した表情で剣の柄を握りしめる。彼女にとっても、これほどの強敵と戦うのは初めてだろう。
「大丈夫。俺たちなら勝てる」
俺がそう言うと、クレアは少しだけ表情を緩めて頷いた。
「ああ...お前がいれば、大丈夫だ」
リリエルは、俺たちのやり取りを見て、小さく首を傾げた。
「...お前たちの信頼関係は、興味深い」
「興味深い?」
「ああ。戦闘における信頼関係が、戦闘力を向上させることは理論上知っていたが、実際に見るのは初めてだ」
リリエルは、相変わらず研究者らしい視点で物事を観察している。その真面目な様子が、どこか微笑ましかった。
「リリエルさんも、俺たちを信頼してくれますか?」
「...信頼?」
リリエルは、その言葉を反芻するように繰り返した。
「信頼という感情は、論理的に説明が難しい。だが...」
彼女は、少しだけ俺を見つめてから続けた。
「お前たちは、私を助けてくれた。だから、信頼に値すると判断する」
その言葉は、まるで論文を読むような淡々とした口調だったが、どこか温かみがあるように感じた。
「ありがとうございます」
「礼を言われる理由が分からないが...どういたしまして」
リリエルは、少し困惑したような表情を浮かべた。
廊下の先に、巨大な扉が見えてきた。
石造りの扉には、複雑な魔法陣が刻まれていて、淡い光を放っている。明らかに、何か重要な場所への入口だ。
「これが...最深部への扉か」
クレアが、扉を見上げながら呟く。
「ああ。この先に、恐らくボスがいる」
リリエルが、扉に手を触れた。すると、魔法陣が強く輝き始め、ゆっくりと扉が開いていく。
重い音を立てて、扉が完全に開いた。
その先には、広大な円形の部屋が広がっていた。天井は高く、まるで大聖堂のようだ。壁には無数の古代文字が刻まれていて、床には巨大な魔法陣が描かれている。
そして、部屋の中央には——
「あれが...ボスか」
クレアが、緊張した声で呟いた。
部屋の中央に、巨大な石像が鎮座していた。高さは五メートル以上。人型だが、全身が古代の石で覆われていて、目の部分だけが赤く光っている。両手には、巨大な剣を握っている。
「古代のゴーレム...」
リリエルが、その石像を見て小さく息を呑んだ。
「伝説にしか残っていない、究極の守護者だ」
俺たちが部屋に足を踏み入れた瞬間、床の魔法陣が強く輝き始めた。そして、ゴーレムの目が、より一層強く赤く光る。
ゴゴゴゴゴ...
重い音を立てて、ゴーレムが動き出した。
「来るぞ!」
俺が叫ぶと同時に、ゴーレムが巨大な剣を振り下ろしてきた。
「散れ!」
クレアの声に従い、俺たちは三方向に散る。剣が床に叩きつけられ、石畳が砕け散った。その一撃の威力は、想像以上だ。
「【ファイアボール】!」
俺は、すぐさま魔法を放つ。巨大な火球がゴーレムに直撃するが、その石の装甲は傷一つつかない。
「物理攻撃も魔法攻撃も、装甲が厚すぎて通らない!」
クレアが、剣でゴーレムの脚を斬りつけるが、火花が散るだけで、やはりダメージを与えられない。
「関節部分を狙え!」
リリエルが叫ぶ。
「装甲の隙間なら、ダメージが通るはずだ!」
「了解!」
俺とクレアは、視線を交わして頷き合った。長い付き合いではないが、戦闘での連携は既に息が合っている。
クレアが前衛として、ゴーレムの注意を引きつける。
「こっちだ、化け物!」
クレアがゴーレムの脚に斬りかかると、ゴーレムは彼女に向かって剣を振るう。クレアは、その攻撃を巧みに回避しながら、ゴーレムの周りを駆け回る。
その隙に、俺は関節部分を狙って魔法を放つ。
「【ウィンドカッター】!」
風の刃が、ゴーレムの膝の関節部分を切り裂いた。装甲の隙間から、石が削れる。
「効いてる!」
「よし、その調子だ!」
リリエルも、魔法を発動させる。
「【アイスランス】!」
氷の槍が、もう一方の膝の関節に突き刺さる。ゴーレムの動きが、少しだけ鈍くなった。
「このまま畳み掛けるぞ!」
クレアが、ゴーレムの背後に回り込む。そして、背中の関節部分に剣を突き立てた。
ゴーレムが、苦しそうに唸り声を上げる。だが、まだ倒れない。
それどころか、ゴーレムは突然、両手を高く掲げた。
「まずい...何か来る!」
リリエルが、警告する。
次の瞬間、ゴーレムの全身から強烈な魔力の波動が放たれた。衝撃波が、部屋中に広がる。
「うわっ!」
俺たちは、その衝撃波に吹き飛ばされた。壁に叩きつけられ、痛みが走る。
「くっ...強烈な魔力だ...」
リリエルが、苦しそうに立ち上がる。
ゴーレムは、再び動き出した。そして、今度は俺たちに向かって、両手の剣を振るい始める。
連続攻撃だ。
俺とクレアは、何とか回避するが、リリエルの動きが遅れた。先ほどの衝撃波で、ダメージを受けているのだろう。
ゴーレムの剣が、リリエルに向かって振り下ろされる。
「リリエルさん!」
俺は、考えるより先に身体が動いていた。
全速力でリリエルの前に飛び込み、彼女を抱きかかえる。そして、ゴーレムの剣を背中で受け止めた。
ズガァン!
鈍い音が響き、激痛が背中を走る。不死身の身体とはいえ、これほどの攻撃を受ければ、さすがに痛い。
「レン!?」
クレアが、悲鳴のような声を上げる。
俺は、リリエルを抱えたまま、ゴーレムから距離を取った。背中から血が流れているのが分かる。
「大丈夫...すぐ治る...」
俺の不死身スキルが発動し、傷が急速に回復していく。数秒もしないうちに、痛みも消えた。
だが、リリエルの様子がおかしい。
俺の腕の中で、彼女は震えていた。
「リリエルさん?」
「なぜ...」
彼女の声は、震えている。
「なぜ、私を...」
「当たり前でしょう。仲間を守るのは」
俺がそう言うと、リリエルは、俺の胸に顔を埋めた。
「私は...お前に、何もしてあげられていない...」
「そんなことないですよ。さっき、関節を狙えって教えてくれたじゃないですか」
「それだけでは...足りない...」
リリエルの声が、さらに震える。
「私は...お前がいなくなったら...どうすればいいのか...分からない...」
その言葉を聞いて、俺は驚いた。いつも冷静で、論理的なリリエルが、こんなに感情を露わにするなんて。
「死なないで...お前が死んだら...私は...!」
リリエルは、初めて感情を爆発させた。その目には、涙が浮かんでいる。
「大丈夫。俺は死なないから」
俺は、彼女の頭を優しく撫でた。
「約束する。絶対に、死なない」
「...本当か?」
「本当だよ」
リリエルは、涙を拭いながら俺を見上げた。その目は、まだ不安そうだが、少しだけ安心したように見えた。
「...これが、恋...なのか?」
リリエルが、小さく呟いた。
「心が、こんなに苦しいなんて...理論では理解できない...」
「リリエルさん...」
「でも...お前を失いたくない。それだけは、確かだ」
その言葉を聞いて、俺の胸が温かくなった。
「ありがとう。俺も、リリエルさんを失いたくない」
「...本当か?」
「本当だよ」
リリエルは、また小さく涙を流した。だが、今度は、悲しみではなく、安堵の涙のように見えた。
「おい、お前たち! 今はいちゃついてる場合じゃないぞ!」
クレアの叫び声で、俺たちは我に返った。
ゴーレムが、再びこちらに向かって突進してくる。
「まずい!」
「私も戦う」
リリエルが、俺の腕から離れて立ち上がった。その目には、強い決意が宿っている。
「お前を守るために、私も戦う」
「...リリエルさん」
「行くぞ」
リリエルは、杖を構えた。
俺とクレアも、それぞれの武器を構える。
「三人で、一気に畳み掛けるぞ!」
俺の言葉に、クレアとリリエルが頷く。
「任せろ!」
「了解した」
俺たちは、同時に動いた。
クレアが前衛として、ゴーレムの注意を引きつける。その隙に、俺とリリエルが魔法を放つ。
「【ファイアストーム】!」
「【ブリザード】!」
炎と氷の魔法が、ゴーレムの関節部分に集中する。装甲が削れ、内部の構造が露わになる。
「今だ、クレア!」
「ああ!」
クレアが、全力で剣を振るう。剣が、ゴーレムの胸の中心部——魔石が埋め込まれている場所に突き刺さった。
ゴーレムが、大きく揺れる。
そして、俺は最後の魔法を放つ。
「【ライトニングストライク】!」
強力な雷が、ゴーレムの魔石に直撃する。
ゴーレムは、激しく痙攣した後、動きを止めた。そして、ゆっくりと崩れ落ちていく。
ドォン!
巨大な石像が、床に倒れ伏した。
静寂が訪れる。
「...勝った...のか?」
クレアが、息を切らしながら呟く。
「ああ。勝ったよ」
俺も、疲労困憊だ。これほどの強敵との戦いは、初めてだった。
リリエルは、杖を下ろして、俺の方を見た。
「...お前たちのおかげだ。ありがとう」
「こちらこそ。リリエルさんがいなかったら、勝てなかった」
「...そうか」
リリエルは、小さく微笑んだ。
その笑顔は、先ほどよりも柔らかく、温かみがあった。
ゴーレムの残骸の中央に、大きな宝箱があった。
「あれが...お宝か」
クレアが、宝箱に近づく。
「開けてみよう」
俺たちは、宝箱を開けた。
中には、古代の魔法書、レアな装備品、そして大量の金貨が入っていた。
「凄い...これだけあれば、しばらくは困らないな」
クレアが、目を輝かせる。
リリエルは、魔法書を手に取った。
「これは...失われた古代魔法の書だ。貴重な資料だ」
「それ、リリエルさんが持っていてください」
「...いいのか?」
「はい。リリエルさんなら、有効活用できるでしょう」
「...ありがとう」
リリエルは、嬉しそうに魔法書を抱きしめた。
俺たちは、宝箱の中身を分配し、遺跡を出た。
外に出ると、夕日が沈みかけていた。長い戦いだったが、達成感があった。
「お疲れ様」
クレアが、俺に寄りかかってくる。
「お前のおかげで、勝てた」
「クレアとリリエルさんがいたからだよ」
「...そうだな」
クレアは、幸せそうに微笑んだ。
リリエルは、少し離れたところで、魔法書を読んでいた。だが、時々、こちらを見ては、また視線を逸らす。
「リリエルさん、どうしました?」
「...いや、何でもない」
だが、彼女の頬が、ほんのりと赤くなっているのが見えた。
「私も...お前たちの仲間にしてもらえるのか?」
「もちろんですよ。もう、仲間じゃないですか」
「...そうか」
リリエルは、また小さく微笑んだ。
「では、これからもよろしく頼む」
「こちらこそ」
俺たちは、遺跡を後にして、街へと戻った。
新しい仲間が増えた。
そして、これから、もっと大きな冒険が待っている。
「魔力の濃度が増している」
リリエルが、周囲の空気を確かめるように手をかざしながら呟いた。
「これは...かなり強力な魔物が近くにいる証拠だ」
「どのくらい強いんですか?」
俺が尋ねると、リリエルは少し考えてから答えた。
「恐らく、レベル80以上。もしかすると、90を超えている可能性もある」
「そんなに...」
クレアが、緊張した表情で剣の柄を握りしめる。彼女にとっても、これほどの強敵と戦うのは初めてだろう。
「大丈夫。俺たちなら勝てる」
俺がそう言うと、クレアは少しだけ表情を緩めて頷いた。
「ああ...お前がいれば、大丈夫だ」
リリエルは、俺たちのやり取りを見て、小さく首を傾げた。
「...お前たちの信頼関係は、興味深い」
「興味深い?」
「ああ。戦闘における信頼関係が、戦闘力を向上させることは理論上知っていたが、実際に見るのは初めてだ」
リリエルは、相変わらず研究者らしい視点で物事を観察している。その真面目な様子が、どこか微笑ましかった。
「リリエルさんも、俺たちを信頼してくれますか?」
「...信頼?」
リリエルは、その言葉を反芻するように繰り返した。
「信頼という感情は、論理的に説明が難しい。だが...」
彼女は、少しだけ俺を見つめてから続けた。
「お前たちは、私を助けてくれた。だから、信頼に値すると判断する」
その言葉は、まるで論文を読むような淡々とした口調だったが、どこか温かみがあるように感じた。
「ありがとうございます」
「礼を言われる理由が分からないが...どういたしまして」
リリエルは、少し困惑したような表情を浮かべた。
廊下の先に、巨大な扉が見えてきた。
石造りの扉には、複雑な魔法陣が刻まれていて、淡い光を放っている。明らかに、何か重要な場所への入口だ。
「これが...最深部への扉か」
クレアが、扉を見上げながら呟く。
「ああ。この先に、恐らくボスがいる」
リリエルが、扉に手を触れた。すると、魔法陣が強く輝き始め、ゆっくりと扉が開いていく。
重い音を立てて、扉が完全に開いた。
その先には、広大な円形の部屋が広がっていた。天井は高く、まるで大聖堂のようだ。壁には無数の古代文字が刻まれていて、床には巨大な魔法陣が描かれている。
そして、部屋の中央には——
「あれが...ボスか」
クレアが、緊張した声で呟いた。
部屋の中央に、巨大な石像が鎮座していた。高さは五メートル以上。人型だが、全身が古代の石で覆われていて、目の部分だけが赤く光っている。両手には、巨大な剣を握っている。
「古代のゴーレム...」
リリエルが、その石像を見て小さく息を呑んだ。
「伝説にしか残っていない、究極の守護者だ」
俺たちが部屋に足を踏み入れた瞬間、床の魔法陣が強く輝き始めた。そして、ゴーレムの目が、より一層強く赤く光る。
ゴゴゴゴゴ...
重い音を立てて、ゴーレムが動き出した。
「来るぞ!」
俺が叫ぶと同時に、ゴーレムが巨大な剣を振り下ろしてきた。
「散れ!」
クレアの声に従い、俺たちは三方向に散る。剣が床に叩きつけられ、石畳が砕け散った。その一撃の威力は、想像以上だ。
「【ファイアボール】!」
俺は、すぐさま魔法を放つ。巨大な火球がゴーレムに直撃するが、その石の装甲は傷一つつかない。
「物理攻撃も魔法攻撃も、装甲が厚すぎて通らない!」
クレアが、剣でゴーレムの脚を斬りつけるが、火花が散るだけで、やはりダメージを与えられない。
「関節部分を狙え!」
リリエルが叫ぶ。
「装甲の隙間なら、ダメージが通るはずだ!」
「了解!」
俺とクレアは、視線を交わして頷き合った。長い付き合いではないが、戦闘での連携は既に息が合っている。
クレアが前衛として、ゴーレムの注意を引きつける。
「こっちだ、化け物!」
クレアがゴーレムの脚に斬りかかると、ゴーレムは彼女に向かって剣を振るう。クレアは、その攻撃を巧みに回避しながら、ゴーレムの周りを駆け回る。
その隙に、俺は関節部分を狙って魔法を放つ。
「【ウィンドカッター】!」
風の刃が、ゴーレムの膝の関節部分を切り裂いた。装甲の隙間から、石が削れる。
「効いてる!」
「よし、その調子だ!」
リリエルも、魔法を発動させる。
「【アイスランス】!」
氷の槍が、もう一方の膝の関節に突き刺さる。ゴーレムの動きが、少しだけ鈍くなった。
「このまま畳み掛けるぞ!」
クレアが、ゴーレムの背後に回り込む。そして、背中の関節部分に剣を突き立てた。
ゴーレムが、苦しそうに唸り声を上げる。だが、まだ倒れない。
それどころか、ゴーレムは突然、両手を高く掲げた。
「まずい...何か来る!」
リリエルが、警告する。
次の瞬間、ゴーレムの全身から強烈な魔力の波動が放たれた。衝撃波が、部屋中に広がる。
「うわっ!」
俺たちは、その衝撃波に吹き飛ばされた。壁に叩きつけられ、痛みが走る。
「くっ...強烈な魔力だ...」
リリエルが、苦しそうに立ち上がる。
ゴーレムは、再び動き出した。そして、今度は俺たちに向かって、両手の剣を振るい始める。
連続攻撃だ。
俺とクレアは、何とか回避するが、リリエルの動きが遅れた。先ほどの衝撃波で、ダメージを受けているのだろう。
ゴーレムの剣が、リリエルに向かって振り下ろされる。
「リリエルさん!」
俺は、考えるより先に身体が動いていた。
全速力でリリエルの前に飛び込み、彼女を抱きかかえる。そして、ゴーレムの剣を背中で受け止めた。
ズガァン!
鈍い音が響き、激痛が背中を走る。不死身の身体とはいえ、これほどの攻撃を受ければ、さすがに痛い。
「レン!?」
クレアが、悲鳴のような声を上げる。
俺は、リリエルを抱えたまま、ゴーレムから距離を取った。背中から血が流れているのが分かる。
「大丈夫...すぐ治る...」
俺の不死身スキルが発動し、傷が急速に回復していく。数秒もしないうちに、痛みも消えた。
だが、リリエルの様子がおかしい。
俺の腕の中で、彼女は震えていた。
「リリエルさん?」
「なぜ...」
彼女の声は、震えている。
「なぜ、私を...」
「当たり前でしょう。仲間を守るのは」
俺がそう言うと、リリエルは、俺の胸に顔を埋めた。
「私は...お前に、何もしてあげられていない...」
「そんなことないですよ。さっき、関節を狙えって教えてくれたじゃないですか」
「それだけでは...足りない...」
リリエルの声が、さらに震える。
「私は...お前がいなくなったら...どうすればいいのか...分からない...」
その言葉を聞いて、俺は驚いた。いつも冷静で、論理的なリリエルが、こんなに感情を露わにするなんて。
「死なないで...お前が死んだら...私は...!」
リリエルは、初めて感情を爆発させた。その目には、涙が浮かんでいる。
「大丈夫。俺は死なないから」
俺は、彼女の頭を優しく撫でた。
「約束する。絶対に、死なない」
「...本当か?」
「本当だよ」
リリエルは、涙を拭いながら俺を見上げた。その目は、まだ不安そうだが、少しだけ安心したように見えた。
「...これが、恋...なのか?」
リリエルが、小さく呟いた。
「心が、こんなに苦しいなんて...理論では理解できない...」
「リリエルさん...」
「でも...お前を失いたくない。それだけは、確かだ」
その言葉を聞いて、俺の胸が温かくなった。
「ありがとう。俺も、リリエルさんを失いたくない」
「...本当か?」
「本当だよ」
リリエルは、また小さく涙を流した。だが、今度は、悲しみではなく、安堵の涙のように見えた。
「おい、お前たち! 今はいちゃついてる場合じゃないぞ!」
クレアの叫び声で、俺たちは我に返った。
ゴーレムが、再びこちらに向かって突進してくる。
「まずい!」
「私も戦う」
リリエルが、俺の腕から離れて立ち上がった。その目には、強い決意が宿っている。
「お前を守るために、私も戦う」
「...リリエルさん」
「行くぞ」
リリエルは、杖を構えた。
俺とクレアも、それぞれの武器を構える。
「三人で、一気に畳み掛けるぞ!」
俺の言葉に、クレアとリリエルが頷く。
「任せろ!」
「了解した」
俺たちは、同時に動いた。
クレアが前衛として、ゴーレムの注意を引きつける。その隙に、俺とリリエルが魔法を放つ。
「【ファイアストーム】!」
「【ブリザード】!」
炎と氷の魔法が、ゴーレムの関節部分に集中する。装甲が削れ、内部の構造が露わになる。
「今だ、クレア!」
「ああ!」
クレアが、全力で剣を振るう。剣が、ゴーレムの胸の中心部——魔石が埋め込まれている場所に突き刺さった。
ゴーレムが、大きく揺れる。
そして、俺は最後の魔法を放つ。
「【ライトニングストライク】!」
強力な雷が、ゴーレムの魔石に直撃する。
ゴーレムは、激しく痙攣した後、動きを止めた。そして、ゆっくりと崩れ落ちていく。
ドォン!
巨大な石像が、床に倒れ伏した。
静寂が訪れる。
「...勝った...のか?」
クレアが、息を切らしながら呟く。
「ああ。勝ったよ」
俺も、疲労困憊だ。これほどの強敵との戦いは、初めてだった。
リリエルは、杖を下ろして、俺の方を見た。
「...お前たちのおかげだ。ありがとう」
「こちらこそ。リリエルさんがいなかったら、勝てなかった」
「...そうか」
リリエルは、小さく微笑んだ。
その笑顔は、先ほどよりも柔らかく、温かみがあった。
ゴーレムの残骸の中央に、大きな宝箱があった。
「あれが...お宝か」
クレアが、宝箱に近づく。
「開けてみよう」
俺たちは、宝箱を開けた。
中には、古代の魔法書、レアな装備品、そして大量の金貨が入っていた。
「凄い...これだけあれば、しばらくは困らないな」
クレアが、目を輝かせる。
リリエルは、魔法書を手に取った。
「これは...失われた古代魔法の書だ。貴重な資料だ」
「それ、リリエルさんが持っていてください」
「...いいのか?」
「はい。リリエルさんなら、有効活用できるでしょう」
「...ありがとう」
リリエルは、嬉しそうに魔法書を抱きしめた。
俺たちは、宝箱の中身を分配し、遺跡を出た。
外に出ると、夕日が沈みかけていた。長い戦いだったが、達成感があった。
「お疲れ様」
クレアが、俺に寄りかかってくる。
「お前のおかげで、勝てた」
「クレアとリリエルさんがいたからだよ」
「...そうだな」
クレアは、幸せそうに微笑んだ。
リリエルは、少し離れたところで、魔法書を読んでいた。だが、時々、こちらを見ては、また視線を逸らす。
「リリエルさん、どうしました?」
「...いや、何でもない」
だが、彼女の頬が、ほんのりと赤くなっているのが見えた。
「私も...お前たちの仲間にしてもらえるのか?」
「もちろんですよ。もう、仲間じゃないですか」
「...そうか」
リリエルは、また小さく微笑んだ。
「では、これからもよろしく頼む」
「こちらこそ」
俺たちは、遺跡を後にして、街へと戻った。
新しい仲間が増えた。
そして、これから、もっと大きな冒険が待っている。
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自ら
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定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います
リヒト
ファンタジー
不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?
「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」
ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。
何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。
生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。
果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!?
「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」
そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?
自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!
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