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第2章 - 銀髪の賢者と小さな獣人
第10話:三人のヒロインとの新生活
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ダンジョンを出ると、既に夕暮れ時だった。オレンジ色の空が、俺たちを優しく包み込む。
「疲れたな...」
クレアが、大きく伸びをする。
「だが、いい収穫だった」
彼女は、ミーナを見て微笑んだ。ミーナは、俺の手をぎゅっと握りしめながら、不安そうに周囲を見回している。
「大丈夫。もう怖いものは何もない」
俺がそう言うと、ミーナは少しだけ安心したように頷いた。
「...ごしゅじんさま」
「ご主人様?」
「だって...わたしを助けてくれたから...」
ミーナは、恥ずかしそうに俯く。
「ご主人様じゃなくて、レンでいいよ」
「でも...」
「俺たちは、仲間だろ? 仲間なんだから、対等だ」
「たいとう...?」
ミーナは、その言葉を理解できないかのように首を傾げた。恐らく、今までそんな扱いを受けたことがないのだろう。
「うん。俺とミーナは、同じなんだ」
「おなじ...」
ミーナは、その言葉を噛みしめるように繰り返した。そして、ぱあっと笑顔になる。
「じゃあ...レンおにいちゃん!」
「お兄ちゃん?」
「だめ?」
「いや、いいけど」
俺は、少し照れくさくなった。お兄ちゃんなんて呼ばれたのは、前世でも初めてだ。
リリエルが、興味深そうに俺たちのやり取りを観察している。
「興味深い。人間関係の構築過程を、リアルタイムで観察できるのは貴重だ」
「リリエル、また研究者モードに入ってるぞ」
「...すまない。癖だ」
リリエルは、少し申し訳なさそうに視線を逸らした。
クレアが、ミーナの頭を撫でる。
「ミーナ、これから私たちと一緒に暮らすんだ。よろしくな」
「うん! よろしく、クレアおねえちゃん!」
「お姉ちゃん...か」
クレアは、少し照れくさそうに笑った。
「悪くないな」
ミーナは、次にリリエルを見上げる。
「リリエルおねえちゃんも、よろしく!」
「...ああ、よろしく」
リリエルは、少し戸惑いながらも、ミーナの頭を撫でた。その仕草がぎこちなくて、慣れていないのが分かる。
「リリエル、子供の扱い、慣れてないだろ」
「...ああ。研究ばかりしていたから、子供と接する機会がなかった」
「まあ、これから慣れていけばいいさ」
「そうだな」
リリエルは、小さく微笑んだ。
俺たちは、街へと戻った。
城門をくぐると、既に街には灯りがともり始めていた。人々が行き交い、活気に満ちている。
「まずは、ギルドに報告だな」
「ああ」
ギルドに到着すると、リーナが既にカウンターで残業をしていた。俺たちの姿を見つけると、彼女は驚いたように目を見開く。
「レンさん! お帰りなさい!」
「ただいま、リーナさん。ダンジョンの調査、完了しました」
「よかった...! 無事で...!」
リーナは、安堵したように胸を撫で下ろす。そして、俺の後ろにいるミーナに気づいた。
「あの...その子は?」
「ダンジョンで保護した子だよ。ミーナっていうんだ」
「はじめまして...」
ミーナは、恥ずかしそうに俺の背中に隠れる。
リーナは、優しく微笑んで、ミーナにしゃがんで目線を合わせた。
「はじめまして、ミーナちゃん。私はリーナです」
「リーナおねえちゃん...」
「ふふ、可愛い子ですね♪」
リーナは、ミーナの頭を優しく撫でる。ミーナは、最初は警戒していたが、すぐに心を開いたようで、嬉しそうに尻尾を振った。
「それで、報酬ですが...」
リーナは、立ち上がって報酬の3000ゴールドを渡してくれた。
「ありがとうございます」
「こちらこそ。レンさんは、本当に頼りになります」
リーナは、少し頬を染めながらそう言った。
クレアが、そんなリーナを見て、少しだけ不機嫌そうな表情を浮かべる。
「レン、もう行くぞ」
「あ、うん」
「あの...レンさん」
リーナが、俺を呼び止める。
「はい?」
「その...また、お話しましょうね」
「ええ、もちろん」
俺が笑顔で答えると、リーナは嬉しそうに微笑んだ。
ギルドを出ると、クレアが少し不機嫌そうに歩いている。
「クレア、どうした?」
「...別に」
「明らかに機嫌悪いけど」
「...お前、リーナに甘いぞ」
「そうか?」
「そうだ」
クレアは、ぷいっと顔を背ける。
リリエルが、興味深そうに呟く。
「これが...嫉妬という感情か」
「嫉妬!?」
クレアが、顔を真っ赤にする。
「ち、違う! 私は...!」
「でも、論理的に考えて、お前の反応は嫉妬の典型例だ」
「うるさい!」
クレアは、完全に動揺している。その様子が可愛くて、俺は思わず笑ってしまった。
「笑うな!」
「ごめん、ごめん」
ミーナも、くすくすと笑っている。
「クレアおねえちゃん、かわいい!」
「か、可愛いって...!」
クレアは、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
家に着くと、俺は改めて思った。
「この家、もう手狭だな...」
二LDKの家は、二人で住むには十分だったが、四人となると流石に狭い。
「寝室が二つしかない」
「私は、床で寝ても構わない」
リリエルが、淡々とそう言う。
「そんなわけにはいかないよ」
「では、どうする?」
「とりあえず、今夜は...」
俺は、少し考えてから提案した。
「クレアとミーナが一つの部屋。リリエルがもう一つの部屋。俺は居間で寝る」
「それは駄目だ」
クレアが、即座に反対する。
「お前が居間で寝るなんて、許さない」
「でも...」
「私が居間で寝る」
「それも駄目だ」
今度は、リリエルが反対する。
「クレアは、レンの最初の仲間だ。特別な関係なのだから、一緒に寝るべきだ」
「と、特別って...!」
クレアが、また顔を赤くする。
「私も、レンおにいちゃんと寝たい!」
ミーナが、俺にしがみつく。
「え、ちょっと...」
「わたし、ずっと一人で寝てたから...さみしかった...」
ミーナの目が、潤んでいる。
「...分かった。じゃあ、みんなで一緒に寝よう」
「み、みんなで!?」
クレアが、驚いたように叫ぶ。
「駄目か?」
「だ、駄目じゃないけど...その...」
クレアは、恥ずかしそうに視線を逸らす。
「論理的に考えて、効率的だ」
リリエルが、冷静に分析する。
「四人で一つの部屋を使えば、暖かいし、安心感もある」
「やった! みんなで寝られる!」
ミーナが、嬉しそうに飛び跳ねる。
「じゃあ、決まりだな」
結局、俺たちは一つの寝室に布団を敷いて、川の字で寝ることになった。
その前に、まずは夕食だ。
「今日は、俺が料理するよ」
「手伝う」
クレアが、エプロンを着ける。
「私も手伝いたい」
リリエルも、続く。
「わたしも!」
ミーナも、元気よく手を挙げる。
「じゃあ、みんなで作るか」
俺たちは、キッチンに集まった。
「クレアは、野菜を切って」
「了解」
「リリエルは、米を研いでくれる?」
「米...? どうやって?」
リリエルは、困惑した表情で米を見つめている。
「ああ、やったことないのか」
「ああ。いつも研究ばかりで、料理はしたことがない」
「じゃあ、教えるよ」
俺は、リリエルに米の研ぎ方を教えた。彼女は、真剣な表情で俺の説明を聞き、丁寧に米を研いでいく。
「こうか?」
「うん、完璧」
「...そうか」
リリエルは、少し嬉しそうに微笑んだ。
ミーナは、テーブルの準備を手伝ってくれる。小さな手で、一生懸命お皿を並べている姿が、とても微笑ましい。
「ミーナ、偉いな」
「えへへ、レンおにいちゃんに褒められた!」
ミーナは、嬉しそうに尻尾を振る。
三十分後、料理が完成した。
メニューは、鶏肉の照り焼き、野菜炒め、味噌汁、そしてご飯。前世で母親に教わった、定番の和食だ。
「いただきます!」
四人で、同時に手を合わせる。
ミーナが、鶏肉を一口食べると、目を輝かせた。
「おいしい! すっごくおいしい!」
「よかった」
「こんなにおいしいもの、はじめて!」
ミーナは、幸せそうに料理を頬張る。その様子を見て、俺も嬉しくなった。
クレアも、満足そうに食事を楽しんでいる。
「レンの料理は、いつも美味い」
「ありがとう」
リリエルは、味噌汁を一口飲んで、少し驚いたような表情を浮かべた。
「この汁...何という味だ...」
「味噌汁だよ。和食の定番」
「和食...? 初めて聞く料理だ」
「前世の料理なんだ」
「なるほど...前世の知識か。興味深い」
リリエルは、また研究者モードに入りかけたが、すぐに我に返った。
「いや、今は食事を楽しむべきだな」
「そうそう」
俺たちは、和やかに食事を楽しんだ。
こんな賑やかな食卓は、前世でも、転生してからも初めてだ。一人で食べていた頃とは、全く違う。
「幸せだな...」
思わず、そう呟いた。
「ん? 何か言ったか?」
クレアが尋ねる。
「いや、何でもない」
「そうか?」
クレアは、少し不思議そうな表情をしたが、それ以上は聞いてこなかった。
食事を終えると、みんなで片付けをした。
そして、いよいよ就寝の時間だ。
寝室には、四人分の布団が並べられている。狭いが、何とか入る。
「じゃあ、寝るか」
「ああ」
俺は、一番端に横になった。その隣にクレア、その隣にミーナ、そして一番端にリリエルが横になる。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみ、レンおにいちゃん!」
「おやすみなさい」
四人で、挨拶を交わす。
だが、なかなか寝付けない。
隣にクレアがいるというだけで、何だか落ち着かない。
「...レン」
クレアが、小さな声で呼びかけてくる。
「ん?」
「...ありがとう」
「何が?」
「今日も、色々と」
クレアは、俺の方を向いた。月明かりに照らされた彼女の顔は、とても綺麗だ。
「リリエルとミーナを仲間にしてくれて...嬉しい」
「俺も嬉しいよ」
「...本当か?」
「ああ。みんなと一緒にいると、楽しい」
「...そうか」
クレアは、幸せそうに微笑んだ。
「私も、お前と一緒にいると幸せだ」
「俺もだよ」
クレアは、少し顔を近づけてきた。
「...レン」
「クレア」
俺たちは、自然とキスをしていた。
柔らかい唇の感触。温かい吐息。
長いキスの後、クレアは恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めた。
「...好きだ、レン」
「俺も、好きだよ」
「ずっと...一緒にいてくれ」
「ああ、約束する」
クレアは、安心したように目を閉じた。
その時、反対側から声が聞こえた。
「...レン」
リリエルだ。
「どうした?」
「その...私も、お前に伝えたいことがある」
リリエルは、少し恥ずかしそうに俯いている。
「何?」
「私は...お前のことが...」
リリエルは、言葉に詰まる。
「好き...なのか...多分...」
「多分?」
「ああ。この感情が、恋なのかどうか、まだ確信が持てない。だが...」
リリエルは、俺を見つめた。
「お前がいないと、心が苦しい。それだけは、確かだ」
「リリエル...」
「だから...私も、お前と一緒にいたい」
その言葉を聞いて、俺の胸が熱くなった。
「ありがとう。俺も、リリエルと一緒にいたい」
「...本当か?」
「本当だよ」
リリエルは、初めて見せる、本当に嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「よかった...」
その時、ミーナが寝ぼけた声で呟いた。
「...レンおにいちゃん...すき...」
ミーナは、まだ半分寝ているようだが、俺の服をぎゅっと掴んでいる。
「ミーナも、俺のこと好きなのか?」
「...うん...だいすき...ずっといっしょ...」
ミーナは、そのまままた寝息を立て始めた。
俺は、三人の寝顔を見つめた。
クレア、リリエル、ミーナ。
みんな、大切な仲間だ。
いや、仲間以上の存在かもしれない。
「これから、どうなるんだろうな...」
そう呟きながら、俺も眠りについた。
翌朝、俺は賑やかな声で目を覚ました。
「レン! 起きろ!」
クレアの声だ。
目を開けると、クレアが俺の顔を覗き込んでいる。
「おはよう...」
「おはよう。朝だぞ」
「分かってる...」
俺は、ゆっくりと起き上がった。
リリエルは、既に起きていて、魔法書を読んでいる。
「おはよう、リリエル」
「...おはよう」
リリエルは、少し恥ずかしそうに視線を逸らした。昨夜の告白を思い出しているのだろう。
ミーナは、まだ寝ている。小さな寝息を立てていて、とても可愛らしい。
「起こすか?」
「いや、もう少し寝かせておこう」
俺とクレアとリリエルは、キッチンに移動して朝食の準備を始めた。
「今日は、何を作る?」
「トーストとスクランブルエッグでいいかな」
「了解」
三人で協力して、朝食を作る。もう、息もぴったりだ。
朝食が完成した頃、ミーナが目を覚ました。
「...おはよう...」
眠そうに目をこすりながら、ミーナがキッチンに現れる。
「おはよう、ミーナ」
「おはよう、レンおにいちゃん!」
ミーナは、俺に抱きついてきた。
「えへへ、いいにおい」
「朝食作ってたからな」
「おなかすいた!」
「じゃあ、食べよう」
四人で、テーブルを囲む。
「いただきます!」
同時に手を合わせて、朝食を食べ始める。
「今日は、何をする?」
クレアが尋ねる。
「そうだな...」
俺は、少し考えてから答えた。
「もっと広い家を探すか」
「広い家?」
「ああ。この家、もう手狭だし」
「確かに...」
クレアは、周囲を見回す。
「もっと大きな家があれば、もっと快適に暮らせるな」
「それに...」
俺は、三人を見つめた。
「これから、もっと仲間が増えるかもしれない」
「もっと...?」
リリエルが、興味深そうに首を傾げる。
「ああ。冒険をしていれば、きっと色々な人に出会うだろう」
「なるほど...」
リリエルは、納得したように頷いた。
「じゃあ、今日は家探しだな!」
ミーナが、嬉しそうに言う。
「ああ。みんなで、素敵な家を見つけよう」
「うん!」
朝食を終えると、俺たちは街に出た。
不動産屋を何軒か回って、色々な物件を見て回る。
だが、どれもピンとこない。
「もっと大きくて、快適な場所がいいな...」
「贅沢だな、お前」
クレアが、苦笑する。
「でも、妥協したくないんだ」
「...そうだな。私も、お前の家なら、最高のものがいい」
クレアは、少し照れくさそうに言った。
その時、ミーナが何かを見つけたようだ。
「ねえねえ、あれ!」
ミーナが指差す先には、大きな屋敷があった。
三階建ての立派な建物で、庭も広い。
「あれ...いいな」
「でも、高そうだぞ」
「大丈夫。お金なら、いくらでも作れる」
俺は、創造魔法で金貨を作ることができる。倫理的には問題があるかもしれないが、この世界では誰も気にしないだろう。
俺たちは、その屋敷を見に行った。
不動産屋の案内で中を見ると、期待以上に素晴らしかった。
部屋は十以上あり、キッチンも広く、庭には噴水まである。
「これ...最高じゃないか」
「ああ。これなら、何人増えても大丈夫だな」
クレアが、満足そうに頷く。
「この屋敷、いくらですか?」
「五百万ゴールドです」
不動産屋が答える。
高い。だが、俺には問題ない。
「買います」
「え!? 本当ですか!?」
不動産屋が、驚いたように目を見開く。
「はい。今すぐ契約したいです」
「か、かしこまりました!」
俺は、創造魔法で金貨を作り、その場で支払いを済ませた。
こうして、俺たちは新しい家——いや、屋敷を手に入れた。
「やった! これで、ずっと一緒に暮らせる!」
ミーナが、嬉しそうに飛び跳ねる。
「ああ。これが、俺たちの新しい拠点だ」
クレアが、感慨深そうに屋敷を見上げる。
リリエルも、小さく微笑んでいる。
「これから...どんな生活が待っているのか、楽しみだ」
「ああ。俺も楽しみだよ」
俺たちは、屋敷の前で、固い握手を交わした。
新しい生活の始まりだ。
そして、これから——もっと大きな冒険が待っている。
「疲れたな...」
クレアが、大きく伸びをする。
「だが、いい収穫だった」
彼女は、ミーナを見て微笑んだ。ミーナは、俺の手をぎゅっと握りしめながら、不安そうに周囲を見回している。
「大丈夫。もう怖いものは何もない」
俺がそう言うと、ミーナは少しだけ安心したように頷いた。
「...ごしゅじんさま」
「ご主人様?」
「だって...わたしを助けてくれたから...」
ミーナは、恥ずかしそうに俯く。
「ご主人様じゃなくて、レンでいいよ」
「でも...」
「俺たちは、仲間だろ? 仲間なんだから、対等だ」
「たいとう...?」
ミーナは、その言葉を理解できないかのように首を傾げた。恐らく、今までそんな扱いを受けたことがないのだろう。
「うん。俺とミーナは、同じなんだ」
「おなじ...」
ミーナは、その言葉を噛みしめるように繰り返した。そして、ぱあっと笑顔になる。
「じゃあ...レンおにいちゃん!」
「お兄ちゃん?」
「だめ?」
「いや、いいけど」
俺は、少し照れくさくなった。お兄ちゃんなんて呼ばれたのは、前世でも初めてだ。
リリエルが、興味深そうに俺たちのやり取りを観察している。
「興味深い。人間関係の構築過程を、リアルタイムで観察できるのは貴重だ」
「リリエル、また研究者モードに入ってるぞ」
「...すまない。癖だ」
リリエルは、少し申し訳なさそうに視線を逸らした。
クレアが、ミーナの頭を撫でる。
「ミーナ、これから私たちと一緒に暮らすんだ。よろしくな」
「うん! よろしく、クレアおねえちゃん!」
「お姉ちゃん...か」
クレアは、少し照れくさそうに笑った。
「悪くないな」
ミーナは、次にリリエルを見上げる。
「リリエルおねえちゃんも、よろしく!」
「...ああ、よろしく」
リリエルは、少し戸惑いながらも、ミーナの頭を撫でた。その仕草がぎこちなくて、慣れていないのが分かる。
「リリエル、子供の扱い、慣れてないだろ」
「...ああ。研究ばかりしていたから、子供と接する機会がなかった」
「まあ、これから慣れていけばいいさ」
「そうだな」
リリエルは、小さく微笑んだ。
俺たちは、街へと戻った。
城門をくぐると、既に街には灯りがともり始めていた。人々が行き交い、活気に満ちている。
「まずは、ギルドに報告だな」
「ああ」
ギルドに到着すると、リーナが既にカウンターで残業をしていた。俺たちの姿を見つけると、彼女は驚いたように目を見開く。
「レンさん! お帰りなさい!」
「ただいま、リーナさん。ダンジョンの調査、完了しました」
「よかった...! 無事で...!」
リーナは、安堵したように胸を撫で下ろす。そして、俺の後ろにいるミーナに気づいた。
「あの...その子は?」
「ダンジョンで保護した子だよ。ミーナっていうんだ」
「はじめまして...」
ミーナは、恥ずかしそうに俺の背中に隠れる。
リーナは、優しく微笑んで、ミーナにしゃがんで目線を合わせた。
「はじめまして、ミーナちゃん。私はリーナです」
「リーナおねえちゃん...」
「ふふ、可愛い子ですね♪」
リーナは、ミーナの頭を優しく撫でる。ミーナは、最初は警戒していたが、すぐに心を開いたようで、嬉しそうに尻尾を振った。
「それで、報酬ですが...」
リーナは、立ち上がって報酬の3000ゴールドを渡してくれた。
「ありがとうございます」
「こちらこそ。レンさんは、本当に頼りになります」
リーナは、少し頬を染めながらそう言った。
クレアが、そんなリーナを見て、少しだけ不機嫌そうな表情を浮かべる。
「レン、もう行くぞ」
「あ、うん」
「あの...レンさん」
リーナが、俺を呼び止める。
「はい?」
「その...また、お話しましょうね」
「ええ、もちろん」
俺が笑顔で答えると、リーナは嬉しそうに微笑んだ。
ギルドを出ると、クレアが少し不機嫌そうに歩いている。
「クレア、どうした?」
「...別に」
「明らかに機嫌悪いけど」
「...お前、リーナに甘いぞ」
「そうか?」
「そうだ」
クレアは、ぷいっと顔を背ける。
リリエルが、興味深そうに呟く。
「これが...嫉妬という感情か」
「嫉妬!?」
クレアが、顔を真っ赤にする。
「ち、違う! 私は...!」
「でも、論理的に考えて、お前の反応は嫉妬の典型例だ」
「うるさい!」
クレアは、完全に動揺している。その様子が可愛くて、俺は思わず笑ってしまった。
「笑うな!」
「ごめん、ごめん」
ミーナも、くすくすと笑っている。
「クレアおねえちゃん、かわいい!」
「か、可愛いって...!」
クレアは、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
家に着くと、俺は改めて思った。
「この家、もう手狭だな...」
二LDKの家は、二人で住むには十分だったが、四人となると流石に狭い。
「寝室が二つしかない」
「私は、床で寝ても構わない」
リリエルが、淡々とそう言う。
「そんなわけにはいかないよ」
「では、どうする?」
「とりあえず、今夜は...」
俺は、少し考えてから提案した。
「クレアとミーナが一つの部屋。リリエルがもう一つの部屋。俺は居間で寝る」
「それは駄目だ」
クレアが、即座に反対する。
「お前が居間で寝るなんて、許さない」
「でも...」
「私が居間で寝る」
「それも駄目だ」
今度は、リリエルが反対する。
「クレアは、レンの最初の仲間だ。特別な関係なのだから、一緒に寝るべきだ」
「と、特別って...!」
クレアが、また顔を赤くする。
「私も、レンおにいちゃんと寝たい!」
ミーナが、俺にしがみつく。
「え、ちょっと...」
「わたし、ずっと一人で寝てたから...さみしかった...」
ミーナの目が、潤んでいる。
「...分かった。じゃあ、みんなで一緒に寝よう」
「み、みんなで!?」
クレアが、驚いたように叫ぶ。
「駄目か?」
「だ、駄目じゃないけど...その...」
クレアは、恥ずかしそうに視線を逸らす。
「論理的に考えて、効率的だ」
リリエルが、冷静に分析する。
「四人で一つの部屋を使えば、暖かいし、安心感もある」
「やった! みんなで寝られる!」
ミーナが、嬉しそうに飛び跳ねる。
「じゃあ、決まりだな」
結局、俺たちは一つの寝室に布団を敷いて、川の字で寝ることになった。
その前に、まずは夕食だ。
「今日は、俺が料理するよ」
「手伝う」
クレアが、エプロンを着ける。
「私も手伝いたい」
リリエルも、続く。
「わたしも!」
ミーナも、元気よく手を挙げる。
「じゃあ、みんなで作るか」
俺たちは、キッチンに集まった。
「クレアは、野菜を切って」
「了解」
「リリエルは、米を研いでくれる?」
「米...? どうやって?」
リリエルは、困惑した表情で米を見つめている。
「ああ、やったことないのか」
「ああ。いつも研究ばかりで、料理はしたことがない」
「じゃあ、教えるよ」
俺は、リリエルに米の研ぎ方を教えた。彼女は、真剣な表情で俺の説明を聞き、丁寧に米を研いでいく。
「こうか?」
「うん、完璧」
「...そうか」
リリエルは、少し嬉しそうに微笑んだ。
ミーナは、テーブルの準備を手伝ってくれる。小さな手で、一生懸命お皿を並べている姿が、とても微笑ましい。
「ミーナ、偉いな」
「えへへ、レンおにいちゃんに褒められた!」
ミーナは、嬉しそうに尻尾を振る。
三十分後、料理が完成した。
メニューは、鶏肉の照り焼き、野菜炒め、味噌汁、そしてご飯。前世で母親に教わった、定番の和食だ。
「いただきます!」
四人で、同時に手を合わせる。
ミーナが、鶏肉を一口食べると、目を輝かせた。
「おいしい! すっごくおいしい!」
「よかった」
「こんなにおいしいもの、はじめて!」
ミーナは、幸せそうに料理を頬張る。その様子を見て、俺も嬉しくなった。
クレアも、満足そうに食事を楽しんでいる。
「レンの料理は、いつも美味い」
「ありがとう」
リリエルは、味噌汁を一口飲んで、少し驚いたような表情を浮かべた。
「この汁...何という味だ...」
「味噌汁だよ。和食の定番」
「和食...? 初めて聞く料理だ」
「前世の料理なんだ」
「なるほど...前世の知識か。興味深い」
リリエルは、また研究者モードに入りかけたが、すぐに我に返った。
「いや、今は食事を楽しむべきだな」
「そうそう」
俺たちは、和やかに食事を楽しんだ。
こんな賑やかな食卓は、前世でも、転生してからも初めてだ。一人で食べていた頃とは、全く違う。
「幸せだな...」
思わず、そう呟いた。
「ん? 何か言ったか?」
クレアが尋ねる。
「いや、何でもない」
「そうか?」
クレアは、少し不思議そうな表情をしたが、それ以上は聞いてこなかった。
食事を終えると、みんなで片付けをした。
そして、いよいよ就寝の時間だ。
寝室には、四人分の布団が並べられている。狭いが、何とか入る。
「じゃあ、寝るか」
「ああ」
俺は、一番端に横になった。その隣にクレア、その隣にミーナ、そして一番端にリリエルが横になる。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
「おやすみ、レンおにいちゃん!」
「おやすみなさい」
四人で、挨拶を交わす。
だが、なかなか寝付けない。
隣にクレアがいるというだけで、何だか落ち着かない。
「...レン」
クレアが、小さな声で呼びかけてくる。
「ん?」
「...ありがとう」
「何が?」
「今日も、色々と」
クレアは、俺の方を向いた。月明かりに照らされた彼女の顔は、とても綺麗だ。
「リリエルとミーナを仲間にしてくれて...嬉しい」
「俺も嬉しいよ」
「...本当か?」
「ああ。みんなと一緒にいると、楽しい」
「...そうか」
クレアは、幸せそうに微笑んだ。
「私も、お前と一緒にいると幸せだ」
「俺もだよ」
クレアは、少し顔を近づけてきた。
「...レン」
「クレア」
俺たちは、自然とキスをしていた。
柔らかい唇の感触。温かい吐息。
長いキスの後、クレアは恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めた。
「...好きだ、レン」
「俺も、好きだよ」
「ずっと...一緒にいてくれ」
「ああ、約束する」
クレアは、安心したように目を閉じた。
その時、反対側から声が聞こえた。
「...レン」
リリエルだ。
「どうした?」
「その...私も、お前に伝えたいことがある」
リリエルは、少し恥ずかしそうに俯いている。
「何?」
「私は...お前のことが...」
リリエルは、言葉に詰まる。
「好き...なのか...多分...」
「多分?」
「ああ。この感情が、恋なのかどうか、まだ確信が持てない。だが...」
リリエルは、俺を見つめた。
「お前がいないと、心が苦しい。それだけは、確かだ」
「リリエル...」
「だから...私も、お前と一緒にいたい」
その言葉を聞いて、俺の胸が熱くなった。
「ありがとう。俺も、リリエルと一緒にいたい」
「...本当か?」
「本当だよ」
リリエルは、初めて見せる、本当に嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「よかった...」
その時、ミーナが寝ぼけた声で呟いた。
「...レンおにいちゃん...すき...」
ミーナは、まだ半分寝ているようだが、俺の服をぎゅっと掴んでいる。
「ミーナも、俺のこと好きなのか?」
「...うん...だいすき...ずっといっしょ...」
ミーナは、そのまままた寝息を立て始めた。
俺は、三人の寝顔を見つめた。
クレア、リリエル、ミーナ。
みんな、大切な仲間だ。
いや、仲間以上の存在かもしれない。
「これから、どうなるんだろうな...」
そう呟きながら、俺も眠りについた。
翌朝、俺は賑やかな声で目を覚ました。
「レン! 起きろ!」
クレアの声だ。
目を開けると、クレアが俺の顔を覗き込んでいる。
「おはよう...」
「おはよう。朝だぞ」
「分かってる...」
俺は、ゆっくりと起き上がった。
リリエルは、既に起きていて、魔法書を読んでいる。
「おはよう、リリエル」
「...おはよう」
リリエルは、少し恥ずかしそうに視線を逸らした。昨夜の告白を思い出しているのだろう。
ミーナは、まだ寝ている。小さな寝息を立てていて、とても可愛らしい。
「起こすか?」
「いや、もう少し寝かせておこう」
俺とクレアとリリエルは、キッチンに移動して朝食の準備を始めた。
「今日は、何を作る?」
「トーストとスクランブルエッグでいいかな」
「了解」
三人で協力して、朝食を作る。もう、息もぴったりだ。
朝食が完成した頃、ミーナが目を覚ました。
「...おはよう...」
眠そうに目をこすりながら、ミーナがキッチンに現れる。
「おはよう、ミーナ」
「おはよう、レンおにいちゃん!」
ミーナは、俺に抱きついてきた。
「えへへ、いいにおい」
「朝食作ってたからな」
「おなかすいた!」
「じゃあ、食べよう」
四人で、テーブルを囲む。
「いただきます!」
同時に手を合わせて、朝食を食べ始める。
「今日は、何をする?」
クレアが尋ねる。
「そうだな...」
俺は、少し考えてから答えた。
「もっと広い家を探すか」
「広い家?」
「ああ。この家、もう手狭だし」
「確かに...」
クレアは、周囲を見回す。
「もっと大きな家があれば、もっと快適に暮らせるな」
「それに...」
俺は、三人を見つめた。
「これから、もっと仲間が増えるかもしれない」
「もっと...?」
リリエルが、興味深そうに首を傾げる。
「ああ。冒険をしていれば、きっと色々な人に出会うだろう」
「なるほど...」
リリエルは、納得したように頷いた。
「じゃあ、今日は家探しだな!」
ミーナが、嬉しそうに言う。
「ああ。みんなで、素敵な家を見つけよう」
「うん!」
朝食を終えると、俺たちは街に出た。
不動産屋を何軒か回って、色々な物件を見て回る。
だが、どれもピンとこない。
「もっと大きくて、快適な場所がいいな...」
「贅沢だな、お前」
クレアが、苦笑する。
「でも、妥協したくないんだ」
「...そうだな。私も、お前の家なら、最高のものがいい」
クレアは、少し照れくさそうに言った。
その時、ミーナが何かを見つけたようだ。
「ねえねえ、あれ!」
ミーナが指差す先には、大きな屋敷があった。
三階建ての立派な建物で、庭も広い。
「あれ...いいな」
「でも、高そうだぞ」
「大丈夫。お金なら、いくらでも作れる」
俺は、創造魔法で金貨を作ることができる。倫理的には問題があるかもしれないが、この世界では誰も気にしないだろう。
俺たちは、その屋敷を見に行った。
不動産屋の案内で中を見ると、期待以上に素晴らしかった。
部屋は十以上あり、キッチンも広く、庭には噴水まである。
「これ...最高じゃないか」
「ああ。これなら、何人増えても大丈夫だな」
クレアが、満足そうに頷く。
「この屋敷、いくらですか?」
「五百万ゴールドです」
不動産屋が答える。
高い。だが、俺には問題ない。
「買います」
「え!? 本当ですか!?」
不動産屋が、驚いたように目を見開く。
「はい。今すぐ契約したいです」
「か、かしこまりました!」
俺は、創造魔法で金貨を作り、その場で支払いを済ませた。
こうして、俺たちは新しい家——いや、屋敷を手に入れた。
「やった! これで、ずっと一緒に暮らせる!」
ミーナが、嬉しそうに飛び跳ねる。
「ああ。これが、俺たちの新しい拠点だ」
クレアが、感慨深そうに屋敷を見上げる。
リリエルも、小さく微笑んでいる。
「これから...どんな生活が待っているのか、楽しみだ」
「ああ。俺も楽しみだよ」
俺たちは、屋敷の前で、固い握手を交わした。
新しい生活の始まりだ。
そして、これから——もっと大きな冒険が待っている。
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