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第3章 - ツンデレ令嬢と敏腕商人
第12話:王都のパーティーとツンデレ令嬢
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翌朝、俺たちは王都へと向かう馬車に乗り込んだ。
公爵家が用意してくれた豪華な馬車は、内装も素晴らしく、クッションの効いた座席が長時間の移動でも快適だった。窓からは、街を抜けて草原へと続く景色が流れていく。
「王都か...久しぶりだな」
クレアが、窓の外を眺めながら呟いた。彼女は以前、王都の騎士団に所属していたことがあるらしい。
「クレア、王都に住んでたのか?」
「ああ。騎士としての修行を積んでいた頃にな。だが、あまりいい思い出はない」
クレアの表情が、少しだけ曇る。何か辛いことがあったのだろうか。俺は、それ以上聞くのはやめておいた。
「私は、王都は初めてだ」
リリエルが、興味深そうに言う。
「貴族社会というものを、実際に観察できる貴重な機会だ」
相変わらず、研究者らしい視点だ。だが、その目には、少しだけ期待の光が宿っているように見えた。
「わたしも初めて! ドキドキする!」
ミーナは、座席で落ち着きなく動き回っている。尻尾がぱたぱたと揺れていて、興奮が隠せないようだ。
「リーナさんは?」
「私も初めてです! こんな豪華な馬車に乗るのも初めてで...」
リーナは、少し緊張した様子で周囲を見回している。だが、その目は楽しみに満ちていた。
馬車は、順調に進んでいく。途中、いくつかの街や村を通り過ぎた。どこも活気があり、人々が平和に暮らしている様子が見える。
「この国、平和でいいな」
「ああ。だが、それも魔物がいなければの話だ」
クレアが、少し険しい表情で言う。
「魔物は、いつどこから現れるか分からない。だからこそ、俺たちのような冒険者が必要なんだ」
「そうだな」
俺は、クレアの言葉に頷いた。この世界には、まだまだ危険が潜んでいる。だが、それを守るために、俺たちがいる。
数時間後、馬車は王都の城門前に到着した。
「着いたぞ」
クレアが、窓の外を指差す。
そこには、巨大な石造りの城壁と、その中央に聳え立つ門があった。門の上には、王国の紋章が掲げられている。衛兵が、馬車を確認してから門を開けてくれた。
城門をくぐると、目の前に広がったのは、想像以上に豪華な街並みだった。
石畳の道路が整然と続き、両側には立派な建物が立ち並んでいる。商店も、街で見たものとは比べ物にならないほど高級そうだ。人々も、皆きちんとした服装をしていて、洗練された雰囲気を漂わせている。
「すごい...これが王都...」
ミーナが、目を輝かせながら窓に張り付いている。
「本当に、素敵な街ですね...」
リーナも、感嘆の声を上げる。
馬車は、街の中心部へと進んでいく。やがて、一際大きな邸宅の前で止まった。
「ここが、アーベントロート公爵家か...」
俺は、その邸宅を見上げた。
三階建ての豪華な建物で、正面には大きな噴水がある。庭も広く、手入れの行き届いた花壇が美しい。まさに、貴族の館という雰囲気だ。
馬車から降りると、すぐに執事らしき老人が出迎えてくれた。
「レン・タカミ様とご一行ですね。お待ちしておりました」
「よろしくお願いします」
「私は、この館の執事を務めておりますセバスチャンと申します。どうぞ、こちらへ」
セバスチャンに案内されて、俺たちは邸宅の中へと入った。
玄関ホールは、吹き抜けになっていて、天井には豪華なシャンデリアが吊るされている。壁には、歴代の当主と思われる肖像画が並んでいる。大理石の床は、磨き上げられて光を反射している。
「すごい...」
ミーナが、小さな声で呟く。
セバスチャンは、俺たちを広間へと案内した。
そこには、既に多くの貴族たちが集まっていた。男性は皆タキシードやフロックコート、女性は華やかなドレスを纏っている。シャンパングラスを手に、優雅に会話を楽しんでいる様子だ。
俺たちが入ると、貴族たちの視線が一斉にこちらに向いた。
「あれが、街を救った英雄か」
「若いな」
「美女ばかり連れて...羨ましい」
様々な囁きが聞こえてくる。だが、悪意のあるものではなく、むしろ興味津々といった様子だ。
「レン殿!」
大きな声が響き、一人の初老の男性が近づいてきた。立派な口髭を蓄え、威厳のある雰囲気を纏っている。間違いなく、この館の主だろう。
「アーベントロート公爵です。よくぞお越しくださった」
「お招きいただき、ありがとうございます」
俺は、丁寧に一礼した。
「いやいや、こちらこそ。街を何度も救ってくださった英雄に、ぜひお会いしたかったのです」
公爵は、満面の笑みで俺の手を握った。
「そして、こちらの美しい方々は?」
「私の仲間です。クレア、リリエル、ミーナ、そしてリーナさんです」
俺が紹介すると、四人はそれぞれ礼をした。
「これはまた、素晴らしい。美女ばかりですな」
公爵は、満足そうに頷いた。
「さあ、どうぞ。食事も飲み物も、お好きなだけお楽しみください」
「ありがとうございます」
公爵は、他の来賓の対応があるのか、俺たちに一礼してから去っていった。
「さて、どうするか...」
俺が周囲を見回していると、突然、冷たい声が聞こえてきた。
「ご機嫌よう」
振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。
金髪を縦ロールに結い上げ、青い瞳で俺たちを見下ろしている。年齢は十七、八歳くらいだろうか。青いドレスを纏い、その立ち姿は優雅そのものだ。だが、その表情には、どこか高慢な雰囲気が漂っている。
「私は、シャルロット・フォン・アーベントロート。この館の娘です」
少女——シャルロットは、そう名乗った。
「初めまして。レン・タカミです」
「ええ、存じておりますわ。あなたが、噂のレンなのですね」
シャルロットは、俺を値踏みするような目で見つめた。
「フン、平民風情が英雄だなんて。世も末ですわね」
その言葉に、クレアが眉をひそめた。
「おい、失礼だぞ」
「あら、失礼? 事実を述べただけですわよ」
シャルロットは、涼しい顔で答える。
「貴族でもない、家柄もない、ただの平民が英雄扱いされるなんて。本当に、この国の基準は低くなりましたわね」
その傲慢な態度に、ミーナが怯えたように俺の後ろに隠れる。
「こわい...」
リリエルは、冷静にシャルロットを観察している。
「興味深い性格だ」
リーナは、困ったように笑顔を作っている。
「あの...シャルロット様...」
だが、俺は冷静だった。こういうタイプの人間は、前世でも何度か会ったことがある。高圧的な態度の裏には、大抵何かコンプレックスや孤独が隠されている。
「お嬢様は、随分と高いところにいらっしゃるようで」
俺がそう言うと、シャルロットの表情が一瞬凍りついた。
「...何ですって?」
「いえ、何も。ただ、そんなに高いところにいたら、周りが見えなくて危ないですよ、と思っただけです」
「...!」
シャルロットの頬が、ほんの少しだけ赤くなった。図星を突かれたのだろう。
「な、何を言っているのかしら。私は、貴族として当然の態度を取っているだけですわ」
「そうですか。それなら結構です」
俺は、それ以上何も言わずに、軽く会釈してその場を離れた。
クレアたちも、俺に続く。
「あの令嬢...感じ悪いな」
クレアが、小声で呟く。
「まあ、色々あるんだろう」
「お前、優しいな」
「そうか?」
俺たちは、広間の端にあるテーブルへと移動した。そこには、様々な料理が並べられている。
「すごい料理...」
ミーナが、目を輝かせる。
「お腹空いてたから、嬉しい!」
「食べ過ぎるなよ」
「うん!」
俺たちは、料理を取りながら、パーティーを楽しんだ。
だが、時々シャルロットの姿が目に入る。彼女は、広間の隅で一人佇んでいた。他の貴族たちは、彼女に話しかける様子もない。むしろ、避けているようにすら見える。
「あの子、いつも一人なのよね」
近くにいた貴族の婦人たちが、小声で話している。
「プライドが高すぎるのよ。誰とも打ち解けようとしないし」
「可哀想に。父親は優しいのに、娘はああなのね」
その会話を聞いて、俺は何となく理解した。
シャルロットは、孤独なのだ。
高いプライドが邪魔をして、誰とも心を開けない。だから、ああやって強がっているのだろう。
パーティーが進み、夜も深まってきた頃、俺は少し外の空気を吸いたくなった。
「ちょっと、庭に行ってくる」
「分かった。気をつけてな」
クレアが、頷いてくれる。
俺は、広間を抜けて庭へと出た。
夜の庭は、静かで落ち着いている。月明かりが、噴水を照らしていて、幻想的な雰囲気だ。
ベンチに座って、空を見上げる。星が、綺麗に輝いている。
「...はぁ」
溜息をつくと、少しだけ気持ちが落ち着いた。
その時、足音が聞こえた。
「あら...」
振り返ると、そこにはシャルロットが立っていた。
「あなたも、外の空気を?」
「ああ。少し、騒がしかったから」
「...そうね」
シャルロットは、少し迷ってから、俺の隣に座った。
しばらく、沈黙が続いた。
「...あなた、怒っていないの?」
シャルロットが、小さな声で尋ねてきた。
「何が?」
「さっき、失礼なことを言ったわ。平民だとか...」
「ああ。別に怒ってないよ」
「...どうして?」
「お嬢様が、本当にそう思って言ったわけじゃないって分かるから」
シャルロットは、驚いたように俺を見た。
「...何を根拠に?」
「勘だよ。でも、当たってるだろ?」
「...」
シャルロットは、何も言わずに俯いた。
「パーティー、楽しくなかったのか?」
「...楽しいわけないでしょう」
シャルロットは、少し苦しそうに答えた。
「誰も、私と話してくれない。みんな、私を避ける」
「それは...」
「私が、悪いのよ。分かっているわ。プライドが高すぎて、誰とも打ち解けられない」
シャルロットの声が、震える。
「でも...どうすればいいか分からないの。貴族として、どう振る舞えばいいのか。みんなと、どう接すればいいのか」
その言葉を聞いて、俺は理解した。
シャルロットは、本当は誰かと仲良くなりたいのだ。だが、その方法が分からない。だから、高圧的な態度で自分を守っているのだろう。
「無理しなくていいんだよ」
俺は、優しく言った。
「貴族として、とか、そういうの関係なく。ただ、素直に自分の気持ちを伝えればいい」
「...素直に?」
「ああ。難しく考える必要はない」
シャルロットは、俺を見つめた。
その目には、涙が浮かんでいた。
「...どうして、そんなに優しいの?」
「困ってる人を放っておけないだけだよ」
「困ってる...私が?」
「ああ。お嬢様、困ってるだろ?」
「...」
シャルロットは、何も言えなかった。
ただ、静かに涙を流していた。
俺は、何も言わずに、ただ彼女の隣に座っていた。
しばらくして、シャルロットが口を開いた。
「...ありがとう」
「どういたしまして」
「あなた...名前は?」
「レンだよ」
「レン...覚えたわ」
シャルロットは、少しだけ微笑んだ。
その笑顔は、先ほどまでの高圧的な雰囲気とは全く違う、柔らかくて優しいものだった。
「また、話してもいい?」
「もちろん」
「...ありがとう」
シャルロットは、立ち上がって館の中へと戻っていった。
俺も、少し遅れて広間へと戻った。
クレアたちが、心配そうに俺を見ている。
「どうした? 遅かったな」
「ああ、ちょっと庭で考え事をしてた」
「そうか」
その夜、パーティーは盛況のうちに終わった。
俺たちは、公爵家が用意してくれた客室で一泊することになった。
ベッドに横になりながら、俺はシャルロットのことを考えていた。
あの子は、本当は優しい子なのだろう。
ただ、孤独で、誰かに心を開く勇気がないだけだ。
明日も、パーティーは続く。
また、シャルロットと話せるだろうか。
そんなことを考えながら、俺は眠りについた。
公爵家が用意してくれた豪華な馬車は、内装も素晴らしく、クッションの効いた座席が長時間の移動でも快適だった。窓からは、街を抜けて草原へと続く景色が流れていく。
「王都か...久しぶりだな」
クレアが、窓の外を眺めながら呟いた。彼女は以前、王都の騎士団に所属していたことがあるらしい。
「クレア、王都に住んでたのか?」
「ああ。騎士としての修行を積んでいた頃にな。だが、あまりいい思い出はない」
クレアの表情が、少しだけ曇る。何か辛いことがあったのだろうか。俺は、それ以上聞くのはやめておいた。
「私は、王都は初めてだ」
リリエルが、興味深そうに言う。
「貴族社会というものを、実際に観察できる貴重な機会だ」
相変わらず、研究者らしい視点だ。だが、その目には、少しだけ期待の光が宿っているように見えた。
「わたしも初めて! ドキドキする!」
ミーナは、座席で落ち着きなく動き回っている。尻尾がぱたぱたと揺れていて、興奮が隠せないようだ。
「リーナさんは?」
「私も初めてです! こんな豪華な馬車に乗るのも初めてで...」
リーナは、少し緊張した様子で周囲を見回している。だが、その目は楽しみに満ちていた。
馬車は、順調に進んでいく。途中、いくつかの街や村を通り過ぎた。どこも活気があり、人々が平和に暮らしている様子が見える。
「この国、平和でいいな」
「ああ。だが、それも魔物がいなければの話だ」
クレアが、少し険しい表情で言う。
「魔物は、いつどこから現れるか分からない。だからこそ、俺たちのような冒険者が必要なんだ」
「そうだな」
俺は、クレアの言葉に頷いた。この世界には、まだまだ危険が潜んでいる。だが、それを守るために、俺たちがいる。
数時間後、馬車は王都の城門前に到着した。
「着いたぞ」
クレアが、窓の外を指差す。
そこには、巨大な石造りの城壁と、その中央に聳え立つ門があった。門の上には、王国の紋章が掲げられている。衛兵が、馬車を確認してから門を開けてくれた。
城門をくぐると、目の前に広がったのは、想像以上に豪華な街並みだった。
石畳の道路が整然と続き、両側には立派な建物が立ち並んでいる。商店も、街で見たものとは比べ物にならないほど高級そうだ。人々も、皆きちんとした服装をしていて、洗練された雰囲気を漂わせている。
「すごい...これが王都...」
ミーナが、目を輝かせながら窓に張り付いている。
「本当に、素敵な街ですね...」
リーナも、感嘆の声を上げる。
馬車は、街の中心部へと進んでいく。やがて、一際大きな邸宅の前で止まった。
「ここが、アーベントロート公爵家か...」
俺は、その邸宅を見上げた。
三階建ての豪華な建物で、正面には大きな噴水がある。庭も広く、手入れの行き届いた花壇が美しい。まさに、貴族の館という雰囲気だ。
馬車から降りると、すぐに執事らしき老人が出迎えてくれた。
「レン・タカミ様とご一行ですね。お待ちしておりました」
「よろしくお願いします」
「私は、この館の執事を務めておりますセバスチャンと申します。どうぞ、こちらへ」
セバスチャンに案内されて、俺たちは邸宅の中へと入った。
玄関ホールは、吹き抜けになっていて、天井には豪華なシャンデリアが吊るされている。壁には、歴代の当主と思われる肖像画が並んでいる。大理石の床は、磨き上げられて光を反射している。
「すごい...」
ミーナが、小さな声で呟く。
セバスチャンは、俺たちを広間へと案内した。
そこには、既に多くの貴族たちが集まっていた。男性は皆タキシードやフロックコート、女性は華やかなドレスを纏っている。シャンパングラスを手に、優雅に会話を楽しんでいる様子だ。
俺たちが入ると、貴族たちの視線が一斉にこちらに向いた。
「あれが、街を救った英雄か」
「若いな」
「美女ばかり連れて...羨ましい」
様々な囁きが聞こえてくる。だが、悪意のあるものではなく、むしろ興味津々といった様子だ。
「レン殿!」
大きな声が響き、一人の初老の男性が近づいてきた。立派な口髭を蓄え、威厳のある雰囲気を纏っている。間違いなく、この館の主だろう。
「アーベントロート公爵です。よくぞお越しくださった」
「お招きいただき、ありがとうございます」
俺は、丁寧に一礼した。
「いやいや、こちらこそ。街を何度も救ってくださった英雄に、ぜひお会いしたかったのです」
公爵は、満面の笑みで俺の手を握った。
「そして、こちらの美しい方々は?」
「私の仲間です。クレア、リリエル、ミーナ、そしてリーナさんです」
俺が紹介すると、四人はそれぞれ礼をした。
「これはまた、素晴らしい。美女ばかりですな」
公爵は、満足そうに頷いた。
「さあ、どうぞ。食事も飲み物も、お好きなだけお楽しみください」
「ありがとうございます」
公爵は、他の来賓の対応があるのか、俺たちに一礼してから去っていった。
「さて、どうするか...」
俺が周囲を見回していると、突然、冷たい声が聞こえてきた。
「ご機嫌よう」
振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。
金髪を縦ロールに結い上げ、青い瞳で俺たちを見下ろしている。年齢は十七、八歳くらいだろうか。青いドレスを纏い、その立ち姿は優雅そのものだ。だが、その表情には、どこか高慢な雰囲気が漂っている。
「私は、シャルロット・フォン・アーベントロート。この館の娘です」
少女——シャルロットは、そう名乗った。
「初めまして。レン・タカミです」
「ええ、存じておりますわ。あなたが、噂のレンなのですね」
シャルロットは、俺を値踏みするような目で見つめた。
「フン、平民風情が英雄だなんて。世も末ですわね」
その言葉に、クレアが眉をひそめた。
「おい、失礼だぞ」
「あら、失礼? 事実を述べただけですわよ」
シャルロットは、涼しい顔で答える。
「貴族でもない、家柄もない、ただの平民が英雄扱いされるなんて。本当に、この国の基準は低くなりましたわね」
その傲慢な態度に、ミーナが怯えたように俺の後ろに隠れる。
「こわい...」
リリエルは、冷静にシャルロットを観察している。
「興味深い性格だ」
リーナは、困ったように笑顔を作っている。
「あの...シャルロット様...」
だが、俺は冷静だった。こういうタイプの人間は、前世でも何度か会ったことがある。高圧的な態度の裏には、大抵何かコンプレックスや孤独が隠されている。
「お嬢様は、随分と高いところにいらっしゃるようで」
俺がそう言うと、シャルロットの表情が一瞬凍りついた。
「...何ですって?」
「いえ、何も。ただ、そんなに高いところにいたら、周りが見えなくて危ないですよ、と思っただけです」
「...!」
シャルロットの頬が、ほんの少しだけ赤くなった。図星を突かれたのだろう。
「な、何を言っているのかしら。私は、貴族として当然の態度を取っているだけですわ」
「そうですか。それなら結構です」
俺は、それ以上何も言わずに、軽く会釈してその場を離れた。
クレアたちも、俺に続く。
「あの令嬢...感じ悪いな」
クレアが、小声で呟く。
「まあ、色々あるんだろう」
「お前、優しいな」
「そうか?」
俺たちは、広間の端にあるテーブルへと移動した。そこには、様々な料理が並べられている。
「すごい料理...」
ミーナが、目を輝かせる。
「お腹空いてたから、嬉しい!」
「食べ過ぎるなよ」
「うん!」
俺たちは、料理を取りながら、パーティーを楽しんだ。
だが、時々シャルロットの姿が目に入る。彼女は、広間の隅で一人佇んでいた。他の貴族たちは、彼女に話しかける様子もない。むしろ、避けているようにすら見える。
「あの子、いつも一人なのよね」
近くにいた貴族の婦人たちが、小声で話している。
「プライドが高すぎるのよ。誰とも打ち解けようとしないし」
「可哀想に。父親は優しいのに、娘はああなのね」
その会話を聞いて、俺は何となく理解した。
シャルロットは、孤独なのだ。
高いプライドが邪魔をして、誰とも心を開けない。だから、ああやって強がっているのだろう。
パーティーが進み、夜も深まってきた頃、俺は少し外の空気を吸いたくなった。
「ちょっと、庭に行ってくる」
「分かった。気をつけてな」
クレアが、頷いてくれる。
俺は、広間を抜けて庭へと出た。
夜の庭は、静かで落ち着いている。月明かりが、噴水を照らしていて、幻想的な雰囲気だ。
ベンチに座って、空を見上げる。星が、綺麗に輝いている。
「...はぁ」
溜息をつくと、少しだけ気持ちが落ち着いた。
その時、足音が聞こえた。
「あら...」
振り返ると、そこにはシャルロットが立っていた。
「あなたも、外の空気を?」
「ああ。少し、騒がしかったから」
「...そうね」
シャルロットは、少し迷ってから、俺の隣に座った。
しばらく、沈黙が続いた。
「...あなた、怒っていないの?」
シャルロットが、小さな声で尋ねてきた。
「何が?」
「さっき、失礼なことを言ったわ。平民だとか...」
「ああ。別に怒ってないよ」
「...どうして?」
「お嬢様が、本当にそう思って言ったわけじゃないって分かるから」
シャルロットは、驚いたように俺を見た。
「...何を根拠に?」
「勘だよ。でも、当たってるだろ?」
「...」
シャルロットは、何も言わずに俯いた。
「パーティー、楽しくなかったのか?」
「...楽しいわけないでしょう」
シャルロットは、少し苦しそうに答えた。
「誰も、私と話してくれない。みんな、私を避ける」
「それは...」
「私が、悪いのよ。分かっているわ。プライドが高すぎて、誰とも打ち解けられない」
シャルロットの声が、震える。
「でも...どうすればいいか分からないの。貴族として、どう振る舞えばいいのか。みんなと、どう接すればいいのか」
その言葉を聞いて、俺は理解した。
シャルロットは、本当は誰かと仲良くなりたいのだ。だが、その方法が分からない。だから、高圧的な態度で自分を守っているのだろう。
「無理しなくていいんだよ」
俺は、優しく言った。
「貴族として、とか、そういうの関係なく。ただ、素直に自分の気持ちを伝えればいい」
「...素直に?」
「ああ。難しく考える必要はない」
シャルロットは、俺を見つめた。
その目には、涙が浮かんでいた。
「...どうして、そんなに優しいの?」
「困ってる人を放っておけないだけだよ」
「困ってる...私が?」
「ああ。お嬢様、困ってるだろ?」
「...」
シャルロットは、何も言えなかった。
ただ、静かに涙を流していた。
俺は、何も言わずに、ただ彼女の隣に座っていた。
しばらくして、シャルロットが口を開いた。
「...ありがとう」
「どういたしまして」
「あなた...名前は?」
「レンだよ」
「レン...覚えたわ」
シャルロットは、少しだけ微笑んだ。
その笑顔は、先ほどまでの高圧的な雰囲気とは全く違う、柔らかくて優しいものだった。
「また、話してもいい?」
「もちろん」
「...ありがとう」
シャルロットは、立ち上がって館の中へと戻っていった。
俺も、少し遅れて広間へと戻った。
クレアたちが、心配そうに俺を見ている。
「どうした? 遅かったな」
「ああ、ちょっと庭で考え事をしてた」
「そうか」
その夜、パーティーは盛況のうちに終わった。
俺たちは、公爵家が用意してくれた客室で一泊することになった。
ベッドに横になりながら、俺はシャルロットのことを考えていた。
あの子は、本当は優しい子なのだろう。
ただ、孤独で、誰かに心を開く勇気がないだけだ。
明日も、パーティーは続く。
また、シャルロットと話せるだろうか。
そんなことを考えながら、俺は眠りについた。
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最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。
その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。
設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います
リヒト
ファンタジー
不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?
「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」
ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。
何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。
生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。
果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!?
「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」
そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?
自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!
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