女の子なのに能力【怪力】を与えられて異世界に転生しました~開き直って騎士を目指していたらイケメンハーレムができていた件~

沙寺絃

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十一話 貴族主義者たち

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 騎士学校に入学して二週間が経過した。
 最近ではルゥも訓練が終わると即ベッド行き――なんてこともなく、夕食は分隊のみんなと食堂で食べるようになっていた。

「ん~っ! 今日のスープも最高だね! ピリ辛スパイスが食欲をそそって、野菜たっぷりだから栄養豊富で、疲労回復にバッチリだよ!」
「確かにおいしいけど……」
「アイリほどたくさんは食べられませんわ」

 ヴィンセントとマギーが呆れた視線を私に向ける。私は既に三杯目のおかわりをしていた。

「騎士見習いなんだから、いっぱい食べて体力つけないと!」
「それはそうだけど……あれだけみっちりしごかれた後じゃ、ご飯を食べるだけで精一杯だよ」
「残すんじゃないぞ」
「うっ、レスターお兄ちゃん!?」
「ここのメニューは日々の訓練内容に合わせて作っている。無理してでも食べてもらわないと困る」
「わ、分かってるよ。レスターお兄ちゃんは厳しいなあ」

 とか言いつつ、実際に食べ始めるとルゥもあっという間に平らげる。レスターさんのご飯はおいしいからね。この食堂でレスターさんのご飯を残している訓練生は、一人として見たことがない。

「本当にレスターさんのご飯はおいしいですよ! 昨日のメインディッシュだった白身魚のムニエルも、レモンバターソースが魚によく合っていてパンが進みました! 一昨日のエビフライだって衣はサクサク、エビはプリップリで歯ごたえが最高だったし、その前に出たローストビーフも柔らかくてジューシーで……私、騎士学校に入って良かったってつくづく思いましたよ!」
「三日以上前のメニューなんて、よく覚えているな。俺は一昨日の夜に何を作ったのか、とっくに忘れていたぞ」
「それぐらい感動的だったってことですよ!」

 前世ではグルメ大国・日本で生活していた私の舌は肥えている。たぶんこの世界の貴族並に肥えている。
 今まで田舎の農村生活で、質素な食事がどれほど辛かったか。そんな人生にレスターさんのご飯という色彩が出現したんだから、もう毎日が感動の連続だった。
 けれど、そんな私の喜びに冷水をかけるような声が乱入してくる。

「フン、田舎者が。たかが食事で大層なはしゃぎようだな!」
「あんたたちは、第二分隊!」

 最近私たちを何かと敵視している第二分隊の面々だ。リーダー格は子爵の息子。エリック=クロムウェルという人物だ。

「故郷の村では、よほどひどい生活をしていたと見えるな。お前のような平民の田舎者と肩を並べて学ばなければならないとはな。入学条件を見直した方がいいんじゃないか?」
「レスターさんのご飯は、マギーやヴィンセントだって褒めていたよ!」

 マギーやヴィンセントの名前を出すと、エリックは咳払いをする。

「美味なのは認めよう。しかし何とも品がない。食事に目の色を変えるなど、やはり平民は卑しい性分の持ち主だな」
「何でそこまで言われないといけないわけ!?」
「貴様のような平民が、我が物顔でアルスター騎士学校を闊歩しているのが耐えられないのだよ! いくら平民も入学可能とはいえ、そこは自重するべきだったのではないか?」
「そうだそうだ!」
「平民風情が調子に乗るな!」

 第二分隊のメンバーは全員貴族だ。
 その中でもリーダー格のエリックは、貴族の生まれであることを鼻にかける嫌な奴だ。庶民である私やルゥ(設定上)によく絡んでくる。
 ディランやマギーたちには一切絡まない。とても分かりやすい差別主義者だ。

「おい貴様! さっきから黙って聞いていれば、俺の将来の妻になんという口の利き方だ!」
「庇ってくれるのはありがたいけど、誰が妻だ、誰が!」
「誰かと思えば、ハンドラー家のディラン君じゃないか。君と同期生になれたのは光栄だが、同じ分隊になれなかったのは残念だな」
「フン」
「それよりも、本当にその女を妻に迎えようというのか? 悪いことは言わないから止めておきたまえ。趣味が悪いにも程があるぞ」
「貴様! 我が妻アイリを愚弄するか!」
「だから妻じゃないってば!」
「見たまえ。せっかく君が庇っているのに、この女はまったく感謝する様子がないぞ」
「だって私は結婚に同意してないもん! 私の意志を無視して、一方的に話を進められるのが嫌なの! 私はディランからのプロポーズを承諾していないし、これからも受けるつもりなんてないんだから!」
「何故だ、アイリ! この俺のどこが悪いというのだ!?」
「俺の子を産めだの、勝手に妻扱いするだの、そういうところが嫌なの! 第一、うら若き乙女に『俺の子を産め』なんてよく言えるよね! 要するに〇〇〇(ピー)させろってことでしょ? 〇〇〇(ピー)なんて花も恥じらう乙女に言うようなことじゃないでしょ! 〇〇〇(ピー)なんて!!」
「……誰が花も恥じらう乙女だって?」

 ルゥのツッコミを華麗にスルーして、ディランに人差し指を突き付ける。ディランはまったく意に介した様子がなく、泰然自若と佇んでいる。
 こ、この男……私の言いたいことが全然伝わっていない!
 一方、ディランの背後でエリックと第二分隊の面々はドン引きしていた。

「な、なんという下品な女だ……信じられない……こんな女と同期生など、ましてや今期の実技成績最優秀者など、断じて認めない!」
「そっちが認めなくても事実なんだからしょうがないでしょ」
「いいや、認められないな! ……第一分隊よ、決闘を申し込ませていただこう!」
「決闘?」
「この騎士学校では、正式な手続きを踏めば訓練生同士の決闘が認められている。貴様も知っているだろう! 我ら第二分隊が勝利した暁には、貴様に泥を塗られたアルスター騎士学校の名誉も、我々貴族のもとに戻ってこよう!」
「し、知ってるよ! いいよ決闘ね、受けて立とう!」

 知らなかったけどこれ以上バカにされるのも癪だし、知っていたということにしよう。

「将来の妻が侮辱されて黙っていられるわけがない! 俺も受けて立つぞ!」
「妻じゃないけど、乗り気なのはありがたいよ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 個人的な決闘ではなく、分隊同士の決闘なのか!?」

 ヴィンセントが慌てて叫ぶ。

「当たり前ではありませんの。分隊は運命共同体ですわ。分隊の一人が決闘を申し込まれたのなら、それは私たち全員が決闘を申し込まれたも同然ですわ」
「そんなルールがいつの間に……」

 第一分隊では比較的常識人なヴィンセントは、困ったような顔でオロオロしている。
 ルゥはニコニコしている。決闘に積極的な賛成も反対も示さない。なら賛成派としてカウントしよう。沈黙はすなわち賛成と見なす。それが私のモットーだ。

「僕たちはまだ分隊リーダーすら決まっていないんだぞ! そんな状態で決闘なんて、無理に決まっているだろう!?」
「当日までに決めておくことだな。手続きは我が第二分隊の方で行っておいてやる。では、さらばだ! はーっはっはっはっは!」
「そんな!」

 ヴィンセントはその場に崩れ落ちた。

「いいじゃありませんの、ヴィンセント。分隊の仲間が侮辱されたんですもの。正々堂々戦って、発言を撤回させる良いチャンスですわ」
「無用な争いは避けた方が……」
「いいや、侮辱に甘んじるなど、騎士として間違っている! アイリよ、よくぞ決闘を受けた! それでこそ我が妻に相応しい女だ!」
「だから――はあ、もう何度言っても伝わらないんだから」

 今はディランの相手をするよりも、他に考えなきゃいけない優先事項ができた。

「ところで分隊のリーダー決め、どうする? 教官は来週までに決めればいいって言ってたけど」
「いい機会ですから、今のうちに決めておきましょう」
「改めて話し合うまでもないだろう。俺で決まりだな!」
「いや、ディランはどう考えてもリーダー向きじゃない。人の話を聞かないもん」

 いくら強くても人の話を聞かない奴はダメだ。
 一方であんまり強くない人もリーダー向きじゃない。騎士学校ではフィジカルが重視される。強くない人がリーダーになっても、メンバーがついてきてくれない。だからルゥもダメ。

「ヴィンセントはどうかな? オールマイティーに武器が扱えるし、結構強い方だと思うんだけど」
「勘弁してくれよ……仮に僕がリーダーになったとして、君たちは素直に言うことを聞いてくれるのか? これ以上、僕の頭痛の種を増やさないでくれ」
「それだと消去法でアイリがリーダーだね。私は構わないけど、みんなはどう?」

 ルゥが尋ねると、私以外の仲間たちは頷いた。

「俺は構わんぞ。アイリならば俺よりも強いからな!」
「わたくしも構いませんわ」
「僕もそれでいいよ。ということで、決定だね。おめでとうアイリ、今日から君がリーダーだ」
「そんな適当に決めていいの!?」
「みんな構わないって言ってるんだから、いいんじゃないかな。それにリーダーを務めれば、成績にポイント加点されるかもしれないよ?」
「よし、決定! これからは私が第一分隊のリーダーだよ!」

 こうして第一分隊のリーダーは私に決定した。
 そして第二分隊との決闘も正式に決まる。宣言通り第二分隊が申請を出して日程を組み、二週間後に闘技場を使って行われることになった。

「入学早々決闘とは、元気があってよろしい! どちらも頑張るように!」

 教官からの激励を貰う。私たちは日課の訓練が終わると、決闘に向けて作戦を練るようになった。
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