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25話 ホーンズ平原の戦い
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「すごい……!」
降下したフレイさんが、アモンをさらに打ち付ける。腕をクロスさせ迎撃態勢を取ったアモンだけど、降下の勢いを増したフレイさんの力には敵わず吹っ飛ばされた。
私たちとは反対方向へと吹っ飛ぶアモン。これも計算した上での攻撃なんだろうか?
「無論、計算の上でしょう」
表情から思考を読んだのか、クレイトンさんがそう言った。
ちなみに私はクレイトンさんに抱えられたままの状態だ。
お姫様抱っこなんて可愛いものじゃなく、荷物みたいに肩に担がれているけど。この体勢が運びやすいのはよく分かるから文句はない。
「! クレイトンさん、アモンの姿が変形していますよ!?」
「何!? さては第二形態に変身しようというのか!」
「第二形態!? そんな少年漫画のボスキャラや、特撮映画の怪獣みたいなことができるんですか!?」
「おっしゃる意味はよく分かりませんが……魔族の中でも混血種、他種族の血が混じっている者は変形可能です」
「そうだったんだ……!」
「変形後は、より混血先の種族の特徴が濃くなるようですな。あのアモンという魔族も混血種です。聞いたことがあります。アモンは【獣人】に変形できる混血魔族である――と」
「獣人!?」
その言葉を裏打ちするように、アモンは巨大な狼の姿に変形する。蛇の尻尾を持つ巨狼。牙も鉤爪もさらに鋭くなり、口から吐く炎の勢いも増している。
「それが貴様の第二形態か」
「グオッ! グゥオオオオオオッ!!」
「一撃に勢いと攻撃力が増しているな。動きも速くなっている。炎の火力も増した。——が、知性は退化しているようだな。単純な攻撃一辺倒になっている」
「ゴハァッ!?」
「単純思考、本能の赴くがままに動く生物ほど、対処しやすい物はない」
フレイさんの剣がアモンの体を切り裂く。目にも留まらない速さで剣を操り、涼やかな音の直後にはアモンの体から血が迸る。
もはや聖剣ブルトガングの力すら使っていない。
「な……何が起きているのか、全然分からないんですけど。ひょっとしてアレですかね? 達人なら見えるとか、そういうの」
「そうですね。自ら達人を名乗るのは、僭越ではありますが。今の一太刀に見える攻撃で、十箇所以上を斬っていますな」
「見えるんだ……」
ていうか十箇所とか。本格的に強い。もうワンサイドゲームだ。
「チクショウ、この俺ガ! 魔王四天王の俺ガ! 300年も生きたこの俺が、たかだか20年生きた程度の人間に押し負けるだト!?」
「単純に、生きた年数で優劣は決まらない。短命種は短命であるだけに、刹那の密度が濃い。短命種たる人間が、長命種を上回った事例など枚挙に暇がないだろう。今さら何を驚いている。それともまさか、自分だけは例外だとでも思っていたのか」
「……クソがあああぁぁぁぁあああッ!!」
アモンの変身が解けて、半人間形態に戻る。絶叫するアモン。その姿を見て、配下の魔族たちも怯えを隠さなくなる。
「これで終わりだ」
頽れるアモン。手足は執拗に攻撃され、もはや立つこともできない。フレイさんが聖剣を翳した。
その刹那、アモンは顔を上げると口を大きく開く。その視線の先にいるのは――私だ!
「むっ! エリカ様、危ない!!」
「遅ぇヨ! 聖女ォッ!!」
アモンが口から爆炎を吐く。すさまじいスピードで炎が眼前に迫る。クレイトンさんの脚力を持ってしても逃げ入れない。今度こそ死を覚悟した、その時だった。
「エリカ殿!!」
「っ、フレイさん!?」
フレイさんが私の前に立ちはだかった。眼前に剣を構え、風の精霊の加護で爆炎を阻もうとする。だけど、さすがに分が悪いのは一目瞭然だった。
足が押される。鎧が赤くなる。剣を構える両手に火傷が広がる。それでもフレイさんは退こうとしない。
「っ、クレイトン! 今のうちにエリカ殿を連れて退避しろッ!!」
「はッ! エリカ様、行きますよ! ……エリカ様!?」
自分の内側から何かが膨張し、外に出ようとしているのを感じた。
同じ感覚はもう二度も経験がある。新たなスキルが生まれようとしている感覚だ。
この戦いでは、私も魔法を使っていた。自分でも気づかないうちにレベルアップして、新たなスキルを覚えた――ということだろう。
「かっ、はぁ――ッ!!」
私は自らに発生したスキルの力を実感する。理屈ではなく直感で理解できた。救助しようとするクレイトンさんの手から逃れると、前方に向けて両手を翳す。
「スキル、発動。——【魔力吸収】!」
「エリカ殿!?」
「くッ……うぅぅ……!!」
アモンが発した爆炎の源は魔力。私が新たに発現させたスキルは、相手の魔力を奪うという物だった。
「な――がアアアァァァッ!?!?!?」
逃れようと足掻くアモン。だけど一度私の力に捉えられてしまった以上、もはや逃れようがなかった。
私の中に魔力が溜まっていく。対照的にアモンは魔力を失い、どんどん小さくなっていく。
やがて爆炎が消える。高温の炎が走った跡だけを地面に残して。
「エリカ殿……」
「! フレイさん! 傷を見せてください!!」
フレイさんの両手は大火傷を負って、剣の柄と癒着していた。
「なんてひどい……早く治療しないと!」
「これでも風の精霊の加護のおかげで、軽傷で済んだ方ですよ。事実、両手以外の火傷はひどくありません」
本当にひどいのは前方に突き出していた両手だけで、顔は綺麗なままだった。
「それでも、両手はひどいじゃないですか! 私の為に……ごめんなさい」
「俺がやりたくてやったことです。謝るのは止めてください。俺はあなたを困らせたくて、行動したのではありません。負傷したのは俺が至らなかったからです」
「じゃあ……ありがとう、ございます」
「はい」
治癒魔法をかけながら言葉を交わす。私がお礼を言うと、フレイさんも微笑みを返してくれた。
降下したフレイさんが、アモンをさらに打ち付ける。腕をクロスさせ迎撃態勢を取ったアモンだけど、降下の勢いを増したフレイさんの力には敵わず吹っ飛ばされた。
私たちとは反対方向へと吹っ飛ぶアモン。これも計算した上での攻撃なんだろうか?
「無論、計算の上でしょう」
表情から思考を読んだのか、クレイトンさんがそう言った。
ちなみに私はクレイトンさんに抱えられたままの状態だ。
お姫様抱っこなんて可愛いものじゃなく、荷物みたいに肩に担がれているけど。この体勢が運びやすいのはよく分かるから文句はない。
「! クレイトンさん、アモンの姿が変形していますよ!?」
「何!? さては第二形態に変身しようというのか!」
「第二形態!? そんな少年漫画のボスキャラや、特撮映画の怪獣みたいなことができるんですか!?」
「おっしゃる意味はよく分かりませんが……魔族の中でも混血種、他種族の血が混じっている者は変形可能です」
「そうだったんだ……!」
「変形後は、より混血先の種族の特徴が濃くなるようですな。あのアモンという魔族も混血種です。聞いたことがあります。アモンは【獣人】に変形できる混血魔族である――と」
「獣人!?」
その言葉を裏打ちするように、アモンは巨大な狼の姿に変形する。蛇の尻尾を持つ巨狼。牙も鉤爪もさらに鋭くなり、口から吐く炎の勢いも増している。
「それが貴様の第二形態か」
「グオッ! グゥオオオオオオッ!!」
「一撃に勢いと攻撃力が増しているな。動きも速くなっている。炎の火力も増した。——が、知性は退化しているようだな。単純な攻撃一辺倒になっている」
「ゴハァッ!?」
「単純思考、本能の赴くがままに動く生物ほど、対処しやすい物はない」
フレイさんの剣がアモンの体を切り裂く。目にも留まらない速さで剣を操り、涼やかな音の直後にはアモンの体から血が迸る。
もはや聖剣ブルトガングの力すら使っていない。
「な……何が起きているのか、全然分からないんですけど。ひょっとしてアレですかね? 達人なら見えるとか、そういうの」
「そうですね。自ら達人を名乗るのは、僭越ではありますが。今の一太刀に見える攻撃で、十箇所以上を斬っていますな」
「見えるんだ……」
ていうか十箇所とか。本格的に強い。もうワンサイドゲームだ。
「チクショウ、この俺ガ! 魔王四天王の俺ガ! 300年も生きたこの俺が、たかだか20年生きた程度の人間に押し負けるだト!?」
「単純に、生きた年数で優劣は決まらない。短命種は短命であるだけに、刹那の密度が濃い。短命種たる人間が、長命種を上回った事例など枚挙に暇がないだろう。今さら何を驚いている。それともまさか、自分だけは例外だとでも思っていたのか」
「……クソがあああぁぁぁぁあああッ!!」
アモンの変身が解けて、半人間形態に戻る。絶叫するアモン。その姿を見て、配下の魔族たちも怯えを隠さなくなる。
「これで終わりだ」
頽れるアモン。手足は執拗に攻撃され、もはや立つこともできない。フレイさんが聖剣を翳した。
その刹那、アモンは顔を上げると口を大きく開く。その視線の先にいるのは――私だ!
「むっ! エリカ様、危ない!!」
「遅ぇヨ! 聖女ォッ!!」
アモンが口から爆炎を吐く。すさまじいスピードで炎が眼前に迫る。クレイトンさんの脚力を持ってしても逃げ入れない。今度こそ死を覚悟した、その時だった。
「エリカ殿!!」
「っ、フレイさん!?」
フレイさんが私の前に立ちはだかった。眼前に剣を構え、風の精霊の加護で爆炎を阻もうとする。だけど、さすがに分が悪いのは一目瞭然だった。
足が押される。鎧が赤くなる。剣を構える両手に火傷が広がる。それでもフレイさんは退こうとしない。
「っ、クレイトン! 今のうちにエリカ殿を連れて退避しろッ!!」
「はッ! エリカ様、行きますよ! ……エリカ様!?」
自分の内側から何かが膨張し、外に出ようとしているのを感じた。
同じ感覚はもう二度も経験がある。新たなスキルが生まれようとしている感覚だ。
この戦いでは、私も魔法を使っていた。自分でも気づかないうちにレベルアップして、新たなスキルを覚えた――ということだろう。
「かっ、はぁ――ッ!!」
私は自らに発生したスキルの力を実感する。理屈ではなく直感で理解できた。救助しようとするクレイトンさんの手から逃れると、前方に向けて両手を翳す。
「スキル、発動。——【魔力吸収】!」
「エリカ殿!?」
「くッ……うぅぅ……!!」
アモンが発した爆炎の源は魔力。私が新たに発現させたスキルは、相手の魔力を奪うという物だった。
「な――がアアアァァァッ!?!?!?」
逃れようと足掻くアモン。だけど一度私の力に捉えられてしまった以上、もはや逃れようがなかった。
私の中に魔力が溜まっていく。対照的にアモンは魔力を失い、どんどん小さくなっていく。
やがて爆炎が消える。高温の炎が走った跡だけを地面に残して。
「エリカ殿……」
「! フレイさん! 傷を見せてください!!」
フレイさんの両手は大火傷を負って、剣の柄と癒着していた。
「なんてひどい……早く治療しないと!」
「これでも風の精霊の加護のおかげで、軽傷で済んだ方ですよ。事実、両手以外の火傷はひどくありません」
本当にひどいのは前方に突き出していた両手だけで、顔は綺麗なままだった。
「それでも、両手はひどいじゃないですか! 私の為に……ごめんなさい」
「俺がやりたくてやったことです。謝るのは止めてください。俺はあなたを困らせたくて、行動したのではありません。負傷したのは俺が至らなかったからです」
「じゃあ……ありがとう、ございます」
「はい」
治癒魔法をかけながら言葉を交わす。私がお礼を言うと、フレイさんも微笑みを返してくれた。
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