「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される

沙寺絃

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26話 決着

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「さて」

 火傷が癒えるとフレイさんは剣を握り直し、アモンへと向き直る。
 魔力を失ったアモンは、子犬のような姿になり横たわっている。全身にはフレイさんに負わされた傷が残っていた。

「あと一撃、攻撃を加えてやるだけで絶命するでしょう。――エリカ殿」
「え? まさか、私にやれと言うんですか!?」
「この者は魔王四天王の1人です。仕留めれば得られる経験値は、他モンスターの比ではありません」
「でもこんな、子犬みたいな生き物を殺すのは……」
「今は無力な小動物のような姿をしていますが、本来の姿がいかに恐ろしい魔物であるかご存じでしょう」
「それはそうですけど」

 アモンは弱々しい目で私を見上げる。その瞳は、心の弱い部分に爪を立てる。
 分かっている。アモンは恐ろしい化け物だ。私を二度も殺そうとしたし、フレイさんも大火傷を負った。フレイさん以外の負傷兵も少なくない。
 魔王四天王の1人、紅蓮のアモン。その恐ろしさは、魔力の強大さは、私とてよく分かっている。吸収した魔力の大きさが、未だ体内に留まる魔力の強さが、私に訴えかけている。
 ……ん? 未だ体内に留まる魔力?

「ていっ」
「ぎゃっ!?」

 ぺちんっとアモンの額にデコピンする。アモンは小さな爪が生えた両手で額を抑え、涙目になって私を見上げた。
 私はさらに、アモンを抱き上げて全身をまさぐる。

「なっ、何をする気ダ!? 俺を弄ぶ気カ!?」
「魔力は……全然残ってないね」
「当たり前だロッ!? てめぇに全部吸い取られたんだからナ!? だからってバカにするなヨ! まだ爪と牙が残ってるんだからナ!! ガブッ!! ――!? うげえええ!? ぺっぺっ、マッズ!?」
「貴様、なんということを!!」
「まあまあフレイさん。深い傷じゃないから大丈夫です。たぶん魔族にとって聖女は美味しくないんでしょうね。深く噛みつけないみたいです」

 自分で作ったポーションを飲み、傷を癒しながら分析する。

「攻撃力は普通の小型犬レベルまで落ちていますね。魔法の類は一切使えないので、まったく脅威じゃないでしょう」
「子犬っ!? 子犬だとォ!? おい聖女、ふざけんナ!! さっさと俺様の魔力を返しやがレ!!」
「そんな物騒なこと、するわけないでしょ。フレイさん、この子、下手に殺すより捕虜にした方が魔王に関する情報を聞き出せませんか?」
「ふむ、捕虜ですか……」
「ふざけんナッ! 人間の捕虜だなんて、絶対に御免だッ!!」
「なるほど、それは面白そうですね。魔王四天王を地下牢にて鎖で繋ぎ、ドッグフードを食べさせるというのも楽しそうです」
「うわあ」

 フレイさんの新しい一面を発見した。この人、たぶんサディスティックな一面も持っている。

「もちろんエリカ殿にはひどいことはしませんので、安心してください」
「分かってますよ」

 今日までの積み重ねと、さっき庇ってくれた行動から、フレイさんが私には絶対ひどいことはしないと確信できる。

「ッ、ざっけんナ、このドSが! 俺様は捕虜になんザならねえゾ! ドッグフードなんザ、誰が食べるカ!!」
「貴様に与えられた選択肢は、死か捕虜かの二択だ。どちらかを選ばねば、この戦いは終わらない」
「グッ……!」

 アモン配下の魔族たちは完全に士気を失い、人間側の兵士にやられている。部下を思う気持ちはあるのか、アモンの瞳に苦渋の色が灯った。

「ねえ、生きてさえいれば、私から魔力を取り戻す機会もあるかもしれないよ? ここで死を選ぶより、未来に希望があると思うな」
「てめぇ、どのツラ下げてッ! ……だが、てめぇの言うことにも一理ある、ナ」
「じゃあ――」
「~~ッ、仕方がねェッ!!」
「フレイさん!」
「はい。お見事でした、エリカ殿」

 こうしてアモンはパーシヴァル騎士団&義勇軍側の捕虜になった。
 将である魔王四天王を失ったとあって、配下の魔物たちは潰走する。他にも一部、動けない魔物も捕虜にして、ホーンズ平原での戦いは幕を閉じた。
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