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第二章 ダルニア王国編

5.

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…………だってこの味は……………。
……そんなはずない。誰も知らないはずだから。

「リティどうした?」

私の様子が変わったことに気づいたカルが話しかけてくれるが言葉が出てこない。
たってそんなはずないもの。

「リティ大丈夫か?」

ほら、クラリスお兄様までも心配しだしたわ。
早く言葉を出したいのに苦しくて嬉しくて……懐かしくて気持ちがごちゃ混ぜになってる。

「とっとても美味しくて………「なんで泣いてるんだ?」

言葉を遮ってきたカルに言われて初めて自分が泣いてることに気づいた。

「とても……なつか…美味しくて感動してしまいましたわ。これなんか温かみのある優しいお味のは心に染みる肉じゃ「なんだろ。」そうそう、お袋の味ですわって……」

そんなはずない。
『お袋の味』って前世の世界での言葉。
この世界じゃ誰も知らない言葉。

なんで?なんで知ってるの?

言葉を遮った相手が予想外で固まってしまった。



ーーーーーーーーー
ーーーーーー


どういうことだ?
知らない言葉が出てきた。
『お袋の味』………とはどういう意味だ?
この料理は食べたことがないがリティは知っていたのか?
この国の料理は初めて来たリティは食べたことがないはずだ。
リティも知っているような口ぶりだったが………今は国王陛下に王妃様もいる晩餐中で問い詰めれる状況ではないな。

「リティ?大丈夫か?」

涙を流しながら言葉を聞いたときから目を見開いて固まってしまっていた。

「あっ…………………ええ、大丈夫ですわ。すっすみません、あまりにも美味しくて感動してしまいましたわ。」

いや、大丈夫ではないな。
挙動不審すぎる。
クラリスもリティが正気ではないと判断したのか、心配そうな顔になっている。

瞳を潤ませながら食べている料理を気に入ったからだけではないだろう。
リティのことは全てを知っているが、俺の知らないことがあるとすれば時々話してくれていた前世の世界でのことだけだ。

「私、リティアナちゃんのことますます気に入ったわ。留学だけでなくこっちに住まない?」

王妃様の何気ない一言をリティが笑って対応していたが、あれは本気に口説いていた目だった。
将来俺のお嫁さんになって王妃となるリティが交流を深めるのはいいことだが、俺からリティを奪おうとするなら話しは別だ。
マシューリだけでなく王妃からも気に入られるとは………厄介だな。

留学中警戒を強めておこう。



ーーーーーーーー
ーーーー


「リティアナ、これからお茶しないか?」

どうしましょう。
直接のお誘いを一令嬢な私が断れるわけがないですわ。
晩餐後、マシューリ殿下が誘ってきたが、『二人で』って辺りが引っ掛かり言葉をつまらせていると、

「二人にさせるわけないだろうが。」

私の腰を引き寄せてカルが顔に青筋をたてながらマシューリ殿下に抗議した。

「カルティド殿下はこの前から邪魔ばかりするなぁ。リティアナが側にいないと不安でたまらないのかな?」

意地悪な笑みを浮かべながらカルを挑発してきたマシューリ殿下。

「そうだ。リティが大切なので片時も離れたくない。リティは可愛いからがつくと大変だ。」

人前でやめてください。
私の頭にチュッとキスをしながら、なんてことマシューリ殿下に言ってるんです。

「ふふふ。安心してください~カル。私はカルの婚約者だと誰もが知ってるんですよ。心配しなくてもそんな私に誰も寄ってきませんわ。」

心配しなくても大丈夫ですよカル。と言ったんですが腰にあったはずの腕が私をギュッと強く抱き締めてきて

「心配だ………。」

と呟いたと思ったらクラリスお兄様にもなんとも言えない目で見られてるのが気になって、マシューリ殿下だけが微笑んでいたことを私は気にもとめていなかった。
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