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1 幼き双子
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「このクズバカール!! よくもやってくださいましたわね!」
綺羅びやかな会場に透き通る声にはそぐわぬ悪態が響きその声の方向に周囲が注目する。
階段の一番上から声を発したのは大変に美しい女神で本日の主役の一人であることを証明するかのような艶めく黄緑色の髪をハーフアップにしている。瞳と同じ色の金色のドレスを纏い離れた階段下からでも豪奢な衣装だとわかる。
「本当に信じられませんわっ!」
「アリサ」
隣に立つ薄紫色の髪をした青年が怒り狂いそうな女神を諭すように優しく名前を呼んだ。
「みなさんが女神の降臨をお待ちですよ。そろそろ参りましょう」
深い紫の瞳はアリサへの愛情たっぷりに細められ優雅にエスコートの手を伸ばした。アリサは気品溢れる仕草でその手に自分の手を重ねる。
二人が螺旋階段をゆっくりと降りてくる姿は艶やかで神々しく誰もが言葉を失っていた。
〰 〰 〰
アリサ・オルクスはプリュムリーナ王国にあるオルクス公爵家に待望の長女として生まれ落ちた。蝶よ花よと可愛がられ幸せに暮らしていた。
ただ一点を除いては……。
アリサにはアリサよりほんのすこぉしだけ早く生まれた兄ズバニールがいるのだ。
双子は波長が合い仲良くいろいろと類似することも多いというのが通例であるが二人は全くそのようなことはなかった。そもそも性別が違うのだからと家族や使用人は考えている。容姿にも違いがあり二人とも大層美形なのは間違いないが、ズバニールは深緑の髪に黄色が強い茶の眼でアリサは黄緑の髪に輝く金色の瞳である。
だが一箇所だけそっくりなものがあった。
それは『気に入るもの』である。
母親を取り合って喧嘩するのは日常茶飯事。時にはおもちゃを取り合い時にはケーキを取り合い時には花を取り合い挙句の果てにはメイドを取り合った。さすがにメイドは半分にしたり同じものを用意したりはできないのでそのメイドを母親専属にして二人とは極力顔を合わせないようにすることにしたほどである。
そんな二人の元に一人の女の子が現れた。乗馬服のような格好をした女の子が振り返るとカールのかかったオレンジ色の髪のポニーテールがポインと揺れる。二人に気がつくと笑顔を弾けさせた。
女の子は手を振りながら二人の元へ走ってくると元気に挨拶してくる。
「二人ともはじめまして。メイロッテ・コンティよ。二人に会えてとってもうれしいわ」
お陽さまのような温かみのある吊りがちの紅色の瞳を笑顔でこれでもかと垂れさせるとアリサの右手とズバニールの左手をとり両手で包み込むように握った手はとても温かかった。
「お話に聞いていた通り二人とも本当に美しい翡翠色の髪だからすぐにわかったわ。ズバニール様が少し濃いめのお色なのね」
その直後、一人は鼻血を出して倒れ一人は顔を赤くして手を振り払い踵を返して走り出した。
共通点は二人ともメイロッテを一目で気に入ったというところだ。
一ヶ月後。コンティ辺境伯令嬢メイロッテはズバニールの婚約者になりズバニールの勝ち誇った顔をアリサは苦々しく睨む。
時は十数年経ち二人が貴族学園を卒業するまで約半年となった。
二人の誕生日を祝うパーティーが王都にあるオルクス公爵邸で昼食前から開催されることになり招待された人々はみな綺羅びやかな装いでオルクス公爵邸へ集合していく。
オルクス公爵家の威厳を表すかのような大廊下にはいかにも高価そうな調度品や家具が並んでいる。見た目からすべすべで座り心地の良さそうなカウチソファーの横には木彫りの脚が施されたテーブルがそここに置かれているがすべて異なるセットであるにも関わらず統一感があるという誠にセンスの良い空間である。
『ここってまだロビーからの廊下だよね?』
そう思ったのは一人や二人ではない。
「お疲れになりましたらこちらのお席もお使いくだいませ」
それに気がついたメイドは隙かさず説明を入れる。
廊下を進むと耳心地のいい音楽がはっきりと聞こえてくる。
大人数の楽団が奏でる素晴らしい音色に引き寄せられて大きく開け放たれた大扉をくぐり会場へと足を踏み入れれば豪華な華花で彩られたダンスホールに大きなシャンデリアが五つもキラキラと輝いている。
招待された同年代の貴族子女たちは自分たちの家との違いに目を見開いてあっけにとられながらも目に焼き付けようとキョロキョロと見回した。
「壁際には軽食やドリンクがございます。あちらの扉の奥には多少お食事もご用意させていただいておりますので是非お召し上がりください」
昼食を食べずに来いと招待されているので気合を入れて空腹で来たが会場の雰囲気にすでにお腹がいっぱいになりつつある子女たちがキョロキョロしながらメイドの話に頷く。
こうして次々に案内されて来た子女たちは時間が経ち友人とおしゃべりをして緊張さえ解れれば自分の空腹にも気が付く。自然に食べ物へと足が進むとオルクス公爵家の豪勢な料理に驚き味に驚く。
『多少のお料理とメイドは言っていたがこれが多少なら本当の豪華はどんなものなのだ?』
苦しくなるほどのウエストを強調するドレスを着てきてしまったご令嬢は後悔するほどであった。
綺羅びやかな会場に透き通る声にはそぐわぬ悪態が響きその声の方向に周囲が注目する。
階段の一番上から声を発したのは大変に美しい女神で本日の主役の一人であることを証明するかのような艶めく黄緑色の髪をハーフアップにしている。瞳と同じ色の金色のドレスを纏い離れた階段下からでも豪奢な衣装だとわかる。
「本当に信じられませんわっ!」
「アリサ」
隣に立つ薄紫色の髪をした青年が怒り狂いそうな女神を諭すように優しく名前を呼んだ。
「みなさんが女神の降臨をお待ちですよ。そろそろ参りましょう」
深い紫の瞳はアリサへの愛情たっぷりに細められ優雅にエスコートの手を伸ばした。アリサは気品溢れる仕草でその手に自分の手を重ねる。
二人が螺旋階段をゆっくりと降りてくる姿は艶やかで神々しく誰もが言葉を失っていた。
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アリサ・オルクスはプリュムリーナ王国にあるオルクス公爵家に待望の長女として生まれ落ちた。蝶よ花よと可愛がられ幸せに暮らしていた。
ただ一点を除いては……。
アリサにはアリサよりほんのすこぉしだけ早く生まれた兄ズバニールがいるのだ。
双子は波長が合い仲良くいろいろと類似することも多いというのが通例であるが二人は全くそのようなことはなかった。そもそも性別が違うのだからと家族や使用人は考えている。容姿にも違いがあり二人とも大層美形なのは間違いないが、ズバニールは深緑の髪に黄色が強い茶の眼でアリサは黄緑の髪に輝く金色の瞳である。
だが一箇所だけそっくりなものがあった。
それは『気に入るもの』である。
母親を取り合って喧嘩するのは日常茶飯事。時にはおもちゃを取り合い時にはケーキを取り合い時には花を取り合い挙句の果てにはメイドを取り合った。さすがにメイドは半分にしたり同じものを用意したりはできないのでそのメイドを母親専属にして二人とは極力顔を合わせないようにすることにしたほどである。
そんな二人の元に一人の女の子が現れた。乗馬服のような格好をした女の子が振り返るとカールのかかったオレンジ色の髪のポニーテールがポインと揺れる。二人に気がつくと笑顔を弾けさせた。
女の子は手を振りながら二人の元へ走ってくると元気に挨拶してくる。
「二人ともはじめまして。メイロッテ・コンティよ。二人に会えてとってもうれしいわ」
お陽さまのような温かみのある吊りがちの紅色の瞳を笑顔でこれでもかと垂れさせるとアリサの右手とズバニールの左手をとり両手で包み込むように握った手はとても温かかった。
「お話に聞いていた通り二人とも本当に美しい翡翠色の髪だからすぐにわかったわ。ズバニール様が少し濃いめのお色なのね」
その直後、一人は鼻血を出して倒れ一人は顔を赤くして手を振り払い踵を返して走り出した。
共通点は二人ともメイロッテを一目で気に入ったというところだ。
一ヶ月後。コンティ辺境伯令嬢メイロッテはズバニールの婚約者になりズバニールの勝ち誇った顔をアリサは苦々しく睨む。
時は十数年経ち二人が貴族学園を卒業するまで約半年となった。
二人の誕生日を祝うパーティーが王都にあるオルクス公爵邸で昼食前から開催されることになり招待された人々はみな綺羅びやかな装いでオルクス公爵邸へ集合していく。
オルクス公爵家の威厳を表すかのような大廊下にはいかにも高価そうな調度品や家具が並んでいる。見た目からすべすべで座り心地の良さそうなカウチソファーの横には木彫りの脚が施されたテーブルがそここに置かれているがすべて異なるセットであるにも関わらず統一感があるという誠にセンスの良い空間である。
『ここってまだロビーからの廊下だよね?』
そう思ったのは一人や二人ではない。
「お疲れになりましたらこちらのお席もお使いくだいませ」
それに気がついたメイドは隙かさず説明を入れる。
廊下を進むと耳心地のいい音楽がはっきりと聞こえてくる。
大人数の楽団が奏でる素晴らしい音色に引き寄せられて大きく開け放たれた大扉をくぐり会場へと足を踏み入れれば豪華な華花で彩られたダンスホールに大きなシャンデリアが五つもキラキラと輝いている。
招待された同年代の貴族子女たちは自分たちの家との違いに目を見開いてあっけにとられながらも目に焼き付けようとキョロキョロと見回した。
「壁際には軽食やドリンクがございます。あちらの扉の奥には多少お食事もご用意させていただいておりますので是非お召し上がりください」
昼食を食べずに来いと招待されているので気合を入れて空腹で来たが会場の雰囲気にすでにお腹がいっぱいになりつつある子女たちがキョロキョロしながらメイドの話に頷く。
こうして次々に案内されて来た子女たちは時間が経ち友人とおしゃべりをして緊張さえ解れれば自分の空腹にも気が付く。自然に食べ物へと足が進むとオルクス公爵家の豪勢な料理に驚き味に驚く。
『多少のお料理とメイドは言っていたがこれが多少なら本当の豪華はどんなものなのだ?』
苦しくなるほどのウエストを強調するドレスを着てきてしまったご令嬢は後悔するほどであった。
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