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4 メイロッテの友人たち
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メイロッテは思考を復活させるとにっこりと笑う。
「ズバニール様。わたくしはズバニール様方より一学年上になりますので去年卒業いたしました」
ズバニールはギリギリと歯を噛みしめる。
「おまえの卒業などわかっている! なんだ最優秀生徒として卒業したという自慢かっ!?」
捲し立てるズバニールにメイロッテはゆっくりと首を左右に動かした。
最優秀生徒は卒業生の中からただ一人だけ選ばれる栄光ある賞である。教師たちの推薦で十人の優秀生徒が選ばれ生徒たちによる投票で最優秀生徒が決まる。優秀生徒十人に選ばれるだけでも充分に栄誉あることなのだ。
「いえ。そのようなつもりはございません。
一年半前は卒業準備で忙しく、更にこの一年は多忙であり充実した生活をしております。
ですのでズバニール様がおっしゃるようなことをする時間はございません」
「そのような言い訳をすることは了承済みだ。そのためのアリサなのだろうからな」
ズバニールは憎々しげにメイロッテを睨みつけた。
「アリサ? アリサがいかがいたしましたの?」
「ここまで言ってもまだシラを切るつもりか? アリサから受けた執拗な虐めでパレシャがどれほど傷ついていることかっ」
ズバニールが後ろにいたパレシャを横に出し肩をぐいっと引き寄せる。パレシャは寄り添うように左手と頬をズバニールの胸に当て怯えるような目でメイロッテを見ている。
『お上手なのね。わたくしには絶対にできない仕草よ。あれができないところがズバニール様とうまくいかなかった原因かしら?』
メイロッテは庇護欲そそるという行為を学ぶためパレシャを隅々まで観察した。その視線を脅しだと感じたのか顔さえもズバニールの胸に向けて時折チラチラとメイロッテの様子を見るだけになってしまった。
『まあ! 更にわたくしにとっての難易度が上がったわ。すごいテクニックをお持ちなのね』
メイロッテは知らず知らずに目を見開いていたようだ。
「メイロッテ! パレシャがこんなにも恐れているではないかっ! その眼力を抑えろ!」
ズバニールの指摘に目をしばたかせる。
「え? そのように言われましてもわたくしは普段からこのようにしております。これまでパレシャさん以外の方に恐れられたこともありません。
恐れられる眼力が身につけられるというのなら是非やってみたいことではありますが」
「そういうところが女として問題なのだ!」
『ザッ!』
いつの間にやら数名の少女がメイロッテを守る騎士のようにいつでも臨戦する覚悟で並んでいてズバニールの一言で片足だけ一歩踏み出しメイロッテの命令があれば即刻動ける体勢になる。まるで今にも剣を抜きそうな体勢であるが帯剣はしていないので動いたとしてもズバニールを床に押さえつける程度だろう。
だがそれを見たズバニールは大層ビビってパレシャの肩を抱いたまま二歩下がる。パレシャを引き連れただけでもズバニールにしては頑張った方だ。
メイロッテがさっと手を翳すとその一歩を下げる。忠誠心か命令系統の確立か敬慕か、とにもかくにもメイロッテに手を出すことは無謀だと理解するには十分である。
「わたくしの指導が至らぬばかりに不快なご気分にさせてしまったようですね。申し訳ございません」
メイロッテが黙礼する。
彼女たちはメイロッテが率いていた倶楽部の部員たちであった。メイロッテが卒業して数ヶ月が経つというのに心持ちは変わっていない。
「メイロッテ様…」
「おねえさま…」
少女たちが一様に項垂れるとまわりの者たちは同情心で少女たちを見た後苦々しさを混ぜて不憫な者を見るようにズバニールとパレシャへ視線が向く。
ズバニールは自分の言葉の過失に気が付き形勢を逆転すべくメイロッテの言葉に返事をせずに切り替えることにした。
「ア、アリサのことだ!」
「先程のお話ですね。アリサがどうしたのでしょうか?」
「アリサはそれはもう非道極まりないほど虐めを繰り返していた!」
「非道極まりないとまで。一体何をなさったのです?」
「おまえはアリサに公衆の面前でパレシャを罵らせた。時には『マナーがなってない』と時には『無知だ』と時には『貧乏人だ』と言わせたのだな」
ズバニールは周りがポカンとしたことに気が付かぬほど言ってやったという優越感に浸っていてメイロッテからは鼻の穴しか見えぬのではないかと思うほど顔を仰け反らしている。
それはメイロッテが卒業する半年ほど前ころからのことである。
「ズバニール様。わたくしはズバニール様方より一学年上になりますので去年卒業いたしました」
ズバニールはギリギリと歯を噛みしめる。
「おまえの卒業などわかっている! なんだ最優秀生徒として卒業したという自慢かっ!?」
捲し立てるズバニールにメイロッテはゆっくりと首を左右に動かした。
最優秀生徒は卒業生の中からただ一人だけ選ばれる栄光ある賞である。教師たちの推薦で十人の優秀生徒が選ばれ生徒たちによる投票で最優秀生徒が決まる。優秀生徒十人に選ばれるだけでも充分に栄誉あることなのだ。
「いえ。そのようなつもりはございません。
一年半前は卒業準備で忙しく、更にこの一年は多忙であり充実した生活をしております。
ですのでズバニール様がおっしゃるようなことをする時間はございません」
「そのような言い訳をすることは了承済みだ。そのためのアリサなのだろうからな」
ズバニールは憎々しげにメイロッテを睨みつけた。
「アリサ? アリサがいかがいたしましたの?」
「ここまで言ってもまだシラを切るつもりか? アリサから受けた執拗な虐めでパレシャがどれほど傷ついていることかっ」
ズバニールが後ろにいたパレシャを横に出し肩をぐいっと引き寄せる。パレシャは寄り添うように左手と頬をズバニールの胸に当て怯えるような目でメイロッテを見ている。
『お上手なのね。わたくしには絶対にできない仕草よ。あれができないところがズバニール様とうまくいかなかった原因かしら?』
メイロッテは庇護欲そそるという行為を学ぶためパレシャを隅々まで観察した。その視線を脅しだと感じたのか顔さえもズバニールの胸に向けて時折チラチラとメイロッテの様子を見るだけになってしまった。
『まあ! 更にわたくしにとっての難易度が上がったわ。すごいテクニックをお持ちなのね』
メイロッテは知らず知らずに目を見開いていたようだ。
「メイロッテ! パレシャがこんなにも恐れているではないかっ! その眼力を抑えろ!」
ズバニールの指摘に目をしばたかせる。
「え? そのように言われましてもわたくしは普段からこのようにしております。これまでパレシャさん以外の方に恐れられたこともありません。
恐れられる眼力が身につけられるというのなら是非やってみたいことではありますが」
「そういうところが女として問題なのだ!」
『ザッ!』
いつの間にやら数名の少女がメイロッテを守る騎士のようにいつでも臨戦する覚悟で並んでいてズバニールの一言で片足だけ一歩踏み出しメイロッテの命令があれば即刻動ける体勢になる。まるで今にも剣を抜きそうな体勢であるが帯剣はしていないので動いたとしてもズバニールを床に押さえつける程度だろう。
だがそれを見たズバニールは大層ビビってパレシャの肩を抱いたまま二歩下がる。パレシャを引き連れただけでもズバニールにしては頑張った方だ。
メイロッテがさっと手を翳すとその一歩を下げる。忠誠心か命令系統の確立か敬慕か、とにもかくにもメイロッテに手を出すことは無謀だと理解するには十分である。
「わたくしの指導が至らぬばかりに不快なご気分にさせてしまったようですね。申し訳ございません」
メイロッテが黙礼する。
彼女たちはメイロッテが率いていた倶楽部の部員たちであった。メイロッテが卒業して数ヶ月が経つというのに心持ちは変わっていない。
「メイロッテ様…」
「おねえさま…」
少女たちが一様に項垂れるとまわりの者たちは同情心で少女たちを見た後苦々しさを混ぜて不憫な者を見るようにズバニールとパレシャへ視線が向く。
ズバニールは自分の言葉の過失に気が付き形勢を逆転すべくメイロッテの言葉に返事をせずに切り替えることにした。
「ア、アリサのことだ!」
「先程のお話ですね。アリサがどうしたのでしょうか?」
「アリサはそれはもう非道極まりないほど虐めを繰り返していた!」
「非道極まりないとまで。一体何をなさったのです?」
「おまえはアリサに公衆の面前でパレシャを罵らせた。時には『マナーがなってない』と時には『無知だ』と時には『貧乏人だ』と言わせたのだな」
ズバニールは周りがポカンとしたことに気が付かぬほど言ってやったという優越感に浸っていてメイロッテからは鼻の穴しか見えぬのではないかと思うほど顔を仰け反らしている。
それはメイロッテが卒業する半年ほど前ころからのことである。
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