【完結】お義姉様が悪役令嬢?わたくしがヒロインの親友?そんなお話は存じあげません

宇水涼麻

文字の大きさ
6 / 57

6 テッドとパレシャの出会い

しおりを挟む
 アリサが呆れた様子でパレシャにに声をかけようとするとアリサの後ろの方からすごい速さの早足で現れた男子生徒がブレザーを脱いでパレシャの背中にかけた。明るめの茶髪に黒い瞳でとても体格のいい男子生徒は頬を赤らめている。

「ご、ご令嬢! とにかく立ち上がった方がいい」

「テッド!」
「テッド様…」

 二人は同時にその男子生徒の名前を呼んだ。パレシャは明るい顔で立ち上がる。
 だがアリサもさすがに驚いた。テッド・バリヤーナ侯爵子息も驚いた。廊下にいる者全員が驚いた。

 アリサとテッドは互いに高位貴族子女であるし、すでに二年間おなじクラスでおそらく三学年も同じAクラスで学ぶことになるだろうからそれなりに親しく互いに名前で呼ぶことは許しあっている。とはいえ、マナー的常識はわきまえているため『テッド様』『アリサ嬢』と呼び合っているのだ。そしてそれは誰もが予想できる範疇である。

 つまり皆を驚かせているのはパレシャである。

『オルクス公爵令嬢様に続きバリヤーナ侯爵子息様までも名前呼びのうえ呼び捨て??!!!』

 周囲の戸惑いも気にすること無くぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びを伝えている。

「やっと会えたあ! さすがアリサ力ね。アリサがいれば攻略対象と出会えるはずって思ったの!
テッドは騎士になるって話だけどこういうところが本当にステキ!」

「え? いや? 俺はそのぉ、俺の大きな上着なら隠せるかなと……」

 テッドは再び顔を赤くする。その仕草を見て皆はギョッとする。テッドは切れ長の目のせいでキツそうな印象を与える顔を赤らめて眉を寄せ睨んでいるようにしか見えない。

『離れたところからだと女子生徒の下着が見られているようにお感じになったのね。上着をかけられる前の男爵令嬢様のお姿を思い出されたのでしょう。
スカートの長さも常軌を逸していらっしゃるもの』

 テッドの強面を見慣れているアリサは怖がることなどなくテッドに対応する。

「テッド様。女性の矜持をお守りしようとなさるお心は素晴らしいですわ」

 アリサはパレシャに近寄りテッドの上着を肩から外してそれをテッドに返した。

「当然のことをしただけです」

「そこの貴女」

 アリサは廊下の野次馬と化した者たちから一人と目を合わせた。

「貴女はユノラド男爵令嬢様と同じクラスでしたわね?」

 女子生徒が背を押されて前に一歩踏み出す。

「そぉですけど」

 関わりたくないのか泣きそうな顔をした。アリサはその顔を見て全面的に任せることを諦めた。

「わたくしも同行いたしますのでユノラド男爵令嬢様とご一緒に保健室へお付き合いくださるかしら?」

 アリサが一緒ということで安心したように首肯した。その女子生徒の後ろにいた数名に声をかけて三人が協力することになったようだ。三人でパレシャを取り囲むとアリサはくるりと保健室のある方へ向いた。

「テッド様。次の授業はわたくしはおやすみになるかもしれませんがよろしくお伝えいただけますか?」

「了解しました。事情を説明すればご理解いただけるでしょう」

 アリサはテッドにお辞儀をすると前を歩き出した。

「え? 何? テッド! 助けてよ!」

 三人に引っ捕らえられてアリサの後ろを歩いていくパレシャは必死に訴えた。

「ご令嬢。どなたかは知らないがアリサ嬢の説明では男爵家の方のようだ。これ以上俺の名を呼ぶことはゆるされない」

 テッドはパレシャの言葉を待たずに腕にブレザーをかけたまま自分の教室へ向かった。

 パレシャは保健室に監禁されそこへマナー教師が呼ばれて夕方までマナーの勉強になった。アリサとパレシャのクラスメイト三人は早々に離脱することができた。

「まずはそのスカートからどうにかなさい! まあ! 腰で折り込みわざわざ短くしていらしゃるなんて!
女性としての恥辱心は持ち合わせていらっしゃらないのかしら?!」

 マナー教師は血管が切れるのではないかと思われるほどヒステリックになっている。

「だってぇ。せっかく可愛い制服なのに着こなしがイケてないんだもん」

「行けてないとはなんですかっ? どこへいらっしゃるためのそのような不埒な装いをなさるのです?」

「ええぇ。イケてないって通じないのぉ? 他の言い方なんてわかんないよぉ」

「訳の分からないお言葉で誤魔化すのはおやめなさいっ!」

 保険師がマナー教師の背を撫でて落ち着かせようとしている間パレシャは頬を膨らませて不満をぶつぶつと零していた。 

『ここではセンスがないと思うと訳すべきよ。貴女のセンスはこの世界にはそぐわないですけどね』

 パレシャの言葉を耳にしてため息を吐いた者が保健室を離れた。
 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

【完結】婚約破棄はいいですよ?ただ…貴方達に言いたいことがある方々がおられるみたいなので、それをしっかり聞いて下さいね?

水江 蓮
ファンタジー
「ここまでの悪事を働いたアリア・ウィンター公爵令嬢との婚約を破棄し、国外追放とする!!」 ここは裁判所。 今日は沢山の傍聴人が来てくださってます。 さて、罪状について私は全く関係しておりませんが折角なのでしっかり話し合いしましょう? 私はここに裁かれる為に来た訳ではないのです。 本当に裁かれるべき人達? 試してお待ちください…。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...