【完結】お義姉様が悪役令嬢?わたくしがヒロインの親友?そんなお話は存じあげません

宇水涼麻

文字の大きさ
9 / 57

9 パレシャの生い立ち

しおりを挟む
 パーティーの席でズバニールはメイロッテにこう言った。

「おまえはアリサに公衆の面前でパレシャを罵らせた。時には『マナーがなってない』と時には『無知だ』と時には『貧乏人だ』と言わせていたな」

 アリサは名前呼びを拒否し廊下を走る危険性を説いたが『マナーがなっていない』と言ったのはマナー教師だし、ケネシスが言ったのは『勉強をやらないなら図書室を出ていけ』という一般常識でありパレシャを『無知だ』などは言っていない。極めつけは『パレシャは貧乏人』だと言っているのはズバニールである。

 そんなことを天井に置き去りにし言ってやったぞとばかりに顔を仰け反らせているズバニールにメイロッテはお姉さんらしい笑顔を向けた。

『さすがに悪役令嬢ね。このくらいではひるまないんだ。それにしてもなんで一学年上なのよ。メイロッテって馬鹿で浪人して同学年のCクラスのはずでしょう? さらに最優秀生徒ってどういうこと? メイロッテがムカつくぐらい人気すぎてそういうこと誰にも聞けなかったのよね』

 ズバニールの胸の中からわざと怯えるように水色の瞳をびくびくさせているパレシャの頭の中はメイロッテに怯えるどころか口汚く罵っていたのだった。

 〰 〰 〰

  パレシャは南部に位置するユノラド男爵家の第二子長女として生を受けた。大変可愛らしい容姿を持って生まれたので家族にも使用人にもそれはそれは猫可愛がりで育てられたのでそれはそれは傲慢なお姫様に育った。

 お姫様はいたずらも大好きで家族や使用人たちを頻繁に困らせては『仕方がないなぁ』と赦されてきたのだ。

 パレシャが十五歳の頃、ユノラド男爵一家が領地にある小さな村に視察を兼ねた旅行へ来た。その翌日に昼食を持って森へとピクニックへ出かける。父や兄が釣りをして母がそれを微笑ましく見ている間に暇を持て余したパレシャは一人で森の中へと探索に行ってしまう。もちろん護衛は後ろからついてきているが元々お姫様の意向でお姫様の遊びの邪魔だてはしてはいけないことになっているため少し離れて護衛している。

 森を少し入ったところの岩壁に横穴があることに気がついたパレシャがわくわくしながらそちらに走っていく。

「パレシャお嬢様! そこはいけません! 熊の巣穴かもしれません!」

 『そこはいけません!』までしか護衛の話を聞いていないパレシャは静止命令が出たことで傲慢姫様が発動し尚更スピードを上げた。動きやすい短めのワンピースのスカートが跳ねるほどに走っていく。護衛も必死で追うが入り口までに追いつくことができずパレシャはそのまま横穴に入ってしまった。

ドッテ!!!
「ぐえっ!!!」

『なんでこんなものが転がっているのよぉ』

 入り口から数メートルで転んだパレシャはずりずりと這いずり戻りその原因となった大きめの石を抱きしめながら意識を失った。

 気絶しているパレシャに急いで駆けつけた護衛は何度かパレシャに声をかけるもその場での回復を早々に諦めて男爵たちのところへ戻ることに決めた。その時あることに気がついた護衛はその石を一つポケットに入れパレシャを横抱きにすると走り出した。

 パレシャの様子を見た家族は急いで村まで戻り宿に医者を呼ぼうとしたが医者のいる隣の街までは馬で一時間かかる。護衛の一人が隣町へ出立してしばらくしてパレシャは目を覚まし家族は泣いて喜んでいた。
 二時間半ほどで戻ってきた護衛に連れられた医者も異常なしと診断し護衛に送られて帰っていった。

「まだ頭が痛いからもう寝るね」

 家族はうんうんと頷きパレシャは自分に充てがわれた宿の部屋へ行った。今日は一人になりたいと言ってメイドも下げさせる。

「これってこれってこれってぇぇぇぇ!!! 異世界転生じゃぁぁぁぁん!!」

 枕に顔を埋めて声が響くことがないようにしてその枕の脇を両手でバンバンと叩きながら興奮状態で叫んだ。がばりと顔をあげる。

「そ! れ! も! 大好きな『よるコン』の世界のヒロインじゃぁぁん!」

 もう一度枕に埋める。

「きゃああああああああ!!!」

 足も手もバタバタさせて喜びを表していた。しばらくその興奮を楽しんだパレシャは身を起こしてその枕をお腹に抱えてベッドに背を預けて座った。

「前世の記憶ってこんなものなのかな? 『よるコン』のこと以外はあまり思い出せないや。んー、きっと死んだんだよね。高校生だった気がするな。今の私と違和感はないから前世でもこんな性格だったんだろうな。パレシャとしての十五年は間違いなく私のものだし。困ることはなさそうね」

 ぽやぁと天井を眺めながら呟いていた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

【完結】婚約破棄はいいですよ?ただ…貴方達に言いたいことがある方々がおられるみたいなので、それをしっかり聞いて下さいね?

水江 蓮
ファンタジー
「ここまでの悪事を働いたアリア・ウィンター公爵令嬢との婚約を破棄し、国外追放とする!!」 ここは裁判所。 今日は沢山の傍聴人が来てくださってます。 さて、罪状について私は全く関係しておりませんが折角なのでしっかり話し合いしましょう? 私はここに裁かれる為に来た訳ではないのです。 本当に裁かれるべき人達? 試してお待ちください…。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...