【完結】お義姉様が悪役令嬢?わたくしがヒロインの親友?そんなお話は存じあげません

宇水涼麻

文字の大きさ
38 / 57

38 第二王子との恋

しおりを挟む
「質問を受けて差し上げろ」

 淡々とした口調のオルクス公爵に執事長は頷く。この一言でパレシャの言葉はこの席においては許されることになった。

「ユノラド男爵令嬢様。ご発言をどうぞ」

「なんでメイロッテとルナセイラが出会えたのよ!」
「パレシャ! 止めるんだ!」

 父親ユノラド男爵がパレシャの口を手で塞ぐ。

「男爵。問題ない。この席では敬称や呼び名は気にしないことにしている」

 ルナセイラ第二王子にそう言われて父親が手を下ろしたのでパレシャが父親を一睨みする。

『不敬罪になるかもしれないと心配なさったお父様が正しい判断ですのにそれも理解なさらないのね。
それにしてもズバニールが静かだわ』

 アリサがそちらを見るとズバニールは真っ青な顔で母親オルクス公爵夫人が膝の上に手を当てていた。

『お母様はズバニールを制止させているのか励ましているのかはわからないですけど、ズバニールは少しはパレシャさんの酷さを理解しはじめたみたいですわね』

「僕とメイロッテは学園で顔見知りであった。そしてメイロッテはアリサが第一王子と茶会をするために付き添いをしてきたんだ。そこで私も同席することがあって話をするようになった。アリサが第一王子の婚約者候補だったことは君も知っていると情報が入っている」

「それって私が行くはずだったやつじゃん!」

「なぜ君が付き添いとなるのだね?」

「だってそれって親友が行くやつでしょう? だからアリサにいつって聞きに行ったのに。私が知らないうちに勝手に行っていたなんて信じられない!」

「勝手にって……」

 ケネシスがギリリと奥歯を鳴らしたのでアリサはケネシスの顔を覗き込んで首を振る。ケネシスが一つ嘆息してうんうんと首肯したのを確認したアリサはパレシャに向き合う。

「全て否定したいですわ。まずユノラド男爵令嬢様とわたくしは親友どころか友達ですらありません。
貴女を同伴させることはないとはっきり申し上げたはずです」

「そんなの酷いよ! アリサは私とルナセイラが恋することに反対なの?」

「「「は?」」」
「「「え?」」」
「「な?」」
「ひゃ……」

 誰もが驚き、父親が卒倒しかけてもう一つのソファーに運ばれて行った。

 最初に我に返ったルナセイラがメイロッテの肩をそっと掴んで自分の方へ向ける。

「ないないないない。全くない! 私があの非常識女と顔合わせしたのは昨日のパーティーが初めてだ。あの状況で恋なんてないよ。
私の心はメイロッテしか入っていないから!」

 必死なルナセイラにメイロッテは思わず笑った。

「ありがとうございます。わたくしはルナセイラ様を信じておりますから大丈夫ですよ」

「それほど必死だとかえってあやしく見えてしまいますわよ、お義兄様おにいさま

 メイロッテの背中からひょっこりと顔を出したアリサがからかうように言うとルナセイラが顔を青くする。

「アリサ。人が悪いですよ。
ルナ様。大丈夫です」

 普段二人のときにしか使わない愛称を言われて涙ぐむルナセイラが頷いた。

「いちゃいちゃしてんじゃないわよ! メイロッテにチャンスがあったなら私でもいいでしょう?
わたしならルナセイラのコンプレックスもわかってあげれるんだから!」

 ルナセイラが眼を細めて横を向いた。体はメイロッテに向けたままで肩に乗せた手も片方はそのままだ。

「コンプレックスとは何のことだ?」

 王家の秘密かもしれないと思ったルナセイラが急に真面目な王族の顔になった。

「ルナセイラはなんでもできちゃうから逆に居場所がなくなってるんでしょう。だから音楽に自由を求めた。音楽を続けていいんだよ。この世界ではまだ王族が音楽家になるって変人扱いかもしれないけどルナセイラは天才だから大丈夫だよ」

 パレシャは自分を聖女に見せるかのように手を前に組んで潤んだ瞳を向ける。アリサは驚きでピクリとし、ルナセイラは仰け反った。

『変人って言ってしまっておりますがよろしいのかしら?』

「は? 音楽は嗜むがそれは貴族子女の半数はやっていることだろう。居場所とはどういうことだ? 私は次期宰相になるべく宰相補佐官長をしているが?」

「なんで? それってズバニールの仕事じゃん」

「ぶっ!」

「お父様……」

「すまん……」

 真顔で驚いてお茶を吹き出したオルクス公爵にアリサがジト目を向けた。

「お嬢さん。なぜズバニールが次期宰相だと思ったのだね?」

「だってオルクス公爵家って代々宰相なんでしょう? 優秀なズバニールが次をやるに決まっているじゃん!」

 ばったーんと大きな音がした。そこにはズバニールが椅子からよろけて白目を向いて倒れていた。
 
「坊ちゃま!!!」

 騒然となりいつの間にかオルクス公爵家の護衛がパレシャの両脇につけていてパレシャが動けないように監視しており、執事たちによって自室へ運ばれていったズバニールにオルクス公爵夫人が付き添って行った。オルクス公爵夫人の気遣いでユノラド男爵夫人も充てがわれた部屋へと下がっていった。
 パレシャは落ち着きなくキョロキョロしていたが両脇の強靭な男たちが何のためにそこに存在しているのかを理解しているようで立ち上がったりはしなかった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

【完結】婚約破棄はいいですよ?ただ…貴方達に言いたいことがある方々がおられるみたいなので、それをしっかり聞いて下さいね?

水江 蓮
ファンタジー
「ここまでの悪事を働いたアリア・ウィンター公爵令嬢との婚約を破棄し、国外追放とする!!」 ここは裁判所。 今日は沢山の傍聴人が来てくださってます。 さて、罪状について私は全く関係しておりませんが折角なのでしっかり話し合いしましょう? 私はここに裁かれる為に来た訳ではないのです。 本当に裁かれるべき人達? 試してお待ちください…。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...