【完結】転生者候爵令嬢のわたくしは王女と一緒に転落するらしいのですが全力で拒否したいと思いますわ〜公爵令息の僕の悪夢は現を拒否隣国王女編〜

宇水涼麻

文字の大きさ
6 / 32

5 外交問題?

しおりを挟む
 2時限目に入る前に教室へ戻ると、留学生と思われる二人とマーシャとクララが話をしていた。おそらく、学園長に二人のサポートを頼まれたのだろう。学園長にしてみれば、順当な采配だ。

〰️ 

 2時限目が終わり、マーシャとクララが立ち上がる。

「わたくしたちは、留学生に食堂の案内と説明のため、お二人とお食事をしてまいりますわね」

「「「「りょうかーい!」」」」

 僕はクララに小さく手を振ると、クララも微笑みとともに手を振り返してくれた。


〰️ 

 僕たち男4人は昼休みにまた生徒会室へ集まった。メイドに昼食の準備をしてもらう。
 と、そこへアレクシス兄上がやってきた。  

 兄上は、一人がけのソファー椅子に座った。長い足を組んで、両肘を肘掛けに乗せ、両手指を組んでいる。自分の兄上ながら、カッコいい。

「あ、兄上。ちょうどよかった。実は侯爵令嬢がお二人いらっしゃるんですよ」

「ああ、パティリアーナ嬢が王女殿下だ。接触はあったか?」

 メイドが紅茶を淹れ、兄上の前に置いた。兄上はお礼のつもりだろう。メイドに笑顔を向けた。普段、僕たちのような子供を相手にしているメイドは、少しだけよろけた。兄上の笑顔はヤバい。

「すまないね、少し席を外してほしい」

 メイドは小さく頷いて、フラフラしながら下がっていった。

 そして、兄上は紅茶を優雅に口へ運ぶ。僕は話を戻した。

「いえ、まだ接触していません。でも、マーシャとクララはすでにサポート役に任命されているようです」

 僕はすでにサンドイッチを口に運んでいる3人を尻目に、兄上と話をした。

「それは当然だろうな。他に適任者もいないだろう。マーシャ嬢の優秀さは、王妃教育の頃から知られている。確か、ケバム語(ケーバルュム王国の言葉)にも精通していたはずだ。留学生たちがパニックを起こしたとしても対応できるだけの力を持っている」

 さっと話されたマーシャの凄さに僕とセオドアは目を見開いた。コンラッドとウォルは頷いているので、王妃教育とは、かくあるものなのか。8歳からそんな教育をされていたなんて、僕には到底できることではない。兄の知っているマーシャの力って、確か12歳くらいまでの事のはずだ。

 ちなみに、今の僕は、もうすぐ18歳になるし、国立図書館館長を目指しているので、大陸共通語はバッチリだし、ケバム語は話すのは問題なしだ。他には隣接している北国の言葉も喋れます。クララにもらった辞書で勉強したのさぁ。エヘヘッ
 と、僕の自慢はともかく。

「というわけで、マーシャ嬢の未来の活躍は我々も期待しているところなのだ。だからこそ、パティリアーナ嬢対策はこの4人でやってもらいたい」

「「「え?」」」

 僕は朝、女性同士の難しさについて少しだけ兄上からアドバイスを受けていたので驚きはなかったが、3人は両手に食べ物を持ったまま兄上を凝視していた。

「パティリアーナ嬢の誘いを上手く躱して、何事もないかのようにしていてもらいたいのだ。はっきりと言えば、誘われたような事実はないとしてほしい。そうすれば、こちら、パールブライト王国としても、問題にしなくて済むからね」

 策士のウォルが1番しかめっ面をした。難しい課題を与えられたのだ。

「王国として、ですか?」

「そうだよ。もし、コンラッド王子殿下を惑わすだけならともかく、国王になれというような事を言っていたとなれば、外交問題になる。それは、面ど……いや、両国関係として、好ましくない」

 今、兄上の本音がチラリと出た。僕たちは兄上を目を細くして、見た。

「コッホン!とにかく、今はいい関係を築けているので、それを壊したくないのだ」

 兄上の誤魔化しを、今は認めてあげた。ウォルは兄上の話に眉をピクリとさせた。

「本当にいい関係を築けているのですか?でしたら、こちらの王位を狙うなど、考えられないでしょう?」

 ウォルの意見に兄上もコンラッドも頷いている。僕とセオドアは、今は聞くしかできない。

「そうなんだよ。だから、正直、不思議ではある。あちらから、ブランドンへの婚姻願いも来てないしな」

 兄上は、腕を前に組んで真剣に考えていた。

「兄上(ブランドン)は、話があってものらないだろう?」

 コンラッドが、アレクシス兄上に強く聞いた。コンラッドにとって、全てにおいてブランドン王子殿下は、憧れの存在なのだ。そんな存在の人が現在の婚約者を蔑ろにするなど、聞きたくないだろう。

「もちろん、そうなったら、断るさ。ブランドンも、チェリー嬢に二人以上子供を産んでもらいたいと、はっきりと言っているしな」

 アレクシス兄上は、コンラッドに敬語は使わない。年上であることが理由ではなく、政務高官として、ブランドン王子殿下の側近の仕事では、アレクシス兄上がコンラッドより上だからだ。
 
「二人以上って、問題なの?」

 僕は王族について、よく知らないので、質問した。

「それはそうだろう。王家を継ぐ者が一人では、何かあったときに困る。だから、現国王は側妃様を持たれた。これは、有名な話だ」

 コンラッドの母上は側妃様だ。でも、王妃様と側妃様はとても仲がよく、コンラッドも王妃様に可愛がられていると聞いている。
 なので、こんな話が出ても、コンラッドは平気そうだ。

「とにかく、男女間の問題は、何かと噂にもなりやすいし、禍根も残りやすい。何事もなかったことにするのが、一番いいんだ」

 僕たちはそれにはとても納得した。

「クララにも相談できないのですか?」

 女性への対策に女性の意見が聞けないのは、子供の僕たちには厳しい。
 ウォルの質問に兄上は、少し考えた。

「クララに、『マーシャ嬢には秘密だ』というのは、酷じゃないか?」

 兄上は、すでにクララのことは愛称呼びしている。命令や指示ではなく、ウォルの考えを促す余裕のある兄上。

「っ!その通りですね」

 兄上は、ウォルをすぐに論破だ。

「女性の手がほしいときはティナを使ってくれ。ティナとマーシャ嬢なら、特別に接点があるわけではないし、問題も起こりにくいだろう。とにかく、マーシャ嬢は、コンラッド殿下と婚姻の後も、国王側近の妻として外交に携わることもある。だからこのようないざこざに巻き込ませたくはない。女同士が1番怖いからな」

 僕は、冬の日のシンシア嬢とコンラッドの馬車事件の時のマーシャの視線を思い出した。セオドアと目を合わせて、二人でブルリと震えた。
 マーシャの心情を逆なでするようにコンラッドの後ろで赤らめていたシンシア嬢の顔と、その顔であらぬことまで考えたマーシャの顔。扇で隠されていたため、正面にいたコンラッドには見えなかったようだが、脇にいた僕とセオドアには、あの時のマーシャの顔は…………忘れられそうにない。
 コンラッドも少し青い顔をしていたが、こちらはマーシャの怒った顔は思い当たることが多すぎて青くもなるだろう。
 今朝の話から察すれば、コンラッドはとにかくマーシャの機微には敏感だ。

 こうして、兄上が爆弾を投下していったので、僕たちは食欲が減退し、いつもよりは、たくさん食べることができなかった。

〰️ 

 放課後、生徒会室には、僕たち男4人だった。先程の話の続きをした。

「これは、対策できそうじゃないか?」

 ウォルが指差したのは、朝の作戦会議でウォルがメモをした僕の夢でのパティリアーナ嬢の台詞だ。
 『わたくしたちの繋がりが国と国との繋がりになりますのよ』と書いてある。

「この後も、王妃になりたい台詞が多いな。つまりは、嫁に来たいってことだな。僕以外に行ってほしいけど」

 コンラッドは小さなため息をついたが、僕たちは、キランとした。

「「「それだよ!」」」

 3人の揃った声にコンラッドが仰け反った。

「ちょうどいい相手を紹介すればいいんだ。あちらは『侯爵令嬢』だと言っているんだ。何も王族に限る必要もない」

 ウォルの説明にセオドアが親指をたてて賛成の意思を表した。

「今夜、兄上に相談して、名簿を作ってもらうよ。年齢は5つほど上までだったら、いいと思うんだよね」

 僕は解決の糸口が見えて、少しだけワクワクした。

「爵位は低いし、年齢はもう少し上だが、隊長副隊長ならどうだ?」

「なるほど、それは高位貴族で相手が見つからなかったときの第二弾としてはありだな」

 ウォルはどんどんメモをしていく。

「それなら、高官の中でも優秀だと言われる者たちもいるだろう」

 コンラッドはさすがにブランドン第1王子の側近を手伝っているだけあって、高官に知り合いが多い。

「バージル、アレクシスさんにご令嬢にご紹介するお相手の爵位について、確認をしておいてくれ」

「了解っ!」

 僕は向かいに座るウォルにお茶目に敬礼した。セオドアが『下手っ!』と言って笑っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛しいあなたは竜の番

さくたろう
恋愛
 前世で無惨に処刑された記憶を持つ少女フィオナは、今世では幼い頃から番である竜族の王に保護されて塔の中で大切に育てられていた。  16歳のある日、敵国の英雄ルイが塔を襲撃しにきたが、なんとフィオナは彼に一目惚れをしてしまう。フィオナを人質にするために外へと連れ出したルイも、次第に彼女に離れがたい想いを感じ始め徐々に惹かれていく。  竜人の番として育てられた少女が、竜を憎む青年と恋に落ちる物語。 ※小説家になろう様に公開したものを一部省略して投稿する予定です。 ※全58話、一気に更新します。ご了承ください。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

華やかな異世界公爵令嬢?――と思ったら地味で前世と変わらないブラックでした。 ~忠誠より確かな契約で異世界働き方改革ですわ~』

ふわふわ
恋愛
華やかなドレス。きらびやかな舞踏会。 公爵令嬢として転生した私は、ようやく優雅な人生を手に入れた―― ……はずでしたのに。 実態は、書類の山、曖昧な命令、責任の押し付け合い。 忠誠の名のもとに搾取される領地運営。 前世のブラック企業と、何も変わりませんでしたわ。 ならば。 忠誠ではなく契約を。 曖昧な命令ではなく明文化を。 感情論ではなく、再評価条項を。 「お父様、お手伝いするにあたり契約を結びましょう」 公爵家との契約から始まった小さな改革は、やがて王家を巻き込み、地方貴族を動かし、王国全体の制度を揺るがしていく――。 透明化。共有化。成果の可視化。 忠誠より確かな契約で、異世界働き方改革ですわ。 これは、玉座を奪う物語ではありません。 国家を“回る構造”に変える、公爵令嬢の改革譚。 そして最後に選ばれるのは――契約ではなく、覚悟。 ---

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

前世の推しに似てる不仲の婚約者に「お顔が好きです」と伝えましたところ

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
公爵令嬢のエリーサベトは、ポンコツ王子と呼ばれる婚約者のベルナルドに嫌気がさし、婚約者破棄を目論んでた。 そんなある日、前世を思い出したエリーサベトは気付く。ベルナルドが前世の推しに似ていることに―― ポンコツ王子と勝気な令嬢が両思いになるまでのお話。 ※小説家になろうさまでも掲載しています。

完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く

恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。 だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。 しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。 こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは…… ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

処理中です...