【完結】転生者候爵令嬢のわたくしは王女と一緒に転落するらしいのですが全力で拒否したいと思いますわ〜公爵令息の僕の悪夢は現を拒否隣国王女編〜

宇水涼麻

文字の大きさ
7 / 32

6 印象的すぎる

しおりを挟む
 僕たちがノリノリで相談していることろへ、マーシャとクララが入ってきた。二人は留学生に園遊会の準備の様子を見せてくると言っていたから、その帰りであろう。

 セオドアとウォルが立ち上がって一人がけに座り直す。ウォルはさりげなく、メモをカバンにしまっていた。
 空いた二人がけに二人が座った。僕たちは、すでに座ることをいちいち促さなれなくとも座ることに問題のない関係になっている。

「留学生のお二人はどのような感じですか?」

 ウォルがさり気なく話題を振った。マーシャとクララが目を合わせる。………つまり、言いにくいということが、推察され、僕は心の中でため息をついた。3人を見ると3人もがっかり感が伺えた。

「みなさんに嘘をついてもしかたありませんものね。はっきり言って対照的すぎて説明が難しいんですの。どちらのお方のお話からにいたします?」

「僕たちは、二人とも知らないから、どちらでもかまわないよ」

 コンラッドはマーシャに任せるように促した。

「そうですわね。では、コレッティーヌ様ですが、とても素晴らしい方だと思われます。というのは、まだ1日目のですので、はっきりとは断定できないという意味ですわ」

 クララも頷いていた。逆に今日だけでマーシャの印象がいいなら、尚更、僕たちの印象評価は上がる。マーシャが簡単には認めないというのをわかっているからだ。
 そして、先程のマーシャの『二分すぎる』という言葉を思い出し、またしても心の中で大きくため息をつく。

「お立場もキチンと把握されており、その上で礼節も心得ておいでのようですわ。かといって、伯爵家であるクララを蔑むこともせず、笑顔を向けられておりましたわ」

 マーシャも幾分か嬉しそうだ。相手が侯爵令嬢でクララより上であることを、マーシャも気にしていたのだろう。

「それで、もうお一方は?」

 僕が促すとマーシャは眉をピクピクとさせ、クララは苦笑いで少し俯いた。二人の姿を見て、我慢のできなくなった僕たちは同時にため息を吐いてしまった。

「「「「はぁ…………」」」」

「え?ど、どうしましたの?」

 僕たちのため息を予想していなかったマーシャとクララは目を丸くしていた。

「い、いや、ほら、さっきマーシャが『対照的すぎる』っていうからさ。次は嫌な報告なんだろうなって予想したんだよ」

 コンラッドの言い訳に、僕達も肯定するため首を縦に何度も振った。

「そうでしたのね。ふぅ、予想は的中と申し上げておきますわ。とても印象的すぎる方ですわね。お言葉も時にはわたくしより上の方のように感じることもございましたし、……」
 
 『本当はマーシャより上なんだもの』とは言えない。
 マーシャが珍しく口淀んで、クララの様子を伺っていた。クララは、大丈夫よというようにマーシャに笑顔を向けた。

「一言だけでしたが、あからさまにクララの爵位を疎んじておりましたわ」

「「「「「………はぁ………」」」」」

 クララ以外の5人が、何とも言えない間の後で、ため息をつき、肩を落とした。
 実際に疎んじられたクララはそれを気にするより、みんなの嘆息が気になるのだろう。アワアワとして、みんなをなぐさめようと、それぞれに触って声をかけていた。そして、僕には困った苦笑いをしたので、僕も苦笑いで頷いた。

「それだけでは、ございませんのよ。再三に渡り、コンラッドに挨拶させろとおっしゃっておいででしたわ」

 マーシャが困り顔で、手で顎のあたりを触った。

「「「「えっ!?」」」」

 僕たちは、驚きで少し身を乗り出した。
 夢を考えると、パティリアーナ嬢は、マーシャが婚約者であることはご存知のはずだ。そのマーシャに初日から紹介をせがむとは、予想以上な方であるような気がする。

「あ、大丈夫ですわよ。コレッティーヌ様が止めてくださいましたの。
とはいえ、早々にご挨拶しておいた方がトラブルにならないかもしれませんわね」

「でも、コンラッドだけを指名って、不思議よね?『生徒会』でも『高位貴族』でもなく、コンラッドの名前だけをおっしゃっるのよ」

 クララは目をしばたかせて小首を傾げて意見した。なんて可愛いんだっ!
 僕はニヤけていたようで、左足をウォルに踏まれた。

 それから、ウォルは顎に手を当てて、しばし考え事をしていた。

「そうか!クララ、それはいい考えだ!」

 ウォルは、手を1つ叩いた。クララは何を言われたかわからず、また小首を傾げた。もう、その可愛らしい姿をウォルに向けるのは止めてほしい!

「こちらは、コンラッドを『殿下』としてではなく、私達が『生徒会』だとして挨拶しよう。普通なら、その違いに気がつくだろうし、私達が今後コンラッドのまわりにいることも言い訳になる!」

「おお、それなら、司会風に副会長としてウォルがしゃべれば、コンラッドも俺たちも、最小限の挨拶で済むな」

 セオドアは、シンシア嬢がいなくなってしまったので、生徒会役員に正式になった。

「それも、短い時間がいいだろうから、朝のうちに済ませてしまおう」

 コンラッドの意見でまとまり、翌日の朝、お二人に挨拶に行くことになった。

〰️ 

 帰りの廊下で僕はクララに声をかけ、みんなと少し離れて歩いた。

「ねぇ、クララ。もしかしたら、しばらくは別々の行動が多くなるかもしれない」

「そうですわね。わたくしも、パティリアーナ様のお考えがわかるまでは、みんなに近づけない方がいいと思いますの。特にコンラッドにご興味がありそうでしたもの」

 クララは心配そうにマーシャの背中を見ていた。クララのそんな優しさを余所に、僕は僕たちのことを考えていた。

「あの、だからね。その……月に一度、市井でデートしないかい?」

 僕は赤くなっている自覚があった。クララはクリクリの瞳をさらに大きくして僕を見たあと、赤くなって俯いた。そして、僕の袖を掴み、コクリと頷いた。

 馬車寄せまで行くと、すでにクララの馬車は到着しており、クララは1番に帰っていった。

 クララの馬車が門をくぐると、セオドアとウォルが僕の両脇で肩を組んできた。

「バージル、君は何か誤解していないか?」

 ウォルが凄んできた。

「そうだぞ。ずっと婚約者と一緒にいられる お前とコンラッドが普通じゃないんだぞ」

 セオドアが肩を組んだまま、僕のお腹に軽くパンチをした。
 僕は僕たちの状況が当たり前だとは思っていないけど、確かに少し離れることになったくらいで、デートを考えてしまうくらい、クララといられないことを寂しく思ってしまっている。
 
「私達は学年の違う婚約者なので、いつも全く会えないのですよ。同じ校舎にいるはずですのに、ねぇ」

 ウォルの声はさらに低くなる。

「少しは遠慮しろよなぁ」

 二人は僕の肩を離したと思ったら、僕の髪をグシャグシャとした。僕は逆にニヤけてしまい、二人からおふざけのパンチをもらうことになった。マーシャとコンラッドは、そんな僕達を見て笑っていた。

 とはいえ、セオドアは毎朝朝練でベラから手厚い応援をもらっているし、ウォルも春過ぎからティナと毎朝図書館デートをしているのだと、ティナから聞いている。
 二組が上手くいっているのは、シンシア嬢事件を解決したことを考えると、とても嬉しい。
 

〰️ 

 翌日の挨拶は、作戦通りだった。

 まずは並び順、お二人のお近くには、マーシャとクララ。その斜め後ろ内側に僕とウォル、そのさらに斜め後ろ内側にセオドア、そのさらに斜め後ろ内側に体半分だけのコンラッド。

 そして、口を開いたのはウォルだけ。僕たちは、ウォルの紹介でペコリと頭を下げただけだ。コンラッドのことも『殿下』をつけずに紹介した。
 パティリアーナ嬢が何か言いたそうにしたとき、先生が入室し、僕たちは慌てて席へ戻る演技をした。あくまでも演技だ。この先生はのんびりとした方で、その程度では叱ったりしないことは、この2年でよぉくわかっている。

 コレッティーヌ嬢は、僕たちの気持ちを知ってか知らずか、クスクスと笑っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛しいあなたは竜の番

さくたろう
恋愛
 前世で無惨に処刑された記憶を持つ少女フィオナは、今世では幼い頃から番である竜族の王に保護されて塔の中で大切に育てられていた。  16歳のある日、敵国の英雄ルイが塔を襲撃しにきたが、なんとフィオナは彼に一目惚れをしてしまう。フィオナを人質にするために外へと連れ出したルイも、次第に彼女に離れがたい想いを感じ始め徐々に惹かれていく。  竜人の番として育てられた少女が、竜を憎む青年と恋に落ちる物語。 ※小説家になろう様に公開したものを一部省略して投稿する予定です。 ※全58話、一気に更新します。ご了承ください。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

華やかな異世界公爵令嬢?――と思ったら地味で前世と変わらないブラックでした。 ~忠誠より確かな契約で異世界働き方改革ですわ~』

ふわふわ
恋愛
華やかなドレス。きらびやかな舞踏会。 公爵令嬢として転生した私は、ようやく優雅な人生を手に入れた―― ……はずでしたのに。 実態は、書類の山、曖昧な命令、責任の押し付け合い。 忠誠の名のもとに搾取される領地運営。 前世のブラック企業と、何も変わりませんでしたわ。 ならば。 忠誠ではなく契約を。 曖昧な命令ではなく明文化を。 感情論ではなく、再評価条項を。 「お父様、お手伝いするにあたり契約を結びましょう」 公爵家との契約から始まった小さな改革は、やがて王家を巻き込み、地方貴族を動かし、王国全体の制度を揺るがしていく――。 透明化。共有化。成果の可視化。 忠誠より確かな契約で、異世界働き方改革ですわ。 これは、玉座を奪う物語ではありません。 国家を“回る構造”に変える、公爵令嬢の改革譚。 そして最後に選ばれるのは――契約ではなく、覚悟。 ---

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

前世の推しに似てる不仲の婚約者に「お顔が好きです」と伝えましたところ

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
公爵令嬢のエリーサベトは、ポンコツ王子と呼ばれる婚約者のベルナルドに嫌気がさし、婚約者破棄を目論んでた。 そんなある日、前世を思い出したエリーサベトは気付く。ベルナルドが前世の推しに似ていることに―― ポンコツ王子と勝気な令嬢が両思いになるまでのお話。 ※小説家になろうさまでも掲載しています。

完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く

恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。 だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。 しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。 こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは…… ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

処理中です...