【完結】転生者候爵令嬢のわたくしは王女と一緒に転落するらしいのですが全力で拒否したいと思いますわ〜公爵令息の僕の悪夢は現を拒否隣国王女編〜

宇水涼麻

文字の大きさ
8 / 32

7 お気に入りの場所

しおりを挟む
『本当にステキな場所ですのね』『こちらはわたくしとだけの場所にしてくださいませね』

 目眩とともに起きた僕は、ダルさが抜けないまま顔を洗いに向かった。僕は支度をしながら考えていた。

 あの場所は最近はマーシャと使っていると聞いている。

「そろそろ寒くなるし、二人には違う場所を見つけてもらおう、ふぅ」

 ため息が出てしまうのは、許してほしい。

〰️ 〰️ 〰️

 支度が終わり、食堂室へ向かう。途中で執事が待っていた。アレクシス兄上に頼んでいたものを受け取った。

 そこには10名ほどの紳士の名前が書いてあった。そして、一番下には

『隣国から娶っても問題のない者を選んでおいた』

 アレクシス兄上の言葉が添えてあった。つまり、本来はもっとたくさんいるということだろう。僕のまわりはみんな婚約者がいるので、少し驚いた。

 それをカバンにしまい、カバンは執事に預けた。

〰️ 

「おはようございます」

 食堂室には、母上とティナがいたので、挨拶をした。

「バージル兄様、お具合でも悪いの?」

 ティナが心配そうに声をかけてきた。ティナには、まだ今回のことを相談していない。兄上も父上も、女手が必要ならティナを使えといいながら、ティナに話した形跡はない。先日、母上はご存知だということは確認済みだ。

「なんでもないよ。元気元気。それより、今日は図書館に急がなくていいのかい?」

 僕のからかいに、ティナが素直に反応した。

「なっ!お兄様!余計なことはおっしゃらないでくださいませ」

 ティナは、真っ赤になった。

「あら?毎朝早く行くには理由があったのね。ふふふ」

 母上が嬉しそうに笑う。ティナは、僕を睨んできたが、妹が顔を赤くして睨むなど可愛らしい以外に何と思うのか。

「ウォルは、しばらくは、教授のお手伝いですわっ!」

「そうなのか。まあ、最近はランチも一緒にしているから、それでいいんだろう?」

 僕はニヤニヤして、からかった。パティリアーナ嬢に紹介を受けてから、僕とコンラッドは、生徒会室でランチをしている。パティリアーナ嬢は、マーシャ、クララ、コレッティーヌ嬢とランチをしているのだが、セオドアとウォルは、監視ということで食堂室でとることになった。

「二人で食べるより自然に見せられる」

 ウォルの意見で、ウォルとティナとセオドアとベラの4人でランチを楽しんでいるのだ。僕たちは『監視』は言い訳で、『逢瀬』を楽しんでいるのだと思っている。ちょっと羨ましい。

「まあまあ!ウォル君と仲良く楽しんでいるのね。いいことだわ」

 母上の笑顔に、ティナはさらに赤くなった。

「バージル兄様!」

 ティナは口を尖らせて拗ねていたが、僕と母上は、笑いが止まらなかった。

「もうっ!」

 ティナが拗ねれば拗ねるほど、食堂室には笑いが溢れた。

〰️ 

 ティナとともに馬車で学園へ向かう。到着した際に、ティナに話しかけた。

「ウォルもセオドアも今日は生徒会室でランチをとることになりそうだ。すまないが、ベラにも伝えておいてくれ」

 僕の笑顔のお願いに、ティナは快く頷いた。ベラは、セオドアの婚約者で、ティナとは同級生でクラスメイトだ。

〰️ 〰️ 〰️

 昼休み、生徒会室で早々にランチを終わらせて、話し合いを始めた。

「結構なメンバーだな」 

 紳士名簿を見て、コンラッドも感心していた。

「このメンバーなら、隣国の王家に紹介しても恥ずかしくないですね。さすが、アレクシスさんですね」

 ウォルはコンラッドから、名簿を受け取り、隅々まで見ていた。セオドアはそれを脇から覗く。

「うわぁ、このメンバーでは、騎士団連中では太刀打ちできないな。違う回にしてやってくれよ」

 セオドアは騎士たちの未婚については、かなり本気で考えているようだ。

「そうですね。人数とかどうしましょうか?」

 ウォルの問に僕たちは顔を合わせるしかできなかった。
 しばらくして、コンラッドが口を開く。

「僕たちでは、女性の気持ちはわからないなぁ」ガクッ

「そうだよね。まず、パティリアーナ嬢の積極性もわからないし」

「コンラッドに挨拶させろって、マーシャに言ったんだろう?積極的に決まってるだろう?」

 セオドアの意見になんとなくみんなも頷いた。だが、だからどうしたらいいかわからない。

「女性としての意見はやはりほしいところですね」

 ウォルはそう言いながらも眉を寄せた。ウォルは宰相を目指している。ということは、ティナは宰相夫人になるわけだ。宰相夫人なら外交をすることもあるだろう。なら、隣国王女と難しい関係には、できればならせたくない。

 と、僕は閃いた!

「僕の母上に相談してみたらどうだい?母上なら、今回のこともご存知だ」

「おっ!そういえば、ベラがティナと演劇を見に行くと言っていたな」

 セオドアの言うそれは、僕もウォルも聞いていた。ティナたちが出かける日に合わせて、母上に相談することになった。

「あ、そうだ。コンラッド、お昼のあの場所にはもう行かないでね。念の為」

 僕は今日からコンラッドの代わりにそこへ行くつもりだ。

「えぇ!マーシャとの大事な時間なのになぁ」

 コンラッドは、首をガクッとさせた。それを見たセオドアとウォルが眉を寄せた。そして、低く恐ろしさを感じさせる声でコンラッドに語りかけた。

「コンラッド、ずっと一緒にいられるのは君たちだけだって、説明しましたよね?」

「そうだぞ、コンラッドみたいに婚約者をニタニタしながらずっと見つめてるヤツなんて早々いないぞ」

 セオドアの言葉にコンラッドは顔を上げた。

「俺、コンラッドの後ろの席だろう。毎日、コンラッドの視線に呆れてるんだよなぁ」

 セオドアの細めた目にコンラッドは狼狽えた。

「ですね。僕もマーシャの後ろの席なので、コンラッドの視線には気がついていましたよ」

 ウォルの追い打ちに、コンラッドは仰け反った。

「「昼休みくらい我慢しろよな(してくださいね)」」

 コンラッドは再び首をガクッとさせた。

 セオドアに学生食堂へ行ってもらい、マーシャにも、今後はあの場所には近づかないようにと伝えてもらうことになった。

〰️ 

 僕は大きく息を吸って、覚悟を決めて、その場所へと向った。まだ誰の姿もなかった。

 僕は噴水脇のベンチへと腰を下ろし、少し俯きかげんで、肘を膝に置いていた。僕とコンラッドは従兄弟同士なので、遠目であるとか、見慣れていないとかであれば、結構似ているのだ。

 コンラッドとマーシャは、シンシア嬢の事件が解決してから、よくここで逢瀬をしているようだ。昼休みが2時間あるので、食事の後、どちらが誘うでもなく、ここに来るという。どちらかに用事ができて会えないことももちろんあるが、それはお互い様なので、気にしないらしい。それほど、仲睦まじいのだろう。

 しばらく待っていれば、後ろから声がした。

「あっ………」

 やっぱり来たか……。僕はため息交じりに立ち上がって振り向いた。

 と、そこにいたのは、コレッティーヌ嬢だった。お互いに唖然として、声にならない。しかし、コレッティーヌ嬢は、ハッと我に返り、僕の腕を引っ張った。

「とにかく、こちらにっ!」

 コレッティーヌ嬢に引っ張っり連れて来られたのは、木の茂みの奥で、誰からも見えなそうな場所だった。僕は狼狽えた。

「え?あ、あの……」

「シッ!」

 コレッティーヌ嬢は、僕を全く見ずに、人差し指を口に当て、僕に静かにしろと命令した。僕は訳がわからなかったので、素直にそれに従った。

 コレッティーヌ嬢の目線の先は、先程まで僕がいたベンチだった。そこへ、女子生徒がやってきた。パティリアーナ嬢だった。

「わたくしが先に対応いたしますわ。ボブバージル様は、あちらの方に回り込み、わたくしとは違う方向から現れてくださいませね」

 コレッティーヌ嬢は僕の返事を待たずに、そのベンチへと向かって行った。

〰️ 


 わたくしが、噴水前のベンチへと参りますと、そこにいらっしゃったのは、コンラッド王子殿下ではなく、ボブバージル様でした。ボブバージル様と二人でポカンとしてしまいましたが、わたくしには、パティリアーナ様に注意するというお仕事がございますの。

 いくらも、待たずに、パティリアーナ様がいらっしゃいました。わたくしは、わたくしだけで問題の解決ができれば行幸だと考え、ボブバージル様には、後から登場していただくようにお願いしました。

 ボブバージル様と打ち合わせもなく、パティリアーナ様と対峙することにいたしました。

 ベンチの近くまできたパティリアーナ様はキョロキョロとしていらっしゃいました。わたくしは木の陰から出て、パティリアーナ様へ笑顔を向けました。

「パティリアーナ様、このようなところで何をなさっているのですか?」

 パティリアーナ様は、わたくしを見ると親の仇にでもあったようなお顔をなさいます。わたくしは貴女様のご両親のお味方ですわよ。
 わたくしは淑女としての笑みを消さずに話しかけます。

「あ、あなたには関係のないことですっ!」

 パティリアーナ様は声を荒げます。

「パティリアーナ様、校舎へ戻りましょう」

「わ、わたくしは、ここで人に会うのです!」

 あー、やはりそのつもりでしたのね。パティリアーナ様はわたくしの目をご覧になりません。やましい気持ちがある証拠。『目は口ほどにおしゃべりさん』ですわね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛しいあなたは竜の番

さくたろう
恋愛
 前世で無惨に処刑された記憶を持つ少女フィオナは、今世では幼い頃から番である竜族の王に保護されて塔の中で大切に育てられていた。  16歳のある日、敵国の英雄ルイが塔を襲撃しにきたが、なんとフィオナは彼に一目惚れをしてしまう。フィオナを人質にするために外へと連れ出したルイも、次第に彼女に離れがたい想いを感じ始め徐々に惹かれていく。  竜人の番として育てられた少女が、竜を憎む青年と恋に落ちる物語。 ※小説家になろう様に公開したものを一部省略して投稿する予定です。 ※全58話、一気に更新します。ご了承ください。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

華やかな異世界公爵令嬢?――と思ったら地味で前世と変わらないブラックでした。 ~忠誠より確かな契約で異世界働き方改革ですわ~』

ふわふわ
恋愛
華やかなドレス。きらびやかな舞踏会。 公爵令嬢として転生した私は、ようやく優雅な人生を手に入れた―― ……はずでしたのに。 実態は、書類の山、曖昧な命令、責任の押し付け合い。 忠誠の名のもとに搾取される領地運営。 前世のブラック企業と、何も変わりませんでしたわ。 ならば。 忠誠ではなく契約を。 曖昧な命令ではなく明文化を。 感情論ではなく、再評価条項を。 「お父様、お手伝いするにあたり契約を結びましょう」 公爵家との契約から始まった小さな改革は、やがて王家を巻き込み、地方貴族を動かし、王国全体の制度を揺るがしていく――。 透明化。共有化。成果の可視化。 忠誠より確かな契約で、異世界働き方改革ですわ。 これは、玉座を奪う物語ではありません。 国家を“回る構造”に変える、公爵令嬢の改革譚。 そして最後に選ばれるのは――契約ではなく、覚悟。 ---

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

前世の推しに似てる不仲の婚約者に「お顔が好きです」と伝えましたところ

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
公爵令嬢のエリーサベトは、ポンコツ王子と呼ばれる婚約者のベルナルドに嫌気がさし、婚約者破棄を目論んでた。 そんなある日、前世を思い出したエリーサベトは気付く。ベルナルドが前世の推しに似ていることに―― ポンコツ王子と勝気な令嬢が両思いになるまでのお話。 ※小説家になろうさまでも掲載しています。

完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く

恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。 だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。 しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。 こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは…… ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

処理中です...