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理由5 王家だから
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三人の男たちは所在なげにしている。この三組は『卒業後は婚姻』という進路が決まっていた。
なんとも言えない空気の食堂に明るい声が響く。
「ああ、面白いところ、終わっちゃったみたいだねぇ」
よく響く美声で学園の食堂へ入ってきた人物を目にすると、女子生徒からの黄色い声があちらこちらからした。
「あ、兄上……」
マテルジと同じ金髪碧眼であるが、マテルジより、精悍で大人な雰囲気の第1王子アドム・バフベニール王太子だ。去年、御子が産まれたが、それでも人気は落ちない。こうして女性からの声に笑顔で答える。
「おめでとう! 君たち三組の婚約破棄が決まったよ。責任はすべて男どもにあると、国王陛下がご判断なされた」
「「「ありがとうございます!」」」
ご令嬢三人はここでも息ぴったりだ。そして、手を取り合って喜んだ。野次馬たちも拍手して、祝いの言葉を投げている。
「慰謝料も国王陛下から指示があった。公開浮気に公開冤罪だからねぇ。相当額になるよ」
確かに男たち三人がスザンヌと肩を組んだりキスをしたりしているところは皆に見られているし、例えセンスのないものであってもスザンヌにプレゼントをしていることは知られてしまったし、冤罪事件は皆が男たち三人の厚顔無恥に驚いていたことだった。
多額の慰謝料が発生したと伝えることでご令嬢たちには疵瑕はないと宣言されたと同義だ。
「ブフッ! それにお前たちのセンスの悪さもすべて報告されているしな」
アドムが笑ったことで野次馬たちも再び笑いが耐えられなかった。三人の顔は真っ赤になる。
「あー、すまんすまん。話を戻す」
アドムは腹を抑えている。
「バカどもの責任の取り方は、各家に任せることになったから」
アドムはマテルジを見てニヤリとした。笑顔が怖い。マテルジは顔を赤から青に変えた。
「というわけで、王家のことは王家が決める。マテルジ。父上がお前の処遇をお決めになられたよ」
『王家として王家の者へ』の判断なので、アドムは敢えて『父上』と言っている。そして、国王陛下は『国王陛下』の時より、『父上』の時の方が子供たちに厳しい。
それをよく知るマテルジは肩を震わせた。
「お前は隣国の女王様への輿入れすることに決定した。結婚! おめでとう!」
アドム王太子はマテルジに大きな拍手を送った。野次馬たちも詳しい意味は理解していないがマテルジの結婚が決まったらしいので、慌ててアドムに合わせて拍手する。
王家に携わりある程度詳しいべレナだけはマテルジに悲哀の表情だ。
「え? 待って! 待ってくださいっ!」
アドムは首を傾げて拍手を止めた。皆も倣う。
「それはっ! それはっ! まさかおばさん女王のことですかっ?!」
「隣国の女王陛下に失礼だぞぉ」
アドムは唇を尖らせる。まるで子供に叱っているようで本気には見えない。
政治に詳しい者たちは隣国の女王陛下が五十歳を越えていることは知っているようで食堂内で情報がまわっていき、野次馬たちは驚きの顔になっていく。
「だって! ナハトが行くことになっているのではないのですかっ?!」
『ナハト王子』は第二王子である。だが、ナハトは側妃の息子で、アドムとマテルジは王妃陛下の息子だ。
なので、マテルジは第三王子なのだが、ナハトの立場は王子三人の中で一番弱いということになっている。
「それは、国を慮ったナハトが率先して手を挙げたにすぎない。父上も父親としても国王陛下としても、大変悩んでおられたんだ」
実際に、隣国と親睦を深めることは『女王へ輿入れせず』ともできないものかと探っているところであった。
「ナハトはとても優秀であるのに努力を惜しまぬし、今や国政の中枢にもなりつつあるからね」
アドムは目を細めてマテルジを蔑む。
なんとも言えない空気の食堂に明るい声が響く。
「ああ、面白いところ、終わっちゃったみたいだねぇ」
よく響く美声で学園の食堂へ入ってきた人物を目にすると、女子生徒からの黄色い声があちらこちらからした。
「あ、兄上……」
マテルジと同じ金髪碧眼であるが、マテルジより、精悍で大人な雰囲気の第1王子アドム・バフベニール王太子だ。去年、御子が産まれたが、それでも人気は落ちない。こうして女性からの声に笑顔で答える。
「おめでとう! 君たち三組の婚約破棄が決まったよ。責任はすべて男どもにあると、国王陛下がご判断なされた」
「「「ありがとうございます!」」」
ご令嬢三人はここでも息ぴったりだ。そして、手を取り合って喜んだ。野次馬たちも拍手して、祝いの言葉を投げている。
「慰謝料も国王陛下から指示があった。公開浮気に公開冤罪だからねぇ。相当額になるよ」
確かに男たち三人がスザンヌと肩を組んだりキスをしたりしているところは皆に見られているし、例えセンスのないものであってもスザンヌにプレゼントをしていることは知られてしまったし、冤罪事件は皆が男たち三人の厚顔無恥に驚いていたことだった。
多額の慰謝料が発生したと伝えることでご令嬢たちには疵瑕はないと宣言されたと同義だ。
「ブフッ! それにお前たちのセンスの悪さもすべて報告されているしな」
アドムが笑ったことで野次馬たちも再び笑いが耐えられなかった。三人の顔は真っ赤になる。
「あー、すまんすまん。話を戻す」
アドムは腹を抑えている。
「バカどもの責任の取り方は、各家に任せることになったから」
アドムはマテルジを見てニヤリとした。笑顔が怖い。マテルジは顔を赤から青に変えた。
「というわけで、王家のことは王家が決める。マテルジ。父上がお前の処遇をお決めになられたよ」
『王家として王家の者へ』の判断なので、アドムは敢えて『父上』と言っている。そして、国王陛下は『国王陛下』の時より、『父上』の時の方が子供たちに厳しい。
それをよく知るマテルジは肩を震わせた。
「お前は隣国の女王様への輿入れすることに決定した。結婚! おめでとう!」
アドム王太子はマテルジに大きな拍手を送った。野次馬たちも詳しい意味は理解していないがマテルジの結婚が決まったらしいので、慌ててアドムに合わせて拍手する。
王家に携わりある程度詳しいべレナだけはマテルジに悲哀の表情だ。
「え? 待って! 待ってくださいっ!」
アドムは首を傾げて拍手を止めた。皆も倣う。
「それはっ! それはっ! まさかおばさん女王のことですかっ?!」
「隣国の女王陛下に失礼だぞぉ」
アドムは唇を尖らせる。まるで子供に叱っているようで本気には見えない。
政治に詳しい者たちは隣国の女王陛下が五十歳を越えていることは知っているようで食堂内で情報がまわっていき、野次馬たちは驚きの顔になっていく。
「だって! ナハトが行くことになっているのではないのですかっ?!」
『ナハト王子』は第二王子である。だが、ナハトは側妃の息子で、アドムとマテルジは王妃陛下の息子だ。
なので、マテルジは第三王子なのだが、ナハトの立場は王子三人の中で一番弱いということになっている。
「それは、国を慮ったナハトが率先して手を挙げたにすぎない。父上も父親としても国王陛下としても、大変悩んでおられたんだ」
実際に、隣国と親睦を深めることは『女王へ輿入れせず』ともできないものかと探っているところであった。
「ナハトはとても優秀であるのに努力を惜しまぬし、今や国政の中枢にもなりつつあるからね」
アドムは目を細めてマテルジを蔑む。
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