【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻

文字の大きさ
13 / 18

13

 王家は資産はあっても自由にできる私財は思いの外少ないのである。つまり使えるのはほぼ貯蓄金だけだ。
 両陛下も王子達もこれまで金の亡者でもなかったし贅沢も好んでいなかったので、私財の貯蓄より国へ還元をしてきたことがまさかの仇となった。
 だが、それを愚痴るような王家ではない。ため息を吐きたくなるのは赦してやってほしい。

「さらに、奴ら三家――令息たちの家――は恐らく領地を手放すことになろう。パワーバランスを考えれば王家も購入せねばなるまい。現金で、な」

 資産は増えどもそれが現金になり元に戻るのはいつになるかわからない。誰ともなく何度もため息が漏れる。

「陛下が仰る『慎ましやかな生活』が解消されるまで、陛下の引退は認めませんからね」

 第一王子は全てを受け入れ国王陛下に軽口を叩いた。

「ワシに働いて返せと申すのか? 人使いの荒い息子だ」

 国王陛下もやれやれとパフォーマンスをする。

「陛下は剣もお強いのです。国王を退かれて騎士団へ属されることも一興ですよ」

 ニヤニヤとする第一王子に国王陛下がやれやれの手付きのまま固まり嫌そうな顔を向けたが、すぐに腕を胸の前で組み胸を張る。

「ふんっ! まだまだ国王として働けるわいっ! それも親の責任ならば取らねばならぬだろうな」

「よろしくお願いします」
「チッ!」

 第一王子がニヤリと笑うと国王陛下が舌打ちした。

「後継者は妻が優秀な場合でもよいとしておりますから、彼女たち――婚約破棄になった令嬢三人――は引く手数多でしょうね」

 宰相は令嬢四人を思い浮かべた。

「そうだな。ロンゼ公爵令嬢は後継者として間違いないのだから、彼女もまた釣書が殺到するであろう。
令嬢たちが不幸になることがなさそうだというのが、唯一の救いだな」

 国王陛下と第一王子は「ふぅ」と息を吐き出して胸を撫で下ろした。宰相も小さく頷いて微笑した。

「父上」

「ん?」

 第一王子が国王陛下を『父』と呼ぶのは数年ぶりだ。顔には出さないが国王陛下は腹の下に力を入れた。

「あれにとっては廃籍はよかったと思いますよ」

「なぜだ?」

「幼き頃よりあれはいつも眉間にシワを寄せておりました。まわりの評価が耳に入ったのでしょう。我ら兄弟がどんなに気にするなと言っても、いや、気にするなと言うほど頑なになりました」

「……そうか」

「ロンゼ公爵令嬢との婚約がなり王家から離れると決まった時はしばらくの間は穏やかであったのですが、ロンゼ公爵令嬢が大変優秀であるとの噂を耳にしていくと、再び顔を強張らせるようになっておりました」

「それは気が付かなかったな」

「ええ。メイドたちに諭され、父上母上の前では懸命に取り繕っておりましたから」

「何を諭されておったのだ?」

「父上母上は陛下であるということです」

「正論であり矛盾論であり不可避論か」

「我ら兄弟にも鍛錬場でしかそのような姿を見せませんでした。まるですべてを壊したいと望んでいるかのようでした。
あれはここ――王城や王宮――ではいつでも必死で辛かったのではないかと思います」

「だが、それを理由として赦すわけにはいかぬ」

「はい。ですから廃籍でよかったと」

 国王陛下は目を伏せた。第一王子と宰相はお茶を手にして、国王陛下の一筋の涙を見なかったことにした。
感想 14

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

「その薬草は毒かもしれぬ」と追放された令嬢薬師——領地に疫病が広がったとき、彼女の薬草園はもう枯れていた

歩人
ファンタジー
侯爵令嬢リリアーナは、母から受け継いだ薬草園「星霜の庭」を守り、領民の病を癒す薬師。 だがある日、新任侍医マティアスが讒言した。 「あの令嬢の薬草は怪しい。毒が混じっているかもしれない」 父も婚約者クラウスも、それを信じた。 追放されたリリアーナが辿り着いたのは、辺境の村ノルトハイム。 老薬草師ヘルダに導かれ、荒れ地に新たな薬草園を拓く。 飄々とした若き領主ルシアンの体には、母から受け継いだ「銀花毒」が二十三年間潜んでいた。 誰にも治せなかったその毒を、リリアーナは治すと決める。 一方、薬師を失った星霜の庭は枯れ果て、疫病が元の領地を襲う。 マティアスの教科書通りの処方は何一つ効かない。 「戻ってこい」——使者が届けた手紙に、リリアーナは静かに答えた。 「わたくしの薬草は、毒でしたか?」

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。 しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。 「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」 身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。 堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。 数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。 妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。

断罪予定の悪役令嬢ですが、王都でカフェを開いたら婚約者の王太子が常連になりました

由香
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生していることに気付く。 このままでは一年後の夜会で婚約破棄され、断罪された上で国外追放されてしまう運命だ。 「――だったら、その前に稼げばいいわ!」 前世の記憶を頼りに、王都の裏通りで小さなカフェを開くことにしたエリザベート。 コーヒーやケーキは評判となり、店は少しずつ人気店へと成長していく。 そんなある日、店に一人の青年が現れる。 落ち着いた雰囲気のその客は、毎日のように通う常連になった。 しかし彼の正体は――なんと婚約者である王太子レオンハルトだった!? 破滅回避のために始めたカフェ経営が、やがて運命を変えていく。 これは、悪役令嬢が小さなカフェから幸せを掴む ほのぼのカフェ経営×溺愛ロマンスストーリー。

悪役令嬢は断罪の舞台で笑う

由香
恋愛
婚約破棄の夜、「悪女」と断罪された侯爵令嬢セレーナ。 しかし涙を流す代わりに、彼女は微笑んだ――「舞台は整いましたわ」と。 聖女と呼ばれる平民の少女ミリア。 だがその奇跡は偽りに満ち、王国全体が虚構に踊らされていた。 追放されたセレーナは、裏社会を動かす商会と密偵網を解放。 冷徹な頭脳で王国を裏から掌握し、真実の舞台へと誘う。 そして戴冠式の夜、黒衣の令嬢が玉座の前に現れる――。 暴かれる真実。崩壊する虚構。 “悪女”の微笑が、すべての終幕を告げる。

【完結】私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜

恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」 不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。 結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、 「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。 元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。 独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場! 無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。 記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける! ※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。  苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる  物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!