5 / 26
5
しおりを挟む
アロンドは頭を下げて話の主軸をケイトリアへ譲った。
「エトリア様は先程ご自身の血の価値だと仰っておいででしたが、決してそれだけではありませんわ。
エトリア様は大変麗しく、聡明で、お優しく、教養もあり、わたくしたちはエトリア様とご一緒させていただけることに喜びを感じておりますわ」
メリアンナとヘレナも大きく頷く。
「ですから、エトリア様の魅力で釣書が集まっているのだと思います。だからこそ、ご婚約者様がお決まりになっても諦められない殿方が多いのだと思いますわ」
「私もそう考えておりますよ」
メリアンナとヘレナだけでなく、アロンドまでケイトリアに賛同する。
「まあ!」
ケイトリアたちに褒められたエトリアは頬を染めた。
「本当にそうなら、わたくしでも幸せな夫婦となれるかしら」
「「「もちろんですっ!」」」
ケイトリアたちの勢いにエトリアは目をしばたかせ、すぐに四人で笑いあった。
アロンドはエトリアを優しい瞳で見つめた後、セイバーナに向き直す。
「エトリア王女殿下とヨネタス殿がお気持ちで繋がっていれば、釣書の方々も諦めたでしょう。
または、ヨネタス殿が仰ったようにエトリア王女殿下がヨネタス殿に執着していれば、諦めたでしょうね。
お気持ちを揺らすことは難しいですから。
しかし、お二人は政略結婚のためのご婚約以上にはなっておられない。だから釣書が止まらないのです」
「そうなのね。わたくしはそこまでは気が付かなかったわ」
エトリアが自嘲して苦笑する。
「恋愛感情がなくとも、ヨネタス殿が政略として、そして王女殿下の伴侶として、価値があると示さねば、国が、公爵家が、侮られることになるのです」
「ヨネタス卿。わたくしが貴方に全く執着していないことは理解なさったかしら?」
「はい……」
セイバーナは小さな小さな声で返事をした。
「さあ。一つ目の願いは叶えました。二つ目は何かしら?」
エトリアは先程より和らいだ瞳をセイバーナに向けた。セイバーナの脳内はパニックを起こしており、すでに嘘も誤魔化しもできなくなっている。
「あ……の……我々の総意の願いでして……」
セイバーナは震えた声で話し始めた。
「「「お、おいっ!」」」
一緒に来ていた男子生徒三人は慌ててセイバーナの肩を掴んだ。セイバーナは虚ろに彼らを見る。
「集団でこちらに押しかけておいてヨネタス公爵令息様だけの責任になさるおつもりでしたの?」
ケイトリアは眉を上げてびっくり眼になった。もちろん、演技で。
「「「プッ!!!」」」
野次馬たちから失笑が漏れる。セイバーナに声を上げた三人は失笑した者を見咎めようとしたが、人数の多さに気後れした。
メリアンナは妖艶に微笑みケイトリアの疑問に答えた。
「まさか。高位貴族令息であるこの方々がそんな卑劣なことをなさるわけないではありませんか。
成績で負けたことを大声で罵り不正であると訴えるようなことしかできませんわ」
テリワドは自分のことを言われているとわかっているので歯を食いしばって元婚約者メリアンナを睨む。
テリワドは一学年時は万年二位であったが、二学年になってメリアンナに抜かれた。最近ではさらに成績を落としている。
二学年になる頃落ちたのは理由がある。
ちなみに首位はいつもエトリアである。セイバーナは三位か四位。
「うふふ。剣で負けた相手に無理矢理再戦するように仕向け、忖度をさせて勝ちを拾うこともできますわよ」
レボールの元婚約者ヘレナは本当に楽しそうにレボールを小馬鹿にした。レボールは驚きで眉を寄せる。その男子生徒と二人だけの秘密のはずだ。
レボールもまた一年生の頃は正々堂々として勝っても負けてもそれを受け止めていた。だが、これまた二年生になる頃、不正をしても勝ちにこだわるようになった。
「エトリア様は先程ご自身の血の価値だと仰っておいででしたが、決してそれだけではありませんわ。
エトリア様は大変麗しく、聡明で、お優しく、教養もあり、わたくしたちはエトリア様とご一緒させていただけることに喜びを感じておりますわ」
メリアンナとヘレナも大きく頷く。
「ですから、エトリア様の魅力で釣書が集まっているのだと思います。だからこそ、ご婚約者様がお決まりになっても諦められない殿方が多いのだと思いますわ」
「私もそう考えておりますよ」
メリアンナとヘレナだけでなく、アロンドまでケイトリアに賛同する。
「まあ!」
ケイトリアたちに褒められたエトリアは頬を染めた。
「本当にそうなら、わたくしでも幸せな夫婦となれるかしら」
「「「もちろんですっ!」」」
ケイトリアたちの勢いにエトリアは目をしばたかせ、すぐに四人で笑いあった。
アロンドはエトリアを優しい瞳で見つめた後、セイバーナに向き直す。
「エトリア王女殿下とヨネタス殿がお気持ちで繋がっていれば、釣書の方々も諦めたでしょう。
または、ヨネタス殿が仰ったようにエトリア王女殿下がヨネタス殿に執着していれば、諦めたでしょうね。
お気持ちを揺らすことは難しいですから。
しかし、お二人は政略結婚のためのご婚約以上にはなっておられない。だから釣書が止まらないのです」
「そうなのね。わたくしはそこまでは気が付かなかったわ」
エトリアが自嘲して苦笑する。
「恋愛感情がなくとも、ヨネタス殿が政略として、そして王女殿下の伴侶として、価値があると示さねば、国が、公爵家が、侮られることになるのです」
「ヨネタス卿。わたくしが貴方に全く執着していないことは理解なさったかしら?」
「はい……」
セイバーナは小さな小さな声で返事をした。
「さあ。一つ目の願いは叶えました。二つ目は何かしら?」
エトリアは先程より和らいだ瞳をセイバーナに向けた。セイバーナの脳内はパニックを起こしており、すでに嘘も誤魔化しもできなくなっている。
「あ……の……我々の総意の願いでして……」
セイバーナは震えた声で話し始めた。
「「「お、おいっ!」」」
一緒に来ていた男子生徒三人は慌ててセイバーナの肩を掴んだ。セイバーナは虚ろに彼らを見る。
「集団でこちらに押しかけておいてヨネタス公爵令息様だけの責任になさるおつもりでしたの?」
ケイトリアは眉を上げてびっくり眼になった。もちろん、演技で。
「「「プッ!!!」」」
野次馬たちから失笑が漏れる。セイバーナに声を上げた三人は失笑した者を見咎めようとしたが、人数の多さに気後れした。
メリアンナは妖艶に微笑みケイトリアの疑問に答えた。
「まさか。高位貴族令息であるこの方々がそんな卑劣なことをなさるわけないではありませんか。
成績で負けたことを大声で罵り不正であると訴えるようなことしかできませんわ」
テリワドは自分のことを言われているとわかっているので歯を食いしばって元婚約者メリアンナを睨む。
テリワドは一学年時は万年二位であったが、二学年になってメリアンナに抜かれた。最近ではさらに成績を落としている。
二学年になる頃落ちたのは理由がある。
ちなみに首位はいつもエトリアである。セイバーナは三位か四位。
「うふふ。剣で負けた相手に無理矢理再戦するように仕向け、忖度をさせて勝ちを拾うこともできますわよ」
レボールの元婚約者ヘレナは本当に楽しそうにレボールを小馬鹿にした。レボールは驚きで眉を寄せる。その男子生徒と二人だけの秘密のはずだ。
レボールもまた一年生の頃は正々堂々として勝っても負けてもそれを受け止めていた。だが、これまた二年生になる頃、不正をしても勝ちにこだわるようになった。
91
あなたにおすすめの小説
姉の歪んだ愛情に縛らていた妹は生傷絶えない日々を送っていましたが、それを断ち切ってくれる人に巡り会えて見える景色が様変わりしました
珠宮さくら
恋愛
シータ・ヴァルマは、ドジな令嬢として有名だった。そして、そんな妹を心配しているかのようにずっと傍らに寄り添う姉がいた。
でも、それが見た目通りではないことを知っているのといないとでは、見方がだいぶ変わってしまう光景だったことを知る者が、あまりにも少なかった。
婚約破棄は綿密に行うもの
若目
恋愛
「マルグリット・エレオス、お前との婚約は破棄させてもらう!」
公爵令嬢マルグリットは、女遊びの激しい婚約者の王子様から婚約破棄を告げられる
しかし、それはマルグリット自身が仕組んだものだった……
何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました
海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」
「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。
姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。
しかし、実際は違う。
私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。
つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。
その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。
今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。
「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」
「ティアナ、いつまでも愛しているよ」
「君は私の秘密など知らなくていい」
何故、急に私を愛するのですか?
【登場人物】
ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。
ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。
リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。
ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?
【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした
花宮
恋愛
カトリーヌ・エルノーはレオナルド・オルコットと婚約者だ。
二人の間には愛などなく、婚約者なのに挨拶もなく、冷え切った生活を送る日々。そんなある日、殿下に婚約破棄を言い渡され――?
婚約者を奪われた私は、他国で新しい生活を送ります
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルクルは、エドガー王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。
聖女を好きにったようで、婚約破棄の理由を全て私のせいにしてきた。
聖女と王子が考えた嘘の言い分を家族は信じ、私に勘当を言い渡す。
平民になった私だけど、問題なく他国で新しい生活を送ることができていた。
王子の転落 ~僕が婚約破棄した公爵令嬢は優秀で人望もあった~
今川幸乃
恋愛
ベルガルド王国の王子カールにはアシュリーという婚約者がいた。
しかしカールは自分より有能で周囲の評判もよく、常に自分の先回りをして世話をしてくるアシュリーのことを嫉妬していた。
そんな時、カールはカミラという伯爵令嬢と出会う。
彼女と過ごす時間はアシュリーと一緒の時間と違って楽しく、気楽だった。
こんな日々が続けばいいのに、と思ったカールはアシュリーとの婚約破棄を宣言する。
しかしアシュリーはカールが思っていた以上に優秀で、家臣や貴族たちの人望も高かった。
そのため、婚約破棄後にカールは思った以上の非難にさらされることになる。
※王子視点多めの予定
婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
婚約破棄?私の婚約者はアナタでは無い リメイク版 【完結】
翔千
恋愛
「ジュディアンナ!!!今この時、この場をもって、貴女の婚約を破棄させてもらう!!」
エンミリオン王国王妃の誕生日パーティーの最中、王国第2王子にいきなり婚約破棄を言い渡された、マーシャル公爵の娘、ジュディアンナ・ルナ・マーシャル。
王子の横に控える男爵令嬢、とても可愛いらしいですね。
ところで、私は第2王子と婚約していませんけど?
諸事情で少しリメイクさせてもらいました。
皆様の御目に止まっていただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる