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エトリアが国王陛下の執務室を出ると、国王陛下は僕を今までエトリアがいたところに座るように言った。僕はそれに従う。
国王陛下がニヤリと笑った。
「何か言いたそうだな」
「陛下は対象者Dは妊娠していないとお考えなのではないですか?」
「そうだな。避妊薬はおそらくオキソン侯爵のところで扱っているものだろうからな」
「しかし、エトリアにはDが……」
「ここでは名前を隠さずともよい」
国王陛下は疲れるというように顔を顰めた。
「エトリアにはリリアーヌが身籠っていると思わせたままです」
「ああ言わねば、エトリアは無条件でセイバーナを赦してしまうからな」
「陛下はエトリアとセイバーナ殿の婚姻を望んでいないのですか?」
「いや、まだ検討中だ。二人は心は通わせておらんようだが、助け合える関係であってほしいと思っておる。セイバーナがエトリアに悩みを打ち明けられるなら、避妊薬のことも話してやるつもりだ」
「そうですか……」
僕の心はとても複雑だ。どんな形でもエトリアが幸せならいいという気持ちと、僕が幸せにしてあげたいという気持ちとがぶつかり合う。
「夫婦となるならそれを相談して共に乗り越えるくらいでないとなぁ。
ワシはな……エトリアには信頼関係を築ける者でなければ嫁がせたくはないのだ」
国王陛下は悲しげに笑った。
「だがのぉ、エトリアは王女としての責任感が強すぎる。だから、理由もなくセイバーナと別れさせてもお前――アロンド――を受け入れることはないだろう」
「そう……ですね……」
「エトリアに王女として判断させ、その結果がお前に繋がるのかセイバーナに繋がるのか、他の誰かなのか。それはわからん。
ワシはエトリアの考えを尊重してやりたい」
「わかりました……」
「エトリアへの情報についてはワシが管理するゆえ、お前からは何も言わなくてよい。責任はワシが持つ」
「かしこまりました」
〰️ 〰️ 〰️
結局、セイバーナ殿はエトリアに相談せずリリアーヌを娶るためにエトリアとの婚約解消を選んだ。
それはセイバーナ殿が破滅へ踏み出したことと同義である。
もっと情報を与えてやれば、もっと厳しく助言してやれば。セイバーナ殿を助けられなかった罪悪感が心を漂う。
しかし、それくらいは跳ね返せる力がなければエトリアを娶る権利はない、何でも話ができるほど親しくなければエトリアは幸せになれない。セイバーナ殿への期待を裏切られた失望感も同時に湧く。
その他、セイバーナ殿への親近感とか、エトリアを娶るチャンスが来た高揚感とか。
とにかく複雑怪奇な心理状態で眠れぬ数日を過ごすことになった。
〰️ 〰️ 〰️
セイバーナ殿の国外追放が決定した。
これまで手取り足取り世話をされてきており剣も嗜む程度の力量では、国境が曖昧な森や砂漠に捨てられれば三日と保たないことは容易に想像ができる。実質的な死刑だ。
この判決に情報を知り得た貴族たちは歓喜した。エトリアはそれほど人気である。別け隔てなく慈愛の笑顔を見せ、気品溢れ優雅な仕草は誰もを魅了する。
リリアーヌのようにルールもマナーもないような者には厳しくなることもあるが……。いや、リリアーヌのことも彼女の産んだ子を引き取ることを即決するほど大きな心で受け止めていた。リリアーヌがそれ以上にクズだっただけだ。
エトリアには知らせていなかったが、セイバーナ殿のヨネタス公爵家は婚約破棄事件の前夜に、なぜかセイバーナ殿を廃籍していた。なので、醜聞は最小限に抑えられた。王家への謝罪金は発生するが公爵家の資産を鑑みればそれで済んで御の字であろう。
早い対応には、国王陛下の裁量が含まれていると思われる。国王陛下としてもセイバーナ殿に事前にしてやれたことへの罪悪感があるのかもしれない。
他の三家の謝罪金は相当多額だと聞いている。領地の切り売りも検討されているようだ。
国王陛下がニヤリと笑った。
「何か言いたそうだな」
「陛下は対象者Dは妊娠していないとお考えなのではないですか?」
「そうだな。避妊薬はおそらくオキソン侯爵のところで扱っているものだろうからな」
「しかし、エトリアにはDが……」
「ここでは名前を隠さずともよい」
国王陛下は疲れるというように顔を顰めた。
「エトリアにはリリアーヌが身籠っていると思わせたままです」
「ああ言わねば、エトリアは無条件でセイバーナを赦してしまうからな」
「陛下はエトリアとセイバーナ殿の婚姻を望んでいないのですか?」
「いや、まだ検討中だ。二人は心は通わせておらんようだが、助け合える関係であってほしいと思っておる。セイバーナがエトリアに悩みを打ち明けられるなら、避妊薬のことも話してやるつもりだ」
「そうですか……」
僕の心はとても複雑だ。どんな形でもエトリアが幸せならいいという気持ちと、僕が幸せにしてあげたいという気持ちとがぶつかり合う。
「夫婦となるならそれを相談して共に乗り越えるくらいでないとなぁ。
ワシはな……エトリアには信頼関係を築ける者でなければ嫁がせたくはないのだ」
国王陛下は悲しげに笑った。
「だがのぉ、エトリアは王女としての責任感が強すぎる。だから、理由もなくセイバーナと別れさせてもお前――アロンド――を受け入れることはないだろう」
「そう……ですね……」
「エトリアに王女として判断させ、その結果がお前に繋がるのかセイバーナに繋がるのか、他の誰かなのか。それはわからん。
ワシはエトリアの考えを尊重してやりたい」
「わかりました……」
「エトリアへの情報についてはワシが管理するゆえ、お前からは何も言わなくてよい。責任はワシが持つ」
「かしこまりました」
〰️ 〰️ 〰️
結局、セイバーナ殿はエトリアに相談せずリリアーヌを娶るためにエトリアとの婚約解消を選んだ。
それはセイバーナ殿が破滅へ踏み出したことと同義である。
もっと情報を与えてやれば、もっと厳しく助言してやれば。セイバーナ殿を助けられなかった罪悪感が心を漂う。
しかし、それくらいは跳ね返せる力がなければエトリアを娶る権利はない、何でも話ができるほど親しくなければエトリアは幸せになれない。セイバーナ殿への期待を裏切られた失望感も同時に湧く。
その他、セイバーナ殿への親近感とか、エトリアを娶るチャンスが来た高揚感とか。
とにかく複雑怪奇な心理状態で眠れぬ数日を過ごすことになった。
〰️ 〰️ 〰️
セイバーナ殿の国外追放が決定した。
これまで手取り足取り世話をされてきており剣も嗜む程度の力量では、国境が曖昧な森や砂漠に捨てられれば三日と保たないことは容易に想像ができる。実質的な死刑だ。
この判決に情報を知り得た貴族たちは歓喜した。エトリアはそれほど人気である。別け隔てなく慈愛の笑顔を見せ、気品溢れ優雅な仕草は誰もを魅了する。
リリアーヌのようにルールもマナーもないような者には厳しくなることもあるが……。いや、リリアーヌのことも彼女の産んだ子を引き取ることを即決するほど大きな心で受け止めていた。リリアーヌがそれ以上にクズだっただけだ。
エトリアには知らせていなかったが、セイバーナ殿のヨネタス公爵家は婚約破棄事件の前夜に、なぜかセイバーナ殿を廃籍していた。なので、醜聞は最小限に抑えられた。王家への謝罪金は発生するが公爵家の資産を鑑みればそれで済んで御の字であろう。
早い対応には、国王陛下の裁量が含まれていると思われる。国王陛下としてもセイバーナ殿に事前にしてやれたことへの罪悪感があるのかもしれない。
他の三家の謝罪金は相当多額だと聞いている。領地の切り売りも検討されているようだ。
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