9 / 16
出会い
・
しおりを挟む
人間界と、この世界で大きく変わる点はおそらくあまりない。そのせいもあって、僕は誘拐された身でありながら、洸牙という人物が帰ってくるまでの間を蓮花ちゃんと共に、のんびりと過ごしていた。
「おにーちゃんって、命を懸けてでも守りたいと思う人っている?」
さっきまで僕と一緒に積み木をしていたのに、急に意味深な質問をしてくる蓮花ちゃんに驚く。どうしたんだろう。
「命を懸けてとか、そんな大層なものではないけど、何かあったら助けてあげたいと思う人ならいるよ。僕の幼なじみで親友。いつも僕が助けて貰ってばかりだったから、あいつに何かあったら、今度は僕が支えになってあげたいと思うんだ。」
そうだ、隼人。隼人は今どうしてるだろう。僕がいなくなったことに気づいてくれているだろうか。心配してくれているだろうか。僕の母親は、僕が生まれた時に亡くなった。僕を育ててくれたおばあちゃんも、数年前に亡くなっている。もう僕がいなくなって、悲しんでくれる人は隼人くらいしかいない。
「ふーーん。おにーちゃんにとって、その人は大切な人なんだね。」
「そうだね。性格は、なんかお調子者って感じなんだけど、ここぞという時に頼りになるっていうか、家族みたいな存在だよ。蓮花ちゃんには守りたいと思う人がいるの?」
「洸牙。洸牙のためなら死んだって構わない。」
凛とした眼差しでそう答える蓮花ちゃんは、子供には見えないほどに、とても美しかった。
「蓮花のお母さんとお父さんはね、桜麗っていう鬼に殺されたの。鬼の世界では強さが全て。お母さん達は弱いから負けた。ただそれだけ。ずっと一緒にいるって約束してくれたのに、桜麗なんかには負けないって約束してくれたのに、負けちゃって、挙句の果てには殺されちゃうんだよ?蓮花を置いて。だからね、蓮花は、強い鬼が好き。だって、誰にも負けない圧倒的な力は、蓮花を裏切らないから。」
言葉の端々から蓮花ちゃんの悲鳴が聞こえてくる。大切な人を失うのは、とても辛い。僕も心の支えであった、おばあちゃんを無くした時、今まで感じたことの無いほどの大きな絶望を味わった。僕のおばあちゃんは老衰で、眠るように亡くなったけど、蓮花ちゃんの場合はそうでは無い。僕なんかよりもよっぽど辛いだろう。蓮花ちゃんの苦しみを想像すると胸が痛い、涙が溢れ出てくる、僕は無意識に目の前の小さな体を抱きしめていた。
「ふふふ。なんで、おにーちゃんが泣いてるの?蓮花ね、本当はね、洸牙が帰ってくるまでに、お兄ちゃんのこと殺しちゃおうと思ってたんだ。なんでか分かる?」
「分からない。」
「もう大事な人を失いたくないから。洸牙が命を懸けて守りたいと思ってる相手はね、おにーちゃんなの。だから、おにーちゃんさえ居なくなれば、洸牙が命の危険にさらされることはないでしょ?でも、おにーちゃん良い人だからさ。殺せなかったや。」
鬼の王が、僕を守りたいと思ってる?有り得ない。だって、僕と洸牙という鬼には接点がないから。出会ったこともないのに、無条件に守りたいと思うはずがない。それか僕の血が関係してるのか?僕の血は美味しいと蓮花ちゃんが言っていた。極上の獲物を他の鬼に取られないようにするために、自分の口に入れるまでは守り抜くという事だろうか?
「なんだかよく分からないって顔してるね。よく分からないなら洸牙に聞いてみるといいよ。教えてくれるかも。よし。そろそろ洸牙が帰ってくる時間だから、私は迎えに行ってくるね。おにーちゃんは絶対ここにいて。ここには洸牙の結界が貼ってあるから、洸牙が許したものしか入ることが出来ない。つまりは、ここが一番安全ってこと。おにーちゃん、まだ聞きたいことたくさんあるよね?まだ死ねないよね?死にたくなかったらここにいて。分かった?」
室内の温度が一気に下がる。蓮花ちゃんの雰囲気が、初めに会った時のように不気味だ。これが妖力というやつだろうか。たしかに、いろいろ聞きたいことはある。この世界のこと。神隠しのこと。僕のお父さんのこと。洸牙という人物と僕との関係性。この部屋の結界が、僕のことを守ってくれるというのなら、この部屋にいるのが一番安全なんだろう。僕は蓮花ちゃんの言葉に素直に頷いた。
「おにーちゃんって、命を懸けてでも守りたいと思う人っている?」
さっきまで僕と一緒に積み木をしていたのに、急に意味深な質問をしてくる蓮花ちゃんに驚く。どうしたんだろう。
「命を懸けてとか、そんな大層なものではないけど、何かあったら助けてあげたいと思う人ならいるよ。僕の幼なじみで親友。いつも僕が助けて貰ってばかりだったから、あいつに何かあったら、今度は僕が支えになってあげたいと思うんだ。」
そうだ、隼人。隼人は今どうしてるだろう。僕がいなくなったことに気づいてくれているだろうか。心配してくれているだろうか。僕の母親は、僕が生まれた時に亡くなった。僕を育ててくれたおばあちゃんも、数年前に亡くなっている。もう僕がいなくなって、悲しんでくれる人は隼人くらいしかいない。
「ふーーん。おにーちゃんにとって、その人は大切な人なんだね。」
「そうだね。性格は、なんかお調子者って感じなんだけど、ここぞという時に頼りになるっていうか、家族みたいな存在だよ。蓮花ちゃんには守りたいと思う人がいるの?」
「洸牙。洸牙のためなら死んだって構わない。」
凛とした眼差しでそう答える蓮花ちゃんは、子供には見えないほどに、とても美しかった。
「蓮花のお母さんとお父さんはね、桜麗っていう鬼に殺されたの。鬼の世界では強さが全て。お母さん達は弱いから負けた。ただそれだけ。ずっと一緒にいるって約束してくれたのに、桜麗なんかには負けないって約束してくれたのに、負けちゃって、挙句の果てには殺されちゃうんだよ?蓮花を置いて。だからね、蓮花は、強い鬼が好き。だって、誰にも負けない圧倒的な力は、蓮花を裏切らないから。」
言葉の端々から蓮花ちゃんの悲鳴が聞こえてくる。大切な人を失うのは、とても辛い。僕も心の支えであった、おばあちゃんを無くした時、今まで感じたことの無いほどの大きな絶望を味わった。僕のおばあちゃんは老衰で、眠るように亡くなったけど、蓮花ちゃんの場合はそうでは無い。僕なんかよりもよっぽど辛いだろう。蓮花ちゃんの苦しみを想像すると胸が痛い、涙が溢れ出てくる、僕は無意識に目の前の小さな体を抱きしめていた。
「ふふふ。なんで、おにーちゃんが泣いてるの?蓮花ね、本当はね、洸牙が帰ってくるまでに、お兄ちゃんのこと殺しちゃおうと思ってたんだ。なんでか分かる?」
「分からない。」
「もう大事な人を失いたくないから。洸牙が命を懸けて守りたいと思ってる相手はね、おにーちゃんなの。だから、おにーちゃんさえ居なくなれば、洸牙が命の危険にさらされることはないでしょ?でも、おにーちゃん良い人だからさ。殺せなかったや。」
鬼の王が、僕を守りたいと思ってる?有り得ない。だって、僕と洸牙という鬼には接点がないから。出会ったこともないのに、無条件に守りたいと思うはずがない。それか僕の血が関係してるのか?僕の血は美味しいと蓮花ちゃんが言っていた。極上の獲物を他の鬼に取られないようにするために、自分の口に入れるまでは守り抜くという事だろうか?
「なんだかよく分からないって顔してるね。よく分からないなら洸牙に聞いてみるといいよ。教えてくれるかも。よし。そろそろ洸牙が帰ってくる時間だから、私は迎えに行ってくるね。おにーちゃんは絶対ここにいて。ここには洸牙の結界が貼ってあるから、洸牙が許したものしか入ることが出来ない。つまりは、ここが一番安全ってこと。おにーちゃん、まだ聞きたいことたくさんあるよね?まだ死ねないよね?死にたくなかったらここにいて。分かった?」
室内の温度が一気に下がる。蓮花ちゃんの雰囲気が、初めに会った時のように不気味だ。これが妖力というやつだろうか。たしかに、いろいろ聞きたいことはある。この世界のこと。神隠しのこと。僕のお父さんのこと。洸牙という人物と僕との関係性。この部屋の結界が、僕のことを守ってくれるというのなら、この部屋にいるのが一番安全なんだろう。僕は蓮花ちゃんの言葉に素直に頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる