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出会い
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人間界と、この世界で大きく変わる点はおそらくあまりない。そのせいもあって、僕は誘拐された身でありながら、洸牙という人物が帰ってくるまでの間を蓮花ちゃんと共に、のんびりと過ごしていた。
「おにーちゃんって、命を懸けてでも守りたいと思う人っている?」
さっきまで僕と一緒に積み木をしていたのに、急に意味深な質問をしてくる蓮花ちゃんに驚く。どうしたんだろう。
「命を懸けてとか、そんな大層なものではないけど、何かあったら助けてあげたいと思う人ならいるよ。僕の幼なじみで親友。いつも僕が助けて貰ってばかりだったから、あいつに何かあったら、今度は僕が支えになってあげたいと思うんだ。」
そうだ、隼人。隼人は今どうしてるだろう。僕がいなくなったことに気づいてくれているだろうか。心配してくれているだろうか。僕の母親は、僕が生まれた時に亡くなった。僕を育ててくれたおばあちゃんも、数年前に亡くなっている。もう僕がいなくなって、悲しんでくれる人は隼人くらいしかいない。
「ふーーん。おにーちゃんにとって、その人は大切な人なんだね。」
「そうだね。性格は、なんかお調子者って感じなんだけど、ここぞという時に頼りになるっていうか、家族みたいな存在だよ。蓮花ちゃんには守りたいと思う人がいるの?」
「洸牙。洸牙のためなら死んだって構わない。」
凛とした眼差しでそう答える蓮花ちゃんは、子供には見えないほどに、とても美しかった。
「蓮花のお母さんとお父さんはね、桜麗っていう鬼に殺されたの。鬼の世界では強さが全て。お母さん達は弱いから負けた。ただそれだけ。ずっと一緒にいるって約束してくれたのに、桜麗なんかには負けないって約束してくれたのに、負けちゃって、挙句の果てには殺されちゃうんだよ?蓮花を置いて。だからね、蓮花は、強い鬼が好き。だって、誰にも負けない圧倒的な力は、蓮花を裏切らないから。」
言葉の端々から蓮花ちゃんの悲鳴が聞こえてくる。大切な人を失うのは、とても辛い。僕も心の支えであった、おばあちゃんを無くした時、今まで感じたことの無いほどの大きな絶望を味わった。僕のおばあちゃんは老衰で、眠るように亡くなったけど、蓮花ちゃんの場合はそうでは無い。僕なんかよりもよっぽど辛いだろう。蓮花ちゃんの苦しみを想像すると胸が痛い、涙が溢れ出てくる、僕は無意識に目の前の小さな体を抱きしめていた。
「ふふふ。なんで、おにーちゃんが泣いてるの?蓮花ね、本当はね、洸牙が帰ってくるまでに、お兄ちゃんのこと殺しちゃおうと思ってたんだ。なんでか分かる?」
「分からない。」
「もう大事な人を失いたくないから。洸牙が命を懸けて守りたいと思ってる相手はね、おにーちゃんなの。だから、おにーちゃんさえ居なくなれば、洸牙が命の危険にさらされることはないでしょ?でも、おにーちゃん良い人だからさ。殺せなかったや。」
鬼の王が、僕を守りたいと思ってる?有り得ない。だって、僕と洸牙という鬼には接点がないから。出会ったこともないのに、無条件に守りたいと思うはずがない。それか僕の血が関係してるのか?僕の血は美味しいと蓮花ちゃんが言っていた。極上の獲物を他の鬼に取られないようにするために、自分の口に入れるまでは守り抜くという事だろうか?
「なんだかよく分からないって顔してるね。よく分からないなら洸牙に聞いてみるといいよ。教えてくれるかも。よし。そろそろ洸牙が帰ってくる時間だから、私は迎えに行ってくるね。おにーちゃんは絶対ここにいて。ここには洸牙の結界が貼ってあるから、洸牙が許したものしか入ることが出来ない。つまりは、ここが一番安全ってこと。おにーちゃん、まだ聞きたいことたくさんあるよね?まだ死ねないよね?死にたくなかったらここにいて。分かった?」
室内の温度が一気に下がる。蓮花ちゃんの雰囲気が、初めに会った時のように不気味だ。これが妖力というやつだろうか。たしかに、いろいろ聞きたいことはある。この世界のこと。神隠しのこと。僕のお父さんのこと。洸牙という人物と僕との関係性。この部屋の結界が、僕のことを守ってくれるというのなら、この部屋にいるのが一番安全なんだろう。僕は蓮花ちゃんの言葉に素直に頷いた。
「おにーちゃんって、命を懸けてでも守りたいと思う人っている?」
さっきまで僕と一緒に積み木をしていたのに、急に意味深な質問をしてくる蓮花ちゃんに驚く。どうしたんだろう。
「命を懸けてとか、そんな大層なものではないけど、何かあったら助けてあげたいと思う人ならいるよ。僕の幼なじみで親友。いつも僕が助けて貰ってばかりだったから、あいつに何かあったら、今度は僕が支えになってあげたいと思うんだ。」
そうだ、隼人。隼人は今どうしてるだろう。僕がいなくなったことに気づいてくれているだろうか。心配してくれているだろうか。僕の母親は、僕が生まれた時に亡くなった。僕を育ててくれたおばあちゃんも、数年前に亡くなっている。もう僕がいなくなって、悲しんでくれる人は隼人くらいしかいない。
「ふーーん。おにーちゃんにとって、その人は大切な人なんだね。」
「そうだね。性格は、なんかお調子者って感じなんだけど、ここぞという時に頼りになるっていうか、家族みたいな存在だよ。蓮花ちゃんには守りたいと思う人がいるの?」
「洸牙。洸牙のためなら死んだって構わない。」
凛とした眼差しでそう答える蓮花ちゃんは、子供には見えないほどに、とても美しかった。
「蓮花のお母さんとお父さんはね、桜麗っていう鬼に殺されたの。鬼の世界では強さが全て。お母さん達は弱いから負けた。ただそれだけ。ずっと一緒にいるって約束してくれたのに、桜麗なんかには負けないって約束してくれたのに、負けちゃって、挙句の果てには殺されちゃうんだよ?蓮花を置いて。だからね、蓮花は、強い鬼が好き。だって、誰にも負けない圧倒的な力は、蓮花を裏切らないから。」
言葉の端々から蓮花ちゃんの悲鳴が聞こえてくる。大切な人を失うのは、とても辛い。僕も心の支えであった、おばあちゃんを無くした時、今まで感じたことの無いほどの大きな絶望を味わった。僕のおばあちゃんは老衰で、眠るように亡くなったけど、蓮花ちゃんの場合はそうでは無い。僕なんかよりもよっぽど辛いだろう。蓮花ちゃんの苦しみを想像すると胸が痛い、涙が溢れ出てくる、僕は無意識に目の前の小さな体を抱きしめていた。
「ふふふ。なんで、おにーちゃんが泣いてるの?蓮花ね、本当はね、洸牙が帰ってくるまでに、お兄ちゃんのこと殺しちゃおうと思ってたんだ。なんでか分かる?」
「分からない。」
「もう大事な人を失いたくないから。洸牙が命を懸けて守りたいと思ってる相手はね、おにーちゃんなの。だから、おにーちゃんさえ居なくなれば、洸牙が命の危険にさらされることはないでしょ?でも、おにーちゃん良い人だからさ。殺せなかったや。」
鬼の王が、僕を守りたいと思ってる?有り得ない。だって、僕と洸牙という鬼には接点がないから。出会ったこともないのに、無条件に守りたいと思うはずがない。それか僕の血が関係してるのか?僕の血は美味しいと蓮花ちゃんが言っていた。極上の獲物を他の鬼に取られないようにするために、自分の口に入れるまでは守り抜くという事だろうか?
「なんだかよく分からないって顔してるね。よく分からないなら洸牙に聞いてみるといいよ。教えてくれるかも。よし。そろそろ洸牙が帰ってくる時間だから、私は迎えに行ってくるね。おにーちゃんは絶対ここにいて。ここには洸牙の結界が貼ってあるから、洸牙が許したものしか入ることが出来ない。つまりは、ここが一番安全ってこと。おにーちゃん、まだ聞きたいことたくさんあるよね?まだ死ねないよね?死にたくなかったらここにいて。分かった?」
室内の温度が一気に下がる。蓮花ちゃんの雰囲気が、初めに会った時のように不気味だ。これが妖力というやつだろうか。たしかに、いろいろ聞きたいことはある。この世界のこと。神隠しのこと。僕のお父さんのこと。洸牙という人物と僕との関係性。この部屋の結界が、僕のことを守ってくれるというのなら、この部屋にいるのが一番安全なんだろう。僕は蓮花ちゃんの言葉に素直に頷いた。
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