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出会い
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目の前に気配を感じる。顔をあげることが出来ない。蓮花ちゃんとは違う重くのしかかってくるような威圧感。顔を見なくても人間では無い何かが目の前にいることが分かる。
「洸牙!!ほらね!!蓮花、言われた通りに、おにーちゃん連れてきたでしょ!!褒めて褒めて!」
「ああ、よくやった。隣室にお前の好きな菓子を用意した。町の巡回から帰ってきた蒼もいる。蒼と食べてこい。俺は唯と二人で話をする。」
低く重く色気のある声。
「むぅ。洸牙、おにーちゃんと二人きりになりたいからって、お菓子でつって蓮花のこと追い出そうとしてるでしょ。まあいいわ。ちょうどお腹すいてたし!」
文句を言いながら蓮花ちゃんが部屋から出ていく。蓮花ちゃんの気配が消えた。この部屋に二人きり。どうしようどうしよう。聞きたいことは山ほどあったはずなのに、さっきまでは鬼の王と会えることを楽しみだとさえ思えていたはずなのに、いざ対面すると恐怖で体が動かない。
「唯。」
発せられる威圧感とは反して、優しく温かい声色で名前を呼ばれる。何故この鬼は僕の名前を知っているんだろう。蓮花ちゃんにも名前は教えていないはずだ。妖だから何でもお見通しなのか。それとも、僕が忘れているだけで、過去にこの鬼と会っているのか。蓮花ちゃんが言っていた。この鬼が命をかけてでも守りたいのは僕だと。そのことと関わりがあるのか。何も分からない。
なんとも言えない静けさが辺りを包んだ後、鬼が動き出す。足音が近づいてくる。何をされるのだろう。恐怖に怯えることしかできない。目の前で鬼の足音がとまると、鬼は僕の隣に腰を下ろした。
「え、、、」
隣に座ってくるというまさかの展開に驚いて、つい顔を上げてしまう。鬼はじっと僕のことを見つめていた。美しい鬼だった。目、鼻、口、全ての形が完璧で、かつ、完璧な配置に置かれている。造形だけ見れば鬼というより神様と言われた方が信じるレベルだ。まるで不思議な引力に引き寄せられているように、合わさった瞳をそらすことが出来ない。
「俺が怖いだろう。」
先に目を逸らしたのは鬼の方だった。前に向き直り僕に話しかける。怖い。怖いに決まってる。この世のものとは思えない美しさが、更に僕の恐怖心を煽っていく。まるで処刑台にのぼった気分だ。
「乱暴に連れ去って悪かった。ただ時間が無かったんだ。他の妖達に唯の存在がバレかけてた。」
僕の存在か。普段通りなら、隼人と別れたあと、大学の課題をして、溜めていたアニメを見て、眠ってまた大学に行くという平穏な日常を過ごすはずだった。一体なぜこうなってしまったんだろう。僕は人間ではないのか。僕は一体何者なんだ。
「今から理由を全て説明する。だから泣くな。唯に泣かれると辛い。」
いつの間に泣いてしまっていたんだろう。目の前にいる鬼への恐怖からだろうか、それとも、非日常的なこの状況が、僕に与えるストレスからだろうか。混乱して思考がまとまらない。
「俺は妖力の高い上位種の妖だ。だから妖力を持たない唯が恐怖を覚えることも不思議なことではない。傍にいれば俺の妖力にも慣れる。人間は適応能力が高いからな。とにかく今は俺という存在に慣れろ。唯がそんな状態じゃ、今の状況を説明することすら出来ない。」
僕の頭に鬼の手が触れる。がっしりとした大きな手。このまま僕の頭を潰すことは、この鬼にとって息をするように簡単なことだろう。でも不思議と恐怖は感じない。あたたかく、優しい手つきで何度も頭を撫でられる。
「安心しろ。俺は唯に危害を加えない。」
そう言って僕を見つめる鬼の瞳は、まるで、大切な宝物を見ているような、優しい目だった。
「洸牙!!ほらね!!蓮花、言われた通りに、おにーちゃん連れてきたでしょ!!褒めて褒めて!」
「ああ、よくやった。隣室にお前の好きな菓子を用意した。町の巡回から帰ってきた蒼もいる。蒼と食べてこい。俺は唯と二人で話をする。」
低く重く色気のある声。
「むぅ。洸牙、おにーちゃんと二人きりになりたいからって、お菓子でつって蓮花のこと追い出そうとしてるでしょ。まあいいわ。ちょうどお腹すいてたし!」
文句を言いながら蓮花ちゃんが部屋から出ていく。蓮花ちゃんの気配が消えた。この部屋に二人きり。どうしようどうしよう。聞きたいことは山ほどあったはずなのに、さっきまでは鬼の王と会えることを楽しみだとさえ思えていたはずなのに、いざ対面すると恐怖で体が動かない。
「唯。」
発せられる威圧感とは反して、優しく温かい声色で名前を呼ばれる。何故この鬼は僕の名前を知っているんだろう。蓮花ちゃんにも名前は教えていないはずだ。妖だから何でもお見通しなのか。それとも、僕が忘れているだけで、過去にこの鬼と会っているのか。蓮花ちゃんが言っていた。この鬼が命をかけてでも守りたいのは僕だと。そのことと関わりがあるのか。何も分からない。
なんとも言えない静けさが辺りを包んだ後、鬼が動き出す。足音が近づいてくる。何をされるのだろう。恐怖に怯えることしかできない。目の前で鬼の足音がとまると、鬼は僕の隣に腰を下ろした。
「え、、、」
隣に座ってくるというまさかの展開に驚いて、つい顔を上げてしまう。鬼はじっと僕のことを見つめていた。美しい鬼だった。目、鼻、口、全ての形が完璧で、かつ、完璧な配置に置かれている。造形だけ見れば鬼というより神様と言われた方が信じるレベルだ。まるで不思議な引力に引き寄せられているように、合わさった瞳をそらすことが出来ない。
「俺が怖いだろう。」
先に目を逸らしたのは鬼の方だった。前に向き直り僕に話しかける。怖い。怖いに決まってる。この世のものとは思えない美しさが、更に僕の恐怖心を煽っていく。まるで処刑台にのぼった気分だ。
「乱暴に連れ去って悪かった。ただ時間が無かったんだ。他の妖達に唯の存在がバレかけてた。」
僕の存在か。普段通りなら、隼人と別れたあと、大学の課題をして、溜めていたアニメを見て、眠ってまた大学に行くという平穏な日常を過ごすはずだった。一体なぜこうなってしまったんだろう。僕は人間ではないのか。僕は一体何者なんだ。
「今から理由を全て説明する。だから泣くな。唯に泣かれると辛い。」
いつの間に泣いてしまっていたんだろう。目の前にいる鬼への恐怖からだろうか、それとも、非日常的なこの状況が、僕に与えるストレスからだろうか。混乱して思考がまとまらない。
「俺は妖力の高い上位種の妖だ。だから妖力を持たない唯が恐怖を覚えることも不思議なことではない。傍にいれば俺の妖力にも慣れる。人間は適応能力が高いからな。とにかく今は俺という存在に慣れろ。唯がそんな状態じゃ、今の状況を説明することすら出来ない。」
僕の頭に鬼の手が触れる。がっしりとした大きな手。このまま僕の頭を潰すことは、この鬼にとって息をするように簡単なことだろう。でも不思議と恐怖は感じない。あたたかく、優しい手つきで何度も頭を撫でられる。
「安心しろ。俺は唯に危害を加えない。」
そう言って僕を見つめる鬼の瞳は、まるで、大切な宝物を見ているような、優しい目だった。
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