逢魔が時の神隠し

ほの

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僕のこと

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どのくらい時間が経っただろう。永遠と頭を撫でられ続けている。正直訳が分からない状況だ。僕を攻撃したり、食べようとしたりする仕草はない。僕に危害を加えないと言っていた鬼の言葉を、少しは信じても良いのだろうか。

「あの、、、」

「なんだ?」

「えっと、、その、、頭、いつまで撫でるんですか?」

この鬼が僕に危害を加えないとしても、頭を撫で続けるのはやめて欲しい。僕は元々友人が多いタイプではないし、こういう触れ合いには慣れていない。それ以前に、例え、仲のいい友人同士だとしても、この距離感はおかしい気がする。

「言っただろう、まずは俺に慣れろと。慣れるためには触れることが一番だ。」

当然だという顔で堂々と言ってのける鬼に驚く。この鬼にパーソナルスペースというものはないのか。

「そ、そうですか。でも、お陰様で涙も止まりましたし、あなたのことも怖くないと言えば嘘になりますが、その、、案外悪い鬼ではないのかもと思っています。お話も出来そうです。だから、その、頭から手を離して頂けませんか?頭を撫でられるのは落ち着かないというか、、慣れないんです、、」

言った。言ってやったぞ。大丈夫だろうか。この鬼の機嫌を損ねたりしていないだろうか。でも僕が黙っていては永遠とこの不可解な状況が続いたままだ。良い。これで良いんだ。

「そうか。分かった。」

一息ついて、鬼が僕の頭から手を離す。手を離して欲しいと願ったのは本心だが、案外あっさりと言う事を聞いてくれるので驚いた。意外と物分りのいい鬼なんだな。少しだけ感心していると隣で鬼が動き出す気配がした。

「え!!!ちょっと何してるんですか!!」

安心したのもつかの間、次は、何故か鬼に手を握られている。前言撤回、やはりこの鬼は頭がおかしい。

「俺は早く唯に俺という存在に慣れて欲しい。唯は頭を撫でられるのが嫌だと言った。これが妥協案だ。これも嫌といったら、また頭を撫でるぞ。」

だめだ。この鬼には何を言っても通用しない。初対面でこの距離感はナンパ師しか有り得ないぞと言ってやりたいが、相手は人では無いし、言うだけ無駄だろう。この世界ではこの距離感が普通という可能性もある。ここら辺で折り合いを付けないと堂々巡りになりそうだ。それに、こんなことより、僕はこの鬼に聞きたいことがある。元の世界に戻るためにも、話を前に進めなければ。

「ああ、そうですか。もうそれでいいです。あの、さっそくですが、お聞きしたいことがあります。」

「なんだ?」

「何故僕はここに連れてこられたんでしょうか。」

もちろん父親が誰なのか、とか、母親はなぜ死んだのか、とか他にも聞きたいことは山ほどある。でもまずはこの質問からだ。

「その前に腹ごしらえだな。」

はい?決死の覚悟でこの質問をしたというのに、この鬼は!!!

「僕が泣き止んだらこの状況を説明してくれるとあなたは言った!!嘘だったのですか!!」

「確かに言った。でも腹が減っては戦ができぬと言うだろう?」

「あ、あ、あなたは僕と戦をするつもりなのですか!!」

「いや待て。言葉のあやだ。言っただろう。唯に危害を加えるつもりは無い。ほら、あれだ、ここに来てから何も食べてないだろう?」

先程までは恐怖で空腹など忘れ去っていたが、言われてみればお腹は空いている。遅刻してきた隼人への腹いせでたくさん食べてやろうと思っていたのに、おじいさんの意味深な言葉のせいで食欲をなくし、あまり食べることが出来ていない。

「食べながらでも話は出来るだろう。とりあえず来い。」

鬼に繋がれていた手を引かれ、立ち上がる。立ち上がって驚いた。身長は190はあるだろうか。服の上からでも鍛えあげられた上質な筋肉の存在が分かる。モデル顔負けのスタイルだ。なんだ完璧じゃないか。本当に鬼なのか?

「なんだ、そんなに見つめて。俺に惚れたか??」

「なっっっ、、!!!!そんな訳ない!!」

「冗談だ、真に受けるな。」

鬼が僕を見て面白そうに笑う。その笑顔になんとも言えない懐かしさを感じたのは何故だろう。

「ついてこい。」

一通り笑い終わったあと、鬼は僕の手を握りなおし、扉に向かって歩き始める。えっと、この握り方は恋人繋ぎじゃないのか??なんでわざわざ握り方を変えたんだ??僕が逃げると思ったから??ダメだ。この鬼の意図が分からない。あーー僕はどうなるんだろう。これからのことへの不安を覚えながら、僕は天を仰いだ。
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